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第四章 学園に行くケモナー

友達にはさまれる

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「楽しかったね!」
 そうだな。二人ともたくさん話ができたしな。

 ミケ君とメリアちゃんが遊びにきてくれてケルンはとてもはしゃいでいた。
 俺のことを話したいっていうのも、俺は止めなかった。

 ケルンの希望というのもあるが、二人に秘密をあまり作るよりも協力してもらう方がいいと思ったからだ。
 まぁ、その…俺としてもケルンはちょっと天然なところがあるような気がしなくもない。

 いや、自分のことなんだけどな。
 どうもケルンと俺の間に壁があると感じるときがある。
 俺の知らない間にケルンが宿題を済ませていることがあるらしいのだ。
 ケルンと繋がっているはずなんだけどな…ケルンが起きていれば俺も起きているはずなんだけどな。

 まだ後遺症が出ているのだろうか?

「ねぇーお兄ちゃん」
 ん?どうした?

 ケルンは少し元気がない。理由は簡単にわかった。

「ちょっと寂しいね…」
 …友達を見送るのは初めてだもんな。

 父様に王城まで送ってもらう二人に別れをいうときに、また遊ぼう!と約束をしたが、その「また」がいつになるかはわからない。
 下手をすれば学園には入学するまで会えないかもしれないだからな。
 ちょっとすねた気持ちで玄関先で待っていても仕方ない。
 ミルディがチラチラと声をかけようかと考えているみたいだし、屋敷の中からエセニアがはらはらとして見守っているようだしな。

 …なぁ、ケルン。外に立ったままでいると寒いからさ。ミルディと遊ぼうぜ?
「…うん!ミルディ遊ぼう!」
「はい、坊ちゃま!」

 ミルデイとボール蹴りで遊んだり、途中からランディと遊びにきてくれたスラ吉のドリブルを取ろうとしたり、何故か、ハンクが混ざってバスケになって、スラ吉のダンクシュート見ることになったり…みんなでケルンの気分をあげてくれてとても助かった。

 二人にはしばらく会えないのかと思っていたけれど、しかし、二人は一週間後に屋敷に遊びに来てくれた。

「おはよー!あれ?何で、二人がいるのー!」

 朝食を食べようと食堂に行くと、二人がいたのだ。

 我が家の食事は、忙しかったら仕方ないが、極力、みんな揃ってご飯を食べている。みんなが無理でも、二人とかで食べたり、とにかく、一人では食べてはいけない。

 一人で食事をするべからず。
 初代の当主が決めた家訓で、使用人も一緒に食べるようになっている。

 ただ、そうはいっても、使用人が多かった時代なら朝食は交代で食事ができたが、残念ながら使用人が少ない我が家では、カルドは給仕することが多いため、ほとんど一緒に朝食は食べれない。
 一応、朝はハンクと先にすませて、昼は一緒に食べ、代わりにフィオナが給仕をする。という具合に、変則的ではあるが、食事をすることもあるのだ。屋敷のあれこれをまとめているから急がしい。

 そんな和気あいあいとしているはずの我が家の食卓になぜ、王族の二人が腰掛けて…あ、今日の朝御飯…パンにサラダに…ゆで玉子。そして、ベーコンの代わりに鳥ハム…スープは、ジャガイモに、ネギ根の入ったブイヨンか。

 手に入ったら、米のある食事がでることもあるが基本パン食である。
 腹持ちが悪い?いやいや、ただのパンではなく、ジャガイモをすっていれてあるパンとか、全体の量とかで、昼まで持つから問題ない。白パンのふわふわもいいけど、穀物入ってたりする方が、栄養バランスはいい。

「おはよう、ケルン」
「おはようございます、ケルン様」

 まるでうちの子かという具合に、自然と二人が挨拶しながらも、朝御飯を食べたくてそわそわしているのがわかった。
 二人の間が空いていたから、座っていいのだろうか?

「二人の間にお邪魔しまーす!」
「ここはケルンの席だと聞いたんだが?」

 え?いやいや、空いているとこに座るのがうちの流儀なんだけど?
「んー?お兄ちゃんの席は決まってるでしょ?」
 …あのちっちゃいのか?

 にこっと目があった母様の隣にある古めかしい小さなイスは、俺のイスらしい。
 どこから、持ってきたのか知らないけど、父様、ケルン、母様、俺って具合に向かい合わせに座ることが多い。
 というか、母様の横に俺の席が確保されているらしい。

「ほら、ケルン。早く食べないと」

 母様のいうとおりだな。ほら、ケルン。いただきます!
「いただきまーす!」

 二人も食べだしたけど、二人の食べるスピードはやっ。

「あらあら、二人とも」
「ミケ君もメリアちゃんもはやいよ?」

 母様も驚いたようだ。しかし、何でそんなに、飢えてるの?王族の人って大食いなのかな?そう思って尋ねると、ミケ君は、そのままパクパクと食べて、メリアちゃんは、ハッとしたように、止まって、口元をハンカチで押さえた。

「は、はしたないのは、わかっているのですが…その…」

 いや、メリアちゃん。遠慮はいらないんだけど、綺麗に食べてるし、問題はないんだけどね、何か、フォークとかナイフがやたらと早く動いてるから、びっくりしただけだから。

 ミケ君はミケ君で、テーブルマナーがきちんとしているのだけど、口を大きくあけてる…男の子らしいというか、ハグハグと食べてるように見えてしまう。それなのに、きちんとしたテーブルマナーなのだから、流石、皇子様だな。

「申し訳ありません。とても美味しくて」

 美味しいけど、それだけかな?

「…エレスがうちに二人を預けるほどだものね…あの人もまた王城に戻ったし…大変だったわね」

 エレス様か…ケルンは気に入っているからいいんだけど、俺はなんか苦手だ。

「ねぇ、ミケ君、なにがあったの?」
「ちょっとな…昨日の夜から何も食べれてなくてな。我慢できない…しかし、ティストール様から聞いていたが…朝食が温かいと、こんなにも美味くなるんだな」

 昨日の夜から食べてない?健康診断か何かあったのだろうか?
 朝食が温かいのは、普通…ではないか…貴族の食事でも、かなりの確率で冷たいだろう。だって、揃って食べないからな。作りおきの食事を食べることになるだろう。

 そして、王族は毒味をして、ある程度時間をみて、即効性と遅効性であるかの判断をしてから、食事をする。温かく食べることができるのは、目の前で温めれる物だけだろう。

 ただ、ハンクはその気になったら、冷たい料理も出せるけどな。冷麺とか。ひやじるとか。

「今は寒いよ?お兄ちゃん、僕冷たいのは食べたくないよー」
 あ、いや。俺も食べたいわけじゃないからな?お腹を冷やさないようにしないといけないぞ?
「うん!あ、父様はお仕事?」
「ええ。お昼には戻ってくるわ…エフデ、内緒よ?」

 母様の言葉にどきっとした。秘密にしろってことか。ケルンには流さないけど…毒味で引っ掛かったんだろうな。

 急遽料理人を、変えても…食事をする気力はなくなるからな。

「そういえば、ミルディはもうご飯を食べたの?」
「はい、坊ちゃま。ランディさんと食べました」
「んー…学園じゃ一緒に食べようね?」
「給仕をしないといけませんが…わかりましたから、そんなお顔をしないでください」

 ミルディとはそれこそ全然食べれない。いつも、給仕役をしてもらっているからな。ケルンは不満なのだ。
 そもそもミルディが入学式にでれないのも不満の一つなのだ。

 執事は例え入学しても、重要な式典には出れないらしい。そういう決まりだといわれたが、俺も不服だ。
 学園内では、身分はないといいつつ、実際は身分格差はあるものだ。

「待っている間は控え室で、学内の過ごし方などの講義を受けるそうです」

 学園ってのは色々なルールがあるらしいからな。

「そうだ!ミケ君とメリアちゃん、一緒に行こうね!入学式!」

 二人にいえば、微妙な顔をされた。なんだ?

「それがだな…少し厳しいかもしれない」
「え?なんで?」
「私たちは、この姿をあまり見せるべきではないのです。ですからお互いに『フォーム』を、かけあうのですが…効果時間を考えるとあまり長くは…」

 メリアちゃんが説明してくれたが、そうか。その問題を解決しないといけなかったな。
 というか『フォーム』か。

「二人は普段は『フォーム』を使っているの?」
「そうだ。この身をさらせないからな。偽装だ」
「ぎそー?」
 姿を誤魔化すってことだ。
「まぁ…長くは使えないから、病を理由にあまり出ていないんだがな」
「獣人であることを気に入らない方は残念ながらいらっしゃいますから」

 こんなにかっこよくてかわいい二人なのだが、確かに獣人差別はあるからな…身を守るのは当然か。

 そういえば、ミルディも危ないんじゃねぇか?
「え!ミルディも気をつけるんだよ?嫌なこといわれないようにしようね?ずっと一緒にいよ?」
「ええ。私は鱗を隠せば大丈夫ですから…お側を離れません。ずっと一緒です」

 ミルデイはそういいつつ…ちらっとミケ君を見た。

「ねぇ、お兄ちゃん。どう思う?」
んー…ちょっと仲が悪い。ちょっとだけな。
「だよねー」

 話さない、目を合わさない
 なにか知らないところであったのか?

 こうなったら、仲良くできるきっかけ作りをしないとな。

「ねぇ、ミケ君、メリアちゃん。今日は、朝ご飯のあとに、予定はあるの?」
「ん?今日は午後から稽古と勉強だったよな?」
「ええ。そのように聞いております。申し訳ありませんが、お昼もこちらでお世話になります」
「あら、気にしなくていいのよ?ケルンも嬉しそうだから」

 ふむ。二人はお昼ご飯を食べて帰るということは、午後までは時間があるということだ。
 つまり、遊べるな!ケルンの勉強も午後からだしな。

「じゃあさ、それまで一緒に遊ぼ?ダメ?」

 ミケ君とミルデイの仲をちょっとでも、良くしたいなーっていう作戦だ。

 なぜだか、メリアちゃんにはミルデイはまだ普通な感じなんだけど、あれかな?主人と同じ年頃で、主人よりも立場が上だからとか気にしているのかな?
 それともケルンを盗られちゃうとか思っているのか?そうだとすれば、かわいいことを思ってくれているな。

「いいですわね!遊びましょう、ね?お兄様」

 流石、メリアちゃん。目を合わせた時に、こちらの思惑を読んでくれたようだ。女の子って、こういう時には強いからな。

「ああ、いいぞ」

 ミケ君も、気づいているな…表情というか、雰囲気がね…よくわかる。

 不服!

 って文字が見えてるもんな。

「よーし!遊ぼう!」
怪我はすんなよー?

 その後、ミルデイをいれてドッジボールした。白熱どころか、メリアちゃんとその後、話し合って決めた。

 今度、遊ぶ時は、あの二人は敵チームにしない。高笑いするミケ君も、口調が俺に戻ってるミルデイも、子供らしさどこに捨ててきたんだよ。

「二人ともちょっと、こわい…」

 そう、ケルンがいえば、すごく慌てて元に戻ってくれたけどな。

 あのあと、何度か遊んだけど…友達と、友達の友達って関係は、色々板挟みになるんだな。ケルンが気づかいを覚えたから、よかったと思うことにしよう。

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