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ジェイクの告白

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 たった一度道端でジェイクを助けただけなのに、彼はそれを覚えてくれておれを助けてくれた。
 言われるまでおれは忘れていたのに。

 「た、たから、もの、もなかったん、だろ・・? な、なのにわざわざ、行ったのか?」

 嗚咽で上手に息ができない。泣きながら問う。あのダンジョンには宝物はもうなかったはずだ。

 「宝物はノアだよ」
 ジェイクが優しくおれを見つめてくれる。

 「初恋なんだ。ノアが好きなんだ。だからノアを見つけたかった」
 ジェイクはさらに驚くことを言った。

 「愛している」
 おれは、何の役にも立たなくて、呪いを受けるしか能がなくて・・・捨てられたようなものだ。誰もおれなんて探しにこなくて・・・。
 おれは涙が滂沱に流れるのを止められない。
 「嘘だ。…だっておれは…」

 苦しくてしゃがみこむ。
 「大丈夫か。ノア」
 ジェイクが焦っておれを支える。
 「うそだ」

 「嘘なんかじゃない」
 「だって、おれ、なんの・・役にも・・た、たない」

 「ノアは役に立ってる! だけど、役に立つとか立たないとか関係ない。そばにいてくれるだけでいい。ノアだから、ノアだから大切なんだ」

 おれは我慢できなくて子供の様に泣いた。握りしめた拳はそのままおれの顔に当てられる。
 ジェイクよりも大人なはずなのに、迷子の子供の様に泣いて恥ずかしいのに。

 その後はおれは泣きすぎて、疲れて、ジェイクに抱きしめられながら眠った。
 ジェイクの体は温かくて大きくて、全部すっぽり包まれた。
 おれの体も心も。


 目が覚めた時、おれはベッドに寝ていた。ジェイクは少し離れた椅子に座りながら眠っていた。外は暗くなっていた。月明かりが窓から光をさしている。ジェイクの少しやつれた顔に影を作っていた。

 「ジェ・・イク?」
 おれが小さな声で呟くと、ジェイクはハッと目を覚まして、おれに近づくと、ベッドの側に膝をつき手を握ってくる。
 「よかった。目が覚めて。このまま眠りつづけたらどうしようかと思った」
 なんとおれは1日丸々寝ていたそうだ。

 「ごめん」心配かけてごめん。
 きっとまた石にみたいになるかと心配をかけたと思う。ジェイクは少しやつれて見えた。

 おれはジェイクをジッと見つめる。ジェイクに月明かりが当たっている。
 緩いくせのある金髪は肩にかかっている。綺麗なエメラルド色の瞳は優しくキラキラとしている。いつも優しく微笑んでいてくれているからわからないけど、ハッとするほど整った顔だ。

 おれが彼を助けた時、彼はまだ小さかったような気がする。8歳と言っていた。なのに今はおれよりも大きくて大人で、もちろんあのころの面影はあるけど、そのジェイクに告白されるなんて。

 不思議な感じがする。

 おれは呪いの影響なんだろうか、あのダンジョンに行ったときのまま見た目は年を取っていなかった。
 ジェイクを助けたとき、おれは17歳だった。今のジェイクは25歳だという。17年かかっておれを助けてくれた?

 死んでいるか生きているのかもわからないのに?
 それにどんな呪いかもわからないのに。

 手を伸ばして、顔を触る。ジェイクはくすぐったそうに微笑んでいる。

 「どうして?」
 どうしてそんなことができるのだろうか。
 唐突に寝る前にしていた話の続きみたいな問いをしてしまう。
 だけど、ジェイクはわかってくれた。
 おれの手を捕まえると、手の平に唇をつける。

 「・・・言わなかったかな。好きだって」
 「たった一度しか会ってないのに」

 「たった一度でも分かった。ノアはおれの運命の人だ」
 「そんなのわからない」
 「それはこれからわかってくれたらいい。もうすでにおれはノアにとって運命の人だろ?」
 ジェイクがいたずらっ子みたいに笑う。

 呪われて孤独に過ごした暗闇の後、こんな幸せがあると思っていなかった。
 ただ水滴が落ちる音を聞いていたころ、生きているのか死んでいるのかもわからないあのころ、どうして死ねないのだろう、と思っていた。
 
 そこから救い出してくれたジェイクはおれの運命の人だ。この先ジェイクがおれから離れたとしてもおれは忘れない。ジェイクがおれの運命の人だと。
 
 だからこそ思う。ジェイクには幸せになってほしい。呪われているおれなんかといつまでも一緒にいてはいけない。

 おれは儚い恋の行方を寂しく思う。

 いつかジェイクに似合う可愛い人がジェイクの隣に立つだろう。

 その時にお祝いの言葉を言えるようにしなければ。それを想像するだけで辛くて涙が出てくる。
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