選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第七章 ケモナーと精霊の血脈

思いつきの特訓

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 サイジャルに戻ったその足で俺たちはナザドの元へとむかった。予定になかったことなんだが、ケルンがどうしてもというので、魔法の特訓をつけてもらうことにしたのだ。

『コール』をサイジャルについてすぐにしたが…本当にナザドはカルドとフィオナの息子なのかと真面目に疑ってしまう。

 突然頼んだから迷惑かと思っていたんだが、それは杞憂に終わった。奇声…じゃなかった、歓声をあげてすぐに用意しますとの返事があった。
 いい歳の大人が…まぁ、エセニアよりも若くみえるからな…見た目通りといえばそうなんだけど。

「ナザド!『転移』のこつ!父様がナザドは『転移』の、えっと、んっと、よびよ…せ?が得意なんでしょ!教えて!」
「呼び寄せな」

 訓練所で喜色満面だったナザドに、開口一番まくし立てるようにケルンがいう。さすがのナザドもどんぐりのような目をぱちくりさせて、ケルンではなくケルンの肩に乗っている俺に事情説明を求める。

「どうしたんですか?そんなにやる気にあふれて」
「いやな…」

 ケルンは俺が誘拐されたことがかなりのトラウマになっていて、もうしなくなったが、ちょっと前まで夜泣きをしていた。
 夜中に泣きながら起きて、俺がいるのを確認して泣きながら寝るのを繰り返していたからな…目は腫れるし、寝不足だし…ほんと、誘拐犯たちをぶっ飛ばしたいところなんだが、今はどこにいるか誰も教えてくれないんだよなー。

 昼間もうんうんとうなっていて、誰の目から見ても何かを考えていることもあった。ケルンが考えていたのが、もし万が一再び誘拐されたら、どうにかして俺を取り戻す方法だ。

 そこで『転移』があればお兄ちゃんのところに行ける!なんて気付いてしまったのだ。
 昨日、父様が余計なことを教えてしまったのが原因だ。

「中級の精霊と契約をしたのなら、そのうち『転移』も使えるかもしれない。そうしたら、毎晩帰ってくればいいんだぞ?」

 なんてことをケルンに話したのだ。
 そしたらずっと父様に『転移』のやり方を教えて欲しいとねだりまくった。
 いくらケルンに激甘の父様でも『転移』をケルンに教えるつもりはない。

 これは当然のことなのだ。『転移』は失敗すれば命に関わることだから、父様ぐらい魔法が使えないと難しいと父様がいうほどなのだ。
 手紙とかのやり取りで我慢してくれたらいいんだが、ケルンも人の話を聞かない頑固なところがあるからな…時間もあまりなく、かといっておざなりに断れば嫌われてしまう。

 ケルンに嫌われたくないと考えた父様はこういった。

「『転移』系の魔法は難しいから…そうだ!呼び寄せ系はナザドが得意だからナザドから教えてもらいなさい」

 絶対、失敗するのがわかってるからナザドに擦り付けたんだと思う。
 俺もケルンに嫌われるならナザドに擦り付けるからな。

 そこまでの内情は教えずナザドに説明をすれば困ったようにケルンに話しだした。

「しかし、坊ちゃま。中級の精霊と契約をするのは『転移』系の最低限の条件です。他にも条件がありまして…確かに一番簡単な呼び寄せなら、可能でしょうが…ですが坊ちゃまは外属性を覚えていらっしゃらないでしょ?」

 外属性は基本属性以外の属性だ。フィオナやナザドが得意とする雷や、珍しい樹の魔法、それから爆破なんかもある。
 基本属性を覚えて才能があれば外属性の魔法も行使できるとのことなんだが、ケルンはこれをクリアしている。

「それなんだけど、風の精霊様と契約したら氷属性ってのが使えるようになったんだ」

 いきなり使えるようになった氷属性の魔法はかなりすごい。
 今は杖が処理中のためどこまでやれるかわからず、屋敷にあった本にかかれていた初級の氷魔法『アイスドール』を使ってみた。

