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第三章 運命の出会いとケモナー
やばいやつ
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ふんふんふん。
回転の音と鼻息の音も荒くケルンを抱きしめてぐるぐる回っている十五、十六歳前後の少年。それがケルンを抱えている犯人だ。
誰か助けて。
「目ーがーまわぁーるぅー!」
「あー!坊ちゃまの体温を僕は感じている!」
突然あらわれて、ケルンを抱きしめて離さない。
離してほしい。
おろおろとミルデイはどうすることもできずに困っている。一応、少しは知っているから無理矢理止めてくれてもいいんだけど。
そろそろ、天地が逆さまになりそうだ。
「もう!やーめーてー!おこーるよー!」
うっ…やめてくれ…本当。俺にまで影響がでてるぞ。
「ナザド!」
フィオナに似てふわふわの茶色い髪に、茶色い瞳。少年のような満面の笑顔。そして、カルドのようにつり上がった目。
やべぇ三兄弟の三男。ナザドがなぜか屋敷に来ている。
事前の連絡もなかったんだけど。
「はい!坊ちゃま!やめます!」
にこにこと、地面におろしてくれたが、めちゃくちゃゆれてる。地震か?ってぐらいだ。
キャスとは双子なのだけど、キャスはカルドにそっくりだし、ナザドはフィオナやエセニアに似ている。二卵性双生児なのだろう。
こんなだけど、ナザドは少年みたいな見た目ではあるけど、もう三十代になる。
魔力が高いと老けるのが遅いだけではなく、成長も遅いらしい。
やたらとテンションが高いがこれは、おそらく…寝ていない。寝不足のときのハイテンションそのままだと思う。
「またお仕事を前倒し?…だっけ?…してきたの?」
合ってるぞ。たぶん、そうだろうな。
ナザドは学園で教鞭や研究をしている。本当は分校に春からこれるように話し合いをしていたが、ケルンが本校に通うというので、そのまま残留するため、いくつか仕事を任されたそうだ。
元々、分校でケルンの担任になるために本校に条件をつけて出稼ぎにでていたような人間だ。
つまり。
「もちろんですよ!坊ちゃまとお買い物をして、勉強道具…坊ちゃまを僕が教えれるなんて…!それから今日はご一緒にお昼寝をするんです!そのためなら、四日程度余裕です!」
「寝て?」
今すぐ。
そんな約束をしていないぞ。まさか脳内妄想予定か。
また何かと頼まれてとうとうぶっ飛んでしまったんだろうな。こうやっていきなり『転移』してくるってことは、一応仕事は終わっていて、休みをとれたのは、本当のことだろうからな。
前に許可もなく休みをとったときは、父様からもお説教をされていた。
そこまで無理をすることはないって。
「学園長に頼み込んだことの対価だから、仕方ないんです」
なんて、いっていたが、どんな頼みごとをしたのだろう?それに、ナザドがこんなになるまで、仕事をさせなくてもいいと思うんだけど。あまりに酷いとケルンもだが俺も一言いいたくなる。
寝不足で絶対、出てはいけない脳内麻薬とかも出てるよな、これ。
めっちゃ、ケルンの匂いをかいでいる。獣人ではないんだけど、ナザドの癖なんだよなぁ。学園では嫌な匂いばかりだから、ケルンの匂いで浄化っていうが、まだ乳臭いと思うんだけどな。
とりあえず、ミルデイも困っているし、ケルンも身動きがとれないのは困る。あと、目がとろとろだ。すぐ寝るだろ。
おい、ケルン。ナザドをベッドへ直行させるか?
「お眠さんは、体によくないもんねー。ナザド、お兄ちゃんの部屋で」
待て!ケルン!お兄さんがいる!
