上 下
16 / 23
神殺しなんて俺は知らない

容赦、すると思った?

しおりを挟む
「い、いやいや、何言ってるんですか…。なんでそうなるんです…?
私はその、『神殺しの団』に捕まって…危ないところだったんじゃないですか…。」

「俺は一度もそこの『団員』を目視していないし、スキルでの感知もしていないんだよ。
で、お前の唇には毒が塗ってある。
俺に効くかはわからないけど。」

頭を派手にボリボリと掻きながら、
ハァ、とため息をつく。
割れた窓から差し込む月の光に照らされ、ミレットは呆然としている。


「言ってやろうか?最初から信用なんてしてなかったんだよ、お前のこと。
初めて会った時、お前言ったよな?
『異世界から来られたのなら当然ですよね』
って。俺あの時、『異世界から来た』なんて一言も言ってないのに、どうしてわかったんだ?」


「そ、それは、騎士学校で習って…。」


「スキルで調べたよ。そんな学校、この世界には無い。ま、スキルで知ったけどさ、この世界、『軍隊』とか『騎士団』とか、殆ど無いみたいじゃん。
それなのに騎士学校があるのは、どうもな。」


「え、っと…。」


「馬車で魔物に襲われた時も、サイクロプスに囲まれたら、お前何もしなかったよな?アミアは必死で魔法を連発してたのにさ。」


「あの時は!恐ろしくて、その!」


「やたら選択スキルを急かしてくるし。
あれってさ、『俺に不利益の出る呪い・デバフ』スキルばっかだったろ?」


「違います!珍しいモノばかりだったので、感動して!それで!!」


「1人になる機会を待って、攫われたフリをした。何度も言うけど、あの時、お前以外の生物や魔導は、全く検知されなかった。」


「どうしてです?!何故信じてくれないんですか!!」


「そして何より!!

 アミアを!!

 
 お前が魔法を使って!!!

 この館で放たれた矢を転送させ!!

 殺そうとした!!

 あの時だけは!!

 『転送魔法』の魔導が!!

 俺のすぐ側で!!感知できたんだ!!」


「そんな…そんな…。」


ひとしきり、俺からの答え合わせは済んだ。ミレットはその言葉を最後に俯き、顔を両手で多い隠し、少々の嗚咽を漏らしている。
とっとと片付けて、こんなホコリっぽいところ早く退散したいのに。

そして、静寂がやってきた。


「…何か言いたいことはあるか?」

それを破るようにして、俺は口を開く。

「私たち、少しの間でも…一緒に旅をしてきた…仲間じゃないですか…。」

「違う。お前は俺たちを脅かす『敵』だ。」

俺は即答する。


「そう、ですか…。


ならば死ねェェェェェェェェェェッ!」


突然叫び声を上げ、鬼のような怒りの形相を露わにし、俺目掛けて身を躍らせるミレット。その手には、短剣が握られていた。

活躍の場がありそうで無かったスキル
武具を極めし者ウェポンマスター』のおかげで、ミレットの体さばきは手に取るようにわかる。
俺はスルスルと、怒りのこもった短剣を躱していくのだった。

「お前は!!お前は!!
この世界の『害悪』たる『神』の眷属!!ならばお前も!!この世界には無要の存在なんだ!!」

神。
それは俺にとっても謎だ。
『検索魔法・神々の本棚ソウルライブラリ
を以ってしても、『神』という存在に関しては、伝説や民話、物語の類いしか知り得ることができなかった。
そして、『神殺しの団』が、何故神を殺そうとしているのかも…。


「一つだけ聞かせてよ。なんでお前らは、神を憎んでるの?」

剣戟を最小限の動きで避けつつ、俺は問い掛ける。

「先ほども言っただろう!この世界にとって、神こそ『害悪』!それが理由だ!!」

答えになっていない。
所詮は末端。哀れな狂信者、といったところか。

「そ。じゃあもういいや、疲れるしさ。
言い残すことは?」

俺は、繰り出された短剣を握る、その手首を掴み取り、グッと力を込めた。
すると、ミレットは小さく呻き声を上げ、短剣が溢れ落ちる。

カラン、と、虚しく床に転がる短剣。

「…殺すのか?」

「殺しはしない。でも、さよなら。」


俺は掌で、ミレットの頭を覆うようにつかむと、とあるスキルを繰り出した。
『バチッ!』と大きな音が鳴り、閃光が瞬く。
コイツの部下たちと同じく、記憶を消したのだ。どのくらい消えてるのかとか、いつ目覚めるのかとかは、俺には関係のないことだから知らない。
死んでいないのは確かだ。

ドサ、とホコリを巻き上げながら、その場に倒れ込むミレット。
俺は「ふっ」と息をつき、肩をグルグルと回すのだった。


「記憶、読んでみたけど…やっぱり
『神』関係については何もわからなかった…どういうことなんだろ?」

とにかく、お腹が減った。早く戻って、夜食作ってもらおうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...