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1章

新作の原型製作

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 作業机に石を並べ、「使えそうな石」を厳選する。連で購入したので沢山連なる石の中には色や柄がいまいちだったり部分的に欠けていて商品として出すには不十分な物もあるのである。使えそうな石とそうでない物を分別し、早速石座の製作に取り掛かる。今回は「覆輪」というタイプの石座にするので前回とは違う作り方だ。

 まずロウの上に石を置き大体の石の形を書き写す。印に沿って穴を開け石が丁度中に嵌るようになったらその穴に沿って1~2ミリ程の線を引く。引いた線に沿ってロウを切り出せば石の形にぴったり合った「覆輪留め」用の「爪」が出来上がる。

 爪を切り出したらヤスリで断面を整え、底の部分になる別のロウの板の上に貼って枠に沿って再び板を切り出す。切り口を綺麗に整えて底の真ん中に穴を開けたら枠の形に添って形を整える。

 石を枠にはめて丸みを帯びた石の底面の座りが良くなるように底の穴に傾斜をつけ、石の高さに合うように枠の高さを調整すれば覆輪用の石座の完成である。ロウで作った原型は鋳造の際に収縮する為、「原型鋳造」「複製」と2回鋳造を挟む場合はその収縮を考慮して少し大きめに作らねばならない。

 大きなものほど大きく収縮するので完成品のサイズを考えながら作るのはなかなか難しい。「思ったよりも小さくなってしまいサイズが合わなくなってしまった」という事故も起こりがちなのである。

 石座が完成したので作っておいた星形パーツと一緒に並べてどのようなデザインにするか考える。

(紙の上で描いたデザインと実際に並べた時の印象が違うのってありがちなんだよね~)

 いくら紙の上にデザインを並べても実際に石やパーツを並べて動かすと「なんか違う」となるのが面白い。動かしているうちに意外なデザインが生まれたりして、それもまた面白味の一つだった。

(石は中央に配置したいな)

 石座を中心に星のパーツを丸く囲むように配置して星の大きさのバランスを見ながら並び順や向きなどを調整し、納得のいく順番に並べたら接着剤で仮止めをして完全に乾いたら裏側に溶かしたロウを盛って固定する。

 余分なロウを落としてキズなどを埋めながら磨いたら完成だ。今回はこの原型を基にブローチを作る事にした。

 鋳造屋が閉まっている時間なので持って行くのは後日にするとして、無事に原型が完成した事に胸を撫で下ろすリッカであった。

「あー……疲れた……」

 ストレッチで凝り固まって痛い肩をほぐす。下を向いての作業なのでどうしても肩が凝ってしまうのが悩みだった。

 原型が完成したので今度はパッケージを考えなくてはならない。「パッケージ」も作品の印象を左右する重要な要素だ。特に「秋の手仕事祭」のような来場者が多い場所では人の流れが速く、来場者が自分のブースの前を通り過ぎる一瞬のうちにどれだけ目を引けるかが重要になって来る。それ故に「おっ」と思ってもらえるようなパッケージが必要なのだ。

(明日資材屋さんを覗いてみるか)

 パッケージの事はパッケージの専門店へ行くのが一番である。鋳造屋に行くついでに少し離れた場所にある資材屋へ行く事にした。
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