「あっ」
ケルンが近くで寝れるからと作業場をすすめようとしたご、今はまずい。お兄さんを部屋に案内したばかりだ。誰にもいっていない。
「エフデさんの部屋か…坊ちゃまのお部屋より近いですし、いいですね…キャスも来ないし、兄さんもいない。エセニアも邪魔をしに来ない…最高です。そうしましょう」
「あ、あのね」
まずい。めがランランとしだしたぞ。これは、ケルンを離さないって目だ。
「今は」
「あれぇ?あれぇ?」
「え?」
やっぱり屋敷に入ろう!久しぶりにナザドの部屋で話そうか!って提案をケルンに渡していると、お兄さんの声がなぜか聞こえた。
「なんで、出てきたの!」
「いやぁ、おうちの方と思ってぇ。挨拶をしようかなぁってぇ」
えへへってお兄さん笑ってるけど、気をつけてほしい。
ナザドの瞳から光が消えた。
ナザドはケルンが家族以外に話しかけられるのを酷く嫌う。もっといえば、ナザドの世界この屋敷内で完結しているのだ。
それ以外は敵なのだ。
そうなった理由は、ケルンにあるんだけど、俺が目覚める前の出来事だからな…っと、いけない、今はナザドの機嫌をよくする案を考えないと。
「坊ちゃまに話しかけてんじゃねぇぞ…どこのゴミが…は?」
「あ、やっぱりぃ。ナザドじゃないかぁ。あいかわらずちっさいねぇ」
ぶちぃって何かのきれる音がナザドから聞こえた。
お兄さん、ナザドと知り合いなんだとか、どうして知り合ったの?とかききたいが、その前に一言いいたい。
ナザドの地雷を踏み抜いちゃだめだろ!ちっさいとか、ケルンから離れなさいは、禁句なんだよ!
あわあわとケルンがしていると、ナザドは思ったより怒っていないようだ。マジか。珍しい。
「はぁぁぁ…てめぇ…なんでいるんだ?…旦那様か?」
「久しぶりの級友にそれはないよぉ」
「うるさい…坊ちゃまに近づくな…てめぇの一族郎党丸ごと滅ぼすぞ?」
ぱちりと、ナザドから静電気が出ている。
よほど嫌いなのだろうか?
どうしようかと、ミルデイをみるが、ミルデイも同じ気持ちなのだとすぐにわかった。
誰か助けて。
本日二回目の救援要請だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふとみるとブックマークが増えていました。
ありがとうございます!読者が増えるととても嬉しいです。
これからも頑張って書いていきます。
回転の音と鼻息の音も荒くケルンを抱きしめてぐるぐる回っている十五、十六歳前後の少年。それがケルンを抱えている犯人だ。
誰か助けて。
「目ーがーまわぁーるぅー!」
「あー!坊ちゃまの体温を僕は感じている!」
突然あらわれて、ケルンを抱きしめて離さない。
離してほしい。
おろおろとミルデイはどうすることもできずに困っている。一応、少しは知っているから無理矢理止めてくれてもいいんだけど。
そろそろ、天地が逆さまになりそうだ。
「もう!やーめーてー!おこーるよー!」
うっ…やめてくれ…本当。俺にまで影響がでてるぞ。
「ナザド!」
フィオナに似てふわふわの茶色い髪に、茶色い瞳。少年のような満面の笑顔。そして、カルドのようにつり上がった目。
やべぇ三兄弟の三男。ナザドがなぜか屋敷に来ている。
事前の連絡もなかったんだけど。
「はい!坊ちゃま!やめます!」
にこにこと、地面におろしてくれたが、めちゃくちゃゆれてる。地震か?ってぐらいだ。
キャスとは双子なのだけど、キャスはカルドにそっくりだし、ナザドはフィオナやエセニアに似ている。二卵性双生児なのだろう。
こんなだけど、ナザドは少年みたいな見た目ではあるけど、もう三十代になる。
魔力が高いと老けるのが遅いだけではなく、成長も遅いらしい。
やたらとテンションが高いがこれは、おそらく…寝ていない。寝不足のときのハイテンションそのままだと思う。
「またお仕事を前倒し?…だっけ?…してきたの?」
合ってるぞ。たぶん、そうだろうな。
ナザドは学園で教鞭や研究をしている。本当は分校に春からこれるように話し合いをしていたが、ケルンが本校に通うというので、そのまま残留するため、いくつか仕事を任されたそうだ。
元々、分校でケルンの担任になるために本校に条件をつけて出稼ぎにでていたような人間だ。
つまり。
「もちろんですよ!坊ちゃまとお買い物をして、勉強道具…坊ちゃまを僕が教えれるなんて…!それから今日はご一緒にお昼寝をするんです!そのためなら、四日程度余裕です!」
「寝て?」
今すぐ。
そんな約束をしていないぞ。まさか脳内妄想予定か。
また何かと頼まれてとうとうぶっ飛んでしまったんだろうな。こうやっていきなり『転移』してくるってことは、一応仕事は終わっていて、休みをとれたのは、本当のことだろうからな。
前に許可もなく休みをとったときは、父様からもお説教をされていた。
そこまで無理をすることはないって。
「学園長に頼み込んだことの対価だから、仕方ないんです」
なんて、いっていたが、どんな頼みごとをしたのだろう?それに、ナザドがこんなになるまで、仕事をさせなくてもいいと思うんだけど。あまりに酷いとケルンもだが俺も一言いいたくなる。
寝不足で絶対、出てはいけない脳内麻薬とかも出てるよな、これ。
めっちゃ、ケルンの匂いをかいでいる。獣人ではないんだけど、ナザドの癖なんだよなぁ。学園では嫌な匂いばかりだから、ケルンの匂いで浄化っていうが、まだ乳臭いと思うんだけどな。
とりあえず、ミルデイも困っているし、ケルンも身動きがとれないのは困る。あと、目がとろとろだ。すぐ寝るだろ。
おい、ケルン。ナザドをベッドへ直行させるか?
「お眠さんは、体によくないもんねー。ナザド、お兄ちゃんの部屋で」
待て!ケルン!お兄さんがいる!
「あっ」
ケルンが近くで寝れるからと作業場をすすめようとしたご、今はまずい。お兄さんを部屋に案内したばかりだ。誰にもいっていない。
「エフデさんの部屋か…坊ちゃまのお部屋より近いですし、いいですね…キャスも来ないし、兄さんもいない。エセニアも邪魔をしに来ない…最高です。そうしましょう」
「あ、あのね」
まずい。めがランランとしだしたぞ。これは、ケルンを離さないって目だ。
「今は」
「あれぇ?あれぇ?」
「え?」
やっぱり屋敷に入ろう!久しぶりにナザドの部屋で話そうか!って提案をケルンに渡していると、お兄さんの声がなぜか聞こえた。
「なんで、出てきたの!」
「いやぁ、おうちの方と思ってぇ。挨拶をしようかなぁってぇ」
えへへってお兄さん笑ってるけど、気をつけてほしい。
ナザドの瞳から光が消えた。
ナザドはケルンが家族以外に話しかけられるのを酷く嫌う。もっといえば、ナザドの世界この屋敷内で完結しているのだ。
それ以外は敵なのだ。
そうなった理由は、ケルンにあるんだけど、俺が目覚める前の出来事だからな…っと、いけない、今はナザドの機嫌をよくする案を考えないと。
「坊ちゃまに話しかけてんじゃねぇぞ…どこのゴミが…は?」
「あ、やっぱりぃ。ナザドじゃないかぁ。あいかわらずちっさいねぇ」
ぶちぃって何かのきれる音がナザドから聞こえた。
お兄さん、ナザドと知り合いなんだとか、どうして知り合ったの?とかききたいが、その前に一言いいたい。
ナザドの地雷を踏み抜いちゃだめだろ!ちっさいとか、ケルンから離れなさいは、禁句なんだよ!
あわあわとケルンがしていると、ナザドは思ったより怒っていないようだ。マジか。珍しい。
「はぁぁぁ…てめぇ…なんでいるんだ?…旦那様か?」
「久しぶりの級友にそれはないよぉ」
「うるさい…坊ちゃまに近づくな…てめぇの一族郎党丸ごと滅ぼすぞ?」
ぱちりと、ナザドから静電気が出ている。
よほど嫌いなのだろうか?
どうしようかと、ミルデイをみるが、ミルデイも同じ気持ちなのだとすぐにわかった。
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