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第五章 影の者たちとケモナー
ケモナー大地に立つ
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今の俺の体はケルンではない。
二十五センチぐらいか…三十よりは低いがそれほどの高さの棒人間になってしまっている。
どういうことか理解はできない。それよりもケルンとの繋がりはかなり薄くなっているというのに、なぜか前よりもケルンのことがわかる。
ってか、顔と目で簡単にわかるぞ。ものすげぇ、わかりやすい。
頭も顔も喜びでいっぱいだ。
いつもはゆっくりとした動きをしているのに、どこからその早さを出したのかと思う速度で抱き締められた。
めきって関節?棒人間の付け根か変な音がしたぞ。しかもこの体痛みがあるようだ。
いてぇ!
「お兄ちゃんだぁ!すごぉい!」
「げふっ!落ち着け!」
マスコットのように抱き締められたままぐるぐると、その場で回り出すと遠心力で首がしまる…おふ…なにもないのに吐き気まで…おえ。
「ご、ごめん。お兄ちゃん大丈夫?」
「だ、大丈…うっぷ」
もしかして、ケルンが朝に食べたものがこの謎の体に入っているとでもいうのだろうか。とにかく、落ち着いてほしい…周囲もなんか騒がしいが。
「ボ、ボージィン様!」
「あいつボージィン様を作り出したぞ!」
周りが俺の姿を見て騒いでいる。
確かに棒人間だから棒神様と見間違ってもおかしく…待てよ。棒神様はエフデしか作れないっていわれてたはずだ。それをケルンが作ったとなればケルンの立場が危なくなる。
一芝居うつしかねぇな。
「いやー!学生諸君!授業の邪魔をしてしまって申し訳ないな!俺はエフデというしがない…えーと…そう!作家だ!」
「お兄ちゃん、急にどうしたの?」
驚いているケルンは放置だ。
大声…ってか俺どっから声がでているのかわからないが、ケルンを見ていた全員に聞こえているだろう。
「しゃ、しゃべってるぞ!」
「おい、今エフデっていってたぞ?」
「エフデ様?エフデ様なのか!」
エフデを知っている聴講生が何人かいたから、エフデがいると周りに教えてくれているおかげで、俺に注目がいってくれた。
「証拠はこの見た目だ!俺以外に棒神様を作っているやつはいないだろ?すまないな。えーと…弟の授業が気になってしまったら、スキルが暴発しちまってみんなを驚かせたようで、本当に申し訳なく思う!授業に集中してくれないかな?」
どうせ噂話でフェスマルク家の者が入学しているのはばれているし、エフデとケルンの関係をここらではっきりと別物として認識させるのもありだ。
「お兄ちゃん…えへへ…弟って…えへへ」
ちらっとみれば、すげぇ嬉しそうに笑っているが、俺からすれば…なんで嬉しいのかわからない。ケルンの笑顔をみた何人かのほほが赤くなったのを、見逃さなかった。
無自覚すぎる…!
ざわざわと話を繰り返しているが、エフデがフェスマルク家の長男という情報を流している。それで信じてもらえるだろう。
しかし、あと一歩後押しがほしい。『思念石』をなぜエフデが操作したのかという説明を思い付ければいいんだが。
すると人影ができた。
「エフデさん?いくら坊ちゃまが心配でもわざわざ『思念石』を使う必要はないんじゃないですか?スキルの無駄遣いだと思いますよ?」
助け船はなんとナザドが出してくれた。
「すまんなナザド。ケルンと話をしていたらついな!事故だ、事故!いやー、驚いたぞ、ははは」
ナザドが乗ってきてくれて助かる。警戒もしていないようだが、なにか考えているのだろう。
そのまま騒々しくなってしまった場を手を打ち鳴らして静める。
「はい、みなさーん。才能がかなりあると『思念石』はこうして形を作って通信も可能になるそうですから」
そして銀髪の女の子を指差す。
「ほら、あの子も動かしているでしょ?スキルによっては人や動物を仲介できるので、珍しいことではないです。エフデという名前を知らない人は調べたらわかると、思います」
銀髪の女の子が人形を手のひらの上でくるくると踊らせている。
人形は顔がないが棒人間よりも人間らしく、造形でいっても上だ。次第にそちらに視線が集中していく。
けれども、人形を踊らせている彼女は自慢をするわけでもなく俺の姿をじっと見つめている。自分以外にできたのが悔しいのだろうか?無表情だからわからないが。
そのまま授業が進み『思念石』の実用例などの話がでてくる。歴代の使用者のまとた物があると聞いたエルフの末裔らしき子供たちは目をぎらつかせているほどだ。
なんとかナザドが適当に話を合わせてくれて助かったな…しかし、なんでこの姿なんだろうか。とっさに棒神様に助けを求めたからか?
