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第七章 ケモナーと精霊の血脈
長い廊下
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この廊下に来るまでに俺たちは三度階段を上り、四度階段を下りた。窓からの景色は水中てだが、その隣の窓からは、高層であるように思えるほど、サイジャルの街が一望できる。
どれもはめ殺しの窓なんだが、借りに開けれたとしても開ける気にはならない。
その景色は全て本物なのだ。
学園の全てはこのようなでたらめな空間で建てられており、現在もまだ完成していない。
つまり、地図を新しく手に入れておかねば迷うような場所であり、ヒントになりそうな物もないということだ。
「慣れた場所ならすぐなんだが」
俺たちがよく行く場所は生徒が利用している場所だから、人が多く、迷ってしまっても人に聞けば連れていってもらえる。
新入生なんかが好奇心で研究棟や、資料や素材を保管する棟なんかは人が少ないため迷えば警備員さんのお世話になるのがほぼ当たり前となっている。
職員ですら全貌はわからず、迷子になることもあるし、俺らもそろそろ観念してお世話になるか。
「ねぇ、お兄ちゃん。もうちょっとあっちに行こうよ」
「またかよ…でもな…」
ミルディがお説教をかましてもまだケルンは探検を続けたいらしい。
ここまで迷い込んだのもケルンが選んでいった結果だ。
俺は付き合ってもいいんだけど、ミルディがなぁ…考え込んでる。
「ねぇ、ミルディ…お願い。もうちょっと、ね?」
「…はぁ…仕方ありません。もう少しだけですよ。外に出たら遅いですが昼食にしますから」
「はーい!」
甘えた声で首をかしげ、キラキラを飛ばしてミルディに、頼めば簡単に陥落した。
とはいえ、ミルディはケルンに甘いからちょっと頼めばすぐに聞いてくれるだろうけどな。
それからほんの五分ほど歩いて古ぼけた鉄の扉に俺たちは立っていた。
「扉だね」
「扉だな」
今まで木でできた扉はあったが、鉄の扉はなかった。ここだけ鉄の扉ってのは…ケルンの勘が当たったのか?
「開けてみよう!」
「部屋か、まだ廊下か…ここで終わりとしようか…」
扉を開けて部屋とかなら突き当たりといえるし、廊下がまだ続くならもう今日は切り上げてやめよう。
重そうな鉄の扉をケルンが開けようとすると、すっとミルディが前にでる。
「坊ちゃま。お下がりください」
「ミルディ大丈夫?重そうだけど」
「お忘れですか?私はそこそこ力が強いんです」
ケルンを背負って歩いて屋敷まで帰ってこれたもんな。あの頃より背は伸びているし、ケルンよりは確実に力があるだろう。
周りの子がすごいのかケルンが非力なのかわからないが、メリアちゃんと腕相撲して秒殺された程度には弱いからな
ミルディが扉に手を当てると錆び付いた扉なのか、軋むような嫌な音を立てて扉が開く。
扉の先にはまだ廊下が続いていた。
だが今はの廊下とは明らかに違う。
廊下の壁面を多い尽くすかのようにありあらゆる種族の人々が彫刻されていた。
男女を問わず様々な種族の人々がダンスを踊っているのか、手と手を取り合っている。社交ダンスだろうか?だとすると何かのパーティーの場面なのだろうか。
「すごいね!ほら、ここ!ドワーフでしょ、あ、これはエルフ?んで、こっちはエセニアみたいな人がいるよ!」
パタパタと小走りで彫刻を見て回る。かなり長い廊下だ。三十メートルは真っ直ぐにある廊下全てが彫刻だらけなのは、学園であるっていうのを頭から消していれは、美術館とかどこかの王宮のように思う。
「かなり精巧な彫刻だな…しかも獣人が多い…エセニアはもっと耳がぴんとしてるからこの人は別な獣人の種類の人だな。柴じゃなく、おそらく甲斐か紀州か」
