196 / 229
第六章 ケモナーと水のクランと風の宮
問答
しおりを挟む
ふわっと風をまとって降りてくる。
少女にも少年にも見えるが、何ともいえない気品があった。
それは絶対的な強者が持つ余裕にも取れるほどの威圧感すら混ざっている。
人外。その二文字が的確な存在だ。
こういう存在はこれで三度目の遭遇となる。天使のおねぇさんと最初に出てきた水の精霊様。そして、今回だ。
マリーヌさんも美人だったが、同程度の威圧感かと聞かれたら、違うと答えるだろう。
鈴のような声とかしていそうだ。似合いそうなのは、聖歌隊だろうな。聖歌隊とかに混ざっていても目立つほどの美形だけど。
体のラインを隠すほど大きめな真っ白なワンピースみたいな服だから神秘さもでているんだろうか。
草原に足をつけ、風の精霊様は口を開いた。
「あぁぁーん!待ってたわよぉー!」
声、ひっく!
は?待って、嘘だろ!めちゃくちゃ声が低いぞ!高めに出してるつもりなんだろうが、どうやってもおっさんじゃねぇか!
「というか、何でおっさん声でその見た目でしかも女言葉とかどこからつっこめばいいんだよ!チェンジだ、チェンジ!」
黙っていようと思ったが黙っていられない。
ケルンがつっこみとかしないから、そのまま流される気がしてならないんだが…チェンジで!
「ちょっと…あんた誰よ?…その姿でここに喚ばれるなんて」
眉をひそめ、声もさらに低くなりながら、風の精霊様は俺を指さす。その指し方なんだが、普通にまっすぐ指すのではなく、一度唇に人差指をあててから、二、三度空中で指先を振ってから俺を指さした。
つんつんなんて小声でいいつつだ。
背筋に寒気が走った。
「僕のお兄ちゃん!エフデっていうの!借り物?の体なんです!元気な体は今度貰うの!それで僕はケルンです、初めまして!精霊様!」
「お兄ちゃん?健康な体?…ちょっとわかんないんだけどぉ…ケルンに兄なんていたの?」
「いたよ?ね?」
実はケルンの心臓には毛でも生えているのか、スルースキルとか生えてきたんじゃなかろうか。いや、こういう存在を知らないから普通に対応をしていると考えるべきか。
仮にも精霊様なんだし…挨拶だけはしておこう。
「エフデといいます…どうも」
頭を下げて挨拶をすれば、風の精霊様は眉をよせていた。
「ちょっと待ってなさいねぇん。かわいい風の子たち教えなさい」
ふわっと風とともに初級の精霊様たちが集まってきた。たくさんいるんだな。ん?ケルンがクスクスと笑っている。
「何で笑っているんだ?」
「え?だって、お兄ちゃんが有名人だって…はつめいおう?っていわれてるんだって」
「発明王?」
「でもね、知らないって」
発明王っていわれてるなんて初めて聞いたぞ。
知らないって何だ?
そう思うとケルンが右手で俺に触れる。
『お兄ちゃんがどこにいるかって。体の場所とかわからないって…ないんだね、やっぱり』
『そりゃ、知らないだろ…ないんだよ。当たり前だろ』
しょぼくれた顔になるから右手をぽんぽんと、軽く叩く。あんまり俺にこだわるなっていってんのにな。
「誰も知らないのぉん?変ねぇん…噂ならあるのね?」
「噂?風の噂とかですか?」
「そうよぉ。風の噂もあたちたちの管轄なのよぉ。だって、あたちは風の精霊様なのよ?」
風の噂とかも精霊様の管轄なのか。ってことは風の精霊様と契約したら風の噂とか聞いたりできるようになるのかな?
一人称があたちなのは、スルーしよう。
「よっぽどなとこに隔離されてんのね…あたちたちでもわからないなんて…え?何よ?」
不信感がつのりだしたのか、嫌な気配を出しはじめた風の精霊様だったが、途中から空中を見上げて話し出した。
本当に誰と話しているんだろか。
「やだぁぁん!一度くらいいいじゃないのよぉ!あたちはぁ、こういうかわいい男の子と…わかったわよぉ!あんっ!あの方にいうんじゃないわよ!…わかってるわよ、時間があまりないんでしょ。わかってるわよぉ」
えーと…一人称があたちで、声が低く、かわいい男の子が好きと。
ここって地脈とか流れてねぇ…ケルンの魔力を借りるか。
いやいや、落ち着け。ぶっとばしたらケルンが契約をできず風の攻撃魔法が使えない。それはよくないからな。
あと、あの方って存在がいるってのは気になるな。
もしかして、棒神様?…でも、この精霊様は属神の精霊様だったら嫌だなぁ。それでも一応、契約をしたら聞いておこう。
誰かと話していた精霊様は、くねくねした動きをやめ、背筋を伸ばし真顔でケルンに問いかける。
「それじゃぁ、ケルンに問います。貴方にとっての自由って何かしら?」
自由か。また難しい問いだ。
自由というのは人によって捉え方が異なる質問の一つだろう。何に視点を置いて考えるかで答えはかわる。
ケルンにとっての自由。俺が提案すべきなんだろうけど、俺には自由がわからない。
ならば、任せるしかない。さてケルンの答えはなんだろうか。
「お兄ちゃんといること!」
「なんでやねん」
思わずマティ君のように小声でつっこんでしまった。
少女にも少年にも見えるが、何ともいえない気品があった。
それは絶対的な強者が持つ余裕にも取れるほどの威圧感すら混ざっている。
人外。その二文字が的確な存在だ。
こういう存在はこれで三度目の遭遇となる。天使のおねぇさんと最初に出てきた水の精霊様。そして、今回だ。
マリーヌさんも美人だったが、同程度の威圧感かと聞かれたら、違うと答えるだろう。
鈴のような声とかしていそうだ。似合いそうなのは、聖歌隊だろうな。聖歌隊とかに混ざっていても目立つほどの美形だけど。
体のラインを隠すほど大きめな真っ白なワンピースみたいな服だから神秘さもでているんだろうか。
草原に足をつけ、風の精霊様は口を開いた。
「あぁぁーん!待ってたわよぉー!」
声、ひっく!
