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1章
休息
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朝起きてカーテンを開け、大きく伸びをする。一通り身支度を整えたら小さなコンロで朝食を作り、紅茶を入れて一息つく。催事が終わりつかの間の休息である。昨日は帰宅してから荷物そのままに眠りに着いたのだった。
(さて、今日は何をしようかな)
次の催事の予定は少し先の大型イベントと決めている。こちらは参加の可否が事前抽選制なのだが、すでに当選しているので参加出来る事になっていた。
「よし、今日は一日ダラダラするぞ!」
折角の余暇。店の扉に「臨時休業」の張り紙を貼り、つかの間の休息を楽しむことにしたのだった。
オカチマチから路面電車に乗って少しだけ遠出をする。悩みごとがある時は日常から少し離れた方が良いのだ。
(路面電車に乗るのも久しぶり)
リッカは基本的にオカチマチに引きこもっているので他の町に行く機会が少ない。遠くの町の催事に行く時か、資材を買いに行く時、そしてこうして気晴らしに出かける時位しか外に出る事が無いのだ。生活や製作に必要な物のほとんどはオカチマチで事足りる。外に出る事なく生活出来るのが専門街の良いところだとリッカは思った。
それぞれの町を繋ぐ路面電車は時代の変遷によって新たに敷かれた物だ。それぞれの町の中で生活が完結してしまうため町と町の間を移動する人が減り、2両編成の路面電車で十分賄えるようになったからだ。
それに加えて魔法技術が発展した事により、大都市間は転移技術を使って移動するようになったため移動手段が縮小されるようになったのだ。魔法技術の発展はリッカ達宝飾師にも影響を与えており、前時代の技法を愛するリッカにとって悩みの種でもあるのだった。
「ここに来るのもしばらくぶりだな」
しばらく路面電車に揺られ乗換を何度か繰り返すと目的の場所に到着した。路面電車の駅を出ると目の前に「リンコウ水族館はこちら」という大きな看板が現れる。リッカは幼い頃からこの水族館が好きだった。他の水族館と違って派手ではないけれど、こぢんまりとした雰囲気がお気に入りだ。
券売機で大人1枚銅貨6枚のチケットを購入して入園し、ルートに沿って水槽を巡る。この日は人が少なかったのでゆったりと見る事が出来た。色とりどり水槽を眺めているうちにひと際暗い場所に入り込む。深海に住む魚たちが展示されている水槽だ。
(深い海にもこんなに生き物がいるなんて不思議)
人々が生きる地上、その遥か下。光の届かない世界にも生き物がいて、それぞれの世界を構築している。それを初めて知った時は突然世界が倍になったような驚きを覚えた。
「やっぱり夜が好きだな」
深海の闇を見ていると落ち着く。自身の店に「夜の」と名付けたのも夜の暗闇が好きだったからだ。オパールの星の煌めき、夜の闇が自分の自信の無さを溶かして包み隠してくれるような気がしたから。
(落ち着くなぁ)
深海水槽の前に設置されたベンチに腰を掛け、しばらくぼんやりと過ごしたのだった。
結局日が暮れるまで水族館を堪能したリッカ。
(結構のんびりしてしまった)
水族館の外に出ると陽が沈んだ空を眺めて時の流れの速さに驚いた。
(夕飯どうしよう。どこかで食べて帰ろうか)
このまま帰っても何かを作る気もしないので、オカチマチのどこかで食べて帰る事にした。再び路面電車を乗り継ぎオカチマチに帰る。ゴチャゴチャとした街並みが車窓越しに見えてくるとなんとなく安心感がある。町は夜の喧騒に包まれ活気づいていた。
オカチマチには安い食堂や飲食店が多い。今も魔法を好まない前時代的な町だからかどこか懐かしい懐古的な雰囲気の店が飲食店街として残っているのだ。それとは別に隠れ家のようなオシャレな店も点在しており、宝飾品ではなくそれを目当てに訪れる者も多い。
「よし、今日はカレーにしよう!」
路面電車を降りるとリッカ行きつけのカレー屋に足を進める。大通りから少し離れた場所にある小さな店なのだがここのカレーが好きなのだ。
「こんばんは」
カウンター形式の店に入り椅子に腰を掛けるとメニューを広げ目を通す。最近栄養不足だから今日は野菜カレーにしよう。そう決めて野菜カレーを注文する。
店内に満ちた刺激的な香りと心地よい音楽、目の前で店主が調理をしている所を眺めるこの時間がなんとも至福なのだった。
「お待たせしました。野菜カレーです」
10分程すると銀色の皿に盛られたライスとソースポッドに入れられたカレーが並べられた。ソースポッドの中にはゴロゴロと大きくカットされた野菜や肉がたっぷり入ったクリーミーな色のカレーが入っている。見るからに食欲をそそる光景にリッカは思わず微笑んだ。
「いただきます」
スプーンを取るとカレーを頬張り始める。不摂生な生活をしがちな身体に野菜の栄養を詰め込んでいく。ホクホクとした野菜とカレーのスパイスが身体を芯から温めて心まで解れてくようだった。
「おいしい~…」
小声で呟いてはっと顔を上げると店主と目が合い少し恥ずかしくなる。水を飲む隙もなく一気に食べ切ってしまい、「ごちそうさまでした」とお礼を言うとカレー屋を後にして帰路についた。
店に戻り、風呂にのんびり浸かって疲れを取る。就寝の準備をして寝室に戻ると少しだけ明るい気持ちになっている事に気が付いた。
