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1章
閑話 理由
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宝飾品を作れるようになりたいと考えた時、選択肢は二つあった。一つは魔法技師として造形魔法を学ぶ学校に通う事。もう一つは手作業で宝飾品を作る職人を目指す学校に通う事。
現代の主流は造形魔法による宝飾品の生産と複製。それにより宝飾品はより身近な物として根付き、日用品として広く利用されていた。人工的に製造された「魔工宝石」が浸透した為見た目も「天然もの」と変わらない、いや、それ以上の宝飾品が安価で流通していた。そのため魔法技師になれば大きな町の大きな企業で働く事が出来、安定した生活が保証される事間違いない。
一方職人を目指した場合は一部の人間向けの「嗜好品」を作る事になる為、収入は自信のセンスと技量に大きく左右される。決して安定した職とは言えないのが実情である。パトロンや常連客が増えるまでは苦労する物も多いし、途中で挫折して転職をする者もいる。
リッカが職人を目指したのは魔法を使わない前時代的な技法に惹かれたからだ。元々オパールが好きだったリッカは宝石を使った宝飾品を「自分で作る」事が夢だった。そうすればオパールを使って自分が欲しいと思った宝飾品をいくらでも作れると思ったからだ。
義務教育課を終えた時、リッカに示されたのは造形魔法を学ぶ学校への進学だった。しかしリッカはその提示を断り前時代的な技法を学ぶ学校へ進学したのだった。
「今時あんな技法を学んだって仕方が無い。どうして潰しのきく造形魔法を学ばないのか」
飽きるほど聞いたその台詞。両親も友人も皆同じことを口にした。
「だってつまらないから」
その度にリッカはそう答えた。
「今時魔法で何でもできる。魔道具は凄く便利だし。でもそれはつまらない。魔法を使わないで自分の手で物を作る。その方がずっと楽しそうだし魅力的なんだよね」
そう言って笑うリッカを周囲は白い目で見ていたのだった。
宝飾職人の学校に進学したリッカは一通りの技法を学び、卒業後数年は別の仕事を掛け持ちしながら作品を作って販売していた。委託販売や常連客の定着などで収入が安定し始めた頃にオカチマチに引っ越し、小さい工房を借りて店を開いたのだ。
「魔法って凄く便利ですよね」
「今時は魔道具があれば大抵の事は解決しますからね」
「でも、便利ってつまらないなって思うんです」
「つまらない、ですか」
「例えば今流行りの魔工宝石。あれって魔法で本物と同じ成分で作れて、見た目も天然の物よりずっと綺麗に作れるじゃないですか。しかも魔法で簡単に複製できるから凄まじい安さだし。でも全部同じだからつまらないなーって思うんです」
「なるほど」
「天然ものみたいな個性が無いし、気に入った子に出会った時の運命感も無いし。安くて便利で素晴らしい技術だけど、なんか魅力を感じないんですよねー」
「それでオカチマチに来たんですか」
「そうなんです!親には縁を切られちゃいましたけど。でも、私が魅力を感じたのは前時代的な技法だったから」
リッカがオカチマチに来たばかりの頃、売り込みに来た宝石商とそんな話をしたことがあった。
「その人が一つ一つ手作業で作って仕上げた作品ってぬくもりがあって良いじゃないですか。そういう温かさがある町だから好きなんです」
「まぁ、今時魔法に頼らない方が好きなんて物好きが集まる町なんて早々ないですからね」
「だからこそ面白いんです。この町は」
ふふ、と笑うリッカのきらきらした目を見て宝石商は
(またこの町に面白い人が増えた)
と思ったのだった。
現代の主流は造形魔法による宝飾品の生産と複製。それにより宝飾品はより身近な物として根付き、日用品として広く利用されていた。人工的に製造された「魔工宝石」が浸透した為見た目も「天然もの」と変わらない、いや、それ以上の宝飾品が安価で流通していた。そのため魔法技師になれば大きな町の大きな企業で働く事が出来、安定した生活が保証される事間違いない。
一方職人を目指した場合は一部の人間向けの「嗜好品」を作る事になる為、収入は自信のセンスと技量に大きく左右される。決して安定した職とは言えないのが実情である。パトロンや常連客が増えるまでは苦労する物も多いし、途中で挫折して転職をする者もいる。
リッカが職人を目指したのは魔法を使わない前時代的な技法に惹かれたからだ。元々オパールが好きだったリッカは宝石を使った宝飾品を「自分で作る」事が夢だった。そうすればオパールを使って自分が欲しいと思った宝飾品をいくらでも作れると思ったからだ。
義務教育課を終えた時、リッカに示されたのは造形魔法を学ぶ学校への進学だった。しかしリッカはその提示を断り前時代的な技法を学ぶ学校へ進学したのだった。
「今時あんな技法を学んだって仕方が無い。どうして潰しのきく造形魔法を学ばないのか」
飽きるほど聞いたその台詞。両親も友人も皆同じことを口にした。
「だってつまらないから」
その度にリッカはそう答えた。
「今時魔法で何でもできる。魔道具は凄く便利だし。でもそれはつまらない。魔法を使わないで自分の手で物を作る。その方がずっと楽しそうだし魅力的なんだよね」
そう言って笑うリッカを周囲は白い目で見ていたのだった。
宝飾職人の学校に進学したリッカは一通りの技法を学び、卒業後数年は別の仕事を掛け持ちしながら作品を作って販売していた。委託販売や常連客の定着などで収入が安定し始めた頃にオカチマチに引っ越し、小さい工房を借りて店を開いたのだ。
「魔法って凄く便利ですよね」
「今時は魔道具があれば大抵の事は解決しますからね」
「でも、便利ってつまらないなって思うんです」
「つまらない、ですか」
「例えば今流行りの魔工宝石。あれって魔法で本物と同じ成分で作れて、見た目も天然の物よりずっと綺麗に作れるじゃないですか。しかも魔法で簡単に複製できるから凄まじい安さだし。でも全部同じだからつまらないなーって思うんです」
「なるほど」
「天然ものみたいな個性が無いし、気に入った子に出会った時の運命感も無いし。安くて便利で素晴らしい技術だけど、なんか魅力を感じないんですよねー」
「それでオカチマチに来たんですか」
「そうなんです!親には縁を切られちゃいましたけど。でも、私が魅力を感じたのは前時代的な技法だったから」
リッカがオカチマチに来たばかりの頃、売り込みに来た宝石商とそんな話をしたことがあった。
「その人が一つ一つ手作業で作って仕上げた作品ってぬくもりがあって良いじゃないですか。そういう温かさがある町だから好きなんです」
「まぁ、今時魔法に頼らない方が好きなんて物好きが集まる町なんて早々ないですからね」
「だからこそ面白いんです。この町は」
ふふ、と笑うリッカのきらきらした目を見て宝石商は
(またこの町に面白い人が増えた)
と思ったのだった。
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