選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第四章 学園に行くケモナー

寮生活の初日

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 停学回避をした後で、衝撃な事実を知ってしまった。
 まさか、あの母様が、大陸一の剣士だとは思わなかった。いつも、にこにこと、淑女の鏡みたいな母様なのだが、そんなにも強かったのか…意外だったな。

 あ!だから、ヴェルムおじさんを平手打ちで、一回転させれたのか!

「キノコ元帥のとき?」
 そう!あのときだ!

 反抗期はおとなしくしよう。むしろ、反抗期はないかもしれない。

 そして、衝撃がある中で、結局、夕飯になるまでだらだらとお喋りをしていた。
 ハンクの手料理を受け取ってきたミルデイと、みんなで食堂で食べた。

ただ、ミルデイは顔色を変えていたけど。

「坊ちゃま…そいつらはどこに?」
「わかんないー。気にしないで?」

 周囲が引くほどだが、ケルンは何も気にしていない。
 少しは気にしてほしい。

 そんな雰囲気もあってかアシュ君は、遠慮しようとしていたのだろうけど、何故か、五人分の量だったので、みんなで分け合って食べた。

 ロールキャベツを、コンソメで煮るのではなく、かつおだしかな?口当たりが優しめだった。
 そして、ピリ辛のソースを好みでかけて食べるのだが、アシュ君が、かなり辛いのが好きなのか、ほぼソースのロールキャベツが浮いているような状態なのに、美味しそうに食べていた。
 ケルンは辛いのが苦手だが、ミルデイが辛い物も好きなので、ついていたんだろうな。

 入学早々、授業と講義があるミルデイと、体験講義を受けてきていた三人とは違い、探検という名の動物達の触れ合いと、遊ぶ場所探しに必死になっていたからよくないな。

 学長室にお邪魔したのは、今日限りにしよう。
 ご先祖様たちみたいなことは、しない。

 というより、何で、基本的に破壊行動しかしないのだろうな…今度、うちに帰ったら『大嵐』って呼び名がついているご先祖のことを聞いてみよう。学園を『建築』スキルで建築したというなら、屋敷のどこかに、製図の本や書類やらがあるかもしれない。まだ入ってはいけないといわれた旧館とかが、怪しいんだけどな。

 食事のあとは、消灯時間まで遊ぶ!…わけにはいかず、すぐに部屋に戻ることになった。遊戯室とかもあるんだけど、停学処分を受けかけたのもあって、部屋に戻ることにしたのだ。

 部屋は、中央棟の二階にある。中央棟は、公式では三十階とあるそうだが、部屋の作りから、本当なのかはわからない。

 一年生は二階、二年生は三階、と、学年があがれば、部屋の階層があがっていくそうだ。

 クラスの書いてあるバッジ、記章が、鍵代わりらしいが、ケルン一人なら確実に迷うだろう。どこも似ているからか、すでにわたわたとしている。

「えっと…ここ?」
 いや、番号みてくれ?違うだろ?
「…迷っちゃうかも」
「ご安心ください。私がおりますから」
「ありがとう!」

 ミルデイがいるなら…いや、いなくても、迷子にならない努力をさせないとな。

 部屋の作りは、どこも同じらしいのだが、壁一面にドアが貼り付けられ、ドアにネームプレートがつけられている。

 内装は、二部屋あり、どちらも十畳ほどか。トイレと風呂は別々についている。
 家電製品はモフーナではあまり発達していないのだが、似たようなもので魔道具として、各部屋に照明器具がついている。
 窓は一つだけついていて、ドアの先にある。おそらく、ドアと窓だけは、外観に合わせているのだろう。実際は、数十センチの間隔でドアがついている廊下に、この大きさの部屋が入るわけがないのだ。

 何故、二部屋かというと、ルームメイトがいる者と、使用人か護衛が部屋にいる場合がある為だ。
 驚いたことに、ミケ君とメリアちゃんの護衛は、入学式のあとに城に戻ったそうだ。そして、使用人を連れてきていないそうで、ミケ君は、メリアちゃん一緒らしい。

 兄妹だからいいんだろうけど、男女別にしないのかときくと、ミケ君やメリアちゃんだけでなく、アシュ君からもいわれた。

「王族をわけるよりは安心」

 逆に不安なんだけど、確かにミケ君たちは襲われても逃げれたし…二人でいる方が安全なのかもしれない。

 さて、ケルンの場合についてだ。
 ルームメイトはいない。希望すれば、使用人用の部屋もあるのでルームメイトと学園生活を送れるそうだ。
 しかし、ケルンの場合は少々事情が異なった。学生寮に入る前に鍵をとりに行くと聞かされたのだ。

「書類にあったケルンは君かな?ごめんねー。他の子は、希望があれば、同室者を決めて、そのあとに部屋を決めるんだけど、君の場合というか…君のお家の関係というか…学校の規則でね…」

 と、男子側の管理人らしいおじさん(リスの尻尾が可愛いと思えるほどに、愛嬌のある見た目四十代の栗毛のおじさんだった)が、申し訳そうにいってきた。
 一応、男女の管理人さんがいるのは、男子と女子で相談や希望が異なるためいいやすい方に伝えれるようにという学園の配慮らしい。

「大丈夫だよー!僕ね、ミルデイと一緒がよかったから、気にしないでください!あ、どんぐりクッキー食べますか?」

 いつでもポケットにおやつを!の精神がここで役に立った。管理人のおじさんは、もそもそと美味しそうに食べていた。おじりすさん(仮名)は、理由をいわなかったが、まぁ、わかるよな。
 フェスマルク家だから。

 絶対、誰かが、何かしたんだろうな。これも帰省したら、必ず聞こう。

 部屋には浴室もあるしかなり広いうえに、清潔で日当たりはどの部屋もいいらしい。
 どういう技法なのかわからないが、学生寮もご先祖様の建築らしいから、こだわったのだろう。屋敷の部屋に少し似ているからな。みんなが過ごしやすいように気を使ったんだろうな。

 お風呂をすませて、ミルデイに寝る前の挨拶をすませて部屋に入れば、ケルンはベッドに横になった。心配した通り、少し熱ぽくなっていたので、念の為にザクス先生の薬は飲んでいる。ケルン用に甘いシロップなので嫌がることもなかった。

「学園って楽しいね!」
 怒られたけどな。
「あ…忘れてた」
 忘れんなよ!大変だったろ!
「だって、驚くことたくさんだったもん!お兄ちゃんもでしょ?」
 そりゃ、驚いたけど…あんまり興奮してると寝れないぞ?
「えー!明日は初めてのお勉強だからしっかり寝ないと!お兄ちゃん、おやすみ!」
 おやすみ…って、寝れ…え?

 ほんの十秒で寝た。
 つ、疲れてたんだ…薬も飲んだし…本当は、繊細なんだぞ…つられて俺の意識もなくなっていく。
 そして、朝になった。
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