「ねぇ、お兄ちゃん!」
「ん?どうした、ケルン」
呼びかけに返事をすれば輝くばかりの笑顔で俺を見ている。全体的にキラキラしてるな。
いや、視界の暴力だわ。とんでもねぇ顔だな。
今度は優しく首元にくるように抱き締めるので、苦しくはなかった。
「えへへー!お兄ちゃん!」
「んだよー。うりゃうりゃ!」
「きゃー!くすぐったい!」
抱き込むので首元をくすぐってやれば、とても嬉しそうにはしゃいで笑っている。
ナザドの説明をまったく聞く気がないようだ。さっきから視線が痛い。ねっとりとしていて、これって殺気ってやつじゃないか?
「今日はお風呂一緒に入ろうね!そんで寝るのも!あとね、絵本読む?図鑑?面白そうなのあるよ!明日はハルハレに行こうね!」
「ほら、落ち着け。はしゃぎすぎておねしょしてもしらないぞ」
「おねしょしないもん!…えへへ…お兄ちゃんだ…うれしいなぁ」
でれでれしてるから、肩にのって頭をなでてやれば、さらにぐずぐずにとけた笑顔になっている。髪の毛さらっさらしてんなぁ。
自分に撫でられるって、そんなに嬉しいもんではないと思うんだが。
中断していた授業を再開して、ナザドが急いでこちらにきた。
「あ、あの…坊ちゃま…エフデさん?…ですよね?」
「さっきは助かったぞ。本当に…どうなるかと思った」
少々、不審には思っているようだがケルンの手前、表情には出さないあたり、やはりナザドは優秀なやつだと思う。やべぇやつだけど。
「ナザド!あのね、お兄ちゃん寒いと思うからお部屋に戻っていい?」
「だめです!まだ授業がありますし…そのですね、坊ちゃま…」
「こら、ケルン。ナザドを困らしちゃだめだぞ?すまんなナザド。無理をいって」
飽きたから俺をだしにして部屋に戻るつもりだな。ナザドも授業中に生徒が抜け出したら困るだろう。
「い、いえ、いいんですが…エフデさんって本当にいたんですね」
「お兄ちゃんはいたよ?」
まぁ、信じてなかったろうな。ケルンがいうからエフデがいるとは思っていても、ナザドの中ではいると思っていない。ナザドの場合はあくまで、ケルンがいうから考えもせず受け入れているだけだ。
「ケルン。いいか?…ご挨拶をしても?」
下手に口をはさまず見守ってくれていたミケ君たちはさすがケルンよりも精神年齢が上だ。一緒になって騒がれていたら収拾がつかないところだったからな。
それでも気を使って壁になることで俺とケルンを隠そうとしてくれている。いい子たちだ。
「こちらこそ遅くなってしまってすまないな。ミケ君とメリアちゃん。ケルンがいつもお世話になっている。これからも仲良くしてやってくれな?」
「こちらこそ世話になっています」
「お話しできて光栄ですわ!エフデお義兄様!」
二人は貴族に対する礼を俺にしてくれる。別に俺は貴族でも人間でもないんだが、やはりお辞儀でも所作が綺麗だな。ケルンはまだ頭がふらつくから、練習あるのみだ。
「アシュ君は…苦労をかけるね。これからも頼むよ」
「…弟君にもうすこしだけ落ち着くようにご指導お願いします」
名前をいったら、びっくりしていたがケルンが話したと思ったのか心苦しい要望をだしてきた。
逆に指導してくれ。
「マティ君だよな?お父さんにぜひ、仲良くしたいと伝えてほしい」
「はい!任せたってください!きちんと伝えます!」
新しい友達になったマティ君にも挨拶をしたからようやく心落ち着けていえる。
美少年と美少女に、囲まれたこの状況をどうにかしてくれ。おかしい。ケルンがみていたときは思わなかったが、なんだこの美という暴力。
その中でも断トツで顔が整っていてとろけた顔のケルンが嬉しそうに俺を見ている。
「お兄ちゃん、それでね」
「あ、あのすいません」
ナザドが申し訳なさそうに…そういや何かいいかけていたな。
「なーに?」
「そろそろ『思念石』を回収させてもらえますか?」
あ、そうか。授業の流れからして『思念石』の回収か。
感覚的にこの体から離れたら、ケルンの中に戻るだけのようだしさっさと戻りたい。
「え?…返さないとだめなの?」
「あの。学園の備品ですから…そのですね」
珍しいこともあるもんだ。ケルンがきゅっと目に力を入れてナザドをみた。
