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1-5 交流
第26話 臨時パーティー 1
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「ラークピラニー退治、あたしと一緒に行かないかい?」
彼女の名は"ビビット"。
女性ながら、装備している大盾に相応しい筋肉質なたくましい体つきで、姉御と呼ばれるのが似合いそうな、ベテランソロ冒険者。
俺やロングのソロ活動と違い、自分をレンタルするという立ち回りを見せる人物。
盾役は、大盾を維持し続ける筋力や攻撃を耐え凌ぐ体幹等、身体に恵まれないと役割として満足に動けない為、就ける人間が限られる。
そんな少数派の中の一人で、特定のパーティーに席を置くことなくソロ活動をしているのがビビットさんだ。
彼女のようなベテランに多く──タンクは特に──見られる働き方で、新人の面倒を見る為の者、欠員の出たパーティーに助太刀する者、あるいは人間関係に煩わしさを感じる性分の者が選択するやり方がレンタルと言われる。
タンクと言えば"ロット"を連想するが、『少数派のタンクを独占するな』とやっかみも多い中で、パーティーを組んでいる彼は稀な存在だ。
常にパーティーで行動する分、メンバーとの連携の練度が他のタンクと段違いなので、未知の緑翼が一目置かれる理由の一つに彼の存在が大きいだろう。
「ビビットさん、おはようございます。お騒がせしてすみませんでした」 「ホホーホ(ナカマ)」
「気にすんなよヤマト!──お、リーフルは今日も愛らしいなぁ……それにさ、あいつらにはあたしもみんなも辟易してたんだ。いやぁ~スカッとしたよ!」
ギルド内でしか会った事は無いが、毎朝顔を合わすのでそこそこ親交がある。
特にリーフルの存在が大きく、ビビットさんはリーフルにご執心のようだ。
「はじめましてっす! 自分ロングって言います、ヤマトさんに面倒見てもらってるっす!」
「大袈裟だよ。少しアドバイスしただけだよね」
「そんなことないっす! 今回も命拾いしましたし、感謝感激っす!」
「あたしはビビット。普段は助っ人として色んな奴の手伝いをしているよ」
「その大盾すごいっす──かっこいいっす!」
「ありがとね、こいつがあたしの役割さ」
親指を立て背負った大盾を指差すその様は、とても頼りになりそうな堂々たる態度だ。
「話はなんとなく聞いていたよ、折角だしどうだい? あたしら三人でラークピラニーのクエストに行ってみないかい?」
「俺達三人ですか? 確かにビビットさんが居れば滅多なことは無いと思いますけど、今日は他の助っ人のご予定は?」
「今んとこ声はかかってないね。それにロング、経験を積みたいんだろ? ベテランタンクのあたしに、慎重派のヤマト、二人があんたをサポートするんだ、これ以上のびのびと出来るパーティーは他に無いと思うよ?」
確かにビビットさんの言う通り、色々と経験を積んで、ロングには生存率を高めてほしい。
何より俺も学ぶことが多そうだ。
「間違いないっす、ヤマトさんが居れば安全っす! ビビットさんも超頼りになりそうっす!」
「だろう? だから三人で行こうよ──おっと、リーフルちゃんもね」
ビビットがリーフルにウインクをする。
「そうですね。俺もまだ一回しかラークピラニーと戦ったこと無いですし、三人で行きましょうか!」
「行くっす!」 「ホ(イク)」
こうしてラークピラニー討伐の仕事を受けた俺達三人と一匹は、臨時のパーティーを組み、街の南東方面にある小さな湖へと向かった。
◇
「自分、ヤマトさんに案内してもらった時以来二回目っす!」
「なんだ、一度来てるのかい」
湖としては小さいながらとても麗しい景色で、対岸まで100メートルあるかないか程度でそれほど大きくは無く、澄んだ水と気化熱でひんやりとした空気が辺りを包む、サウド周辺に広がる草原において随一の絶景ポイントだ。
木こり達が水分補給に立ち寄ったり、水位を確認し川の氾濫の兆候を調べたりと、意外と人が訪れる事の多い場所なので、魔物の存在は脅威となる。
この湖は森を越えた先にある山岳地帯から続く川の終着点となっており、ラークピラニーは上流から下ってくる。
なんでも川を遡上し産卵、数を増やし再びこの湖に戻ってくるそうだ。
普通の魚と違い、ラークピラニーは魔物である為、出来るだけ数を増やさないよう、治安維持の為定期的に討伐依頼が出されている。
「早速だけど。大きめの影が見える、多分あれはラークピラニーだ。既にこちらに気付いて俺達を狙っているようだね」
「流石ヤマト、噂通りの慎重さだね。安心しなロング、あいつの射程圏内に入りさえしなければ、飛び上がって来る事はないさ」
「ここに来る途中ラークピラニーについて教えて貰ったっすけど、影しか見えてないのに、思ってたより大きくて怖いっすね……」
ロングが驚くのも無理はない。
ラークピラニーは名前から連想されるように、ピラニアに似た魔物で、大きく鋭く尖った歯を持ち体は縦に平たく、全長1~2メートル、体高1~1.5メートル程に成長する、何人もの犠牲者を出したこの湖きっての暗殺者だ。
「事前知識が無い人は水辺に近付いたが最後、不意を突かれ襲われる。でも俺達には"知識"と"ビビットさん"が居るから大丈夫だよ」
「おや? 随分あたしの事を買ってくれてるみたいだね」
「冒険者としてベテランな時点で優秀なのは明らかです。それにビビットさんの役職を考えれば、レンタルなのに今迄生き残ってきているのが証明で、連携が上手く行かない場合でも何とか出来る実力があるって事は、実際に戦闘を目にしなくてもわかりますよ」
「なるほどっす」 「ホホーホ(ナカマ)」
「リーフルちゃ~ん! あんたもあたしを褒めてくれるのかい? 街に帰ったら高級肉を買ってあげようね~!」
「はは……」 「おぉ……っす」
リーフルが可愛がられるのは嬉しいが、ビビットさんの見た目と様子とのギャップにはまだ慣れないな……。
彼女の名は"ビビット"。
女性ながら、装備している大盾に相応しい筋肉質なたくましい体つきで、姉御と呼ばれるのが似合いそうな、ベテランソロ冒険者。
俺やロングのソロ活動と違い、自分をレンタルするという立ち回りを見せる人物。
盾役は、大盾を維持し続ける筋力や攻撃を耐え凌ぐ体幹等、身体に恵まれないと役割として満足に動けない為、就ける人間が限られる。
そんな少数派の中の一人で、特定のパーティーに席を置くことなくソロ活動をしているのがビビットさんだ。
彼女のようなベテランに多く──タンクは特に──見られる働き方で、新人の面倒を見る為の者、欠員の出たパーティーに助太刀する者、あるいは人間関係に煩わしさを感じる性分の者が選択するやり方がレンタルと言われる。
タンクと言えば"ロット"を連想するが、『少数派のタンクを独占するな』とやっかみも多い中で、パーティーを組んでいる彼は稀な存在だ。
常にパーティーで行動する分、メンバーとの連携の練度が他のタンクと段違いなので、未知の緑翼が一目置かれる理由の一つに彼の存在が大きいだろう。
「ビビットさん、おはようございます。お騒がせしてすみませんでした」 「ホホーホ(ナカマ)」
「気にすんなよヤマト!──お、リーフルは今日も愛らしいなぁ……それにさ、あいつらにはあたしもみんなも辟易してたんだ。いやぁ~スカッとしたよ!」
ギルド内でしか会った事は無いが、毎朝顔を合わすのでそこそこ親交がある。
特にリーフルの存在が大きく、ビビットさんはリーフルにご執心のようだ。
「はじめましてっす! 自分ロングって言います、ヤマトさんに面倒見てもらってるっす!」
「大袈裟だよ。少しアドバイスしただけだよね」
「そんなことないっす! 今回も命拾いしましたし、感謝感激っす!」
「あたしはビビット。普段は助っ人として色んな奴の手伝いをしているよ」
「その大盾すごいっす──かっこいいっす!」
「ありがとね、こいつがあたしの役割さ」
親指を立て背負った大盾を指差すその様は、とても頼りになりそうな堂々たる態度だ。
「話はなんとなく聞いていたよ、折角だしどうだい? あたしら三人でラークピラニーのクエストに行ってみないかい?」
「俺達三人ですか? 確かにビビットさんが居れば滅多なことは無いと思いますけど、今日は他の助っ人のご予定は?」
「今んとこ声はかかってないね。それにロング、経験を積みたいんだろ? ベテランタンクのあたしに、慎重派のヤマト、二人があんたをサポートするんだ、これ以上のびのびと出来るパーティーは他に無いと思うよ?」
確かにビビットさんの言う通り、色々と経験を積んで、ロングには生存率を高めてほしい。
何より俺も学ぶことが多そうだ。
「間違いないっす、ヤマトさんが居れば安全っす! ビビットさんも超頼りになりそうっす!」
「だろう? だから三人で行こうよ──おっと、リーフルちゃんもね」
ビビットがリーフルにウインクをする。
「そうですね。俺もまだ一回しかラークピラニーと戦ったこと無いですし、三人で行きましょうか!」
「行くっす!」 「ホ(イク)」
こうしてラークピラニー討伐の仕事を受けた俺達三人と一匹は、臨時のパーティーを組み、街の南東方面にある小さな湖へと向かった。
◇
「自分、ヤマトさんに案内してもらった時以来二回目っす!」
「なんだ、一度来てるのかい」
湖としては小さいながらとても麗しい景色で、対岸まで100メートルあるかないか程度でそれほど大きくは無く、澄んだ水と気化熱でひんやりとした空気が辺りを包む、サウド周辺に広がる草原において随一の絶景ポイントだ。
木こり達が水分補給に立ち寄ったり、水位を確認し川の氾濫の兆候を調べたりと、意外と人が訪れる事の多い場所なので、魔物の存在は脅威となる。
この湖は森を越えた先にある山岳地帯から続く川の終着点となっており、ラークピラニーは上流から下ってくる。
なんでも川を遡上し産卵、数を増やし再びこの湖に戻ってくるそうだ。
普通の魚と違い、ラークピラニーは魔物である為、出来るだけ数を増やさないよう、治安維持の為定期的に討伐依頼が出されている。
「早速だけど。大きめの影が見える、多分あれはラークピラニーだ。既にこちらに気付いて俺達を狙っているようだね」
「流石ヤマト、噂通りの慎重さだね。安心しなロング、あいつの射程圏内に入りさえしなければ、飛び上がって来る事はないさ」
「ここに来る途中ラークピラニーについて教えて貰ったっすけど、影しか見えてないのに、思ってたより大きくて怖いっすね……」
ロングが驚くのも無理はない。
ラークピラニーは名前から連想されるように、ピラニアに似た魔物で、大きく鋭く尖った歯を持ち体は縦に平たく、全長1~2メートル、体高1~1.5メートル程に成長する、何人もの犠牲者を出したこの湖きっての暗殺者だ。
「事前知識が無い人は水辺に近付いたが最後、不意を突かれ襲われる。でも俺達には"知識"と"ビビットさん"が居るから大丈夫だよ」
「おや? 随分あたしの事を買ってくれてるみたいだね」
「冒険者としてベテランな時点で優秀なのは明らかです。それにビビットさんの役職を考えれば、レンタルなのに今迄生き残ってきているのが証明で、連携が上手く行かない場合でも何とか出来る実力があるって事は、実際に戦闘を目にしなくてもわかりますよ」
「なるほどっす」 「ホホーホ(ナカマ)」
「リーフルちゃ~ん! あんたもあたしを褒めてくれるのかい? 街に帰ったら高級肉を買ってあげようね~!」
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