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1章
「秋の手仕事祭」に向けて
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工房の机の上に購入したラピスラズリを並べる。大きなペアシェイプのビーズだ。リッカはこれらを使って「秋の手仕事祭」の新作デザインを考えようとしていた。
「ビーズだから上下に穴が空いている。メインに据える場合これを隠すには覆輪留めが一番かな。でもモチーフの下に垂らしても可愛いかも」
ビーズ用の石は当然糸を通す為の穴が開いている。それを普通の爪留めで留めると穴が見えた状態になってしまう。なので石留めをしたい場合は「覆輪留め」と呼ばれる石の全周を爪で囲う形で留める留め方で留めるのが良いだろう。
大きなモチーフを作ってその下に垂らす方法も目立ちそうで良いが、石が大きめなので若干バランスに難がありそうだ。
(大き目だしメインに据える形にしてブローチや髪留めにしようかな)
石をじっと眺めた後、バター位の大きさの四角い塊のような物をもって作業机に移動する。これは「ロウ」と呼ばれるもので名前の通り蝋燭のロウと同じような素材である。このロウを削ったりアルコールランプで溶かして盛ったりして原型を作っていく。
リッカが蚤の市の時に作った金属を曲げて作る技法よりも複雑な造形を作る事に向いており、逆にピシっとした物を作るのには向いていない。今回は星の飾りなど複雑な物を作るのでこちらの技法を使う事にしたのだった。
(ラピスラズリが夜空だからそれを囲うように星を散りばめたいな)
星のパーツの厚さ分の板をロウのブロックから切り出す。大体の大きさを決め板から丸く切り出した物を削ったり盛ったりして星形にしていく。それをいくつも色々な大きさで作り、ラピスラズリとのバランスを見ていく。
大体のパーツが出来たら次はラピスラズリの石座作りだが、この日は夜も更けてきたのでキリの良いところで作業を終えた。
(結構スムーズに進んでいるな)
アイデア出しが詰まると数日、数週間何も湧いてこない事があるので今回は今のところ順調だ。お腹も空いたので遅い夕飯を取る事にした。思えば昼何も食べていない。保冷庫を覗いて中に入っている物を確認する。
「よし、オニオングラタンスープもどきを作ろう」
封が空いたパンを見て「うんうん」と頷く。刻んだニンニクとソーセージを油と一緒に鍋に放り込み炒め、そこに水を入れてコンソメ顆粒を加え煮込む。パンを適当にちぎった物をグラタン皿に敷き、煮込んだスープを加えた後にチーズを上からかけてバーナーで炙れば玉ねぎが入っていない「なんちゃってオニオングラタンスープ」の完成である。
「最近寒くなってきたから熱々のスープがたまらないなぁ」
高火力バーナーでぐつぐつにされたスープをふーふーと冷ましながら頬張る。雑に作ったスープだが何とも言えない幸せを感じる。とろとろにとろけたパンがスープをたっぷりと吸っていて美味しい。料理はニンニクさえ入れれば間違いない。それがリッカの信条だ。
「あー、美味しかった」
食器を片付けお風呂に入り、ふかふかのベッドに潜り込む。
(明日も上手く行くといいな……)
サクサクと進む作業の裏で久しぶりの順調さに一抹の不安を覚えるリッカだった。
「ビーズだから上下に穴が空いている。メインに据える場合これを隠すには覆輪留めが一番かな。でもモチーフの下に垂らしても可愛いかも」
ビーズ用の石は当然糸を通す為の穴が開いている。それを普通の爪留めで留めると穴が見えた状態になってしまう。なので石留めをしたい場合は「覆輪留め」と呼ばれる石の全周を爪で囲う形で留める留め方で留めるのが良いだろう。
大きなモチーフを作ってその下に垂らす方法も目立ちそうで良いが、石が大きめなので若干バランスに難がありそうだ。
(大き目だしメインに据える形にしてブローチや髪留めにしようかな)
石をじっと眺めた後、バター位の大きさの四角い塊のような物をもって作業机に移動する。これは「ロウ」と呼ばれるもので名前の通り蝋燭のロウと同じような素材である。このロウを削ったりアルコールランプで溶かして盛ったりして原型を作っていく。
リッカが蚤の市の時に作った金属を曲げて作る技法よりも複雑な造形を作る事に向いており、逆にピシっとした物を作るのには向いていない。今回は星の飾りなど複雑な物を作るのでこちらの技法を使う事にしたのだった。
(ラピスラズリが夜空だからそれを囲うように星を散りばめたいな)
星のパーツの厚さ分の板をロウのブロックから切り出す。大体の大きさを決め板から丸く切り出した物を削ったり盛ったりして星形にしていく。それをいくつも色々な大きさで作り、ラピスラズリとのバランスを見ていく。
大体のパーツが出来たら次はラピスラズリの石座作りだが、この日は夜も更けてきたのでキリの良いところで作業を終えた。
(結構スムーズに進んでいるな)
アイデア出しが詰まると数日、数週間何も湧いてこない事があるので今回は今のところ順調だ。お腹も空いたので遅い夕飯を取る事にした。思えば昼何も食べていない。保冷庫を覗いて中に入っている物を確認する。
「よし、オニオングラタンスープもどきを作ろう」
封が空いたパンを見て「うんうん」と頷く。刻んだニンニクとソーセージを油と一緒に鍋に放り込み炒め、そこに水を入れてコンソメ顆粒を加え煮込む。パンを適当にちぎった物をグラタン皿に敷き、煮込んだスープを加えた後にチーズを上からかけてバーナーで炙れば玉ねぎが入っていない「なんちゃってオニオングラタンスープ」の完成である。
「最近寒くなってきたから熱々のスープがたまらないなぁ」
高火力バーナーでぐつぐつにされたスープをふーふーと冷ましながら頬張る。雑に作ったスープだが何とも言えない幸せを感じる。とろとろにとろけたパンがスープをたっぷりと吸っていて美味しい。料理はニンニクさえ入れれば間違いない。それがリッカの信条だ。
「あー、美味しかった」
食器を片付けお風呂に入り、ふかふかのベッドに潜り込む。
(明日も上手く行くといいな……)
サクサクと進む作業の裏で久しぶりの順調さに一抹の不安を覚えるリッカだった。
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