「あのね、僕、お小遣いたくさんためたの。それでね『思念石』が買えない?足りない?足りないなら、もうお誕生日の贈り物もお小遣いもいらないから、お兄ちゃんの体をちょうだい?」
「おい、ケルン。それはだめだぞ」
金で解決しようなんて、ケルンが覚えなくていいことだ。というか、それではわがまま貴族のやることじゃないか。
「どうして?だってお兄ちゃんの好きに動ける体だよ?ねぇ、ナザド。お金が足りないなら父様たちに僕からお願いするから!」
「わがまはまをいうんじゃないぞ。売り物ではないんだからな」
今にも泣きそうにしながらいうが…元々ないものを得ても仕方がないだろ。しかも備品だ。
ナザドをみれば、俺の気持ちを汲んでくれたのか、灰色の杖を取り出した。
「とりあえず、解除の」
「や!」
俺をナザドから隠すようにして背を向けた。苦しいから、あんまり、力を込めないでくれ。
「お兄ちゃんの体だもん!絶対にや!」
「くる…しい」
「坊ちゃま。エフデさんも、苦しがってますから、お渡しください…楽にしますから」
そのいい方はやめろ。
「やったら、やぁ!やだもん!やぁぁ!」
あー。とうとう泣き出した。一度泣くと落ち着かないんだぞ。
今はケルンの体ではないからか、感情は伝わるがつられることはない。
「ナザドなんか…ふぇ…きらいだ…ひっく」
あんまりにもひどく泣くから、なんとかはいでて、首元に抱きついて、頭をなでやる。体がびしょびしょだが仕方ないな。
あと、声かけないと。
「泣くなって。よしよし…おーい、ナザド。死ぬのやめて少し話そうや」
杖を自分にむけて自殺しようとしているナザドをなんとか踏みとどまらせないとな。
「ケルンもだぞ?ナザドは先生なんだ。学園のものを勝手にはできないんだろ?泥棒になってしまうじゃないか。よく考えてみろ。ナザドは悪くないだろ?…そしたらどうするかわかるだろ?」
「…ひっ…ぅ、うん…ごめんなひゃい…ナザドば…ぎらいじゃないよぉ…ひっぐ」
「ぼ、坊ちゃまぁぁぁ!」
よし、ナザドが死のうとした影響で地面が荒れただけの被害で済んだな。雑草も生えなくなるから芝生じゃなくてよかった。
「お前ら泣きすぎだろ…でも、よく謝れたな。えらいぞ…えーと…すまないがケルンを頼めるかな?」
生暖かい目を向けてる子供たちってシュールだよな。まぁ、ナザドがあれだからな。
ケルンから離れナザドの肩に飛び乗った。わりとこの体は丈夫でジャンプ力もあるようだ。
「ほらメリア。お前はそっちな」
「はい。お兄様…ケルン様。エフデお義兄様がお褒めなされていたとおり、ご立派ですわ」
「貴族でも自分に否があれば頭を下げるのはよい領主の一歩だからな」
子猫たちに両脇を挟まれて頭を撫でてもらい、多少ぐすぐす泣いているのがおさまってきている。
肉球はうらやましい。
「確かにケルンが甘えるわけだ。いい兄君を持ったな」
「いい兄ちゃんやないか」
「うん!僕の…自慢のお兄ちゃんなの!」
離れているときには、だいぶマシになっていた。やっぱり友達ってのはいいもんだな。
「誰にも聞かれないようにできるか?」
生徒たちと離れた場所にきてナザドに頼めばすぐに魔法を使ってくれた。
「我が精霊よ、汝の体に我らを受け入れよ『トワイライトルーム』」
すると風景が夕焼けに染まった。何の音もしない。ただ、世界が夕焼けの中にあるのだ。
「綺麗な夕焼けだな」
「僕は嫌いですけどね」
ナザドの精霊様の力も使い方で受け方はかわるというのに、忌み嫌っている。精霊様には色々な側面があるだろうが、こればかりは本人しだいだな。
「それで…金でなんとかなるか?ケルンの願いを叶えてやりたい。金なら、俺が作るものを片っ端から売ってくれたらいい…最悪、リンメギンに貸しをつくってもいいぞ」
ケルンには金で解決をさせたくないが、俺がするなら問題はない。エフデが悪徳貴族といわれても痛くもかゆくもない。ケルンに悪評がたたなければいのだ。
「金なら問題はまったくないんですが…それが『思念石』を作るときに貴重な材料が必要でして…学園の備品ではあるんですが…ほぼ学長の私物というか、入手経路を持っているのが学長だけですので…仕方ありません。少し僕が仕事を増やしましょう」
「ん?学長の私物なのか?だったら俺に任せとけ。少し考えがある」
