151 / 229
第五章 影の者たちとケモナー
思春期かよ
しおりを挟む
俺はこの人たちに受け入れられた。それがわかったから他には何もいらない。
変な称号を得たみたいだけど、今までは告知もなかったのに…変な話だ。
「お兄ちゃんってば照れてる」
「照れてねぇよ」
恥ずかしいってのは…ほんのちょっとあるぐらいで、そんなにはない。
とりあえず…用件は終わったんだし午後から体験講義にでたいな。
「おい、ケルン」
「うん!」
ケルンが母様から離れて俺を持ち上げようとしたときだった。
「それじゃ、エフデは屋敷に連れて帰りましょう。せっかく体をもらえたんですもの。私とも一緒に寝ましょう?そうだ。明日はピクニックでも行きましょうね」
いきなり母様がそういって俺を持ち上げた。
ケルンがぽかんとしている。俺も同じようにしている。え?母様は今なんっていったの?
「おいおい。エフデは立派な長男なんだぞ?大人の男だ。だから…夜通しで男同士の語り合いの方がいいだろ?なぁ?とびっきりの酒もあるんだぞ?お前と飲もうとずっと置いてあったんだ。もう成人の年齢にはなってるんだから、飲んでもいいだろ?」
「たぶん、飲めるけど」
飲んだことはないけど、この体なんだし飲めなくはない。
「もちろん、ケルンのときのも用意してあるが、まずはエフデとだ」
なんといって、屋敷に帰ろうと用意をはじめだした。
いや、ちょっと!
「ま、待ってください!俺の体は思念石といって、サイジャルからの持ち出しは禁止されているんです!あくまで借用しているだけなんで」
学長先生からも条件の一つとしていわれたのだ。サイジャルの外へと許可も得ずに出てはいけない。基本的には外出不可だと思ってほしいと。
思念石が貴重だから盗難にあうと困るらしい。俺はその条件を飲んでいた。
「あら?…ねぇ、ティス。いくらぐらいいるかしら?なんだったら、私も『死人事件』のときの債務が残っているから徴収してくるわ…大金貨二千万枚ならなんとかなるわよ」
「そうだな…あのババア…学長が首をふりそうなもの…家宝の品とか渡そうか。エフデの体のためならご先祖もお許しくださるだろう。なんなら、初代様の杖でもいいぞ」
父様と母様の会話が色々と怖い。大金貨二千枚とか小国の国家予算だ。
あと父様もさらっと初代のご先祖様の杖を渡すとかいっているけど、それってこの世界で最初の杖なわけで…歴史的価値はどれほどなんだろう。
「お兄ちゃん、こっち!」
「すまん。抜けれない」
ケルンが手を伸ばしているが母様が渡そうとしない。わかっていてしている。いつもはそんなことをしないのに。
「とりあえず、なんとかしてみせるわ」
「私もだ。息子の体を奪わせなどさせん」
いや父様。これ借り物なんだって。
「とりあえず、連れて帰ろう」
「若様のお部屋をお掃除せねばなりませんね」
カルドも止めないとか!おい、黙ってないで止めてくれよ!
