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1-8 生きていく世界
第45話 聞き込み調査
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依頼された街の野良達の調査をするに当たって、まずは聞き込みをすることにした。
ある冒険者が野良の子供を救っているとの話だったが、それが誰なのかはギルドにも情報が無かったので、まずは俺がよくエサやりをしている地域の住人の中に、目撃者が居ないか確かめてみる。
中央広場に面する商店脇から入る路地には、俺がほぼ毎日エサやりをしていることもあり、野良達が夕方になると集まってくるようになっていた。
その様子を露店の店主や商店の従業員などは毎日見ている。
聞き込みをするにはもってこいだと思い、まずは衣料品店で話を聞いてみる事にした。
「こんにちは。少々お伺いしたいことがありまして」
「いらっしゃいませ~。あ、エサやりのお兄さんだ。今日は何を買いに来たの?」
「いえ、すみません。今日は買い物じゃ無いんです──お伺いしたい事がありまして」
「聞きたいこと? なにかな?」
「最近俺以外にも野良達にエサをやったり、保護したりしている冒険者がいるという話がありまして。何か御存知ありませんか?」
「お兄さん以外にそんな人いるの~? 私は知らないなぁ」
「そうですか……では野良猫や野良犬の数が増えたなんていう感覚はありますか?」
「ううん。お兄さんのおかげで野良達は大人しいし、数も増えたような感じはしないかなぁ」
「なるほど、ありがとうございました。次はズボンでも見に来ます」
「待ってるわね~」
衣料品店は空振りだったので、次は雑貨店に聞き込みに行く。
「こんにちは。少しお話よろしいでしょうか」
「はい、何をお探しで?」
「この辺りで野良達に……」
その後も露店の店主達に聞いて回ってみたが、大した情報は無く進展はなかった。
パン屋に立ち寄った際、メイベルは順調に仕事を覚えて一生懸命働いているらしく、その点については安心した。
陽も落ちてきたので、ひとまず件の人物の情報は諦めてエサやりついでに野良達の様子を探ることにする。
「ホーホホ(タベモノ)」
「そうだな、もう少しで夕飯の時間だ」
何か所かいつもの場所でエサをやっているが、特に変わった様子はない。
正確に数えた事があるわけでは無いが、数もいつも通りだと思うし、目立って子供が多いという事もない。
そんなこんな野良達を観察していると、慌てた様子の男が話しかけてきた。
「ヤマトさん! 大変だ──助けてくれ! 見てくれ……」
(ん? 知らない人だ)
見覚えのない人物が胸に何かを抱えて俺に訴えかけてきた。
「どうされました?」
「さっき子猫を保護したんだが見てくれ! 片目をケガしてる!」
子猫をのぞき込むと確かに。
右目から出血し、ぐったりとした様子だ。
(しまった……昨日ので最後だ)
危険度が高い仕事を受ける予定も無く、昨日の今日で調査依頼に乗り出したこともあり、ポーションを補充していなかった。
「む……ほんとですね、とりあえず止血しましょう」
俺は腰の巾着袋からハンカチ程の大きさの布を取り出し子猫の目にあてがう。
こうなった原因がわからないので何とも言えないが、野良犬にでも襲われたのだろうか。
動物を診てもらえるかはわからないが、診療所に助けを求めるしかないだろう。
「診療所に連れて行きましょう」
子猫を抱えた男性と共に、急ぎ診療所へと向かった。
◇
「すみません、子猫なんですけど、診ていただけないでしょうか」
「猫……かね? どれ、一応見てみよう」
医者の先生は一瞬戸惑った顔を見せたが診てくれるという。
「ふむ、これは……」
「先生! 子猫は助かりますか?!」
初めて見る人物だが動物への愛情か、必死な形相をしている。
「……なるほど、とりあえず止血は出来た──が、残念だがこの右目はダメだろうね」