ただでさえ忙しくて屋敷に帰ってこれないときもあったナザドにこれ以上負担をかけるのはしのびない。学長先生になら、俺も切れる手札が何枚かある。それでだめなら、それはそのときだ。
「本当は解除してもらうのがいいんだろうが…俺も動けて嬉しいが…あんだけケルンが喜んでるからな…」
「はい…坊ちゃまのためなら、学長を脅してもいいんですけど…学園を敵に回すより味方でいる方が坊ちゃまのためなんで」
こっそり解除しようものならば、それこそ本気でケルンに嫌われるのがわかっているから、ナザドは解除をしたがらない。手っ取り早い方法を取らず、それでもケルンのために行動しようとする。
さっき死のうとしてたのが嘘みたいな対応の速度だ。
「…お前、ケルンが絡まないと冷静だよなぁ。俺の存在とか受け入れるのもやけに早いと思ったが…ケルンがいったからか?」
「その通りです。坊ちゃまがおっしゃれば、白も黒になりますから。貴方がエフデさんだというなら、間違いないと…まぁ、ボージィンの姿になっていて、魔族とは思えませんし、坊ちゃまを害する者がそんな姿になれるわけはなさそうですからね。坊ちゃまを傷つけたら消しますけど」
殺気はない。なぜなら決定事項だからだ。
「ケルンのためならなんでもやるな…」
ありがたいと思ってついいってしまったが、いうんじゃなかった。
「そりゃあ、僕はケルン坊ちゃまのために生きてますから!そこはエフデさんにも負けませんよ?聞きましたよ?坊ちゃまの中にいたのとか、四六時中坊ちゃまと一緒にとかうらやましい。僕だって坊ちゃまと」
「オーケー。落ち着け?」
こいつの忠誠心がもう少し普通なら俺も安心なんだけどな。
おりをみて更正させよう。
「とりあえず、学園や生徒にはさっきの説明でどうにかなりそうか?」
適当な説明に思えたがあれでよかったのか?
「嘘はいってませんから。そもそも『思念石』は思いを具現化できる力をどの程度使えるかっていうのを見る道具なんです」
「なるほどな…原始魔法の使用者がいないから魔力を測った水晶みたいなもんってことか」
「そうです。現在は判定だけで、指導方法は伝わっていません。原始魔法は想像力がないと使えないそうですから…エフデさんなら誤魔化せるでしょうし、適当なスキルの暴発でも納得させれますよ。事例はありましたからね」
「あるのか?」
だからするすると話が出てきたということか。
「今回みたい話せるということでしたら昔からあるんです。『伝心』スキルを使える『思念石』は、初代の王族と建国貴族は持っていたんです。だから、末裔である坊ちゃまが別に『思念石』を通話できるように変化させるのは問題ないです…それが動いているってのは、前代未聞ですが、誤魔化してみせますよ」
「頼む。エフデを利用してくれたらいいからな…しかし『伝心』スキルか」
『思念石』がスピーカーのようになっているってところか。もしかしたら名前の通り『思念』と関係があるのだろう。俺もある種の『思念』に近いものだろうし…引き寄せられたということだろう。
「他のスキルでも似たようなことがありましたけど…今の王も母親とのやりとりが授業中で流れて…あいつら気持ち悪いですよ?愛の証しとか、立派な学生とか、授業のときに話すことじゃないと思いません?」
「いやあのな…」
そこから延々と愚痴が始まりそうだったので、どうにかこうにか授業に戻らせた。
終わり次第、また学長先生の部屋だ。通いまくってるような気がするが、フェスマルク家だからか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明日あげようと思いましたが、更新しておきます。
二十五センチぐらいか…三十よりは低いがそれほどの高さの棒人間になってしまっている。
どういうことか理解はできない。それよりもケルンとの繋がりはかなり薄くなっているというのに、なぜか前よりもケルンのことがわかる。
ってか、顔と目で簡単にわかるぞ。ものすげぇ、わかりやすい。
頭も顔も喜びでいっぱいだ。
いつもはゆっくりとした動きをしているのに、どこからその早さを出したのかと思う速度で抱き締められた。
めきって関節?棒人間の付け根か変な音がしたぞ。しかもこの体痛みがあるようだ。
いてぇ!
「お兄ちゃんだぁ!すごぉい!」
「げふっ!落ち着け!」
マスコットのように抱き締められたままぐるぐると、その場で回り出すと遠心力で首がしまる…おふ…なにもないのに吐き気まで…おえ。
「ご、ごめん。お兄ちゃん大丈夫?」
「だ、大丈…うっぷ」
もしかして、ケルンが朝に食べたものがこの謎の体に入っているとでもいうのだろうか。とにかく、落ち着いてほしい…周囲もなんか騒がしいが。
「ボ、ボージィン様!」
「あいつボージィン様を作り出したぞ!」
周りが俺の姿を見て騒いでいる。
確かに棒人間だから棒神様と見間違ってもおかしく…待てよ。棒神様はエフデしか作れないっていわれてたはずだ。それをケルンが作ったとなればケルンの立場が危なくなる。
一芝居うつしかねぇな。
「いやー!学生諸君!授業の邪魔をしてしまって申し訳ないな!俺はエフデというしがない…えーと…そう!作家だ!」
「お兄ちゃん、急にどうしたの?」
驚いているケルンは放置だ。
大声…ってか俺どっから声がでているのかわからないが、ケルンを見ていた全員に聞こえているだろう。
「しゃ、しゃべってるぞ!」
「おい、今エフデっていってたぞ?」
「エフデ様?エフデ様なのか!」
エフデを知っている聴講生が何人かいたから、エフデがいると周りに教えてくれているおかげで、俺に注目がいってくれた。
「証拠はこの見た目だ!俺以外に棒神様を作っているやつはいないだろ?すまないな。えーと…弟の授業が気になってしまったら、スキルが暴発しちまってみんなを驚かせたようで、本当に申し訳なく思う!授業に集中してくれないかな?」
どうせ噂話でフェスマルク家の者が入学しているのはばれているし、エフデとケルンの関係をここらではっきりと別物として認識させるのもありだ。
「お兄ちゃん…えへへ…弟って…えへへ」
ちらっとみれば、すげぇ嬉しそうに笑っているが、俺からすれば…なんで嬉しいのかわからない。ケルンの笑顔をみた何人かのほほが赤くなったのを、見逃さなかった。
無自覚すぎる…!
ざわざわと話を繰り返しているが、エフデがフェスマルク家の長男という情報を流している。それで信じてもらえるだろう。
しかし、あと一歩後押しがほしい。『思念石』をなぜエフデが操作したのかという説明を思い付ければいいんだが。
すると人影ができた。
「エフデさん?いくら坊ちゃまが心配でもわざわざ『思念石』を使う必要はないんじゃないですか?スキルの無駄遣いだと思いますよ?」
助け船はなんとナザドが出してくれた。
「すまんなナザド。ケルンと話をしていたらついな!事故だ、事故!いやー、驚いたぞ、ははは」
ナザドが乗ってきてくれて助かる。警戒もしていないようだが、なにか考えているのだろう。
そのまま騒々しくなってしまった場を手を打ち鳴らして静める。
「はい、みなさーん。才能がかなりあると『思念石』はこうして形を作って通信も可能になるそうですから」
そして銀髪の女の子を指差す。
「ほら、あの子も動かしているでしょ?スキルによっては人や動物を仲介できるので、珍しいことではないです。エフデという名前を知らない人は調べたらわかると、思います」
銀髪の女の子が人形を手のひらの上でくるくると踊らせている。
人形は顔がないが棒人間よりも人間らしく、造形でいっても上だ。次第にそちらに視線が集中していく。
けれども、人形を踊らせている彼女は自慢をするわけでもなく俺の姿をじっと見つめている。自分以外にできたのが悔しいのだろうか?無表情だからわからないが。
そのまま授業が進み『思念石』の実用例などの話がでてくる。歴代の使用者のまとた物があると聞いたエルフの末裔らしき子供たちは目をぎらつかせているほどだ。
なんとかナザドが適当に話を合わせてくれて助かったな…しかし、なんでこの姿なんだろうか。とっさに棒神様に助けを求めたからか?
「ねぇ、お兄ちゃん!」
「ん?どうした、ケルン」
呼びかけに返事をすれば輝くばかりの笑顔で俺を見ている。全体的にキラキラしてるな。
いや、視界の暴力だわ。とんでもねぇ顔だな。
今度は優しく首元にくるように抱き締めるので、苦しくはなかった。
「えへへー!お兄ちゃん!」
「んだよー。うりゃうりゃ!」
「きゃー!くすぐったい!」
抱き込むので首元をくすぐってやれば、とても嬉しそうにはしゃいで笑っている。
ナザドの説明をまったく聞く気がないようだ。さっきから視線が痛い。ねっとりとしていて、これって殺気ってやつじゃないか?
「今日はお風呂一緒に入ろうね!そんで寝るのも!あとね、絵本読む?図鑑?面白そうなのあるよ!明日はハルハレに行こうね!」
「ほら、落ち着け。はしゃぎすぎておねしょしてもしらないぞ」
「おねしょしないもん!…えへへ…お兄ちゃんだ…うれしいなぁ」
でれでれしてるから、肩にのって頭をなでてやれば、さらにぐずぐずにとけた笑顔になっている。髪の毛さらっさらしてんなぁ。
自分に撫でられるって、そんなに嬉しいもんではないと思うんだが。
中断していた授業を再開して、ナザドが急いでこちらにきた。
「あ、あの…坊ちゃま…エフデさん?…ですよね?」
「さっきは助かったぞ。本当に…どうなるかと思った」
少々、不審には思っているようだがケルンの手前、表情には出さないあたり、やはりナザドは優秀なやつだと思う。やべぇやつだけど。
「ナザド!あのね、お兄ちゃん寒いと思うからお部屋に戻っていい?」
「だめです!まだ授業がありますし…そのですね、坊ちゃま…」
「こら、ケルン。ナザドを困らしちゃだめだぞ?すまんなナザド。無理をいって」
飽きたから俺をだしにして部屋に戻るつもりだな。ナザドも授業中に生徒が抜け出したら困るだろう。
「い、いえ、いいんですが…エフデさんって本当にいたんですね」
「お兄ちゃんはいたよ?」
まぁ、信じてなかったろうな。ケルンがいうからエフデがいるとは思っていても、ナザドの中ではいると思っていない。ナザドの場合はあくまで、ケルンがいうから考えもせず受け入れているだけだ。
「ケルン。いいか?…ご挨拶をしても?」
下手に口をはさまず見守ってくれていたミケ君たちはさすがケルンよりも精神年齢が上だ。一緒になって騒がれていたら収拾がつかないところだったからな。
それでも気を使って壁になることで俺とケルンを隠そうとしてくれている。いい子たちだ。
「こちらこそ遅くなってしまってすまないな。ミケ君とメリアちゃん。ケルンがいつもお世話になっている。これからも仲良くしてやってくれな?」
「こちらこそ世話になっています」
「お話しできて光栄ですわ!エフデお義兄様!」
二人は貴族に対する礼を俺にしてくれる。別に俺は貴族でも人間でもないんだが、やはりお辞儀でも所作が綺麗だな。ケルンはまだ頭がふらつくから、練習あるのみだ。
「アシュ君は…苦労をかけるね。これからも頼むよ」
「…弟君にもうすこしだけ落ち着くようにご指導お願いします」
名前をいったら、びっくりしていたがケルンが話したと思ったのか心苦しい要望をだしてきた。
逆に指導してくれ。
「マティ君だよな?お父さんにぜひ、仲良くしたいと伝えてほしい」
「はい!任せたってください!きちんと伝えます!」
新しい友達になったマティ君にも挨拶をしたからようやく心落ち着けていえる。
美少年と美少女に、囲まれたこの状況をどうにかしてくれ。おかしい。ケルンがみていたときは思わなかったが、なんだこの美という暴力。
その中でも断トツで顔が整っていてとろけた顔のケルンが嬉しそうに俺を見ている。
「お兄ちゃん、それでね」
「あ、あのすいません」
ナザドが申し訳なさそうに…そういや何かいいかけていたな。
「なーに?」
「そろそろ『思念石』を回収させてもらえますか?」
あ、そうか。授業の流れからして『思念石』の回収か。
感覚的にこの体から離れたら、ケルンの中に戻るだけのようだしさっさと戻りたい。
「え?…返さないとだめなの?」
「あの。学園の備品ですから…そのですね」
珍しいこともあるもんだ。ケルンがきゅっと目に力を入れてナザドをみた。
「あのね、僕、お小遣いたくさんためたの。それでね『思念石』が買えない?足りない?足りないなら、もうお誕生日の贈り物もお小遣いもいらないから、お兄ちゃんの体をちょうだい?」
「おい、ケルン。それはだめだぞ」
金で解決しようなんて、ケルンが覚えなくていいことだ。というか、それではわがまま貴族のやることじゃないか。
「どうして?だってお兄ちゃんの好きに動ける体だよ?ねぇ、ナザド。お金が足りないなら父様たちに僕からお願いするから!」
「わがまはまをいうんじゃないぞ。売り物ではないんだからな」
今にも泣きそうにしながらいうが…元々ないものを得ても仕方がないだろ。しかも備品だ。
ナザドをみれば、俺の気持ちを汲んでくれたのか、灰色の杖を取り出した。
「とりあえず、解除の」
「や!」
俺をナザドから隠すようにして背を向けた。苦しいから、あんまり、力を込めないでくれ。
「お兄ちゃんの体だもん!絶対にや!」
「くる…しい」
「坊ちゃま。エフデさんも、苦しがってますから、お渡しください…楽にしますから」
そのいい方はやめろ。
「やったら、やぁ!やだもん!やぁぁ!」
あー。とうとう泣き出した。一度泣くと落ち着かないんだぞ。
今はケルンの体ではないからか、感情は伝わるがつられることはない。
「ナザドなんか…ふぇ…きらいだ…ひっく」
あんまりにもひどく泣くから、なんとかはいでて、首元に抱きついて、頭をなでやる。体がびしょびしょだが仕方ないな。
あと、声かけないと。
「泣くなって。よしよし…おーい、ナザド。死ぬのやめて少し話そうや」
杖を自分にむけて自殺しようとしているナザドをなんとか踏みとどまらせないとな。
「ケルンもだぞ?ナザドは先生なんだ。学園のものを勝手にはできないんだろ?泥棒になってしまうじゃないか。よく考えてみろ。ナザドは悪くないだろ?…そしたらどうするかわかるだろ?」
「…ひっ…ぅ、うん…ごめんなひゃい…ナザドば…ぎらいじゃないよぉ…ひっぐ」
「ぼ、坊ちゃまぁぁぁ!」
よし、ナザドが死のうとした影響で地面が荒れただけの被害で済んだな。雑草も生えなくなるから芝生じゃなくてよかった。
「お前ら泣きすぎだろ…でも、よく謝れたな。えらいぞ…えーと…すまないがケルンを頼めるかな?」
生暖かい目を向けてる子供たちってシュールだよな。まぁ、ナザドがあれだからな。
ケルンから離れナザドの肩に飛び乗った。わりとこの体は丈夫でジャンプ力もあるようだ。
「ほらメリア。お前はそっちな」
「はい。お兄様…ケルン様。エフデお義兄様がお褒めなされていたとおり、ご立派ですわ」
「貴族でも自分に否があれば頭を下げるのはよい領主の一歩だからな」
子猫たちに両脇を挟まれて頭を撫でてもらい、多少ぐすぐす泣いているのがおさまってきている。
肉球はうらやましい。
「確かにケルンが甘えるわけだ。いい兄君を持ったな」
「いい兄ちゃんやないか」
「うん!僕の…自慢のお兄ちゃんなの!」
離れているときには、だいぶマシになっていた。やっぱり友達ってのはいいもんだな。
「誰にも聞かれないようにできるか?」
生徒たちと離れた場所にきてナザドに頼めばすぐに魔法を使ってくれた。
「我が精霊よ、汝の体に我らを受け入れよ『トワイライトルーム』」
すると風景が夕焼けに染まった。何の音もしない。ただ、世界が夕焼けの中にあるのだ。
「綺麗な夕焼けだな」
「僕は嫌いですけどね」
ナザドの精霊様の力も使い方で受け方はかわるというのに、忌み嫌っている。精霊様には色々な側面があるだろうが、こればかりは本人しだいだな。
「それで…金でなんとかなるか?ケルンの願いを叶えてやりたい。金なら、俺が作るものを片っ端から売ってくれたらいい…最悪、リンメギンに貸しをつくってもいいぞ」
ケルンには金で解決をさせたくないが、俺がするなら問題はない。エフデが悪徳貴族といわれても痛くもかゆくもない。ケルンに悪評がたたなければいのだ。
「金なら問題はまったくないんですが…それが『思念石』を作るときに貴重な材料が必要でして…学園の備品ではあるんですが…ほぼ学長の私物というか、入手経路を持っているのが学長だけですので…仕方ありません。少し僕が仕事を増やしましょう」
「ん?学長の私物なのか?だったら俺に任せとけ。少し考えがある」
ただでさえ忙しくて屋敷に帰ってこれないときもあったナザドにこれ以上負担をかけるのはしのびない。学長先生になら、俺も切れる手札が何枚かある。それでだめなら、それはそのときだ。
「本当は解除してもらうのがいいんだろうが…俺も動けて嬉しいが…あんだけケルンが喜んでるからな…」
「はい…坊ちゃまのためなら、学長を脅してもいいんですけど…学園を敵に回すより味方でいる方が坊ちゃまのためなんで」
こっそり解除しようものならば、それこそ本気でケルンに嫌われるのがわかっているから、ナザドは解除をしたがらない。手っ取り早い方法を取らず、それでもケルンのために行動しようとする。
さっき死のうとしてたのが嘘みたいな対応の速度だ。
「…お前、ケルンが絡まないと冷静だよなぁ。俺の存在とか受け入れるのもやけに早いと思ったが…ケルンがいったからか?」
「その通りです。坊ちゃまがおっしゃれば、白も黒になりますから。貴方がエフデさんだというなら、間違いないと…まぁ、ボージィンの姿になっていて、魔族とは思えませんし、坊ちゃまを害する者がそんな姿になれるわけはなさそうですからね。坊ちゃまを傷つけたら消しますけど」
殺気はない。なぜなら決定事項だからだ。
「ケルンのためならなんでもやるな…」
ありがたいと思ってついいってしまったが、いうんじゃなかった。
「そりゃあ、僕はケルン坊ちゃまのために生きてますから!そこはエフデさんにも負けませんよ?聞きましたよ?坊ちゃまの中にいたのとか、四六時中坊ちゃまと一緒にとかうらやましい。僕だって坊ちゃまと」
「オーケー。落ち着け?」
こいつの忠誠心がもう少し普通なら俺も安心なんだけどな。
おりをみて更正させよう。
「とりあえず、学園や生徒にはさっきの説明でどうにかなりそうか?」
適当な説明に思えたがあれでよかったのか?
「嘘はいってませんから。そもそも『思念石』は思いを具現化できる力をどの程度使えるかっていうのを見る道具なんです」
「なるほどな…原始魔法の使用者がいないから魔力を測った水晶みたいなもんってことか」
「そうです。現在は判定だけで、指導方法は伝わっていません。原始魔法は想像力がないと使えないそうですから…エフデさんなら誤魔化せるでしょうし、適当なスキルの暴発でも納得させれますよ。事例はありましたからね」
「あるのか?」
だからするすると話が出てきたということか。
「今回みたい話せるということでしたら昔からあるんです。『伝心』スキルを使える『思念石』は、初代の王族と建国貴族は持っていたんです。だから、末裔である坊ちゃまが別に『思念石』を通話できるように変化させるのは問題ないです…それが動いているってのは、前代未聞ですが、誤魔化してみせますよ」
「頼む。エフデを利用してくれたらいいからな…しかし『伝心』スキルか」
『思念石』がスピーカーのようになっているってところか。もしかしたら名前の通り『思念』と関係があるのだろう。俺もある種の『思念』に近いものだろうし…引き寄せられたということだろう。
「他のスキルでも似たようなことがありましたけど…今の王も母親とのやりとりが授業中で流れて…あいつら気持ち悪いですよ?愛の証しとか、立派な学生とか、授業のときに話すことじゃないと思いません?」
「いやあのな…」
そこから延々と愚痴が始まりそうだったので、どうにかこうにか授業に戻らせた。
終わり次第、また学長先生の部屋だ。通いまくってるような気がするが、フェスマルク家だからか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明日あげようと思いましたが、更新しておきます。
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