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1章

即売会でのオパール探し

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 今回探しているのはコレクション用(の物もあるが)ではなく作品として仕立てる為のオパールである。リッカは一作目なのでシンプルに一粒石のリングかピアス、ペンダントを作ろうと考えていた。ピアスを作る可能性を考えるとペアで売っているものやペアに出来るよう大きさが似たような石も探さなければならない。

(左右非対称でも面白いけど、オーバルカットやラウンドカットが多いから大きさが違うと違和感出ちゃうかも)

 バロック真珠のように最初から不定形であれば左右対称でも違和感が出にくいが、同じオーバルで左右の大きさが違うと違和感が出てしまう。ペア売りしている物があればそれを購入するのが無難だろう。

 リングの場合はあまりゴツゴツ感が出ない小粒の物を作りたいと考えている。ちょっとしたお出かけのお供や普段使いできるようなデザインで手に取って貰いやすくするためだ。石はオパール以外に何も加えず、リングの細さもなるべく細くすることでオパールの良さを前面に出したシンプルな物を作りたい。ペンダントも同じくオパールのみのシンプルなペンダントが良い。

 リッカはオパールが大好きだ。大好きで大切な石だからこそ、その良さを余すところなく伝えられるような作品に仕立てたいと思っていた。それが今の自分に出来るか分からなけれど、せっかくきっかけを与えて貰えたのだから挑戦したい。素朴な装飾品になってしまうがオパールが主役の作品を一作目として出したいと考えていた。

 オパールを求めてひたすら会場内を歩く。色々な石を安く販売していて1つ銀貨1枚ほどで買える店を発見した。人気の店らしく人だかりが出来ていて皆真剣なまなざしで好みの石が無いか物色している。石は高ければよいというものでも無い。好みの色や大きさが必ずしもその石にとって「価値がある」とされるものではないし、安く売られている石の色味の方が好きという人もいる。
 
 リッカもその一人で、価値があるとされるブラックオパールにはあまり惹かれず、こういう安売りの店にこそ掘り出し物があるという考えだ。

 人混みの中に突撃し、ルースケースが石の種類ごとに並べられたトレーを漁る。オパールの乗っているトレーは3枚あり、どれも銀貨1枚~2枚程度でお手頃だ。

(うわー、どれも結構綺麗だな)

 トレーを並べてオパールを見比べる。ウォーターオパールとホワイトオパールが中心で大きさも加工するのに丁度いい小指の爪程の物が多い。

(夜に展示して照明を当てる事を考えると、今回はウォーターオパールじゃなくてホワイトオパールが良いかな)

 そんなことを考えながらいくつかホワイトオパールを選び購入した。真っ白な石の中にチラチラと色とりどりの遊色が見えて可愛らしい。ウォーターオパールとはまた違った美しさだ。

 買い物を終えたら他の店も見て回る。何店舗かオパールを専門で扱っている所もあるが、大きくて高価な物が多い。

(綺麗で欲しい物もあったけど、宝石商さんとコハルさんの店を見てからにしよう。絶対買いたいものが見つかるから)

 オパール専門店を横目にあまり予算を使わないうちに二人の店へ向かう事にした。

「こんにちは」

 最初に訪れたのはコハルのブースだ。長机に「春風製作所」というテーブルクロスを敷いており分かりやすい。机の上に木製の棚を並べ、その前ルースケースが入ったトレーを並べている。木製の棚には珠玉のコレクションが配置され、トレーの中に手が届きやすい価格の品が入っている。

「お、来たか」

リッカの姿を認めたコハルがニヤリと笑う。

「何か良い物でも買えたか?」
「はい。使えそうなオパールを数点。あとはコハルさんと宝石商さんのブースを周ってから決めようかと」
「それが良いな。オレもあいつも良いオパールを持って来てるから」

 そういうとコハルはテーブルクロスをめくって机の下から別のトレーを取り出した。

「これが『リッカ様専用トレー』だ。じっくり見ていってくれ」

 トレーの中にはいくつかオパールのルースが並べられている。まず大き目のオパールが目に留まる。カボションカットが多いオパールには珍しくファセットカットだ。半透明の地に緑や赤、青の遊色が煌めくウォーターオパールを他の宝石と同じように面を作る形でカットしてある。存在感のある大きさで1.5㎝以上はあるだろう。

「これ、凄く綺麗ですね。ファセットカットなのも珍しいし」
「ふふ、そうだろう。リッカが好きかなと思って持ってきたんだ」

 自慢げに言うコハルにこれは一本取られたと思ったリッカだった。
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