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1-2 冒険者
第9話 命のやり取り
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「グオォーー!」
先程のよりも一回り大きなブラックベアがその巨体を現し、雄たけびを上げる。
「もう一匹だと!? 挟み撃ちの状態だし、まずいぜ……」
「ヤマトさん! すみませんが当てにさせてください。この状況……守りながらだと少し厳しい」
「えぇ構いません。元より覚悟の上です!」
ローウルフたちは大岩の後ろのブラックベアには向かわず、ショートへと襲い掛かる。
迫りくるローウルフとは直角に跳びのきながらショートが弓を引き絞る。
難しい姿勢ながら器用に放たれた矢は、見事眉間に刺さり1匹を仕留めた。
「ファイアーボール!」
「ゴオォ……」
ネアの放ったファイアーボールがもう一匹のローウルフを炎で包み込む。
「やべえ!!」
ロットがショートへ駆け寄る。
「ボガッッ」
大岩の後ろに居たブラックベアがその大きな爪をショート目掛け振り下ろすと、大岩が軽々と砕け散る。
飛び散る岩の欠片、迫りくる爪、ショートを守るべくロットが大盾を構え割って入る。
「ガチンッ──っく」
爪を受けたロットが少し後退する。
「助かった」
「お前は後ろへ回れ! 俺が引き付ける!」
すぐに体制を立て直し行動に移っている、さすがと言ったところだ。
「マモル、コドモ」
(親子だったのか──!)
一番近くに居た俺目掛け、子供の1.5倍はありそうな恐ろしい爪が振り下ろされる。
(まずい!)
咄嗟にミミズクを抱き上げ、迫りくる爪を飛び込み前転の要領で回避する。
「シュッ──うっ」
避けきれず爪が頬をかすめ、腰に下げている巾着袋がちぎれ落ちる。
同時にマルクスが俺と親ブラックベアの間に走り込む。
「ヤマトさん! 先に鳥を離れた場所へ!」
「頼みます!」
少し走り、木の陰にミミズクを隠し踵を返す。
「くっ──なんて怪力だ」
何度も振り下ろされる爪をロングソードで受け流すマルクス。
若干押され気味のマルクスを援護すべくネアが親ブラックベアに魔法を放つ。
「パワーエンチャント……ファイアーボール!」
先程より一回り大きい火の球が親ブラックベアに飛ぶ。
以前教えてもらったが、ネアのユニーク魔法"パワーエンチャント"は続けて発動する魔法の威力を高めるというものらしい。
「ボムッ──グゥゥ……」
一瞬怯んだが、ダメージがあまり無い様子。
「ふっ!──浅かったか!」
この機を逃すまいと、親ブラックベアの右脇を下から切り上げる。
しかし厚い毛皮に覆われていて、ケガは負わせたが腕を切り落とすには足りなかったようだ。
「オカアサン」
「ドンッ──ちぃ!!」
ロットとショートが相手をしていた子ブラックベアが、体当たりでロットを押し飛ばしネアに接近する。
「くそっ……逃げろ! ネア!」
「行かせない」
ショートが弓を放ち太ももに刺さるが、子ブラックベアは尚もネアに迫る。
ミミズクを避難させていた俺はみんなと少し距離があった。
ネアの元に襲いかかる子ブラックベアを目にし、必死に頭を回転させる。
(俺の弓で止められるか……? 本職じゃない俺の腕では威力が足りない。外す可能性も──いや、あれだ!)
