選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第四章 学園に行くケモナー

クーリングオフはききますか?

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「はーい、次は、ケルンくーん?起きてるかなー?」
「はーい!」

 四百…何人目だったかな…数えてないっていうか、三匹の子豚が月からやってきたアヒルと冒険する話をしていたらケルンが喜んでいたもんで…一応聞いてはいたんだけどな。

 ケルンが聞いていなくても俺は聞いているし、ケルンが視界にいれさえすれば俺は見えている。
 脳っていうのは一瞬の見聞きですら記憶する。それを『思い出せる』か『思い出せないか』だけの問題だ。
 その点、俺がいればその問題は関係ない。

 流石に、最後ということにはならなかった。
 逆にいえば、ケルンの後に控えている十何人かは、七千よりも上なのか…なかなか、魔力の高い子が多いんだな。それにこの部屋には、やっぱり聞いた人数より多いみたいだ。数を数えているのは、俺だけだろう。
 ここまで、名前を呼ばれなかったので、人数を把握しやすいのもある。

「ケルン君。じゃあ扉を開けて、これだっていう、霊木を持ってきてねー!あ、切り分けてあるから、ケルン君でも、持てるよー?それに、相性がいいと、重さも感じなくなるから安心してね?」

 ケルンが頷いて扉に入ると、色々な樹木の匂いで、屋敷に帰ってきたように感じてしまった。森の中を思い出すな。ランディと、スラ吉元気かな?

 部屋は巨大な倉庫になっていた。室温は暖かくも寒くもない。

 色々な樹木が立て掛けられているのだが、物によっては転がされている。
 角材、丸太、あれは、枝?大きさも長さもバラバラで、土がついていたり、木肌がそのままのもの。剥き出しのもの。かなり、バラバラだ。

 ざっとみれば…うちの屋敷が六個ぐらいの広さか。かなり広いし、歩くだけでも時間がかかりそうだな。
 いくつも通路があり、そこかしこに材木が置かれているため少し薄暗い。天井や地面がうっすらと光っているからケルンが恐がることもないから安心ではあるが…木とか倒れてこないよな?

「広いねー!おもしろーい!」
 走るなよ?
「はーい!危ないもんね!でも…奥まで行くの?」
 そこまで行くことはないと思いたいが…確かにこれじゃ時間がかかるな。

 うーん。どれがいいかな。ところどころ、空いているスペースがあるのは、前の人達が選んだから空いているのか、元々ないのかわからないがな。
 ただ、入り口近くの空きスペースの多さで、だいたい、みんな適当に近くから選んだかと思ってしまう。
 入り口にあるのは、悪くはないんだけど、そこまでいいかな?というものしか並んでいない。

「んー…」
 気に入るのはないか?
「ない!」
 だよなー…ピンとこないもんな。
「気に入ったのを持っていけばいいって…あれー?…」

 何だ?一瞬、首がちりってしたぞ?

「なんか、ぴりってした…うん…奥に行こ!」
 お、おう。
「どこかなー?どこかなー?そこかな?」

 歌をうたいつつ、チリチリが強くなる方へ歩いていく。五分ほど歩いた先には、それまでどこか乱雑に置かれていたのが嘘のようにきちんと並んでいる木材が置いてある。
 お、ナナカマド。樫もある。これは…柳かな?

 でも、これじゃないな。俺ですらわかる。もっと、奥かな?

 そこのエリアからは地面は光っていない。それどころか、天井の灯りも、全面からぽつりぽつりといくつかの魔道照明があるだけに変わってしまった。

 少し薄暗いけど、魔道照明は、きちんと天井についているし、もう少し奥に行けるか?
「行く!もう少しー、奥にいるのかなー僕の杖ー」
 正確には材料の材木な。

 チリチリと首の後が一段と強くなっていく。そして、かなり埃っぽい空間に、目的のその木は置いてあった。

 黒く変色していて、明らかに、呪われています。むしろ、触ったり装備したら、祟ります。という風に見えるほど、その木は、汚れと、なんともいえない、薄汚さを持っていた。
 何せ、その木の前だけ、埃が積もりに積もっていて雪?というほどなのだ。一体、何年以上、誰もこの前に立っていないのかというほどだ。

「僕を呼んだ?お兄ちゃん?どっち?」
 は?なにいってんだ?

 いきなりケルンが薄汚い木に話しかけた。
 返事はない。返事はないんだが…ケルンは何度か頷いた。

「僕、君にする!」
 えー…いいけどよ。

 切り分けてあると聞いたのだけど…明らかに、苗木、といっても、ケルンの背丈よりも二倍以上大きな木なんだが。

 でも、ケルンはこの木がいいと思ったのだ。なにがよかったのかよくわからないが…利点はあるちゃある。

 乾燥しているから、削りやすそうだし、これだけ古くて、元の樹木が何だったのかもわからない、どちらかというと樹木というより、呪木と思えるけど…これだ!っていう物がないのだ。どれでもいいけど、これが一番、面白そうだったのは確かだ。

 あと、ここまで来たら、これでいいかな?と。ケルンも疲れているし、早く済ませて休ませてやりたい。

 ただ、一点だけ腑に落ちない。

 彫刻していると、色んな種類の材木を触ることがある。そのため似たような種類の木とかがあれば、どんな品種か予想というな、その木の表情と呼ぶべきものがわかるものだ。
 でも、この木からは、何も見えない。ぼやけているどころか、言葉にするとしたら完璧に閉じている状態にみえる。

 だからこそ、面白いと思うのはある。どんな表情になるのかを考えると、楽しくなってくる。
 ただ、素手では触りたくない。

 ケルン。確か手ぶくろがポケットに収納して。
「重いかな?…あ!軽い!…えっ」
 行動力!早いから!

 手ぶくろをさせようと声をかけだしたら、すでに木に触れていた。持った瞬間、ボロボロと、紙が落ちてきた。紙?何で紙が?

 よく見ると、お札のような、何かの詠唱がびっしりと書かれた紙だった。

 早まったかもしれない。でも、持ってしまってから、肌にひっついたように離れてくれないような感覚だ。
 ケルンは呪われてしまった!
 なんて、な。ははっ。違うよな?なっ!

「ベタベタするね!あはは」
 ひぃぃ!司祭様ぁ!

 速攻で外に出るように提案した。
 司祭様に頼んでお祈りしてもらいたい。ケラケラ笑ってるケルンは気づいてないが…あきらかに揺らしてないのに、木が揺れた。

「はーい、ケルン君がえら…」

 扉をあけて、先生が確認してくれるようだ。
 でも、絶句している。

 やっぱり、呪木かな…少し熱いんだけど…き、気のせいだよな!
 木だけに!

「ケルン君。それは返した方がいいわ。ダメよ。それは、ダメ」

 間延びをどこかにやったのか、真剣に先生がいってきた。
 まさか、さっきの洒落が聞こえたのだろうか。

「大外れでもないわ。それは、不加工品なの。ね?違うのにしましょ?サンザシとか、ナナカマドとかも残っていたでしょ?寄生木の霊木のも」
「これでいいです!頑張ります!大丈夫です!ね?」

 先生が、この木はダメといってから、木がぶんぶんふってないか?え?この木が、離れたくないと思ってるのかな?それともケルンが振り回した?

 振り回したと思いたいが、違うとわかる俺は色々つらい。

 むしろ、これ以外の木選んだら、この木に祟られる気しかしない!
 木だけに!

 現実逃避しても、木の動きがが止まらねぇ!二度目の洒落でも、自分でもまったく笑えねぇ!

「わかったわ。でも、明日までに加工ができなかったら、もう一度この授業を受けてね?いい?無理だと思ったら、すぐにでもいいわ。私の研究所は、中央棟の十五階。507号室。サーシャル先生の研究所はどこですか?と聞いてくれたら、連れていってもらえるはずよ」

 先生は、どうせ無理だろうなっと、顔に書いていた。

 というか、気づいて。動いてるから。

 あと逆効果だ。ケルンはそういう顔をされると、逆に何とかやってやる!ってなるんだ。
 俺だからか?完成させたくなってきているぞ。

「はい!サーシャル先生!ありがとうございます!」

 杖作りの為に、一度部屋に戻ろう。

 あと、杖にする呪木じゅもく、じゃなかった、樹木さん…なんか、ぬるぬるしてきたんだけど…木の油だよね?瘴気的な何かではないよね?

 あと気のせいか、よろしく!みたいに枝をふっているんだけど、え?俺にじゃないよな?風だよな?な?
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