「だ、だめ!」
助けを求めた相手ではないが、ケルンが母様にすがる。
「お兄ちゃんは僕と一緒なの!」
「だめよ…それはお互いつらくなるわ」
ケルンの願いを初めて母様が断った。
俺たちが驚いていると父様が「いいか?」とケルンに、目線を合わせる。
「一緒にいたいのはわかる。だがな…エフデはみての通りだ。誰かに狙われるかもしれないぞ?」
父様のいい分は確かにそうだ。
思念石。棒神様のような棒人間の姿。そのうえエフデということが知られている。
あくまで、通信器具のような物に思われても、体自体が価値がある。
俺だけでなく、ケルンが危険な目に遭うかもしれない。母様の懸念はそこだろう。
それでも俺たちにもいい分はある。
「でも!…でも、一緒にいたもん…ずっと…」
ケルンだってわかっている。ケルンなりに俺を守りたいのだろう。
まったく。こんな小さい子にいわせるなんてな…いや、俺の方が小さいか。
「あ、あの!」
声をかければ母様の腕の力が抜けたから、そのままケルンの元へと飛び込んだ。
「お兄ちゃん!」
「おう。待っとけよ」
軽く話をして、俺の気持ちを二人に伝える。
「できれば、俺もケルンと一緒にいたいです!ケルンは少し天然なんで、ほっとけないんです!」
何をするかわからないし…俺も気になるし…だったら一緒にいるのがいい。
「お願いします!…父様!母様!」
初めて二人を呼べば二人は仕方ないかと笑う。
「ふふ。やっばりね…うちの子たちのわがままって、なんでこんなにかわいいことしかいわないのかしら?」
「わがままといっていいのだろうか?」
「そうね…兄弟そろっていい子に育っているわ」
二人が俺たち目線を合わせる。ケルンは俺がとられると思ったのか強く胸に抱くから苦しい。朝飯が出るからやめてくれ。
「エフデ。約束しなさい。ケルンをしっかりと見守るんだ…あまり発明や無茶はしないんだぞ?とくに作ってからじゃなく、作る前に相談しなさい。心臓に悪いから」
「ケルン。お兄ちゃんのいうことをしっかりと聞くの。貴方は…何か行動する前に他の人の意見を聞きなさい?絶対よ?思いつきはダメよ?」
二人の約束ごとにうなづく。
「わかった。父様に連絡してから作る」
「お兄ちゃんのいうことを聞いていい子にしてる!」
心配そうな二人の顔はあまり変わっていないが、少しは納得してくれたみたいだ。
まぁ、面倒は絶対にかけてしまうからな。
「それと、今度の休みはちゃんと帰ってくるのよ?」
「許可を取るよ」
「お兄ちゃんと帰るね!」
そして両親に抱きしめられた。
くすぐったい気持ちで、ケルンを二人に任せて俺はずっと黙っているそいつの元へと歩く。
「よっ」
軽く挨拶をすれば、氷が溶けたようにようやく動き出した。
「あ…あの!エフデ様!」
エセニアは「えっと…あの…」と繰り返すばかりで話が進まない。
この体の利点の一つに跳躍力がある。
それを生かしてエセニアの前の机に飛び乗る。それでも視線はずいぶん下だ。
当然のことだ。もどかしいけどこればかりは仕方がない。
「こうして話すのは…初めてだな」
「そう…ですね…いつもは坊ちゃまに仲介をしていただいてますから」
涙混じりの声を出すエセニアは、まるで小さな女の子に見えた。
「なんだよ、もしかして、さみしいのかよ?」
「さみしくないといえば…嘘になります」
その言葉になんだか嬉しいような気恥ずかしさがあった。
これでさみしくなんてないといわれたら、俺が馬鹿みたいだったしな。
「エフデ様。ちゃんとした言葉使いをしてください。坊ちゃまが真似したら困ります」
「善処する」
「あと、猫背になってます。直してください」
「おう」
「それから…それから…」
一生懸命に話題を探そうと必死な姿に思わず笑ってしまう。何かを取り戻そうとしているみたいだが、できれば今を見てほしい。
「なぁ、エセニア。俺が無事に許可を取って帰ったら一緒に遊ぼうぜ?お前も休暇もらってさ」
学長先生なら帰省のときくらいは許可をくれると思う。そのために、あの条件を飲んだのだ。俺としては他の手も考えていたが、先方が出した条件を飲まないとな。
それに他にも出せる札を俺は持っている。それを出してでも許可を取ってみせる。
「観劇でもいいぜ?それか服でも見に行くか?俺が選んでやるからさ」
「…二人でですか?」
「お前が望むなら…まぁ、ケルンに頼み込まないといけないけどな」
「それは…大変ですよ?…三人でも私はいいです…確実でしょうし」
「違いないな。ははは」
二人だけで出掛けるとなると、かなり難しいだろうな。ケルンは俺と離れるのを嫌がるだろう。それなら三人で行動をする方が確実だ。
「エセニア。手を」
「はい」
エセニアの手の上に飛び乗って少しでも視線を合わせる。これでもあと少し足りないか。
「約束な。だからもう、泣くなよ?」
「はいっ!」
力強く返事をしたときには、笑顔だ。俺が好きな心が暖かくなる笑顔をみせてくれる。
どんなときも、ケルンのそばにいてくれた。俺たちにとっては姉のような人だ。
だから…俺だって好きなんだ。
「エセニア…」
「エフデ様…」
徐々に視線があがっていく。
「二人とも仲良しさんだね」
ケルンの言葉にエセニアの手から転げてしまう。
な、仲良しなんかじゃねぇし!
