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1章.大学授業編
11.初回事業前半
しおりを挟む「――今日の、『魔法実践一』の授業では、魔力測定を行います」
リディアは、グレーのスーツに白衣を羽織った姿で中央の魔法陣に立った。二メートル四方の中央空間を囲むように、周囲はすり鉢状にせり上がり、席が扇形に広がっている。
この中央の空間では魔法の実演、召喚などを見せるようになっていて、床の魔法陣は防魔効果があり、魔法が暴走してもこの陣内で効果が抑えられるようになっている。
ちなみにここを埋め尽くしていたダンボール類は、全部教室の端に積み重ねてシーツで覆いをした。前任者も授業では、端っこに物を寄せていたらしい。
――最低だ、この物置感。
「一人ずつ、簡易魔力測定器で魔力値を測定した後、この魔石盤に魔力を注いでもらいます」
「はあ?」
「先生、魔力測定はニ年次に行いました」
チャスが悪態をつき、キーファが指摘する。ウィルは、頬杖をついて不貞腐れて壁を見ている。
魔力測定で、ある程度魔法師の資質を決められてしまう世界。
彼等は魔力測定で嫌な思いをして、この世界で弾かれたと感じているのかもしれない。
でも話を続ける。ここで不貞腐れられても、やってもらわないと話が進まない。
「今回、改めて魔力を測定する理由の一つは、魔力というのは思春期、青年期で変動があるからです。皆さんの魔力値は、変化している可能性があります。またもう一つは、この魔石盤で魔力を測ることにより、皆さんの魔力の傾向を知ることと、魔力測定器との差異を見ることができるからです」
リディアは、皆を周囲に集めて、扇に柄がついているような形の簡易魔力測定器を手にする。大きさも、扇子くらいだ。
ちなみに、この演習室にあった測定器は壊れていたので、フィービーの領域から借りた。
柄にあたる部分を握りしめると、扇面のような形の画面上に六属性を示す六つの棒グラフのようなものが上昇する。そして画面に数字が表示される。
[E : 310mp/s, V : 290mp/s, A : 150mp/s, F : 100mp/s, T : 180mp/s, O : 200mp/s]
リディアの魔力値だ。
(こんなものかな)
装置の側方から印字された紙片を、リディアは手にして提示する。
それぞれ、E:水属性Eau、V:風属性Vant、A:木属性Arbre、F:火属性Feu、T:土属性Terre、O:金属性Orの略語で、一秒間に発する魔力:magical pawerを表している。
だいたい百の数値を出すのが、中級魔法師というところか。
上級魔法師だと三百は超える魔力を持つ。
「これを見ると、私は水属性と風属性の魔力が高いということがわかります」
(魔法師団の方々は三百超えが普通で、ディアン先輩は高度測定器でも測定不能だけどね……)
ちょっと自虐的な思いが胸をよぎる。
次に、と魔石盤を示す。
御影石に六角形が彫られたもの。
その外角には各属性を示す記号を彫り、その先端角に六つの魔石を置けば、魔力測定器のできあがり。魔石標本から拝借した、天然石のお手製魔石盤だ。
「この各魔石は、それぞれの属性を示しています。魔石盤に魔力を注ぐことにより、魔石が反応します。強く反応する魔石によって、その属性であるということがわかります」
リディアは、六角形の真ん中の空間に掌を置き、魔力を注ぐ。すぐに輝いて反応をしだしたのは、金属性の瑠璃、そして風属性を示す翠玉が輝き出す。
「最初の測定器での測定値から見ると、私は水・風属性の魔法師と分類されます。みなさんも、過去に自分の属性が判明したと思います」
最近は、一、二年生次で魔力測定をして、高い値がでた属性で専攻を決めてしまう傾向がある。
「けれど実際に魔石盤に魔力を注いでみると、私の場合、即反応したのは、金属性の瑠璃石、そして風属性の翠玉です」
リディアが魔力を注ぎ続けると、いきなり水属性の藍玉が眩しく白に近い光を放つ。
それは、他の魔石には及ばないほどの眩しい光だ。
「そして最後に一番強く反応したのは、水属性の藍玉です」
皆の顔を見渡して、わかりやすい言葉を探し反応を見ながら説明をする。
「自分の属性の魔法が発現しやすい、と思われがちですが、魔法の発現の速さは測定値とは異なります。私の場合、魔力を空間に放出すると、金属性や風属性が反応しやすく、魔法も即発現します。一方で水属性は魔力を溜めやすく、魔法の発現に時間がかかりますが、発現した際は効果が高い。つまり私の場合は、例えば戦闘時など即発現を期待する場合は、風系魔法を、攻撃力の高い魔法を使いたい時は、時間をかけて魔力をためて水系魔法を使うのが効果的だということです」
へえー、とか驚きの声があがる。
これは授業でやらず現場にでて、実践で体感していくこと事が多い。自分は水属性魔法師のはずなのに、風系魔法のほうがすぐに発現する、など。
けれど、学生のうちにこうやって視覚的に見せると、自分の得意・不得意がわかっていいだろうと思ったのだ。
「ちなみに、この簡易魔力測定器は、だいたい数十秒で測定できます。その数十秒で、一分に放出されると思われる魔力値を推定し、それを一秒単位でどのぐらい出ているのかと算定されています」
魔力は常に同じ値ではない。一分のうち最初のほうが高く、後半下がっていく場合もあれば、だんだん高まる能力者もいる。平均値でしか測れない測器は、あまり信用できない。
更に言えば、一時間の魔力を測る装置もある。例えば、魔法師団に、F : 500mp/sだがそれは瞬発的な値で、一時間値は、F:100mp/hという者もいる。
彼の場合は、発現が早く大きな魔法を使わせる要員だった。でも、教育機関では、そこまで個人の能力値を測らない。
ようは測定器の値っていうのは、目安にしかならないよ、って言いたいのだけど。
生徒たちの納得したような、していないような顔にリディアは苦笑する。
反応は予想通りだ、話を続けることにした。
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