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アナザーストーリー
出会いは強引に
しおりを挟むあれはおよそ十年前。
今日みたいに天気の悪い日だった。
『ねぇねぇ、大山。
ここから歩いて数分のところに“スナック・パンジー”っていうのがあるから、行ってきなよ』
八雲様は御神体である大きな白い石に寝そべりながら、奥ゆかしい端正な、それでいてすぐる君とは別人の顔をまるで悪戯を思いついた子どものように歪められてそう仰られた。
しかし、いくら奉っている神の誘いでもそのような場所に行くのは…と頭を抱えてしまって。
私が悩み唸っていると、八雲様はじれったくなったのかはたまたその方がはやいと判断したのか、素直に目論見をお話になった。
『あのね、そのスナックに理子さんの生まれ変わりである子のお母さんが働いてるの。
仲良くなって僕との縁を結んでよ。宮司でしょ』
理子さんというのは八雲様に御名前を与えてくださった方と八雲様から直接うかがっている。
それでも。
『宮司だからって何でも言う通りになるとは思わないでくださよ、八雲様』
神に仕える身、という建前もあるが正直当時は恥ずかしさが勝ってしまっていた。
私が頑なに首を振ると八雲様は、
『お願い!
大山が行ってその人と仲良くなってくれたら、この神社に参拝者がいっぱい来るように縁を結ぶから!』
なんてお手を合わせになって。
こうして根負けした私は“スナック・パンジー”へと向かうこととなった。
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