もちろん人間相手の診療所の人間を診る医者なので、道具も人間用の物しかないだろうが、なんとか応急処置を施してもらえたようだ。
「そんな……かわいそうに……」
「動物なのに診てくださりありがとうございました」
「気にしないでいいよ、専門外で出来ることは少ないが、傷の縫合ぐらいは動物も人間も似たようなものだ」
「そういえば、どこでこの子を保護したんですか?」
あの時急に声をかけられたし、急いでいて状況がわからないので聞いておいたほうがいい。
もし危険な野良犬でもうろついているなら対処しなければならい。
「中央広場から東区の方に抜ける路地で保護したんです。見つけた時には既にケガを負ってて」
「そうですか……見ず知らずの野良猫を助けるなんて、あなたは優しい方ですね」
「当然ですよ! こんな幼気な子が苦しんでたら放っておけないです!」
「この子猫はどうする? 二、三日は様子見でうちで看病するが、その後の事は任せていいのかね?」
「ええと……」
「俺が考えておきます。看病してもらっている間のエサもあげにきますので、ご安心ください」
「ヤマトさんがそう言うなら俺はそれでいいです」
「すみません、出しゃばって。あなたも気になりますよね」
「いえいえ、ヤマトさんの方が適任だと思います」
「そういうことでしたら。先生、よろしくお願いします」
「ああ、任せておきなさい」
診療所を出た所で、そういえば名前を聞いていなかったと思い自己紹介でもと名前を尋ねると、彼は"ケビン"と名乗った。
よくよく見ると多分冒険者だ。
スカウトだろうか、皮の手袋をはめ衣服は鎖かたびらに布地の軽装、腰にはロングソード、頭に頭巾を被っている。
同じ動物好きとして、意見交換でもしたい所だったが、挨拶もそこそこにスカウト風の彼は言葉少なに去って行ってしまった。
彼も冒険者だろうし忙しいのか、もしくは偏見だろうが"スカウト"というイメージ通りあまり人とつるまない性分なのか。
良い事をした後は何となく気恥ずかしさを感じるのは俺も思う所だ。
調査結果としては、野良達の数は特に変わりはなし。
とりあえず今日の所はこの辺りで切り上げ、預かってもらっている子猫の為の準備をする為に宿へと帰る事にした。
ある冒険者が野良の子供を救っているとの話だったが、それが誰なのかはギルドにも情報が無かったので、まずは俺がよくエサやりをしている地域の住人の中に、目撃者が居ないか確かめてみる。
中央広場に面する商店脇から入る路地には、俺がほぼ毎日エサやりをしていることもあり、野良達が夕方になると集まってくるようになっていた。
その様子を露店の店主や商店の従業員などは毎日見ている。
聞き込みをするにはもってこいだと思い、まずは衣料品店で話を聞いてみる事にした。
「こんにちは。少々お伺いしたいことがありまして」
「いらっしゃいませ~。あ、エサやりのお兄さんだ。今日は何を買いに来たの?」
「いえ、すみません。今日は買い物じゃ無いんです──お伺いしたい事がありまして」
「聞きたいこと? なにかな?」
「最近俺以外にも野良達にエサをやったり、保護したりしている冒険者がいるという話がありまして。何か御存知ありませんか?」
「お兄さん以外にそんな人いるの~? 私は知らないなぁ」
「そうですか……では野良猫や野良犬の数が増えたなんていう感覚はありますか?」
「ううん。お兄さんのおかげで野良達は大人しいし、数も増えたような感じはしないかなぁ」
「なるほど、ありがとうございました。次はズボンでも見に来ます」
「待ってるわね~」
衣料品店は空振りだったので、次は雑貨店に聞き込みに行く。
「こんにちは。少しお話よろしいでしょうか」
「はい、何をお探しで?」
「この辺りで野良達に……」
その後も露店の店主達に聞いて回ってみたが、大した情報は無く進展はなかった。
パン屋に立ち寄った際、メイベルは順調に仕事を覚えて一生懸命働いているらしく、その点については安心した。
