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第三章 運命の出会いとケモナー

逃げよう

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 俺のケモナー愛がケルンに移ったのかもしれないがとりあえず、二人を保護しないとな。 

「変な人がくるんだね!エセニア!変な人が来る前に、逃げよう!」
「はい、坊ちゃま」
「ま、待て」
「危険です!」

 エセニアの許可も下りたし、二人が遠慮しようとするから、手を握って…ふわわわわ。
 肉球たまんねぇ。

「本当に危険なのだ!君たちを巻き込むわけにはいかない!」
「そ、そうです!」
「大丈夫ー。エセニアがいるもん」

 二人とも足ががくがくなのは見ればわかるし、ケルンに引っ張られても振りほどけないほど疲労しているってことは、このまま普通に逃げたらすぐに捕まってしまうだろう

 そもそもこんな二人を放っておくわけがないだろう。
「かわいいもんね。変な人がきちゃうほどだもん」
 少なくてもあのハサミ男のようなやつじゃなきゃいいけどな。

 可愛いっていったら、二人そろって、不思議な顔をした。
 将来的に、イケメンと美人になるとしても、今は二人とも、文字通り可愛い子猫ちゃんなんだがな。
 しかも、人間の子供要素が入ってるから、さらに可愛い。俺の知る限り、こんなにも可愛くて、いや、愛らしい生き物は知らないんだけど。
 
 ああ、なんだ、こういうときの言葉なかったか…あっ…天使か。
 俺の知ってる天使は、軽い感じの頭がゆるふわなんだがな。美人だったけど、中身がな。

「エセニア?というのはメイドだろう?危険ではないか!」
「え?逃げるなら大丈夫だよぉ」

 えらく男の子は心配性だな。そんなに心配しなくても、逃げるときのエセニアの足に勝てるのはカルドくらいだぞ?ただの変質者とか、雇い主くらいなら余裕で逃げれると思うんだけどな。

「エセニアー。変な人のこと頼んでもいい?」
「もちろんですよ…あの程度、平気です」

 余裕なのは本当だと思う。だって、いつもと変わらない雰囲気が変わらないんだから。

 あ、でも、気を付けてはほしいな。
「怪我はしないでね?…もしお金が必要だったら、僕のお財布から出していいからね」
 金で解決なんてあまりよくないかもしれないけど、穏便にすむのなら使ってもいいだろう。幸いなことに、結構な額を持っていると知れたからな。

 エセニアが怪我をしなければ、何にでも使ってくれていい。

「かしこまりました。坊ちゃま、急ぎ馬車へ。ミルデイ!お客様をお連れしなさい!」
「は、はい!」

 二人の手を掴んで、馬車まで行こうとすると、エセニアがミルデイに指示をする。

 いや、ミルデイ。もしかしたら、後輩になるかもしれないミケ君を睨んじゃダメだよ。そういうのは、ティルカとか、ナザドでお腹いっぱいだから、ミルデイには、目指せカルドでお願いするよ。

「坊ちゃま、エセニアは、少々遅れますが、お先にお屋敷へとお向かいください。ミルデイ、お客様に失礼のないように。手綱を引けば、馬たちはお屋敷に戻ります。二度引きなさい。それからは、何もしなくていいです。もし不安なら、ランディおじさまの所へ帰るようにいいなさい。あ、お客様が汚れたままではいけませんね…お屋敷に戻ったら、入浴の準備をなさい。それでは、坊ちゃま、必ず戻ります。では、行って参ります」
「気を付けてねー!」
「ご武運を…!」

 俺たちの言葉を聞くなりエセニアはその場から消えた。
 本気のエセニアの走りはさすがに体験したことはない。ケルンを背負っていては本気を出せないようで手を抜いている。そでもティルカですら、負けるのだから、凄く早いだろう。だから、いざとなったら、逃げきれることも、馬車に追いつくことにも、不安はない。
 
 おそらく二人が出てきた森の中に入っていったのだろう。何人かの男の怒鳴り声が聞こえる。かなり近くまで迫ってきていたようだ。

「ぼ、坊ちゃま」

 不安そうに舌をちろりとのぞかせるミルデイ。蛇の時のくせが、まだ抜けきってない。不安になるのも、わかる。何人いるのか、わからないが、男たちを相手に、エセニアは一人戦わないといけない。エセニアは護身用の短刀を持っているが、もちろん相手だって武装をしているかもしれない。
 怪我をするかもしれない。もしかしたら、死んでしまうかもしれない。

 そう思うだろ。
 普通なら頼むのは間違いだ。
 
 でもな、うちのメイドは、絶対に死なない。約束を守るのが、エセニアのいいところなんだ。エセニアが必ず戻るといったんだ。それを信じてやるのが、家族だろ。
 この前の洗脳事件から、エセニアはティルカと稽古をしていたんだ。たまに怪我をして、父様に治してもらっていたのを知っている。

 それは全てケルンのためだ。そのエセニアがミルデイにケルンを任せるってことは、一人でも大丈夫ってことだ。

「うちに帰ろう!ミケ君とメリアちゃんも、ゆっくりさせてあげたいからね!」

 ケルン、ミケ君、メリアちゃんは馬車に乗り込んで、御者台にはミルデイが座った。すぐに馬車は動き出した。慌てず怖がらない馬達は、流石、あの森の住人だと感心する。普通の馬なら、不安と怯えからいうこと聞かないのだけれど、ちゃんと指示を守っているようだ。ランディの調教って凄いんだな。

「すまない…迷惑をかけてしまった。この礼は必ずいたす」
「巻き込んでしまい申し訳ございません」

 ミケ君とメリアちゃん、はそういって頭を下げたが、ケルンは、二人の手を握った。

「ミケ君、メリアちゃん。僕が二人を守る。だから、そんな顔をしないで。二人が笑ってくれると、僕は嬉しいな」

 そういって笑うと、二人はぎこちない笑みを浮かべた。何だろう…あんまり笑ったことのないんだろうか?
 とにかく、屋敷に戻ったら、母様に相談して、父様が仕事から戻るまで、計画を立てよう!ああ、でも。

「二人とも、本当に可愛いから、僕のお嫁さんにしたいな」

 おっと溢れた。冗談で場を和ませようと思ったのだが、落ち着け、ミケ君は男の子だし、メリアちゃんも初対面の女の子なんだから、そんなこといったら、ひかれ

「だ、ダメだ!そ、そんな会ってすぐに、こ、婚姻の申し込みなど!ま、まずは文通からせねば!」
「ふふ、お…ごほん。お兄様、落ち着いてください。ケルン様は、希望を述べられたのですよ…で、でも、その…恥ずかしいですわ」

 あれ?何、この雰囲気。二人とも、赤いし、ミケ君、挙動不審になってるんだけど、ケルンもミケ君も男なんだから、そこは笑って流して欲しかったな。メリアちゃんは…お兄様の許可というか、文通から始めよう。うん。
 と、とにかく、屋敷へ帰宅だ!
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