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第三章 運命の出会いとケモナー

真相

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「それじゃ、行くぞ」

 ボリンさんはケルンの右手を握り、『姿隠しの羽』を右手で持って自分の額と、ケルンの額を軽くなでた。

「これより、我らは幻となる。術式解放『ミラージュ』」

 そういったが、とくに変化はない。失敗したのかと思っていると、にやっとしながら近くにいたロイヤルメイジの男の人の前に立つなり、いきなり、でこぴんをした。

「いって!次席!なにやってんすか!?痛いじゃないっすか!」
「調子にのりすぎなんだよ、バーカ!」
「なにおう!この!くそ!どこ行った!」

 男の人は避けもせずに受けて、検討違いの所で腕をふっている。
 どうやら、こちらの姿はみえていないようだ。

「すごいねー!見えてないよ!」
 ああ。あんな羽1枚で見えなくなるなんてな。
「まぁ、透明化っていってもあくまで、相手に見えてないってだけだ。俺らの体はそのままここにある。透明化した太陽鳥は触れもしないからな…目指すはそこだな」

 なるほど。つまり、ある種の錯覚を利用した魔道具なんだろうな。面白いのは、最初の魔力を渡してから、魔力が減っている感じがしないことだ。
 どうも、一度魔力を通せばあとはいらない。ただ、時間制限はあるだろうけど、これって他の魔法とか行動ができるってことだろ?

 例えば、これを使って気付かれずに相手の懐に飛び込んで…なんてできたりするかもしれない。結構、やばい発明品だな。

「これ、危ないの?」
 まぁ、使い方次第だな…警戒心の強い動物に近づくとかならかなり便利なんだけどな。
「危ない?…あー。少しの間なら大丈夫だぞ?」

 そう少し検討外れの、ボリンさんは父様のいる部屋に連れてきてくれた。

「ここからは静かにな?声は筒抜けになるから」
「はーい!」
 声が大きいぞ。

 ゆっくりと扉をあけて一歩踏み込めば、そこは今までみた部屋の中で一番、紙がある部屋だった。

 部屋の中は書類だらけだった。天井まで伸びた本棚には本や詰め込まれた書類が並んでいる。
 中央には屋敷の机よりも立派な机…おそらく黒壇でできている机だ。かなり大きく、大人が机の上で余裕で横になれるだろう。

 本来は椅子に座って来客の対応をするのだろうが、エレス様を前にして座ったままなんて、できるはずがない。
 父様も立ち上がって何かはなしているようだが、あれが仕事中の父様なのか?

「なんか…こわい…」

 小さくケルンが呟いたのも無理がない。いつも父様はケルンにはかなり甘い。よほどのことがないと怒らないし、ケルンがしたいことを応援してくれる。
 休みのときなど、一緒に遊んでくれたりもする。

 でもそれは父様の、父親としての一面だ。今の一面は首席ロイヤルメイジとしての顔なんだろう。

「で?陛下。私も耳が遠くなったのか、変なことを聞きましたが?私の聞き間違いですよね?」
「余の娘と貴殿の子息の婚約の話だ。家柄も悪くないし、当人たちも納得するであろう?」

 本当にエレス様は乗り気みたいだ。
 いや、父様の顔をすごいけど、隣のガネリアガルの顔はもっとすごい。
 なにせ、父様だけでなくエレス様までもをにらんでいるのだからな。不敬罪にならないのが不思議なほどだ。

「初耳です…いつどこで、うちの息子の話を聞いたのはわかりかねますが…あの子はまだ幼い。王宮など…とても上がれません」
「ならば娘を降嫁させ」
「お待ちくだされ!」

 ガネリアガルがエレス様と父様の会話を邪魔をする。いくらなんでもあり得なさすぎる。
 そこまで食いつかねばならないほど、息子とメリアちゃんを結婚させたいのか?

 全力で阻止するがな!