「ば、馬鹿いうな!ただの喧嘩仲間!な!」
「そ、そうです。坊ちゃま。私とエフデ様は…そう!口喧嘩しあう…幼馴染みたいなもんです!」
「そそ!ほら、俺にだらしないとかいうだろ?…そういって、自分だってときどき、寝癖直してなかったりするんだぜ?」
「ちょっと!エフデ様!」
ケルンの前で変な空気を作っちまった!恥ずかしい!な、流れってこええな。
「けんかするほど仲良しさん?」
だから、ちげえって!そんな思春期丸出しなことをするわけがないだろ!
見た目は若いがエセニアだって、もう。
「エフデ様?」
なんでもない!
じろっと見てくるタイミングが神がかっていた。
それでも母様の言葉で表情ががらっと変わった。
「そりゃあ、お揃いの名前にしたんですもの」
「は?母様。お揃いって?」
「あの、奥様…どういう意味でしょう?」
お揃いの名前ってどういう意味だ?エセニアに合わせてエフデって名前をつけたってことか?いや、フェスマルク・ディエルっていうのでつけたんじゃないのか?
「あら?知らなかったの?フィーと話して決めてたのよ?お揃いの名前にしましょって。ケルンが画家として署名するとき、エフデにしたのはね…きっと貴方が帰ってくると信じてたの」
そうだ。母様がそうしなさいといったんだ。ケルンも気にせず署名したんだった。
帰ってくる…って、変ないい方だ。俺がいたみたいないい方だ。母様の顔も…重荷がなくなったみたいにほっとしている。
少し調べてみようかな。家族のことだからケルンには調べさせなかったが、俺ならいいだろう。
「若様のお身体をどうにかしないといけないようですな…娘のためにもなりますし」
「と、父さん!」
「執事長です、エセニア」
だからカルド。やめてくれ!
なんというか気恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
変な称号を得たみたいだけど、今までは告知もなかったのに…変な話だ。
「お兄ちゃんってば照れてる」
「照れてねぇよ」
恥ずかしいってのは…ほんのちょっとあるぐらいで、そんなにはない。
とりあえず…用件は終わったんだし午後から体験講義にでたいな。
「おい、ケルン」
「うん!」
ケルンが母様から離れて俺を持ち上げようとしたときだった。
「それじゃ、エフデは屋敷に連れて帰りましょう。せっかく体をもらえたんですもの。私とも一緒に寝ましょう?そうだ。明日はピクニックでも行きましょうね」
いきなり母様がそういって俺を持ち上げた。
ケルンがぽかんとしている。俺も同じようにしている。え?母様は今なんっていったの?
「おいおい。エフデは立派な長男なんだぞ?大人の男だ。だから…夜通しで男同士の語り合いの方がいいだろ?なぁ?とびっきりの酒もあるんだぞ?お前と飲もうとずっと置いてあったんだ。もう成人の年齢にはなってるんだから、飲んでもいいだろ?」
「たぶん、飲めるけど」
飲んだことはないけど、この体なんだし飲めなくはない。
「もちろん、ケルンのときのも用意してあるが、まずはエフデとだ」
なんといって、屋敷に帰ろうと用意をはじめだした。
いや、ちょっと!