今朝ネアにもらった爆発するアイテムをアイテムBOXから取り出し、子ブラックベアへ投げる。
「ドーン!──きゃあ!」
一瞬の閃光と共に炸裂するアイテム。
「ちょっと! 投げるなら言ってよ!」
突然の爆発に驚くネア。
「グガ……」
子ブラックベアは上半身にダメージを追い、その足を止め仰向けに倒れ込む。
「仕留める」
ショートがそう呟くと、ロットは大盾を子ブラックベアの首に鋭利に突き立てる。
間髪入れずショートの矢が顔面を射抜く。
「グガォ……」
沈黙する子ブラックベア、どうやら倒せたようだ。
「グオォーー!!グルル!!──」
親ブラックベアが見るからに怒り狂っている。子を殺され、なりふり構わずといった様子だ。
「──本気ってわけだね!!」
マルクスは凶悪な爪の攻撃を紙一重で受け流す。
幾度もの攻防が続く中、均衡が崩れる。
「パキンッ」
刹那の判断で後ろに跳びのく。マルクスのロングソードが折れてしまった。
「しまった……やっぱりもう一段上等な剣、買っておけばよかったか」
「どうするよリーダー。せっかく他は倒せたのに、俺達で翻弄してお前が仕留めるっつういつものパターン、できねえぞ」
「パワーエンチャントしたファイアーボールでもあまりダメージ無かったわよ」
「逃げるか?」
「いや、このままこいつを放置したら、人間に対して強い敵愾心を抱いたまま、この森に生息することになる。そうなった場合、あの村の獣人達にも被害が及ぶ」
「どうやって倒す? こいつ、今まで相手してきた奴らより手強いぞ」
「俺に考えがあります。聞いてもらえますか」
考えをなるべく急いで伝える。
「……確かに俺達だけじゃ思いつかないやり方ですね。それで行きます、いいなみんな!」
「「「了解!」」」
「援護頼んだぜ!」
そう叫んだロットが大盾を前方に構え親ブラックベアに突撃する。
「俺が相手だでかいの! どこにも行くんじゃねえぞ!!」
ロットが爪の猛襲を大盾で防ぎ続ける。
「ぐっ……まだまだ──!」
ロットは見事に防ぎ続けるが、しびれを切らした親ブラックベアが、確実にロットを仕留めようと大盾を両手で押さえ、鋭い牙で噛みつこうとする。
「させない」 「やらせないわ」
ショートの矢とネアのファイアーボールが同時に親ブラックベアの顔面を襲う。
「ガッ……」
親ブラックベアは同時攻撃を受け攻撃の手を緩める。
「今です!」
俺は号令を発し、ロットが親ブラックベアから距離を取る。
アイテムBOXの異空間を親ブラックベアの頭上に出現させ、中身を放出する。
ロットが時間を稼いでくれている間に収納した、先程倒した子ブラックベアと、岩のがれきに押しつぶされ、親ブラックベアが地面に突っ伏す。
右脇にダメージを負っているのですぐには起き上がることが出来ない。
「おおぉ!!」
マルクスが落ちていた刃先の部分を拾い上げ、首に突き刺す。
「硬いっ……!」
刺さりが甘い刃は致命傷には至らない。
「俺が押し込む!」
ロットが大盾で刃を上から抑えつける。
刃は完全に喉を貫通し、親ブラックベアにとどめを刺した。
「マモル……コドモ……」
死の間際流れ込んできた感情は、只々子を思う親心だった。
先程のよりも一回り大きなブラックベアがその巨体を現し、雄たけびを上げる。
「もう一匹だと!? 挟み撃ちの状態だし、まずいぜ……」
「ヤマトさん! すみませんが当てにさせてください。この状況……守りながらだと少し厳しい」
「えぇ構いません。元より覚悟の上です!」
ローウルフたちは大岩の後ろのブラックベアには向かわず、ショートへと襲い掛かる。
迫りくるローウルフとは直角に跳びのきながらショートが弓を引き絞る。
難しい姿勢ながら器用に放たれた矢は、見事眉間に刺さり1匹を仕留めた。
「ファイアーボール!」
「ゴオォ……」
ネアの放ったファイアーボールがもう一匹のローウルフを炎で包み込む。
「やべえ!!」
ロットがショートへ駆け寄る。
「ボガッッ」
大岩の後ろに居たブラックベアがその大きな爪をショート目掛け振り下ろすと、大岩が軽々と砕け散る。
飛び散る岩の欠片、迫りくる爪、ショートを守るべくロットが大盾を構え割って入る。
「ガチンッ──っく」
爪を受けたロットが少し後退する。
「助かった」
「お前は後ろへ回れ! 俺が引き付ける!」
すぐに体制を立て直し行動に移っている、さすがと言ったところだ。
「マモル、コドモ」
(親子だったのか──!)
一番近くに居た俺目掛け、子供の1.5倍はありそうな恐ろしい爪が振り下ろされる。
(まずい!)
