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新たな光2

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 お茶を片付けていたサラに手伝ってもらい、部屋着から着替える。アランも認めたドニのコルセットは、ゆるく締めてもらうことにした。


「サラは本当に休まなくて大丈夫なの?」
「はい。お嬢様のお世話をできないほうが辛いので、おそばにおります」
「ならいいのだけれど……」


 あの時襲ってきた敵は10人以上だったと聞いている。御者をしていたサラは敵を引き離すことを優先し、一郎たちはアデルを守るサラを守るために敵を殲滅した。
 サラはかすり傷程度で、その日のうちに血が止まったと聞いている。アデルも見せてもらったが、紙で切ったような傷だった。
 まだ結婚前のサラの肌に傷が残らないことに安堵しつつ、医療室へと向かった。


「みんな、具合はどう?」


 ベッドから起き上がろうとする3人を手で制し、アデルは椅子に座った。
 先陣を切った一郎は、多くの怪我と引き換えに一番多く敵を倒した。次に重症なのは三郎だ。怪我は少ないが、飛んでくる矢と敵から馬車を守った時の傷が深い。次郎は敵を攪乱しながら戦い、一番傷が多かった。

 命に別状はないと聞いていたが、実際に元気な姿を見ると心底ほっとする。
 アデルの服が破れてしまったことを詫びる3人の手を、アデルは一人ずつ包み込んだ。


「服よりもあなた達のほうがよっぽど大事だわ。襲われた時は怖かったけれど、心配はしていなかったの。だって、一郎と次郎と三郎は強くて、絶対に守ってくれるって知っていたから」


 3人は感激のあまり目を潤ませ、アデルを見つめた。3人にとってアデルは唯一の主で、自分の命より優先すべきもので、傷付きやすく清らかで天使のような魂の持ち主だった。


「3人揃って護衛ができるようになったら出かけましょうね。私の護衛は、一郎と次郎と三郎だから」


 感涙にむせび泣く3人をなだめてから医療室を出たアデルは、もう一度サラに感謝を伝えた。気絶から目覚めた後に伝えたが、なんだかもう一度言いたくなったのだ。
 いつも無表情のサラは、ほんのわずかに口角を上げ、お辞儀することでアデルからの感謝を受け取ってくれた。


「そろそろアラン様とベルナール様がおいでになる時間です」
「あら、じゃあ急いで帰りましょう」


 アデルが襲われたことを知ったアランとベルナールは、当然のごとく怒り狂った。
 どこの誰が相手でも容赦しない。仮に差し向けたのが王ならば反乱を起こす。

 そんな決意と共に溺愛するアデルを狙った相手を探したが、生かしておいた敵は自決し、結局何も得られなかった。誰かが傭兵などに頼んだ形跡もない。
 このレベルの者を十人以上鍛えて雇える貴族はそう多くないが、高位貴族ほど秘密を隠すのがうまい。証拠を掴むのに、予想より難航しているようだった。

 自室へ帰ると、アランとベルナールはまだ来ていなかった。ソファーに座って休むアデルの前に、サラが手紙を持ってくる。
 アデルが留守にしている間にリックがやってきたようだった。アデルに無理をさせたくないからと、話す前に帰ってしまったのを残念に思いながら封を開ける。

 アデルを心配している文の後に、鑑定師に頼んだ結果が記載されていた。


「やったわ、サラ!」


 報告書を読んだアデルは、喜びのあまりサラに抱き着いた。
 報告書には、改ざんされた書類はテオバルトが書いたものではないとハッキリ書いてあった。

 改ざんされていないテオバルト直筆の書類と、改ざんされた書類を預けていたが、改ざんされた書類は何もかも違うという結果が出た。
 紙もインクも、騎士団で使われているものと違う。何より、筆跡がテオバルトのものではなかった。


「これでテオバルト様を救える……! やっと救える……!」


 ゲームでアデルが死ぬまであと二か月。やすやすと死ぬつもりはないが、出来ればその日までに裁判を終わらせたいと思っていた。
 喜びのあまり涙を流すアデルの背を、サラが優しくなでる。

 いつも焦燥に胸を焦がしていたアデルは、この日ようやく安息を得た。

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