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神殺しなんて俺は知らない
容赦、すると思った?
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「い、いやいや、何言ってるんですか…。なんでそうなるんです…?
私はその、『神殺しの団』に捕まって…危ないところだったんじゃないですか…。」
「俺は一度もそこの『団員』を目視していないし、スキルでの感知もしていないんだよ。
で、お前の唇には毒が塗ってある。
俺に効くかはわからないけど。」
頭を派手にボリボリと掻きながら、
ハァ、とため息をつく。
割れた窓から差し込む月の光に照らされ、ミレットは呆然としている。
「言ってやろうか?最初から信用なんてしてなかったんだよ、お前のこと。
初めて会った時、お前言ったよな?
『異世界から来られたのなら当然ですよね』
って。俺あの時、『異世界から来た』なんて一言も言ってないのに、どうしてわかったんだ?」
「そ、それは、騎士学校で習って…。」
「スキルで調べたよ。そんな学校、この世界には無い。ま、スキルで知ったけどさ、この世界、『軍隊』とか『騎士団』とか、殆ど無いみたいじゃん。
それなのに騎士学校があるのは、どうもな。」
「え、っと…。」
「馬車で魔物に襲われた時も、サイクロプスに囲まれたら、お前何もしなかったよな?アミアは必死で魔法を連発してたのにさ。」
「あの時は!恐ろしくて、その!」
「やたら選択スキルを急かしてくるし。
あれってさ、『俺に不利益の出る』スキルばっかだったろ?」
「違います!珍しいモノばかりだったので、感動して!それで!!」
「1人になる機会を待って、攫われたフリをした。何度も言うけど、あの時、お前以外の生物や魔導は、全く検知されなかった。」
「どうしてです?!何故信じてくれないんですか!!」
「そして何より!!
アミアを!!
お前が魔法を使って!!!
この館で放たれた矢を転送させ!!
殺そうとした!!
あの時だけは!!
『転送魔法』の魔導が!!
俺のすぐ側で!!感知できたんだ!!」
「そんな…そんな…。」
ひとしきり、俺からの答え合わせは済んだ。ミレットはその言葉を最後に俯き、顔を両手で多い隠し、少々の嗚咽を漏らしている。
とっとと片付けて、こんなホコリっぽいところ早く退散したいのに。
そして、静寂がやってきた。
「…何か言いたいことはあるか?」
それを破るようにして、俺は口を開く。
「私たち、少しの間でも…一緒に旅をしてきた…仲間じゃないですか…。」
「違う。お前は俺たちを脅かす『敵』だ。」
俺は即答する。
「そう、ですか…。
ならば死ねェェェェェェェェェェッ!」
突然叫び声を上げ、鬼のような怒りの形相を露わにし、俺目掛けて身を躍らせるミレット。その手には、短剣が握られていた。
活躍の場がありそうで無かったスキル
『武具を極めし者』のおかげで、ミレットの体さばきは手に取るようにわかる。
俺はスルスルと、怒りのこもった短剣を躱していくのだった。
「お前は!!お前は!!
この世界の『害悪』たる『神』の眷属!!ならばお前も!!この世界には無要の存在なんだ!!」
神。
それは俺にとっても謎だ。
『検索魔法・神々の本棚』
を以ってしても、『神』という存在に関しては、伝説や民話、物語の類いしか知り得ることができなかった。
そして、『神殺しの団』が、何故神を殺そうとしているのかも…。
「一つだけ聞かせてよ。なんでお前らは、神を憎んでるの?」
剣戟を最小限の動きで避けつつ、俺は問い掛ける。
「先ほども言っただろう!この世界にとって、神こそ『害悪』!それが理由だ!!」
答えになっていない。
所詮は末端。哀れな狂信者、といったところか。
「そ。じゃあもういいや、疲れるしさ。
言い残すことは?」
俺は、繰り出された短剣を握る、その手首を掴み取り、グッと力を込めた。
すると、ミレットは小さく呻き声を上げ、短剣が溢れ落ちる。
カラン、と、虚しく床に転がる短剣。
「…殺すのか?」
「殺しはしない。でも、さよなら。」
俺は掌で、ミレットの頭を覆うようにつかむと、とあるスキルを繰り出した。
『バチッ!』と大きな音が鳴り、閃光が瞬く。
コイツの部下たちと同じく、記憶を消したのだ。どのくらい消えてるのかとか、いつ目覚めるのかとかは、俺には関係のないことだから知らない。
死んでいないのは確かだ。
ドサ、とホコリを巻き上げながら、その場に倒れ込むミレット。
俺は「ふっ」と息をつき、肩をグルグルと回すのだった。
「記憶、読んでみたけど…やっぱり
『神』関係については何もわからなかった…どういうことなんだろ?」
とにかく、お腹が減った。早く戻って、夜食作ってもらおうか。
私はその、『神殺しの団』に捕まって…危ないところだったんじゃないですか…。」
「俺は一度もそこの『団員』を目視していないし、スキルでの感知もしていないんだよ。
で、お前の唇には毒が塗ってある。
俺に効くかはわからないけど。」
頭を派手にボリボリと掻きながら、
ハァ、とため息をつく。
割れた窓から差し込む月の光に照らされ、ミレットは呆然としている。
「言ってやろうか?最初から信用なんてしてなかったんだよ、お前のこと。
初めて会った時、お前言ったよな?
