チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

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第二章 ドッデ村編

第九話 初めてのモンスター!

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 しまった、これは完全にやらかした。


 つい数秒前の自分の行動を振り返り、俺の背筋を冷や汗がツツと伝っていく。

 こういう場面は勢いが大切かなーと思って元気一杯に挨拶したら、有り得ないくらい盛大に失敗した。

 出来ることならすぐにでも、この場から逃げ出したい。

 そんな事を考えていると、


 「私がこの村の村長だ、よろしく。……早速、本題だ。単刀直入に聞かせてもらうぞ。本当に、お主にモンスターが倒せるのか?」


 村長と思わしき男がこう尋ねてきた。


 「多分、倒せると思いますよ」


 さっきのテンションは間違いでしたと言わんばかりに、俺は真面目な顔でそう言った。

 それを聞いた村長は俯き、しばらく考え込む。

 そして顔を上げ、徐に口を開いた。


 「……分かった。お主に任せよう」


 ………えっ?良いの?


 いけるとは思ってなかった俺は、あっさりオッケーが出た事に内心メチャメチャ驚いたが、なんとか顔には出さなかった。

 第一段階はクリア。では、次だ。


 「じゃあ、一ついいですか?」


 「何だ」


 「そのモンスターってどこにいるんですか?」


 「……隊長殿。彼を案内してあげてくれ」


 「分かった、引き受けよう。……よろしく頼む。俺は討伐隊の隊長をしている者だ。俺の事は気軽に『隊長』とでも呼んでくれ」


 席から立ち上がって俺の元まで歩み寄ってきた男は、無表情のままスっとこちらに手を差し出してきた。握手をしようという事なのだろう。


 いや、それにしても隊長さん、なんか色々と凄いっすね……。


 軽く190以上はありそうな長身に、『人間ってこんな筋肉の付き方するの!?』と思わず叫びそうになる隆々とした筋肉。そして服装は基本的には動きやすそうな物なのだが、要所要所を銀色に光を放つ鎧を装着している。


 簡潔に言えば、『戦うために生まれてきた戦闘民族』感が尋常じゃない。


 こんな人物が味方にいるのは非常に心強いというものだ。

 俺はニコリと笑い、隊長の差し出した手をガッチリと握り返した。



 ◆ ◆ ◆



 俺は討伐隊の隊長の後を追い、木や草が生い茂り鬱蒼とした森の中を一歩一歩進んでいく。


 俺にとって今回が初戦闘だ。

 つまり、言ってしまえば今は序盤の序盤くらい。 

 今回のモンスター騒動は、スライムとか糞雑魚モンスターが出てきて戦闘システムを教えてくれるチュートリアル的なイベントなんだろうと考えていた。

 それが、俺が『モンスターを倒せる』と言った自信の理由だった。

 実際、いけると思っていた。


 ―――そのモンスターを見るまでは。


 俺の前を歩いていた隊長が急に止まる。


 「止まれ、……あそこで寝ている奴がそうだ」


 隊長は前方を指差す。そこは開けた広い場所になっていて、中央に何か赤い巨大な物体があるのが目に入った。

 目を凝らして見てみる。

 そして、その赤い物体の正体がなにか分かった瞬間、俺は思わず腰を抜かしそうになった。


 「………何あれ」


 それが一体何かは、俺は既に分かっている。

 だが、聞かずにはいられなかった。

 出来るならば俺の予想を否定してほしいという希望を込めて。


 しかし、そんな淡い期待はものの見事に打ち砕かれる事になった。


 「あれが例のモンスター、『ドラゴン』という名前で知られている。奴は魔法への耐性、防御力共に非常に高く、どんな魔法、遠距離攻撃を使っても全く効果が無い。かといって接近戦で挑むと、あの巨体からは想像も出来ないほどのスピードで攻撃が繰り出される。……もはや我々ではどうしようもない相手なんだ」


 隊長はドラゴンから目を逸らさずに答えた。


 それを聞いた俺は、遠くですやすやと眠っているドラゴンを放心状態で見つめる。


 「……ドラゴンとか序盤で出て良いモンスターじゃねぇだろ…。畜生、何でこんなところでファンタジー要素が出てくるんだよ。だったら、俺に魔法を使わせろよな……」


 思わず本音が漏れた。

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