「ま、待ってください!俺の体は思念石といって、サイジャルからの持ち出しは禁止されているんです!あくまで借用しているだけなんで」
学長先生からも条件の一つとしていわれたのだ。サイジャルの外へと許可も得ずに出てはいけない。基本的には外出不可だと思ってほしいと。
思念石が貴重だから盗難にあうと困るらしい。俺はその条件を飲んでいた。
「あら?…ねぇ、ティス。いくらぐらいいるかしら?なんだったら、私も『死人事件』のときの債務が残っているから徴収してくるわ…大金貨二千万枚ならなんとかなるわよ」
「そうだな…あのババア…学長が首をふりそうなもの…家宝の品とか渡そうか。エフデの体のためならご先祖もお許しくださるだろう。なんなら、初代様の杖でもいいぞ」
父様と母様の会話が色々と怖い。大金貨二千枚とか小国の国家予算だ。
あと父様もさらっと初代のご先祖様の杖を渡すとかいっているけど、それってこの世界で最初の杖なわけで…歴史的価値はどれほどなんだろう。
「お兄ちゃん、こっち!」
「すまん。抜けれない」
ケルンが手を伸ばしているが母様が渡そうとしない。わかっていてしている。いつもはそんなことをしないのに。
「とりあえず、なんとかしてみせるわ」
「私もだ。息子の体を奪わせなどさせん」
いや父様。これ借り物なんだって。
「とりあえず、連れて帰ろう」
「若様のお部屋をお掃除せねばなりませんね」
カルドも止めないとか!おい、黙ってないで止めてくれよ!
「だ、だめ!」
助けを求めた相手ではないが、ケルンが母様にすがる。
「お兄ちゃんは僕と一緒なの!」
「だめよ…それはお互いつらくなるわ」
ケルンの願いを初めて母様が断った。
俺たちが驚いていると父様が「いいか?」とケルンに、目線を合わせる。
「一緒にいたいのはわかる。だがな…エフデはみての通りだ。誰かに狙われるかもしれないぞ?」
父様のいい分は確かにそうだ。
思念石。棒神様のような棒人間の姿。そのうえエフデということが知られている。
あくまで、通信器具のような物に思われても、体自体が価値がある。
俺だけでなく、ケルンが危険な目に遭うかもしれない。母様の懸念はそこだろう。
それでも俺たちにもいい分はある。
「でも!…でも、一緒にいたもん…ずっと…」
ケルンだってわかっている。ケルンなりに俺を守りたいのだろう。
まったく。こんな小さい子にいわせるなんてな…いや、俺の方が小さいか。
「あ、あの!」
声をかければ母様の腕の力が抜けたから、そのままケルンの元へと飛び込んだ。
「お兄ちゃん!」
「おう。待っとけよ」
軽く話をして、俺の気持ちを二人に伝える。
「できれば、俺もケルンと一緒にいたいです!ケルンは少し天然なんで、ほっとけないんです!」
何をするかわからないし…俺も気になるし…だったら一緒にいるのがいい。
「お願いします!…父様!母様!」
初めて二人を呼べば二人は仕方ないかと笑う。
「ふふ。やっばりね…うちの子たちのわがままって、なんでこんなにかわいいことしかいわないのかしら?」
「わがままといっていいのだろうか?」
「そうね…兄弟そろっていい子に育っているわ」
二人が俺たち目線を合わせる。ケルンは俺がとられると思ったのか強く胸に抱くから苦しい。朝飯が出るからやめてくれ。
「エフデ。約束しなさい。ケルンをしっかりと見守るんだ…あまり発明や無茶はしないんだぞ?とくに作ってからじゃなく、作る前に相談しなさい。心臓に悪いから」
「ケルン。お兄ちゃんのいうことをしっかりと聞くの。貴方は…何か行動する前に他の人の意見を聞きなさい?絶対よ?思いつきはダメよ?」
二人の約束ごとにうなづく。
「わかった。父様に連絡してから作る」
「お兄ちゃんのいうことを聞いていい子にしてる!」
心配そうな二人の顔はあまり変わっていないが、少しは納得してくれたみたいだ。
まぁ、面倒は絶対にかけてしまうからな。
「それと、今度の休みはちゃんと帰ってくるのよ?」
「許可を取るよ」
「お兄ちゃんと帰るね!」
そして両親に抱きしめられた。
くすぐったい気持ちで、ケルンを二人に任せて俺はずっと黙っているそいつの元へと歩く。
「よっ」
軽く挨拶をすれば、氷が溶けたようにようやく動き出した。
「あ…あの!エフデ様!」
エセニアは「えっと…あの…」と繰り返すばかりで話が進まない。
この体の利点の一つに跳躍力がある。
