2 / 55
私は悪役令嬢1
しおりを挟む
長い、長い夢を見ているようだった。
熱で浮かされた頭の中で、様々な映像や音が再生されていく。
一番多く見たのは、教科書や参考書が載った机や単語帳、電車の中でぼんやりと見る景色だった。両親の顔は思い出せない。両親の声が聞こえる時は、いつも床を向いていたから。
(私、死んだのね……)
高熱が出て寒い体でうずくまりながら、アデルは静かに理解した。どうやって死んだか覚えていないが、死を鮮烈に覚えていたら恐ろしいので、それでいいと思う。
受験という単語がやたらと頭の中を回っているあたり、どうやら自分は若いうちに死んでしまい、転生をしたらしい。
「テオバルト・ヴァレリー様がいて、私がアデル・クレールに転生してるってことは、ここは私がプレイしていた乙女ゲームの世界なのよね……?」
アデル・クレール。
プレイしていた乙女ゲームのテオバルトルートの悪役令嬢であり、本編が始まる前に死んでしまうモブだった。
「覚えているうちに、少しでもメモをしておかないと……」
熱でうまく動かない体を動かしてベッドから降りて、机に座る。幸いにもアデルとして生きてきた17年間の記憶はなくなっておらず、自室のことはよくわかっていた。
机の中から紙を取り出して羽ペンをインクにひたしたアデルは、日本語で覚えていることを書き記した。
テオバルトのルートは、下町で暮らすヒロインと元騎士団長のテオバルトが出会うところから始まる。
何度も出会ううちに仲を深めていき、やがてテオバルトは自分が冤罪をかけられたことを告げる。ヒロインと一緒に冤罪を晴らし、騎士団長へ返り咲き、エンディングで結ばれるのがテオバルトのルートだ。
テオバルトと一緒にいるのがどれだけ危険か伝えるため、二人の恋のスパイスとなるため、テオバルトと無理やり婚約を結んだ悪役として用意されたモブ、それがアデル・クレールだった。
熱で浮かされた頭の中で、様々な映像や音が再生されていく。
一番多く見たのは、教科書や参考書が載った机や単語帳、電車の中でぼんやりと見る景色だった。両親の顔は思い出せない。両親の声が聞こえる時は、いつも床を向いていたから。
(私、死んだのね……)
高熱が出て寒い体でうずくまりながら、アデルは静かに理解した。どうやって死んだか覚えていないが、死を鮮烈に覚えていたら恐ろしいので、それでいいと思う。
受験という単語がやたらと頭の中を回っているあたり、どうやら自分は若いうちに死んでしまい、転生をしたらしい。
「テオバルト・ヴァレリー様がいて、私がアデル・クレールに転生してるってことは、ここは私がプレイしていた乙女ゲームの世界なのよね……?」
アデル・クレール。
プレイしていた乙女ゲームのテオバルトルートの悪役令嬢であり、本編が始まる前に死んでしまうモブだった。
「覚えているうちに、少しでもメモをしておかないと……」
熱でうまく動かない体を動かしてベッドから降りて、机に座る。幸いにもアデルとして生きてきた17年間の記憶はなくなっておらず、自室のことはよくわかっていた。
机の中から紙を取り出して羽ペンをインクにひたしたアデルは、日本語で覚えていることを書き記した。
テオバルトのルートは、下町で暮らすヒロインと元騎士団長のテオバルトが出会うところから始まる。
何度も出会ううちに仲を深めていき、やがてテオバルトは自分が冤罪をかけられたことを告げる。ヒロインと一緒に冤罪を晴らし、騎士団長へ返り咲き、エンディングで結ばれるのがテオバルトのルートだ。
テオバルトと一緒にいるのがどれだけ危険か伝えるため、二人の恋のスパイスとなるため、テオバルトと無理やり婚約を結んだ悪役として用意されたモブ、それがアデル・クレールだった。
40
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました
みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。
日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。
引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。
そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。
香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~
古里@電子書籍化『王子に婚約破棄された』
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。
でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。
果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか?
ハッピーエンド目指して頑張ります。
小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。
ヤンデレ王子とだけは結婚したくない
小倉みち
恋愛
公爵令嬢ハリエットは、5歳のある日、未来の婚約者だと紹介された少年を見てすべてを思い出し、気づいてしまった。
前世で好きだった乙女ゲームのキャラクター、しかも悪役令嬢ハリエットに転生してしまったことに。
そのゲームの隠し攻略対象である第一王子の婚約者として選ばれた彼女は、社交界の華と呼ばれる自分よりもぽっと出の庶民である主人公がちやほやされるのが気に食わず、徹底的に虐めるという凄まじい性格をした少女であるが。
彼女は、第一王子の歪んだ性格の形成者でもあった。
幼いころから高飛車で苛烈な性格だったハリエットは、大人しい少年であった第一王子に繰り返し虐めを行う。
そのせいで自分の殻に閉じこもってしまった彼は、自分を唯一愛してくれると信じてやまない主人公に対し、恐ろしいほどのヤンデレ属性を発揮する。
彼ルートに入れば、第一王子は自分を狂わせた女、悪役令嬢ハリエットを自らの手で始末するのだったが――。
それは嫌だ。
死にたくない。
ということで、ストーリーに反して彼に優しくし始めるハリエット。
王子とはうまいこと良い関係を結びつつ、将来のために結婚しない方向性で――。
そんなことを考えていた彼女は、第一王子のヤンデレ属性が自分の方を向き始めていることに、全く気づいていなかった。
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる