選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第四章 学園に行くケモナー

お腹がすいた

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 なんというか、我ながら気が抜ける。

 しかし、問題児が集まるって…たぶん、噂だな。
 少なくてもミケ君やメリアちゃんが問題児には思えない。

 確かに、鎧姿のままとか、女装している同級生がいるが…同じ国の同格の立場を集めた結果ってみた方がいいだろう。

 学園の話をあんまり聞いてはいないけど、そもそも問題児を集めるとか、ないと思いたい気持ちはあるんだけどな。
 ケルンまで問題児と思われているのは少し考えれないからな。
 なにもしてないし。

 サイジャルのことで知っていることは…あんまりないのは確かなんだがな。

 入学条件が魔力量の数値が千以上あること。
もし、千なくても、スキルが五十個あれば、特例で、魔力が五百ほどあれば入学できる。ただし、受ける講義は少なく、魔法系講義での単位は認められない。

 家名を名乗ることは禁じられている。自己紹介で、誰も家名を名乗っていないのも、この校則といえばいいのか、法といえばいいのか、これが守れない者は、罰を受ける可能性がある。

 と、いうことを司祭様に聞いた。
なぜ司祭様からかというと、父様はなぜか学園の話はしたくないというし、母様も本校は大人になってからは知っているだけで、学生の話は司祭様から聞くしかなかったのだ。 

 ふんわりとしか聞けなかったけど。

「あまり思い出したくないな…胃が痛くなる」

と司祭様からいわれた。学生時代は色々大変だったんだろうな。司祭様は優しいからみんなから、頼られてそうだし。

「まぁ…我が身を考えれば当然ではあるがな。問題…としか呼べぬ身だ」

 ミケ君はもやもやとした気持ちがあるんだろうな。深くは聞かないけど、貴族の中に獣人はいないという話に繋がるのかもしれない。

 入学式の時に、獣人の子達もちらほらといたが、この国の顔つきではなかった。
 実際のところ貴族の中には、獣人を毛嫌いしている人がいる。

 クウリィエンシア皇国も、元々は人族至上主義といえばいいのか…人でない者は、家畜とか、魔物扱いだった。

 キャスの授業でも受けたが、クレエル王朝時代が一番酷かったのだが、現在も良くいえば懐古主義、悪くいえば差別主義が、貴族の中で流行りだしているそうだ。

 これが貴族!という服装や、派手な夜会なんかも最近、流行っているそうだ…古めかしいよな…変なものを流行らせた人がいるみたいだが、迷惑だな。

 そんな現状で、もしかしたら、王族だからさらに、偏見の目があるのかもしれない。
だから、獣人であることが嫌なのかもしれない。

 でも、このクラス分けって、悪くないんじゃねぇかな?

「たぶん、問題児とかじゃなくて、自由にしていいよって、精霊様が組を分けたんじゃないかな?」
「自由ですか?」
「だって、精霊様がね、なにも気にせず自由に仲良くなりなさいって僕は思ったんだもん。お兄ちゃんもそうだって!」

 メリアちゃんが、ミケ君の代わりに反応した。
 精霊様が、意地悪するわけがない。もしも、意地悪なら、性格が濃そうなクラスにいれるわけ…天使が一枚噛んでたらわからないが…若干、あの天使のおねぇさんならやりそうかとも思ったけど、あの人は天使だからな。関係ないな。

「僕は建国貴族だからこうしなさいっていわれたことないけど、みんな大人になったら、自由にできないと思うんだー。父様みたいに、忙しくて、色々我慢しなきゃダメなんだと思う。だから、今だけでも、みんなで仲良く友達になればいいってことじゃないかなー?」

 学園に入ったら、友達をたくさん作るのよ!と、母様にいわれた。母様は、学園に入学したかったが、入学できなかったからな。
 友達作りは、学園生活には必要だし、目的の一つだ。
何より、みんな問題児っていっても、貴族社会とかでだろ?だったら、仲良くなれると思ったのだ。

 ミケ君は、疲れたように笑った。

「ふぅ…ケルンは、本当…いや、清々しいまでに…真っ直ぐだな」

 やっぱり、暴論なのかな?ミケ君は頭が良いから…ケルンの語彙で疲れたのかもしれない。お花畑が頭の中にあると、直接いわれたからな。
 花まみれで、春みたいにぽかぽかしてる頭の中って…誉め言葉っていってたけど、この世界では誉め言葉なんだよな?

 ミケ君もメリアちゃんもなんだか嬉しそうにしていると思ったら、一人の生徒がこちらにやって来た。

「少しよろしいですか?」

 胸に手をあて、頭をさげつつ、手を額に当てる…あれ?あれは自分の主に対しての礼だよな?

「君は…えっと…アシュ君だっけ?」

 不審がっている二人にかわって、やってきたアシュ君に声をかけた。
 アシュ君は、ちらりとケルンを見た。

「話は父よりうかがっております。まさか、同じ組になれるとは、精霊と祖霊に感謝をいたします」

 ケルンを無視して二人に話しかけた。
おう。無視をするとは穏やかじゃないな。

「殿下」
「今はただのミケだ」

 ミケ君はかなりご立腹だぞ、アシュ君。尻尾の幻が見える…臨戦体勢だぞ、あの尻尾の動き、
 あと、メリアちゃんの爪がのびたような気がした。

 ちなみに、俺も無視は嫌いだ。

「何で、アシュ君がミケ君とメリアちゃんのこと知ってるの?」

 ケルンが、めげずに再度声をかけたら、若干睨み付けるようにこちらを見つめる。
アシュ君は、眼鏡をかちゃっと音をたててあげる。

「我が家は序列一位、宰相家フェイネン。君のことは、宰相補佐官殿から聞いている。序列三位フェスマルク家嫡子ケルン・フェスマルク」

 序列一位のフェイネン家?
 
 確か…広大な土地を持ってて、お金持ちで、王様に忠誠を誓っているけど…王様にってとこが重要なんだが、王位を継いだ人に対して忠誠を捧げるらしくて、今の王朝でも構わないし、代わりの王朝になったも構わないとかいわれてるんだよな。

 いってしまえば、誰が王でも構わない。王を支えるのが、生き甲斐とも呪いともいわれている国内の文官をまとめている家だった。

 しかし、宰相補佐官?何でそんなエリートな人がケルンのことを知っているんだ?父様とかの関係者かな?

「知らない?」
 知らないな。そんな人に心当たりはないぞ。
「だよねー」

 悩んで唸っていると、アシュ君は鼻で笑った。

「フェスマルク家は、知に優れた者が多く、子供ですら大人に負けないといわれているが…当代は、容姿は別として、まるで一般の子供のようだな」
「うん、僕、子供だからねー」

 あ、やっぱり、そう思う?否定できないんだよな。どっちかというと、普通に生活をしてきてて、貴族らしさってのは、いまいち、わからないんだよな。
 行儀作法だけは、厳しいけど、ケルンの雰囲気とか、ただの子供だと俺でも思うしな。

 他の子は、気品というか、貴族だとわかるぐらい、所作が綺麗なんだよな。あの寝てる…ウォレス君だっけ?あの子も、寝ている姿勢がだらけているのかと思ったけど、背筋とか足先とか、ぴんっと真っ直ぐに伸びている。育ちの良さが出ているといえばいいのかな?

 たしなみとして、なにかしらの武術とかやってるのかもしれないけど、ケルンは一切そういうことをしていない。

 そう思うとケルンは行儀がいいただの子供に見えるよな。
 中身は…那由多の魔力っていうのと、俺っていう知識がいるけど。

 そして決して喧嘩を売ったわけではないんだけど。アシュ君、顔怖いよ。

「一応、いっておくが、家名を出すのは、校則違反になるぞ?」
「ですわね。それと、ケルン様に対して、少々失礼ではないかと思いますけど?」

 お、怒ってるな…二人とも、猫の獣人なのに、虎に見えるよ。今は人の姿だけどね。

「申し訳ありません、殿下、皇女様」

 アシュ君が二人に頭を下げたけど、空気が悪く…って、いつの間にか、クラスの人達がいなくなってる。

 逃げたんだろうな…逃げたい気持ちはわかる。
 でも、せっかくの入学した初日だからな。

 おーい。ケルン。朝から忙しくしてたからお腹すいてねえか?お腹がすくとイライラするからな。
「うん!ねー、みんなお腹すいてる?」

 時間はちょっと早いけど、そろそろケルンのお腹がすいてきた。

 そして、お腹がすくと、いらいらしてしまう。そして、喧嘩をしてしまうのだ。空腹は罪深いものだ。

 仲良くなるには同じ釜の飯を食う!つまり!ご飯の時間だ!

「確かに、朝から食べてないからな」
「そういえば、もうすぐお昼時ですわね」

 お!二人とも乗ってきたぞ!…獣人はよく食べるからな…もしかして、二人は腹ペコキャラなのかもしれない。

 というか、朝ご飯を食べていないだと!
「朝ご飯を食べないと大きくなれないよ!大変だ!」
 しっかり食べないと倒れてしまうもんな!ランディがよくいってたから間違いない!

「ケルンのいうとおりだな。食欲がなくても食べねばならん。でなければ大きくなれない…くくっ…」

 笑いを噛み殺すミケ君は、まだ気まずそうにしている、アシュ君に声をかけた。

「そうだ、アシュも一緒に食事はどうだ?」
「はい、ご一緒させてください」

 アシュ君は、少しほっとしたようだ。
 たぶん、そんなに悪い子ではないんだろうと思う。無理して、宰相家の息子を演じているような…そんな予感がしたから、あまり腹は立っていない。

 無視されたのは少し腹がたったけどな。

 そうして四人で教室を出た瞬間、思わず辺りを見回した。

「では、食堂がある部屋が…一番近くにあるのは…ん?ケルンどうした?」

 ミケ君はポケットから、ハンドブックのような地図を取り出した。部屋数などが多すぎて、地図が分厚い本になっているからな。
 そして、様子がおかしいケルンが気になったようだ。

「え、いや、気のせいかな?」

 視線を感じたような…でも、嫌な感じではなく…んー…なんだろ?
 空気が花とか…ハートの形に見えたんだけど?誰かが魔法とか使ったのかな?
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