咄嗟にミミズクを抱き上げ、迫りくる爪を飛び込み前転の要領で回避する。
「シュッ──うっ」
避けきれず爪が頬をかすめ、腰に下げている巾着袋がちぎれ落ちる。
同時にマルクスが俺と親ブラックベアの間に走り込む。
「ヤマトさん! 先に鳥を離れた場所へ!」
「頼みます!」
少し走り、木の陰にミミズクを隠し踵を返す。
「くっ──なんて怪力だ」
何度も振り下ろされる爪をロングソードで受け流すマルクス。
若干押され気味のマルクスを援護すべくネアが親ブラックベアに魔法を放つ。
「パワーエンチャント……ファイアーボール!」
先程より一回り大きい火の球が親ブラックベアに飛ぶ。
以前教えてもらったが、ネアのユニーク魔法"パワーエンチャント"は続けて発動する魔法の威力を高めるというものらしい。
「ボムッ──グゥゥ……」
一瞬怯んだが、ダメージがあまり無い様子。
「ふっ!──浅かったか!」
この機を逃すまいと、親ブラックベアの右脇を下から切り上げる。
しかし厚い毛皮に覆われていて、ケガは負わせたが腕を切り落とすには足りなかったようだ。
「オカアサン」
「ドンッ──ちぃ!!」
ロットとショートが相手をしていた子ブラックベアが、体当たりでロットを押し飛ばしネアに接近する。
「くそっ……逃げろ! ネア!」
「行かせない」
ショートが弓を放ち太ももに刺さるが、子ブラックベアは尚もネアに迫る。
ミミズクを避難させていた俺はみんなと少し距離があった。
ネアの元に襲いかかる子ブラックベアを目にし、必死に頭を回転させる。
(俺の弓で止められるか……? 本職じゃない俺の腕では威力が足りない。外す可能性も──いや、あれだ!)
今朝ネアにもらった爆発するアイテムをアイテムBOXから取り出し、子ブラックベアへ投げる。
「ドーン!──きゃあ!」
一瞬の閃光と共に炸裂するアイテム。
「ちょっと! 投げるなら言ってよ!」
突然の爆発に驚くネア。
「グガ……」
子ブラックベアは上半身にダメージを追い、その足を止め仰向けに倒れ込む。
「仕留める」
ショートがそう呟くと、ロットは大盾を子ブラックベアの首に鋭利に突き立てる。
間髪入れずショートの矢が顔面を射抜く。
「グガォ……」
沈黙する子ブラックベア、どうやら倒せたようだ。
「グオォーー!!グルル!!──」
親ブラックベアが見るからに怒り狂っている。子を殺され、なりふり構わずといった様子だ。
「──本気ってわけだね!!」
マルクスは凶悪な爪の攻撃を紙一重で受け流す。
幾度もの攻防が続く中、均衡が崩れる。
「パキンッ」
刹那の判断で後ろに跳びのく。マルクスのロングソードが折れてしまった。
「しまった……やっぱりもう一段上等な剣、買っておけばよかったか」
「どうするよリーダー。せっかく他は倒せたのに、俺達で翻弄してお前が仕留めるっつういつものパターン、できねえぞ」
「パワーエンチャントしたファイアーボールでもあまりダメージ無かったわよ」
「逃げるか?」
「いや、このままこいつを放置したら、人間に対して強い敵愾心を抱いたまま、この森に生息することになる。そうなった場合、あの村の獣人達にも被害が及ぶ」
「どうやって倒す? こいつ、今まで相手してきた奴らより手強いぞ」
「俺に考えがあります。聞いてもらえますか」
考えをなるべく急いで伝える。
「……確かに俺達だけじゃ思いつかないやり方ですね。それで行きます、いいなみんな!」
「「「了解!」」」
「援護頼んだぜ!」
そう叫んだロットが大盾を前方に構え親ブラックベアに突撃する。
「俺が相手だでかいの! どこにも行くんじゃねえぞ!!」
ロットが爪の猛襲を大盾で防ぎ続ける。
「ぐっ……まだまだ──!」
ロットは見事に防ぎ続けるが、しびれを切らした親ブラックベアが、確実にロットを仕留めようと大盾を両手で押さえ、鋭い牙で噛みつこうとする。
「させない」 「やらせないわ」
ショートの矢とネアのファイアーボールが同時に親ブラックベアの顔面を襲う。
「ガッ……」
親ブラックベアは同時攻撃を受け攻撃の手を緩める。
「今です!」
俺は号令を発し、ロットが親ブラックベアから距離を取る。
アイテムBOXの異空間を親ブラックベアの頭上に出現させ、中身を放出する。
ロットが時間を稼いでくれている間に収納した、先程倒した子ブラックベアと、岩のがれきに押しつぶされ、親ブラックベアが地面に突っ伏す。
右脇にダメージを負っているのですぐには起き上がることが出来ない。
「おおぉ!!」
マルクスが落ちていた刃先の部分を拾い上げ、首に突き刺す。
「硬いっ……!」
刺さりが甘い刃は致命傷には至らない。
「俺が押し込む!」
ロットが大盾で刃を上から抑えつける。
刃は完全に喉を貫通し、親ブラックベアにとどめを刺した。
「マモル……コドモ……」
死の間際流れ込んできた感情は、只々子を思う親心だった。
応援ありがとうございます!
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