(うーん、やっぱり疲れている時は美味しい物を食べるのに限るのかな)
そんな事を思いながら、久しぶりに遠出して疲れた身体を休めるのだった。
(さて、今日は何をしようかな)
次の催事の予定は少し先の大型イベントと決めている。こちらは参加の可否が事前抽選制なのだが、すでに当選しているので参加出来る事になっていた。
「よし、今日は一日ダラダラするぞ!」
折角の余暇。店の扉に「臨時休業」の張り紙を貼り、つかの間の休息を楽しむことにしたのだった。
オカチマチから路面電車に乗って少しだけ遠出をする。悩みごとがある時は日常から少し離れた方が良いのだ。
(路面電車に乗るのも久しぶり)
リッカは基本的にオカチマチに引きこもっているので他の町に行く機会が少ない。遠くの町の催事に行く時か、資材を買いに行く時、そしてこうして気晴らしに出かける時位しか外に出る事が無いのだ。生活や製作に必要な物のほとんどはオカチマチで事足りる。外に出る事なく生活出来るのが専門街の良いところだとリッカは思った。
それぞれの町を繋ぐ路面電車は時代の変遷によって新たに敷かれた物だ。それぞれの町の中で生活が完結してしまうため町と町の間を移動する人が減り、2両編成の路面電車で十分賄えるようになったからだ。
それに加えて魔法技術が発展した事により、大都市間は転移技術を使って移動するようになったため移動手段が縮小されるようになったのだ。魔法技術の発展はリッカ達宝飾師にも影響を与えており、前時代の技法を愛するリッカにとって悩みの種でもあるのだった。
「ここに来るのもしばらくぶりだな」
しばらく路面電車に揺られ乗換を何度か繰り返すと目的の場所に到着した。路面電車の駅を出ると目の前に「リンコウ水族館はこちら」という大きな看板が現れる。リッカは幼い頃からこの水族館が好きだった。他の水族館と違って派手ではないけれど、こぢんまりとした雰囲気がお気に入りだ。
券売機で大人1枚銅貨6枚のチケットを購入して入園し、ルートに沿って水槽を巡る。この日は人が少なかったのでゆったりと見る事が出来た。色とりどり水槽を眺めているうちにひと際暗い場所に入り込む。深海に住む魚たちが展示されている水槽だ。
(深い海にもこんなに生き物がいるなんて不思議)
人々が生きる地上、その遥か下。光の届かない世界にも生き物がいて、それぞれの世界を構築している。それを初めて知った時は突然世界が倍になったような驚きを覚えた。
「やっぱり夜が好きだな」
深海の闇を見ていると落ち着く。自身の店に「夜の」と名付けたのも夜の暗闇が好きだったからだ。オパールの星の煌めき、夜の闇が自分の自信の無さを溶かして包み隠してくれるような気がしたから。
(落ち着くなぁ)
深海水槽の前に設置されたベンチに腰を掛け、しばらくぼんやりと過ごしたのだった。
結局日が暮れるまで水族館を堪能したリッカ。
(結構のんびりしてしまった)
水族館の外に出ると陽が沈んだ空を眺めて時の流れの速さに驚いた。
(夕飯どうしよう。どこかで食べて帰ろうか)
このまま帰っても何かを作る気もしないので、オカチマチのどこかで食べて帰る事にした。再び路面電車を乗り継ぎオカチマチに帰る。ゴチャゴチャとした街並みが車窓越しに見えてくるとなんとなく安心感がある。町は夜の喧騒に包まれ活気づいていた。
オカチマチには安い食堂や飲食店が多い。今も魔法を好まない前時代的な町だからかどこか懐かしい懐古的な雰囲気の店が飲食店街として残っているのだ。それとは別に隠れ家のようなオシャレな店も点在しており、宝飾品ではなくそれを目当てに訪れる者も多い。
「よし、今日はカレーにしよう!」
路面電車を降りるとリッカ行きつけのカレー屋に足を進める。大通りから少し離れた場所にある小さな店なのだがここのカレーが好きなのだ。
「こんばんは」
カウンター形式の店に入り椅子に腰を掛けるとメニューを広げ目を通す。最近栄養不足だから今日は野菜カレーにしよう。そう決めて野菜カレーを注文する。
店内に満ちた刺激的な香りと心地よい音楽、目の前で店主が調理をしている所を眺めるこの時間がなんとも至福なのだった。
「お待たせしました。野菜カレーです」
10分程すると銀色の皿に盛られたライスとソースポッドに入れられたカレーが並べられた。ソースポッドの中にはゴロゴロと大きくカットされた野菜や肉がたっぷり入ったクリーミーな色のカレーが入っている。見るからに食欲をそそる光景にリッカは思わず微笑んだ。
「いただきます」
スプーンを取るとカレーを頬張り始める。不摂生な生活をしがちな身体に野菜の栄養を詰め込んでいく。ホクホクとした野菜とカレーのスパイスが身体を芯から温めて心まで解れてくようだった。
「おいしい~…」
小声で呟いてはっと顔を上げると店主と目が合い少し恥ずかしくなる。水を飲む隙もなく一気に食べ切ってしまい、「ごちそうさまでした」とお礼を言うとカレー屋を後にして帰路についた。
店に戻り、風呂にのんびり浸かって疲れを取る。就寝の準備をして寝室に戻ると少しだけ明るい気持ちになっている事に気が付いた。
(うーん、やっぱり疲れている時は美味しい物を食べるのに限るのかな)
そんな事を思いながら、久しぶりに遠出して疲れた身体を休めるのだった。
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