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八雲君のなかには
しおりを挟む「おかえり」
家に帰ると、キッチンで朝食の準備をしてた八雲君がいつもの笑顔で出迎えてくれて。
そう。嘘くさくて、慇懃無礼で。
でもお兄ちゃんの面影があって。
なのに神様の分身だって。
やっぱり信じられない。
私がその足を止めてると、朝食をリビングに並べた八雲君が
「どうしたの?こっちおいでよ」
って手招きしてくれて。
用意された朝食は味噌汁とご飯と納豆と卵焼きときゅうりの漬物の純和風。
私は相変わらず気まずい気分のまま自分の席について
「いただきます」
って呟いて。
その瞬間、八雲君が椅子を引く音が聞こえてきて。
私が卵焼きに手をつけたところで、茶一が大股で私と同じく食事を摂り始めた八雲君の足元にやってきて
『八雲八雲!
さっき大山に会ってね、みくるちゃんに八雲の手伝いをするように言ってたよ!』
って散歩の途中に起こったことを八雲君にかいつまんで話した。
「ふぅん、そう」
八雲君はそれだけ言うと中断してた食事を再開した。
私は茶碗を置いて数瞬考えると
「気にならないの?」
って八雲君に尋ねた。
八雲君は箸を止めずに
「何が?」
とだけ。
私も食事を再開しながら
「なんで大山さんがそんなこと言ったか」
と短く答えた。
八雲君は箸をテーブルに置いて頬杖をつくと
「気にならないよ。
君が僕の修行の手伝いをしてくれるならそんな幸せなことはないよ」
って笑った。
その笑顔はいつもの嘘くさくて慇懃無礼な笑顔と違って何処か純粋だった。
まるで私のなかに違う人をみてるみたい。
八雲君のなかには一体誰が棲んでるんだろう。
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