 使えるようになったその晩にこっそり俺の部屋でやってみたんだが…氷像とか作れるとは思わなかった。
 手のひらサイズで、すぐにぱきりと音をたてて壊れて消えてしまったが、暑くなったときに使えるなとケルンと話し合った。
 上級も気になるところだが、杖から待ったがかかったのだ。どうもケルンの魔力量を調整する余力がまだないとかで、次の満月の後までやらない方がいいといわれたのだ。
 杖が完全復活したら上級も使ってみたいところだが、満月まであと五日ほどかかる。そうしたら試すとしよう。
 あんまりにもケルンの負担が大きかったら使わないことにするけどな。杖への負担は知らない。あいつならやれるだろ。魔杖って呼ばれてんだ。つまりイニシャルM。
 あいつらしい。

 思い出したらげんなりしてきた。
 表情が出ないから、ナザドにはばれていない。その代わりといってはなんだが、ナザドが俺の言葉に少し驚いていた。

「氷ですか…水と風の適性があるからですかね?」

 精霊様と契約をしたから適性が高いと判断するだろう。でもナザドは忘れているようだ。
 これ、俺たちも最近…入学してから知った話なんだけどな。

「クオーレお祖父様とケルンは体質も似ているから遺伝かもしれないな」
「いでんかも!」

 おでんみたいなイントネーションはやめなさい。食べたくなるでしょ。

 クオーレお祖父様。正しくはクオーレカルド・フェスマルクはサイジャルの湖を凍らせた魔法使いだ。体質的に魔法の反動を受けやすく、強い魔法を使いすぎて衰弱してしまい、ずっと前の戦争で命を落とした。
 俺がケルンに無理をさせたくないのは、クオーレお祖父様と体質が似ているケルンが心配なのだ。
 ただでさえ、那由多の魔力を使っている弊害があるからな…杖にはほんと魔法の補助をもっと頑張ってほしいところだ、

「あー…先代の旦那様…確かに凍らせたそうですからね…」

 理由はよく知らないし、父様に尋ねても詳しくは教えてくれなかったからな。

「ある人と喧嘩をしてそうなった」

 喧嘩で凍らすのか?過激なお祖父様だったんだな。
 頼むからケルンは似て…こいつも俺も過激になるときがあるな…気をつけよう。

 考えるのはよそう。墓穴をがんがん掘っているみたいだ。

「外属性が使えないと『転移』が使えないってのも難儀な話だよな」

 頭を切り替えるついでに思ったことを口にする。
 他の魔法はよほど相性がよくないか、特殊な光や闇、時といったものでない限り程度に差はあるが魔法を使うことができる。
 ただ『転移』だけはやたらと制限が厳しいのだ。

 先生なんだからナザドは答えれるだろう。なんて思ったのだが、そんな簡単な話ではなかった。

「そもそも『転移』は精霊の力が複合しないと発動しませんからね。光や闇の精霊と契約をしていたら一応使えますけど」

 この一応というのが曲者なんだよな。どうも光や闇の精霊様と契約をするか、相性がいいか、四属性中の三属性の精霊様と契約をしないと使えるレベルの『転移』は難しいらしい。
 裏技で何人かの魔法使いが同時に魔法を行使するやり方もあるそうだが、遠くまでは使えないし、魔法使いもかなりの負担になるそうだ。

「属性が複数ないといけないんだよな?それは何の要因でそうなるんだ??」
「さあ?『転移』は今でも研究対象ですからね。謎が解けたら便利になると思うんですが」

 謎が解けたらか…魔法ってのは奥が深いもんなんだな…杖への用事が増えたな。

「まぁ、光か闇の精霊のどちらかが管轄しているのかすらわかっていませんからね。わかればどちらかの精霊から力を貸してもらえるように補助の魔道具も作れるですが、わからないとほとんど効果はないですし」
「光と闇の精霊様?どちらの管轄かわからないのか?」
「わかりませんね。属性の最高位に位置する精霊なんで、どちらかの王の一角が管理しているんだといわれていますけど」

