選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
上 下
202 / 229
第六章の裏話

帰省した夜の一コマ

しおりを挟む
 お兄ちゃんとお家に帰ってきた。でも明後日には帰らないといけないんだって。
 お兄ちゃんが体をもらって初めてのお家だからもっと長くいたいけど、お勉強があるからだめだって。

 お兄ちゃんは先生だから、お休みをとるのも大変なんだってナザドがいってた。ナザドもあんまりお休みをもらえないっていってた。

「お兄ちゃん。今度のお休みっていつ?」
「今日帰ってきたってばっかりなのに、もう次の休みの話か?」

 今日のお兄ちゃんは少しぽわぽわしてる。父様とお酒を飲んでたからかな?お兄ちゃんにすりすりすると、お兄ちゃんもすりすりしてきてくれて、母様がお兄ちゃんが酔っぱらっててかわいいって笑ってた。

「俺の弟が天使すぎる…何でこんなにかわいいんだ?…キラキラやべぇ」

 っていいながら、すりすりしてくれたから、またお酒を飲んでくれてもいいなって思う。いつものお兄ちゃんも優しいけど、お兄ちゃんがぽわぽわしてるのもなんだかおもしろいもん。

 でも、すぐにいつものお兄ちゃんに戻るから酔っぱらってるのは少しだけみたい。

「三樹月後だな。九樹月に一樹月と少しの休みだったはずだ」

 三樹月後かぁ…僕たちは父様がいるからお家にすぐに戻れるから短い休みとかも帰れないのかな?…『転移』って精霊様の契約していったらできるようにならないのか?ナザドに教えてもらおうかなぁ。
 僕の誕生日前には終わっちゃうのはさびしいけど、お兄ちゃんとナザドとミケ君たちがいるもん。がまんしよ。

「世界が産まれた日まではお休みなんだね」
「そうだな。誕生日は、まぁ父様たちなら来るだろからしょげるなって…その前に夜会があるらしいけど」

 お兄ちゃんにはわかちゃうんだった。お兄ちゃんが、色々考えてくれてるのも僕には伝わっているよ。
 僕の誕生日のために…お兄ちゃんの誕生日って僕と一緒でいいのかな?…母様に聞いてみなきゃ。
 あと、夜会ってどうするのかな?

「夜会って何するのかな?」
「そりゃ…社交界デビューなんだし…ダンス…はしなくても、色んな人とおしゃべりしたりとかじゃねぇか?」
「おしゃべりかー…それだけ?」

 でびゅー?はわからないけど、おしゃべりを色んな人とするだけなら、たいくつだなぁ。

「俺も知らないからな。まぁ、楽しんでこいよ」
「え?お兄ちゃんも行くんだよ?」

 お兄ちゃんも僕と一緒に行って、でびゅー?をやって、おしゃべりをするのに。

「俺も?いやいや、俺は留守番を」
「やだ!お兄ちゃんも夜会でびゅー!」
「んー…困ったなぁ…」

 留守番はだめ!
 お兄ちゃんがお顔をかりかりしてるときは、父様たちにだめっていわれて、考えてるときって僕は知ってるけど…でも、お兄ちゃんと一緒にいたいのに。

「お兄ちゃんがいないと僕…やだもん」

 知らない人ばっかりなんでしょ?僕。やだなぁ。

「はぁ…あとで父様と母様に一緒に頼んでくれよ?」
「うん!」

 お兄ちゃんは仕方ないなぁって笑ってる。お顔はないけど、僕には笑っているように思うんだ。僕の頭をなでなでしてくれてるときって声がすっごくやわらかくて、ぽわぽわしてる。酔っぱらってるときよりも、ふわふわしてるかも。

「ほら、布団をちゃんと被って…何だ?」

 お兄ちゃんは僕のわがままをなんだって聞いてくれる。自慢のお兄ちゃんだ。
 だから、今度は僕がお兄ちゃんのお願いを叶えるんだ。

「お兄ちゃん…僕、頑張るね。お兄ちゃんの呪いを絶対に解いてみせるから」

 きっと悪い人がお兄ちゃんに呪いをかけたんだ。お兄ちゃんがすごいから呪いをかけて邪魔をしようとしてるんだ。
 僕だけじゃどうにもならないけど、精霊様と友達になっていけば呪いが解けるんだ。

 だから、頑張る!
 そうしたら、ユリばあ様にお兄ちゃんの体をもらって、抱っこしてもらう!

 誰にも邪魔をさせない。
 絶対に。
 今度こそ。

「…頑張ろうな。じゃあ、明日のために早く寝ような」

 あ、寝る前に!

「絵本を読んで!」

 そういったら、お兄ちゃんは鞄のところに行っちゃった。あれって、お土産をいれてる鞄じゃなかったかな?

「はいはい…あった…ペギン君の新しいのを読んでやろう」
「新しいの?いつ描いたの?」

 とととってお兄ちゃんが絵本を持ってベッドに戻ってきた。持っていたのは僕の知らないペギン君の絵本の表紙だ。
 お兄ちゃんってば、いつのまに描いたんだろ?

「ふふふ…ケルンが授業を受けてるときは暇だからな。こつこつ描いてるんだ…ロウもあるが、どっちがいい?」
「ペギン君!ペギン君のお兄ちゃんはペギン君のお家に帰ってきたんだよね?」

 ロウは漫画だから、また後で読む。絵本はお兄ちゃんに読んでもらうから面白いんだ。お兄ちゃんの読み方って一番上手だもん。
 映画を作るときにペギン君の演技もお兄ちゃんのやり方を真似っこしたからきっとみんなほめてくれたんだと思うなぁ。

 それに、ペギン君のお兄ちゃんがお家に帰ってからのお話が読みたかったからすごく楽しみ!

「それじゃ、読んでやるよ。あるところに、まんまるでかわいいペンギンの」

 お兄ちゃんが絵本を読んでくれるのを聞きながら、僕はいつのまにか眠ってしまっちゃった。
 夢の中で一人ぼっちの誰かと話したと思ったけど…またすぐに忘れちゃった。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...