 エレス様も、非常識な態度に怒りを隠さない。

「ガネリアガル。余の話を遮るほどなのか?不敬であるぞ?さがれ」
「いいえ!おそれながら、陛下!そもそもフェスマルク家には血の繋がったお子がいないとお聞きしておりましたが?まさかどこの血族かも知れぬ養子と婚姻なされるおつもりですか?」

 養子?そういや、そんな話を誕生日会でも聞いたな。噂を訂正していないわけじゃないんだけどな。
 そもそもケルンをみたら両親が誰かなんて一目瞭然だと思うんだけど。まだまだ顔立ちははっきりとしていないけど、父様と母様の息子とわかるぐらいは似ているんだから。

「ガネリアガル侯爵。それは私の息子を侮辱しておられるのか?」

 おっと…父様の機嫌が悪くなってきたぞ。
 ボリンさんが気を聞かして部屋から出ようかとするが、気になるのと、さすがに今扉を開けたらばれるだろうから、動きたくても動けない。

ガネリアガルはさらに燃料を投下していく。

「息子?いやいや…フェスマルク家の血族であるなら私も反対はしません。ですが、フェスマルク家は失礼ながらティストール様以外は断絶しておられたと思いますが?それとも奥方の?それこそ私は反対ですな!奥方はあちらに未練がおありのようですし」

 父様の親族が断絶?そういえば、親族ってリディ様、エレス様。それに、ミケ君とメリアちゃんしか知らないな。
 それも母様の親族だけだ。父様の親族には会っていない。

 ガネリアガルはどうも父様の地雷を踏み抜く天才らしい。

「私の実の息子だ!しかも我が妻まで侮辱するとは!いいかげんにしてくれますかな!?」

 母様の悪口を混ぜてくるとは、煽りコンテスト一位だ。
 商品はうちのティルカの全力の拳でいいかな?なに、岩が砂になる程度の威力だ。ギリギリ生きているだろ。
 ケルンも怒っているからな。

「ふん…それとも…ご子息とは噂のエフデ殿のことをいっておられるのか?」
「…エフデ?エフデがどうかしましたか?」

「お兄ちゃん?」
 ん?俺がどうした?

「いやぁ…病弱で役に立たない息子を切り捨てて、養子を得るなど貴族らしいではないですか。まぁ、多少は小金を稼いでいるようですがね…魔石を利用するなど…ドワーフの気に入るような体でも持っておられるので?母親に似ていれば、色目ぐらいでしか使えぬのでしょ?」

 おー。ぼろくそにいわれてんな。まぁ、体はないし、役には立てないな。でも、色目なんざ使ってないぞ?ケルンの体なんだからな?

 というか…部屋は寒くなったのに、熱い。
 いや、変なことなんだけど、部屋に冷気がするなかで、ケルンが熱いのだ。子供体温だからってだけじゃなくな。

 ケルンがものすっげぇ怒っている。
 口元だけ弧を描いて、目はつり上がっている。
 こうすると母様そっくりだ。

「こっわ…きれいな顔で、逆にこわっ…」

 ボリンさんが二度見する程度には顔が凄いことになっている。

 喜んでいいのかあれだが…今のケルンの中にあるのは…その…あれだ。

「大好きなお兄ちゃんを馬鹿にした!許さない!お兄ちゃんは体がなくたってお前なんかより凄いんだぞ!」

 って、俺のために怒ってくれているみたいだ。
 とても恥ずかしい。

「ふぅ…陛下。もうよろしいでしょう?」
「はい、先生ぃ。俺も聞きましたからねぇ…まさか、おばさんを侮辱するとは…俺のお母様を侮辱したも同然だとわかっていなんでしょうかねぇ?いやぁ、我慢させましたぁ。すいません」

 父様がため息をついて、エレス様に話しかけると、さっきまでの冷気が霧散した。
 それどころか、エレス様はケルンと話すときのあのまったりとした話し方に戻っている。
 なんだ?