『異世界から来られたのなら当然ですよね』
って。俺あの時、『異世界から来た』なんて一言も言ってないのに、どうしてわかったんだ?」
「そ、それは、騎士学校で習って…。」
「スキルで調べたよ。そんな学校、この世界には無い。ま、スキルで知ったけどさ、この世界、『軍隊』とか『騎士団』とか、殆ど無いみたいじゃん。
それなのに騎士学校があるのは、どうもな。」
「え、っと…。」
「馬車で魔物に襲われた時も、サイクロプスに囲まれたら、お前何もしなかったよな?アミアは必死で魔法を連発してたのにさ。」
「あの時は!恐ろしくて、その!」
「やたら選択スキルを急かしてくるし。
あれってさ、『俺に不利益の出る』スキルばっかだったろ?」
「違います!珍しいモノばかりだったので、感動して!それで!!」
「1人になる機会を待って、攫われたフリをした。何度も言うけど、あの時、お前以外の生物や魔導は、全く検知されなかった。」
「どうしてです?!何故信じてくれないんですか!!」
「そして何より!!
アミアを!!
お前が魔法を使って!!!
この館で放たれた矢を転送させ!!
殺そうとした!!
あの時だけは!!
『転送魔法』の魔導が!!
俺のすぐ側で!!感知できたんだ!!」
「そんな…そんな…。」
ひとしきり、俺からの答え合わせは済んだ。ミレットはその言葉を最後に俯き、顔を両手で多い隠し、少々の嗚咽を漏らしている。
とっとと片付けて、こんなホコリっぽいところ早く退散したいのに。
そして、静寂がやってきた。
「…何か言いたいことはあるか?」
それを破るようにして、俺は口を開く。
「私たち、少しの間でも…一緒に旅をしてきた…仲間じゃないですか…。」
「違う。お前は俺たちを脅かす『敵』だ。」
俺は即答する。
「そう、ですか…。
ならば死ねェェェェェェェェェェッ!」
突然叫び声を上げ、鬼のような怒りの形相を露わにし、俺目掛けて身を躍らせるミレット。その手には、短剣が握られていた。
活躍の場がありそうで無かったスキル
『武具を極めし者』のおかげで、ミレットの体さばきは手に取るようにわかる。
俺はスルスルと、怒りのこもった短剣を躱していくのだった。
「お前は!!お前は!!
この世界の『害悪』たる『神』の眷属!!ならばお前も!!この世界には無要の存在なんだ!!」
神。
それは俺にとっても謎だ。
『検索魔法・神々の本棚』
を以ってしても、『神』という存在に関しては、伝説や民話、物語の類いしか知り得ることができなかった。
そして、『神殺しの団』が、何故神を殺そうとしているのかも…。
「一つだけ聞かせてよ。なんでお前らは、神を憎んでるの?」
剣戟を最小限の動きで避けつつ、俺は問い掛ける。
「先ほども言っただろう!この世界にとって、神こそ『害悪』!それが理由だ!!」
答えになっていない。
所詮は末端。哀れな狂信者、といったところか。
「そ。じゃあもういいや、疲れるしさ。
言い残すことは?」
俺は、繰り出された短剣を握る、その手首を掴み取り、グッと力を込めた。
すると、ミレットは小さく呻き声を上げ、短剣が溢れ落ちる。
カラン、と、虚しく床に転がる短剣。
「…殺すのか?」
「殺しはしない。でも、さよなら。」
俺は掌で、ミレットの頭を覆うようにつかむと、とあるスキルを繰り出した。
『バチッ!』と大きな音が鳴り、閃光が瞬く。
コイツの部下たちと同じく、記憶を消したのだ。どのくらい消えてるのかとか、いつ目覚めるのかとかは、俺には関係のないことだから知らない。
死んでいないのは確かだ。
ドサ、とホコリを巻き上げながら、その場に倒れ込むミレット。
俺は「ふっ」と息をつき、肩をグルグルと回すのだった。
「記憶、読んでみたけど…やっぱり
『神』関係については何もわからなかった…どういうことなんだろ?」
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