 なるほどな。どちらかの精霊王様の一人が『転移』を担当しているのか。確かに他の精霊様とかは『転移』っぽくないもんな。
 時の精霊様とかは…また違うんだろうな。

「ナザド!教えて!」

 俺たちが話し込んでいたらケルンがへそを曲げてしまったようで、ほほを膨らませている。つついて、空気を抜く。
 慌ててナザドが説明をしだした。

「はい、坊ちゃま。呼び寄せはまず、対象を認識することから始まります。知らないと意味がありません。精霊に呼びかけて連れてこらせるんです。精霊の道という不可思議な場所を通るため、かなりの魔力を使いますし、詠唱も慣れるまではきちんといわねばなりません」

 精霊の道か。『転移』は一瞬だけだが、道を繋いで移動しているようだが…効率が悪いよな、魔力が多くいるってのは。
 やっぱり力を借りる精霊様がはっきりしてないと魔法というのはロスが生じるのかもしれないな。

「慣れてくるとどうなるの?」
「慣れてくればですか?そうですね…精霊に頼めば持ってきたり…ただ、これは僕でもたまになんで、なるべく詠唱はきちんとした方がいいですね」

 ケルンがむっと口を閉じる。
 長い詠唱は覚える気がないからな…魔力でごり押してるけど、杖が本調子なら杖から詠唱を俺が聞いてケルンに教えることもできるんだけど…そうすると自分で覚えようとしなくなるから俺から教えるのはなしだ。

 こういう指導のときはナザドもきっちりと教えてくれるから、ケルンも真剣に詠唱を覚えようとしてくれる。だいたいはしょるけど。

「詠唱は『精霊よ、我が呼びかけに応じ、我が願いを聞き給え。我は欲する。我が手の内に。最も尊き古の精霊よ。我が声を調べとし、目覚めて力を古い給え。トライアレイ』です」
「おっと、精霊様、我がよびか…け?…にこたえ…願いをききたまえ?んっと…トラ…トライ…アウェイ?」
「アレイな」

 案の定はしょって間違えている。まぁ、一度で覚えるなんてケルンにはまだできないから、ナザドが詠唱を懐から出した紙にさっと杖を振って書き込む。電気で文字を書いたから、焦げたような感じになっている。読めるからいいか。

「対象はその辺の石からにしましよう」
「はーい!頑張るね!えーっと…『精霊様、我が…』」

 全然だめだった。

 きちんと読みながら詠唱をしたんだが、まったく効果がない。魔法が行使されないことに、とうとうケルンは半泣きになってしまっている。

「ほら、やっぱり難しいんだって。そのうち使えるようになるから、練習していこうな?」
「エフデさんのいう通りですよ、坊ちゃま。『転移』系は難易度が違いますから」

 目標は高くてもいいが、いきなりできるなんて、俺たちは思っていない。励まして今日は終わらせよう。いつかはできるようになるかもしれないしな。

「…お兄ちゃんを目標にしたらだめ?」

 ケルンが最後の足掻きとばかりにそんなことをいいだす。『転移』は失敗したら大事になるが呼び寄せ系の『トライアレイ』も危ないんじゃねぇか?

「…トライアレイなら失敗しても大丈夫なんで、エフデさんでいいです。大きさも手頃だし」
「手頃いうな…一回だけな。失敗したらもう終わりだからな?」

 人が気にしてることをさらっといいやがって。
 まぁ、失敗しても問題ないならいいけど。まず魔法の行使は無理だろうなと俺は考えた。たぶん、それはナザドも同じだろう。ケルンに納得させて諦めさせるってのが目的だ。

 ケルンの肩からおりて、ナザドの隣に立つ。さっさと終わらせて今日は休ませよう。

「じゃあね、んーと、えーと…精霊様、お兄ちゃんを連れてきて!『トライアレイ』!」

 焦ったのか早口でまた適当に詠唱をした。そんなんじゃだめだろ。

「おい、ちゃんと詠しょ、おひょっ!」
「エフデさん!」

 注意しようとしたら、ぐんっと体が引っ張られる。その感覚がしたかと思うとケルンの手の上に俺は立っていた。
 掃除機で吸われる感じだ。しゅおって音がしそうな吸引力があった。

「わーい!大成功!」
「なんでやねん!」

 思わず便利なつっこみをしてしまう。
 これ以上的確な言葉がみつからない。



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