「いえ!皇太后様は違い…陛下?」

 慌てたがガネリアガルは不思議そうにエレス様をみた。エレス様は冷たく笑い。代わりに答えたのは父様だ。

「なぜ、エフデが私の息子で病弱だと?知っている人間は少ないはずですが…なぜ、知っておられるので?」

 父様がそう尋ねると、ガネリアガルは、なぜか、焦りだした。

「そ、それは社交界で話題に」
「なっているでしょうな…ですが、それだけならいいです…ですが、魔石のことは、知らないはずですよ」

 あ…そういや、魔石を利用してなんて大々的にいったことはないな。あの冷風機ぐらいなものだ。

「一昨年、我が屋敷にリンメギンのドリュフという元帥が来たことがあります。その…今は元ですが…元帥がなんの苦労もなくクゥリィエンシアに入国したのが気になっておりましてな…道中に支援をした者がいることはわかったのですが、尻尾が掴めませんでした」

 そういえば、なんで誰も気にしなかったのかって思っていたが…ガネリアガルが裏で手を引いていたのか?

「ああ、それと…ゲッペン将軍は貴方と繋がりがありますね?」
「な。何を、バカな!いいががりですぞ!私と将軍は」
「ええ、一つの団体の繋りですよね?…それゆえに、私の妻が邪魔なんでしょう?」

 父様がそういうと、まるでずっとそこにいたかのように、カルドが出てきた。
 影からすっとでてきたときには、驚いて心臓が止まるかと思った。

「証拠の品をお持ちしました」
「そ、それは!どうして!」
「…金庫はもう少しわかりにくいところにしまわないといけませんよ?絵画の裏なぞ隠したうちにもなりません」

 カルドが持ってきた…肌色の…もしかして皮膚か?動物の皮膚でできたような分厚い本を父様の前に置いた。

 父様は本をみるやいなや、すっと目を細目て、ガネリアガルをにらみつける。

「ああ…まだこいつら動いていたのか…徹底的に潰したつもりなんだがなぁ」
「旦那様。虫は駆除してもわいてくるから害悪なのです」
「ちがいない」

 二人は淡々と確認をするように話しているが、ガネリアガルの冷や汗はすごい。ぽとっと床に落ちるほどだ。

「魔族に奉仕している…クウリィエンシアどころか人としも裏切っているとわかっておられますか?」

 魔族と繋がっているだと?…そんな人間がいるのか?

「よく、そこまで見つけましたねぇ」
「うちの執事は優秀ですから」

 エレス様が証拠の品を読みながら感心したようにいえば、父様は自慢げにかえしていた。

「ああ。そうだった。一つ、ガネリアガル侯爵は勘違いされている」

 ずいぶん機嫌がいいのか、声が弾んでいる。
 そう、知らない人は思うよな。あれは逆だ。

「私も色々と思うことがあったが、こうしてはっきりいわれるとようやく自分でも納得しました。いやぁ、貴方ごときでも役に立つってことですな」
「な、なにが」

 ダンっ!と、黒壇こくだんでできた机がへこむほど父様は机をなぐりつけた。
 そして、あのいつも優しいタレ目がつり目になってしまうほどの怒りで、怒鳴ったのだ。

「よく聞けよ?エフデも私の大事な息子だ!いいか?次にあの子を馬鹿にしやがったら、処刑台に行く前に、俺がお前をずたずたにしてやるからな!首席ロイヤルメイジをなめるなよ!」
「旦那様…まあ、同感ですが」

 あ、あんな父様は初めてというか…カルドまで同じように怒っているみたいだし…いや、エフデってのは、あくまてま架空の存在なわけだろ?俺ではあるが、ケルンでもあるわけで…そもそも、気にしなくてもいいのに。

 俺は別になんといわれてもいいのだ。
 そりゃ、嬉しいとは思うが、ケルンが見ているんだぞ?二人の変化に戸惑うんじゃないか?

「父様…見直した!」

 なんでだよ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・
三章はあと一話です。
書きたかったことをかけて満足です。
閲覧ありがとうございました!次もよかったら読んでみてください。
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