陽も落ちてきたので、ひとまず件の人物の情報は諦めてエサやりついでに野良達の様子を探ることにする。
「ホーホホ(タベモノ)」
「そうだな、もう少しで夕飯の時間だ」
何か所かいつもの場所でエサをやっているが、特に変わった様子はない。
正確に数えた事があるわけでは無いが、数もいつも通りだと思うし、目立って子供が多いという事もない。
そんなこんな野良達を観察していると、慌てた様子の男が話しかけてきた。
「ヤマトさん! 大変だ──助けてくれ! 見てくれ……」
(ん? 知らない人だ)
見覚えのない人物が胸に何かを抱えて俺に訴えかけてきた。
「どうされました?」
「さっき子猫を保護したんだが見てくれ! 片目をケガしてる!」
子猫をのぞき込むと確かに。
右目から出血し、ぐったりとした様子だ。
(しまった……昨日ので最後だ)
危険度が高い仕事を受ける予定も無く、昨日の今日で調査依頼に乗り出したこともあり、ポーションを補充していなかった。
「む……ほんとですね、とりあえず止血しましょう」
俺は腰の巾着袋からハンカチ程の大きさの布を取り出し子猫の目にあてがう。
こうなった原因がわからないので何とも言えないが、野良犬にでも襲われたのだろうか。
動物を診てもらえるかはわからないが、診療所に助けを求めるしかないだろう。
「診療所に連れて行きましょう」
子猫を抱えた男性と共に、急ぎ診療所へと向かった。
◇
「すみません、子猫なんですけど、診ていただけないでしょうか」
「猫……かね? どれ、一応見てみよう」
医者の先生は一瞬戸惑った顔を見せたが診てくれるという。
「ふむ、これは……」
「先生! 子猫は助かりますか?!」
初めて見る人物だが動物への愛情か、必死な形相をしている。
「……なるほど、とりあえず止血は出来た──が、残念だがこの右目はダメだろうね」
もちろん人間相手の診療所の人間を診る医者なので、道具も人間用の物しかないだろうが、なんとか応急処置を施してもらえたようだ。
「そんな……かわいそうに……」
「動物なのに診てくださりありがとうございました」
「気にしないでいいよ、専門外で出来ることは少ないが、傷の縫合ぐらいは動物も人間も似たようなものだ」
「そういえば、どこでこの子を保護したんですか?」
あの時急に声をかけられたし、急いでいて状況がわからないので聞いておいたほうがいい。
もし危険な野良犬でもうろついているなら対処しなければならい。
「中央広場から東区の方に抜ける路地で保護したんです。見つけた時には既にケガを負ってて」
「そうですか……見ず知らずの野良猫を助けるなんて、あなたは優しい方ですね」
「当然ですよ! こんな幼気な子が苦しんでたら放っておけないです!」
「この子猫はどうする? 二、三日は様子見でうちで看病するが、その後の事は任せていいのかね?」
「ええと……」
「俺が考えておきます。看病してもらっている間のエサもあげにきますので、ご安心ください」
「ヤマトさんがそう言うなら俺はそれでいいです」
「すみません、出しゃばって。あなたも気になりますよね」
「いえいえ、ヤマトさんの方が適任だと思います」
「そういうことでしたら。先生、よろしくお願いします」
「ああ、任せておきなさい」
診療所を出た所で、そういえば名前を聞いていなかったと思い自己紹介でもと名前を尋ねると、彼は"ケビン"と名乗った。
よくよく見ると多分冒険者だ。
スカウトだろうか、皮の手袋をはめ衣服は鎖かたびらに布地の軽装、腰にはロングソード、頭に頭巾を被っている。
同じ動物好きとして、意見交換でもしたい所だったが、挨拶もそこそこにスカウト風の彼は言葉少なに去って行ってしまった。
彼も冒険者だろうし忙しいのか、もしくは偏見だろうが"スカウト"というイメージ通りあまり人とつるまない性分なのか。
良い事をした後は何となく気恥ずかしさを感じるのは俺も思う所だ。
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