それを生かしてエセニアの前の机に飛び乗る。それでも視線はずいぶん下だ。
当然のことだ。もどかしいけどこればかりは仕方がない。
「こうして話すのは…初めてだな」
「そう…ですね…いつもは坊ちゃまに仲介をしていただいてますから」
涙混じりの声を出すエセニアは、まるで小さな女の子に見えた。
「なんだよ、もしかして、さみしいのかよ?」
「さみしくないといえば…嘘になります」
その言葉になんだか嬉しいような気恥ずかしさがあった。
これでさみしくなんてないといわれたら、俺が馬鹿みたいだったしな。
「エフデ様。ちゃんとした言葉使いをしてください。坊ちゃまが真似したら困ります」
「善処する」
「あと、猫背になってます。直してください」
「おう」
「それから…それから…」
一生懸命に話題を探そうと必死な姿に思わず笑ってしまう。何かを取り戻そうとしているみたいだが、できれば今を見てほしい。
「なぁ、エセニア。俺が無事に許可を取って帰ったら一緒に遊ぼうぜ?お前も休暇もらってさ」
学長先生なら帰省のときくらいは許可をくれると思う。そのために、あの条件を飲んだのだ。俺としては他の手も考えていたが、先方が出した条件を飲まないとな。
それに他にも出せる札を俺は持っている。それを出してでも許可を取ってみせる。
「観劇でもいいぜ?それか服でも見に行くか?俺が選んでやるからさ」
「…二人でですか?」
「お前が望むなら…まぁ、ケルンに頼み込まないといけないけどな」
「それは…大変ですよ?…三人でも私はいいです…確実でしょうし」
「違いないな。ははは」
二人だけで出掛けるとなると、かなり難しいだろうな。ケルンは俺と離れるのを嫌がるだろう。それなら三人で行動をする方が確実だ。
「エセニア。手を」
「はい」
エセニアの手の上に飛び乗って少しでも視線を合わせる。これでもあと少し足りないか。
「約束な。だからもう、泣くなよ?」
「はいっ!」
力強く返事をしたときには、笑顔だ。俺が好きな心が暖かくなる笑顔をみせてくれる。
どんなときも、ケルンのそばにいてくれた。俺たちにとっては姉のような人だ。
だから…俺だって好きなんだ。
「エセニア…」
「エフデ様…」
徐々に視線があがっていく。
「二人とも仲良しさんだね」
ケルンの言葉にエセニアの手から転げてしまう。
な、仲良しなんかじゃねぇし!
「ば、馬鹿いうな!ただの喧嘩仲間!な!」
「そ、そうです。坊ちゃま。私とエフデ様は…そう!口喧嘩しあう…幼馴染みたいなもんです!」
「そそ!ほら、俺にだらしないとかいうだろ?…そういって、自分だってときどき、寝癖直してなかったりするんだぜ?」
「ちょっと!エフデ様!」
ケルンの前で変な空気を作っちまった!恥ずかしい!な、流れってこええな。
「けんかするほど仲良しさん?」
だから、ちげえって!そんな思春期丸出しなことをするわけがないだろ!
見た目は若いがエセニアだって、もう。
「エフデ様?」
なんでもない!
じろっと見てくるタイミングが神がかっていた。
それでも母様の言葉で表情ががらっと変わった。
「そりゃあ、お揃いの名前にしたんですもの」
「は?母様。お揃いって?」
「あの、奥様…どういう意味でしょう?」
お揃いの名前ってどういう意味だ?エセニアに合わせてエフデって名前をつけたってことか?いや、フェスマルク・ディエルっていうのでつけたんじゃないのか?
「あら?知らなかったの?フィーと話して決めてたのよ?お揃いの名前にしましょって。ケルンが画家として署名するとき、エフデにしたのはね…きっと貴方が帰ってくると信じてたの」
そうだ。母様がそうしなさいといったんだ。ケルンも気にせず署名したんだった。
帰ってくる…って、変ないい方だ。俺がいたみたいないい方だ。母様の顔も…重荷がなくなったみたいにほっとしている。
少し調べてみようかな。家族のことだからケルンには調べさせなかったが、俺ならいいだろう。
「若様のお身体をどうにかしないといけないようですな…娘のためにもなりますし」
「と、父さん!」
「執事長です、エセニア」
だからカルド。やめてくれ!
なんというか気恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
10
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる