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第三章 運命の出会いとケモナー
父様の職場
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「すっごぉーい!」
浮遊感や閉塞感もないって、すげぇな。
ケルンの希望はすぐに叶った。
父様の職場は塔の最上階にあるらしい。先ほどの人たちを追いかけるように、中心に立つと音もたてずに体が浮かんでいく。
どうやら円状に広がっているようで、ケルンが歩いて回ったが、見えない壁があって、進めなくなった。
ぶつかるようなことはなく、なんとなくそこに壁があるような気になってしまい、それ以上先へは進めなくなるのだ。
塔の高さも外と中では違うようだ。外からみたときは、30メートルほどだと思ったのだが、倍はあがっている。
「ケルン君はお父様のお仕事は知っているかなぁ?」
エレス様がそういってにこっと笑った。本当にガネリアガルを前にしたときと大違いだ。
「えーと…魔法のお仕事…」
「うん、そうだねぇ…まぁ、先生のことだから、詳しく教えてないよねぇ…」
そういえば、エレス様はずっと、父様のことを先生といっているな。
「エレス様。なんで、父様を先生って呼ぶんですか?」
「そりゃあ、俺の魔法の先生をしてくれたからねぇ。俺のお父様と、先生は同時期に学園に通ってたしぃ…結婚も同時期にしてるからねぇ。縁はあるんだよぉ」
家庭教師でもしてたのかな?王族だから、先生はたくさん必要だろうしな。
それに、父様は世界一の魔法使いだもんな。
「むー…」
なにすねてんだよ。
「父様はすごいけど…でも…」
まだ怒ってるのか?お茶会のこと。そろそろ許してあげろよ?リディ様だっていってたろ?
しかし、父様が嘘をつくとか、記憶する限りなかったからな。だからこそ、まだ根に持っているんだろう。
「陛下。その子供の父親とはどなたですか?ロイヤルメイジですか?それとも王の盾ですか?」
あれだけ睨まれたというのに、ガネリアガルは、もう復活している。
父様の仕事ならばロイヤルメイジという部署らしいからそこへむかっている。王の盾はマルメリーの婚約者であるガリアンの職場だったな。同じ階に隣接しているのだろうかな?
「ロイヤルメイジだ。それがなんだ?」
じろっと睨まれてもガネリアガルは引き下がらなかった。
「い、いえ…ロイヤルメイジにその子ぐらいの子弟がいたとは存じ上げておりませんで…しかし、家格が合いますかな?我が家は侯爵ですぞ?我が家より高い者がロイヤルメイジに」
「くどい。黙っておれ」
再びの威圧に空中に浮きながらもガネリアガルは膝をついた。
「も、申し訳ありません!ど、どうか!どうか!お許しを!」
「…ちっ」
エレス様の機嫌がどんどん悪くなっていく。
しかし、ガネリアガルのこの態度はなんだろうか?謝っておきながらも何度もエレス様にあんた態度をとって。
子供の目線だからよくみえている。
こいつ、謝っておきながらもにやりと笑ってやがる。
これで侯爵なのか。確か王族以外では最高に高いに爵位だっけか?
結局建国貴族の爵位とかはわからないが、侯爵よりも低いのか?一応、うちを合わせて十しかいないんだけどな。
そんなやり取りをしながらも、黒い巨大な扉の前に体は運ばれていった。ここが目的地なのか?
扉には赤い字で書かれた言葉があった。
『忘れるな。我らは永劫の旅人。永劫の冒険者。冒険者とは立ち止まらぬ。汝はそこかしこに眠る祭りを起こせ。それこそがフェスマルク。我らの魔法使い』
フェスマルク?
「お兄ちゃん読めたの?早いねー」
まぁな。ケルン、あそこにフェスマルクって書いてあるぞ。
「フェスマルクって書いてあるの?なんでだろ?」
ケルンに教えてやっているとエレス様が感心したようにケルンにいう。
「よく読めたねぇー!ここは元々フェスマルクの部屋だったんだってぇ」
ご先祖様の?そりゃすごい!
「すごーい!」
どんな部屋なのだろうか。
わくわくと期待をしながら、扉の中に入るとそこは戦場だった。
「こっちにハンコ!」
「ばっかやろ!まずはこっちの案件から」
「第三部隊から報告が上がってます」
「おい!誰だ!血だらけで入ってくんな!治せ!なんのための治癒魔法だ!」
「そろそろ帰りたい…四日目の朝だぜぇ」
「ありゃ、夕日だ。早く寝て仕事しろ」
さながら期日間際。しかも見えている全員がだ。三十人ほどか?が仕事をしている。
部屋も塔のように大きさが合っていない。
かなりの広さで、三十人ほどが歩き回ってもまだスペースは充分だ。
巨大な一部屋とはいえ、個人の作業場は必要なのだろう。机をカーテンなどで仕切っている。
何本も空の試験管が転がり、今も一人が飲み干している。
そして、軽く火をふいた。
「ここがぁ、ロイヤルメイジの部署だよぉ」
エレス様がそうおっしゃるが、どうみたってここは…締め切り前の漫画家とか、イベント時の活版所じゃないか。
あ、一人倒れた。と思ったら魔法で水をぶっかけられた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブックマークありがとうございました!
これからも書きますのでよろしくお願いします。
浮遊感や閉塞感もないって、すげぇな。
ケルンの希望はすぐに叶った。
父様の職場は塔の最上階にあるらしい。先ほどの人たちを追いかけるように、中心に立つと音もたてずに体が浮かんでいく。
どうやら円状に広がっているようで、ケルンが歩いて回ったが、見えない壁があって、進めなくなった。
ぶつかるようなことはなく、なんとなくそこに壁があるような気になってしまい、それ以上先へは進めなくなるのだ。
塔の高さも外と中では違うようだ。外からみたときは、30メートルほどだと思ったのだが、倍はあがっている。
「ケルン君はお父様のお仕事は知っているかなぁ?」
エレス様がそういってにこっと笑った。本当にガネリアガルを前にしたときと大違いだ。
「えーと…魔法のお仕事…」
「うん、そうだねぇ…まぁ、先生のことだから、詳しく教えてないよねぇ…」
そういえば、エレス様はずっと、父様のことを先生といっているな。
「エレス様。なんで、父様を先生って呼ぶんですか?」
「そりゃあ、俺の魔法の先生をしてくれたからねぇ。俺のお父様と、先生は同時期に学園に通ってたしぃ…結婚も同時期にしてるからねぇ。縁はあるんだよぉ」
家庭教師でもしてたのかな?王族だから、先生はたくさん必要だろうしな。
それに、父様は世界一の魔法使いだもんな。
「むー…」
なにすねてんだよ。
「父様はすごいけど…でも…」
まだ怒ってるのか?お茶会のこと。そろそろ許してあげろよ?リディ様だっていってたろ?
しかし、父様が嘘をつくとか、記憶する限りなかったからな。だからこそ、まだ根に持っているんだろう。
「陛下。その子供の父親とはどなたですか?ロイヤルメイジですか?それとも王の盾ですか?」
あれだけ睨まれたというのに、ガネリアガルは、もう復活している。
父様の仕事ならばロイヤルメイジという部署らしいからそこへむかっている。王の盾はマルメリーの婚約者であるガリアンの職場だったな。同じ階に隣接しているのだろうかな?
「ロイヤルメイジだ。それがなんだ?」
じろっと睨まれてもガネリアガルは引き下がらなかった。
「い、いえ…ロイヤルメイジにその子ぐらいの子弟がいたとは存じ上げておりませんで…しかし、家格が合いますかな?我が家は侯爵ですぞ?我が家より高い者がロイヤルメイジに」
「くどい。黙っておれ」
再びの威圧に空中に浮きながらもガネリアガルは膝をついた。
「も、申し訳ありません!ど、どうか!どうか!お許しを!」
「…ちっ」
エレス様の機嫌がどんどん悪くなっていく。
しかし、ガネリアガルのこの態度はなんだろうか?謝っておきながらも何度もエレス様にあんた態度をとって。
子供の目線だからよくみえている。
こいつ、謝っておきながらもにやりと笑ってやがる。
これで侯爵なのか。確か王族以外では最高に高いに爵位だっけか?
結局建国貴族の爵位とかはわからないが、侯爵よりも低いのか?一応、うちを合わせて十しかいないんだけどな。
そんなやり取りをしながらも、黒い巨大な扉の前に体は運ばれていった。ここが目的地なのか?
扉には赤い字で書かれた言葉があった。
『忘れるな。我らは永劫の旅人。永劫の冒険者。冒険者とは立ち止まらぬ。汝はそこかしこに眠る祭りを起こせ。それこそがフェスマルク。我らの魔法使い』
フェスマルク?
「お兄ちゃん読めたの?早いねー」
まぁな。ケルン、あそこにフェスマルクって書いてあるぞ。
「フェスマルクって書いてあるの?なんでだろ?」
ケルンに教えてやっているとエレス様が感心したようにケルンにいう。
「よく読めたねぇー!ここは元々フェスマルクの部屋だったんだってぇ」
ご先祖様の?そりゃすごい!
「すごーい!」
どんな部屋なのだろうか。
わくわくと期待をしながら、扉の中に入るとそこは戦場だった。
「こっちにハンコ!」
「ばっかやろ!まずはこっちの案件から」
「第三部隊から報告が上がってます」
「おい!誰だ!血だらけで入ってくんな!治せ!なんのための治癒魔法だ!」
「そろそろ帰りたい…四日目の朝だぜぇ」
「ありゃ、夕日だ。早く寝て仕事しろ」
さながら期日間際。しかも見えている全員がだ。三十人ほどか?が仕事をしている。
部屋も塔のように大きさが合っていない。
かなりの広さで、三十人ほどが歩き回ってもまだスペースは充分だ。
巨大な一部屋とはいえ、個人の作業場は必要なのだろう。机をカーテンなどで仕切っている。
何本も空の試験管が転がり、今も一人が飲み干している。
そして、軽く火をふいた。
「ここがぁ、ロイヤルメイジの部署だよぉ」
エレス様がそうおっしゃるが、どうみたってここは…締め切り前の漫画家とか、イベント時の活版所じゃないか。
あ、一人倒れた。と思ったら魔法で水をぶっかけられた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブックマークありがとうございました!
これからも書きますのでよろしくお願いします。
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