「シヴァ?カイ?キシュウ?なんか、喚びそうだねー」
シヴァ怪奇集。確かに喚びそうだ。
ケルンのアクセントが異なるのは置いておいて、これほど精巧な彫刻はなかなか目にかかったことない。
似たような彫刻のクセのある作品を見たことがあるように、思うんだが…どこだっけかな…あれは。
「しかし、女性の多い彫刻ですね」
「そうだねー。あ!面白いこと気づいちゃった!ほら、人族の人は少ないけど、人族の女の人はみんなお皿を持っているよ!」
「皿?…これはお椀じゃねぇか?」
女性が多いというミルディの指摘を受けて確認すればその通りだ。ダンスをしていない女性も多くいる。
そしてケルンがいうように人族は少なく人族の女性はみな手にお椀を持っている。彼女たちの向かう先には料理人なのか一人の男性が何かをすくって配膳している。
「俺、わかったわ。この彫刻をした人」
「え!お兄ちゃんわかったの?」
どこかで見たことがあるクセだと思った。
それによく見れば、この壁面に彫られている人物の何人かフェスマルク家のお墓にまったく同じように彫刻をされていた。
「トーマお祖父様だ」
料理人のように配膳をしている人物。その、人物が配っている料理の入れ物は土鍋だった。
魔法の建築家にして、鍋料理の研究家であったトーマお祖父様。
この彫刻はフェスマルク家のご先祖様やその関係者なんだと思う。
「たぶん…鍋パの一場面だろう」
社交ダンスと鍋パを混ぜるなんてトーマお祖父様しかやっていないことだ。鍋パのためにダンスホールを作るような人だったからな。
壮大で精巧で艶やかなパーティーの場面だと思ったら鍋パって…うん。
「なるほど!楽しそうな理由がわかったね!…どうしたの?」
「いや、鍋いいなって」
「しゃぶしゃぶ?すきやーき?僕、すきやーき食べたい!」
「夕飯はすきやーきですね。連絡をしておきます」
血を感じるな。どこまでもフリーダム。フェスマルクの人間って…俺はそうじゃないよな?あとでエセニアに手紙で聞いておこう。
どれもはめ殺しの窓なんだが、借りに開けれたとしても開ける気にはならない。
その景色は全て本物なのだ。
学園の全てはこのようなでたらめな空間で建てられており、現在もまだ完成していない。
つまり、地図を新しく手に入れておかねば迷うような場所であり、ヒントになりそうな物もないということだ。
「慣れた場所ならすぐなんだが」
俺たちがよく行く場所は生徒が利用している場所だから、人が多く、迷ってしまっても人に聞けば連れていってもらえる。
新入生なんかが好奇心で研究棟や、資料や素材を保管する棟なんかは人が少ないため迷えば警備員さんのお世話になるのがほぼ当たり前となっている。
職員ですら全貌はわからず、迷子になることもあるし、俺らもそろそろ観念してお世話になるか。
「ねぇ、お兄ちゃん。もうちょっとあっちに行こうよ」
「またかよ…でもな…」
ミルディがお説教をかましてもまだケルンは探検を続けたいらしい。
ここまで迷い込んだのもケルンが選んでいった結果だ。
俺は付き合ってもいいんだけど、ミルディがなぁ…考え込んでる。
「ねぇ、ミルディ…お願い。もうちょっと、ね?」
「…はぁ…仕方ありません。もう少しだけですよ。外に出たら遅いですが昼食にしますから」
「はーい!」
甘えた声で首をかしげ、キラキラを飛ばしてミルディに、頼めば簡単に陥落した。
とはいえ、ミルディはケルンに甘いからちょっと頼めばすぐに聞いてくれるだろうけどな。
それからほんの五分ほど歩いて古ぼけた鉄の扉に俺たちは立っていた。
「扉だね」
「扉だな」
今まで木でできた扉はあったが、鉄の扉はなかった。ここだけ鉄の扉ってのは…ケルンの勘が当たったのか?