は?待って、嘘だろ!めちゃくちゃ声が低いぞ!高めに出してるつもりなんだろうが、どうやってもおっさんじゃねぇか!
「というか、何でおっさん声でその見た目でしかも女言葉とかどこからつっこめばいいんだよ!チェンジだ、チェンジ!」
黙っていようと思ったが黙っていられない。
ケルンがつっこみとかしないから、そのまま流される気がしてならないんだが…チェンジで!
「ちょっと…あんた誰よ?…その姿でここに喚ばれるなんて」
眉をひそめ、声もさらに低くなりながら、風の精霊様は俺を指さす。その指し方なんだが、普通にまっすぐ指すのではなく、一度唇に人差指をあててから、二、三度空中で指先を振ってから俺を指さした。
つんつんなんて小声でいいつつだ。
背筋に寒気が走った。
「僕のお兄ちゃん!エフデっていうの!借り物?の体なんです!元気な体は今度貰うの!それで僕はケルンです、初めまして!精霊様!」
「お兄ちゃん?健康な体?…ちょっとわかんないんだけどぉ…ケルンに兄なんていたの?」
「いたよ?ね?」
実はケルンの心臓には毛でも生えているのか、スルースキルとか生えてきたんじゃなかろうか。いや、こういう存在を知らないから普通に対応をしていると考えるべきか。
仮にも精霊様なんだし…挨拶だけはしておこう。
「エフデといいます…どうも」
頭を下げて挨拶をすれば、風の精霊様は眉をよせていた。
「ちょっと待ってなさいねぇん。かわいい風の子たち教えなさい」
ふわっと風とともに初級の精霊様たちが集まってきた。たくさんいるんだな。ん?ケルンがクスクスと笑っている。
「何で笑っているんだ?」
「え?だって、お兄ちゃんが有名人だって…はつめいおう?っていわれてるんだって」
「発明王?」
「でもね、知らないって」
発明王っていわれてるなんて初めて聞いたぞ。
知らないって何だ?
そう思うとケルンが右手で俺に触れる。
『お兄ちゃんがどこにいるかって。体の場所とかわからないって…ないんだね、やっぱり』
『そりゃ、知らないだろ…ないんだよ。当たり前だろ』
しょぼくれた顔になるから右手をぽんぽんと、軽く叩く。あんまり俺にこだわるなっていってんのにな。
「誰も知らないのぉん?変ねぇん…噂ならあるのね?」
「噂?風の噂とかですか?」
「そうよぉ。風の噂もあたちたちの管轄なのよぉ。だって、あたちは風の精霊様なのよ?」
風の噂とかも精霊様の管轄なのか。ってことは風の精霊様と契約したら風の噂とか聞いたりできるようになるのかな?
一人称があたちなのは、スルーしよう。
「よっぽどなとこに隔離されてんのね…あたちたちでもわからないなんて…え?何よ?」
不信感がつのりだしたのか、嫌な気配を出しはじめた風の精霊様だったが、途中から空中を見上げて話し出した。
本当に誰と話しているんだろか。
「やだぁぁん!一度くらいいいじゃないのよぉ!あたちはぁ、こういうかわいい男の子と…わかったわよぉ!あんっ!あの方にいうんじゃないわよ!…わかってるわよ、時間があまりないんでしょ。わかってるわよぉ」
えーと…一人称があたちで、声が低く、かわいい男の子が好きと。
ここって地脈とか流れてねぇ…ケルンの魔力を借りるか。
いやいや、落ち着け。ぶっとばしたらケルンが契約をできず風の攻撃魔法が使えない。それはよくないからな。
あと、あの方って存在がいるってのは気になるな。
もしかして、棒神様?…でも、この精霊様は属神の精霊様だったら嫌だなぁ。それでも一応、契約をしたら聞いておこう。
誰かと話していた精霊様は、くねくねした動きをやめ、背筋を伸ばし真顔でケルンに問いかける。
「それじゃぁ、ケルンに問います。貴方にとっての自由って何かしら?」
自由か。また難しい問いだ。
自由というのは人によって捉え方が異なる質問の一つだろう。何に視点を置いて考えるかで答えはかわる。
ケルンにとっての自由。俺が提案すべきなんだろうけど、俺には自由がわからない。
ならば、任せるしかない。さてケルンの答えはなんだろうか。
「お兄ちゃんといること!」
「なんでやねん」
思わずマティ君のように小声でつっこんでしまった。
10
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる