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第四章 学園に行くケモナー
杖のこと
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興奮気味の先生には悪いけど、気になった単語がある。
杖使い。
魔法使いというならわかる。だけど、わざわざ杖に限定するっていうのが気になる。
「あら?もしかして、お家の人から、聞いてない…ああ、そういえば、フェスマルク家は、あまり教えないんだったけ?…先生らしいわ…そうね、まだ講義も取ってなかったの?」
ぼそりと、先生といったのは、誰のことだろうか。学長先生のことか?
ケルンをフェスマルク家の者だって、他の先生にも伝えるのかと思ったけど、生徒の情報は、共有しないようだな。
その方が、情報規制がとれるのだろうか…悪くないんだが、何かあった時に、それでいいのか?とも、疑問があるんたがな。
確かに生徒の情報を隠すことは大事だ。王族や貴族がいることを考えれば、現在のようにどこのクラスに誰がいるかをわからなくさせるのはいいだろう。
先生たちも…いい人も悪い人もいるだろう。だからこそ、秘匿するのはいい。
けれど、一部しか情報を握っているという状態は腐りやすい。
サイジャルは秘密主義な都市であるからこそ…内部から腐れば気づいたときには、手遅れになっているかもな。
まぁ、ケルンには関係ないことだ。
「じゃあ、魔法の講義を受けたときに、聞くと思うから、大事なとこだけ教えてあげるわ」
「はーい!」
サーシャル先生は授業のようにいうが杖を使う家ってだけで、講義を受けるほど、大事なことなのか?
「杖使いの家といったけど、元々、魔法に杖は使ってなかったの。今でも簡単な魔法は杖を使わないでしょ?クウリィエンシア国のガラハル家が杖を作りだしてから、杖を作る技術が広まったの」
ガラハル家!建国貴族であり、鍛冶師の一族だったな。ハンクの包丁もガラハル家の特注品だが、骨を断つのも簡単だそうだ。
斬るということに関しては、ドワーフにも劣らないそうなのだが、材料の問題か、はたまた作り方や、鍛冶師の腕なのか、耐久性は、あまり良くないそうだ。用途ごとに、刃物をわけなければ、すぐに、傷んでしまう。昔は、もっと良い品質の物があって、それこそ、ドワーフ族以上だったとかを、誇りに持っているんだったな。
サーシャル先生は、自分の杖なのか…赤く染色しているが…柳の木か?その杖を抜いて、思い出すかのようにいう。
「でもガラハルは人々のために杖を作りだしたわけではないの。杖を作りだした理由は、友であるフェスマルクが杖がないと魔法が使えなかったから」
使えない?
「魔法が?杖がないと使えない?ご先祖様がですか?」
先生がいったように、杖は補助であって、杖がなくても魔法は使える。
例えば、無属性の魔法などは、家庭でも使えるお手軽な魔法だ。火をつけたり、灯りをつけたり、子供をあやしたり。
そんなことに、わざわざ、毎回杖を待つか?答えは否だ。
ケルンが魔法を使う時もだが、父様だって、一度も杖をふるって魔法を使っている姿を見せたことはなかったのだ。
杖はあくまでも補助であると思っていた。杖がなければ、魔法を使えないというのは、やはり異質だ。
「これはね、魔法の講義で何度も出る話なの。フェスマルク家の初代、フェスマルクはとても力が強い魔法使いだったのだけど、何故か杖がないと魔法が使えなかったのよ。簡単な無属性ですら、何一つとしてね」
それはかなり変な話だな。
ご先祖様のことだからケルンも首をかしげている。
精霊が魔力を対価に、力を貸して行使するのが魔法だと思っていた。
ならば、杖がないと魔法を使えないというのは、魔力がないからといえるかもしれないが、強力な魔法使いだったのだから、魔力はあったのだろう。
まるでケルンのときのようだが、ケルンは杖があってもなくても使えないのだから。
さらに、先生は、興味深いことを教えてくれる。
「それに魔法使いが杖を持つと普段よりも力が強くなるから、誰しもが、杖を持つようになったの」
普段の魔法よりも強力になる。つまり、補助であると思っていた杖は、ブースターの役割を持つのかもしれない。あるいは、魔力の効率をよくするのか。
なかなか、面白いな。
部屋の様子から、先生の研究対象は杖のようだから、聞いてみるのもありかもしれないな。
「それじゃあ、杖を見せてもらえる?持ってきているんでしょ?」
頷いて、一応あとは装飾をするだけの杖をポケットから出…ん?
「あれぇ?」
なんでだ?
ポケットからズルズルと杖を取り出した。どうみたって杖の形が変わっている。
杖は猫の鍵尻尾のように曲げて作ったのに、真っ直ぐになってしまっている。
ちょうど曲がるところから枝がちょこんと生えてそこに葉っぱがあったから、ユニコーンみたいだと彫りこんだのだが、枝が消えてただの馬にしか見えない。
真っ直ぐなただの棒のようになって、葉っぱも見えない。
というか、内緒で彫っておいた棒神様を隠すようにして葉がぺたりと色まで変えて張り付いている。
先生が固まってしまっている。
いや、だいぶ大きくて元呪木さんの大きさのままなのは許してほしい。
二メートルほどだからな。重かったらケルンでは持てないから、霊木ではあるんだ。
加工前は禍々しくてぬるぬるでも、軽かったからな。霊木なんだ。
形が変わってしまってるけどな!
どう?どう?って感じで葉先がちらちら動いている気がするけど!
ケルンは視界にいれても気にしていないが、俺は気になるんだけど!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
明日から夜の十時に予約投稿していこうと思います。
まとめ投稿の場合は、冒頭でお知らせします。
杖使い。
魔法使いというならわかる。だけど、わざわざ杖に限定するっていうのが気になる。
「あら?もしかして、お家の人から、聞いてない…ああ、そういえば、フェスマルク家は、あまり教えないんだったけ?…先生らしいわ…そうね、まだ講義も取ってなかったの?」
ぼそりと、先生といったのは、誰のことだろうか。学長先生のことか?
ケルンをフェスマルク家の者だって、他の先生にも伝えるのかと思ったけど、生徒の情報は、共有しないようだな。
その方が、情報規制がとれるのだろうか…悪くないんだが、何かあった時に、それでいいのか?とも、疑問があるんたがな。
確かに生徒の情報を隠すことは大事だ。王族や貴族がいることを考えれば、現在のようにどこのクラスに誰がいるかをわからなくさせるのはいいだろう。
先生たちも…いい人も悪い人もいるだろう。だからこそ、秘匿するのはいい。
けれど、一部しか情報を握っているという状態は腐りやすい。
サイジャルは秘密主義な都市であるからこそ…内部から腐れば気づいたときには、手遅れになっているかもな。
まぁ、ケルンには関係ないことだ。
「じゃあ、魔法の講義を受けたときに、聞くと思うから、大事なとこだけ教えてあげるわ」
「はーい!」
サーシャル先生は授業のようにいうが杖を使う家ってだけで、講義を受けるほど、大事なことなのか?
「杖使いの家といったけど、元々、魔法に杖は使ってなかったの。今でも簡単な魔法は杖を使わないでしょ?クウリィエンシア国のガラハル家が杖を作りだしてから、杖を作る技術が広まったの」
ガラハル家!建国貴族であり、鍛冶師の一族だったな。ハンクの包丁もガラハル家の特注品だが、骨を断つのも簡単だそうだ。
斬るということに関しては、ドワーフにも劣らないそうなのだが、材料の問題か、はたまた作り方や、鍛冶師の腕なのか、耐久性は、あまり良くないそうだ。用途ごとに、刃物をわけなければ、すぐに、傷んでしまう。昔は、もっと良い品質の物があって、それこそ、ドワーフ族以上だったとかを、誇りに持っているんだったな。
サーシャル先生は、自分の杖なのか…赤く染色しているが…柳の木か?その杖を抜いて、思い出すかのようにいう。
「でもガラハルは人々のために杖を作りだしたわけではないの。杖を作りだした理由は、友であるフェスマルクが杖がないと魔法が使えなかったから」
使えない?
「魔法が?杖がないと使えない?ご先祖様がですか?」
先生がいったように、杖は補助であって、杖がなくても魔法は使える。
例えば、無属性の魔法などは、家庭でも使えるお手軽な魔法だ。火をつけたり、灯りをつけたり、子供をあやしたり。
そんなことに、わざわざ、毎回杖を待つか?答えは否だ。
ケルンが魔法を使う時もだが、父様だって、一度も杖をふるって魔法を使っている姿を見せたことはなかったのだ。
杖はあくまでも補助であると思っていた。杖がなければ、魔法を使えないというのは、やはり異質だ。
「これはね、魔法の講義で何度も出る話なの。フェスマルク家の初代、フェスマルクはとても力が強い魔法使いだったのだけど、何故か杖がないと魔法が使えなかったのよ。簡単な無属性ですら、何一つとしてね」
それはかなり変な話だな。
ご先祖様のことだからケルンも首をかしげている。
精霊が魔力を対価に、力を貸して行使するのが魔法だと思っていた。
ならば、杖がないと魔法を使えないというのは、魔力がないからといえるかもしれないが、強力な魔法使いだったのだから、魔力はあったのだろう。
まるでケルンのときのようだが、ケルンは杖があってもなくても使えないのだから。
さらに、先生は、興味深いことを教えてくれる。
「それに魔法使いが杖を持つと普段よりも力が強くなるから、誰しもが、杖を持つようになったの」
普段の魔法よりも強力になる。つまり、補助であると思っていた杖は、ブースターの役割を持つのかもしれない。あるいは、魔力の効率をよくするのか。
なかなか、面白いな。
部屋の様子から、先生の研究対象は杖のようだから、聞いてみるのもありかもしれないな。
「それじゃあ、杖を見せてもらえる?持ってきているんでしょ?」
頷いて、一応あとは装飾をするだけの杖をポケットから出…ん?
「あれぇ?」
なんでだ?
ポケットからズルズルと杖を取り出した。どうみたって杖の形が変わっている。
杖は猫の鍵尻尾のように曲げて作ったのに、真っ直ぐになってしまっている。
ちょうど曲がるところから枝がちょこんと生えてそこに葉っぱがあったから、ユニコーンみたいだと彫りこんだのだが、枝が消えてただの馬にしか見えない。
真っ直ぐなただの棒のようになって、葉っぱも見えない。
というか、内緒で彫っておいた棒神様を隠すようにして葉がぺたりと色まで変えて張り付いている。
先生が固まってしまっている。
いや、だいぶ大きくて元呪木さんの大きさのままなのは許してほしい。
二メートルほどだからな。重かったらケルンでは持てないから、霊木ではあるんだ。
加工前は禍々しくてぬるぬるでも、軽かったからな。霊木なんだ。
形が変わってしまってるけどな!
どう?どう?って感じで葉先がちらちら動いている気がするけど!
ケルンは視界にいれても気にしていないが、俺は気になるんだけど!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
明日から夜の十時に予約投稿していこうと思います。
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