「開けてみよう!」
「部屋か、まだ廊下か…ここで終わりとしようか…」
扉を開けて部屋とかなら突き当たりといえるし、廊下がまだ続くならもう今日は切り上げてやめよう。
重そうな鉄の扉をケルンが開けようとすると、すっとミルディが前にでる。
「坊ちゃま。お下がりください」
「ミルディ大丈夫?重そうだけど」
「お忘れですか?私はそこそこ力が強いんです」
ケルンを背負って歩いて屋敷まで帰ってこれたもんな。あの頃より背は伸びているし、ケルンよりは確実に力があるだろう。
周りの子がすごいのかケルンが非力なのかわからないが、メリアちゃんと腕相撲して秒殺された程度には弱いからな
ミルディが扉に手を当てると錆び付いた扉なのか、軋むような嫌な音を立てて扉が開く。
扉の先にはまだ廊下が続いていた。
だが今はの廊下とは明らかに違う。
廊下の壁面を多い尽くすかのようにありあらゆる種族の人々が彫刻されていた。
男女を問わず様々な種族の人々がダンスを踊っているのか、手と手を取り合っている。社交ダンスだろうか?だとすると何かのパーティーの場面なのだろうか。
「すごいね!ほら、ここ!ドワーフでしょ、あ、これはエルフ?んで、こっちはエセニアみたいな人がいるよ!」
パタパタと小走りで彫刻を見て回る。かなり長い廊下だ。三十メートルは真っ直ぐにある廊下全てが彫刻だらけなのは、学園であるっていうのを頭から消していれは、美術館とかどこかの王宮のように思う。
「かなり精巧な彫刻だな…しかも獣人が多い…エセニアはもっと耳がぴんとしてるからこの人は別な獣人の種類の人だな。柴じゃなく、おそらく甲斐か紀州か」
「シヴァ?カイ?キシュウ?なんか、喚びそうだねー」
シヴァ怪奇集。確かに喚びそうだ。
ケルンのアクセントが異なるのは置いておいて、これほど精巧な彫刻はなかなか目にかかったことない。
似たような彫刻のクセのある作品を見たことがあるように、思うんだが…どこだっけかな…あれは。
「しかし、女性の多い彫刻ですね」
「そうだねー。あ!面白いこと気づいちゃった!ほら、人族の人は少ないけど、人族の女の人はみんなお皿を持っているよ!」
「皿?…これはお椀じゃねぇか?」
女性が多いというミルディの指摘を受けて確認すればその通りだ。ダンスをしていない女性も多くいる。
そしてケルンがいうように人族は少なく人族の女性はみな手にお椀を持っている。彼女たちの向かう先には料理人なのか一人の男性が何かをすくって配膳している。
「俺、わかったわ。この彫刻をした人」
「え!お兄ちゃんわかったの?」
どこかで見たことがあるクセだと思った。
それによく見れば、この壁面に彫られている人物の何人かフェスマルク家のお墓にまったく同じように彫刻をされていた。
「トーマお祖父様だ」
料理人のように配膳をしている人物。その、人物が配っている料理の入れ物は土鍋だった。
魔法の建築家にして、鍋料理の研究家であったトーマお祖父様。
この彫刻はフェスマルク家のご先祖様やその関係者なんだと思う。
「たぶん…鍋パの一場面だろう」
社交ダンスと鍋パを混ぜるなんてトーマお祖父様しかやっていないことだ。鍋パのためにダンスホールを作るような人だったからな。
壮大で精巧で艶やかなパーティーの場面だと思ったら鍋パって…うん。
「なるほど!楽しそうな理由がわかったね!…どうしたの?」
「いや、鍋いいなって」
「しゃぶしゃぶ?すきやーき?僕、すきやーき食べたい!」
「夕飯はすきやーきですね。連絡をしておきます」
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