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誰かが誰かの代わりになるなんて
しおりを挟む自宅に帰るとちょうど起きたばかりらしいお母さんがぼんやりとスマホを弄ってた。
お母さんは夜の人。
スナックのママで源氏名は春美。
私と肺炎で死んじゃったお兄ちゃんはお客さんとの間にできた子ども。
でもだからってお兄ちゃんがお母さんに見捨てられちゃったわけじゃない。
ただ、当時お金と頼れる人がいなかっただけ。
いまはパトロンって言って色んな面で援助してくれる人がいるんだって。
八雲君はそんなパトロンのお願いで預かることになったんだとか。
「ただいま帰りました」
八雲君のそんな軽い挨拶にお母さんはまるでいま気づいたとばかりに顔をあげてにっこりと
「おかえり」
ってソファーから立ち上がってくれた。
「お母さん、今日もいつも通り?」
私がスクールバッグをソファーの端に置きながら尋ねると、お母さんは冷蔵庫からお酢ドリンクを取り出しながら
「ええ、帰りは朝の六時くらいかしら。
夕飯は冷蔵庫にあるからちゃんと食べるのよ」
とまるで小さい子どもに言い聞かせるような口調で言った。
「はいはい」
私は面倒臭さ全開に適当な相槌を打ちながら手提げ袋から出した体操着を抱えて洗濯機の方へ。
お母さんの中にはお兄ちゃんがまだ生きてる。
私が八雲君の中にお兄ちゃんの面影を探してる以上に。
暗鬱とした気分で体操着を洗濯機に放り込んだ瞬間、私はふわりと何かに包まれた。
「あー、落ち着くー」
耳元で囁かれた八雲君の声。
そう、私を包んだのは八雲君だった。
瞬間私の心臓は跳ね上がり、思い出される記憶。
それはーー。
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