選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
上 下
67 / 229
第三章 運命の出会いとケモナー

出会い

しおりを挟む
 今日は画材を買いに街へ散歩がてらに向かった。
 馬車を利用しているが、父様いわく、家の馬車ではなく、借り馬車だ。馬は、ランディが世話をしているそうだが、自由に森の中を駆け回っている。御者は、エセニアがしてくれる。

 今日に限って、馬車は街のいかなる場所にも停めてはいけず、街道沿いに、今日だけ馬車番が立ってた。
 祭りの時でさえ、馬車を停めていたのだが、何でも、明日、王族がやってくる為、警備上、馬車はもとより、樽一つ、道に置いてはいけないそうだ。
 まぁ、爆薬をつんでいたり、伏兵が忍んでいるかもしれないということでのお達しだ。
 それもあって、明日に買い物しようと思っていたのを、急遽、今日にした。
 
 家族全員が、今日にしときなさいというのもあってだ。明後日ではダメなのかと思ったら、明日から、王族がいなくなる四日ほどは、街への外出を禁じられた。危ないかもしれないからということだ。確かに、王族のごたごたに巻き込まれるのは、勘弁してもらいたい。絵の期日は、来週なのもあるので、今日を逃すと、ちょっとまずいことになる。

 新しいキャンパスを、エセニアと、執事見習いのミルデイが持つ。ミルデイが持つのは、手のひら程度のキャンパスだが、エセニアは、かなり大きいキャンパスを背負っている。
 エセニアは、身長が百七十近くあって、女性でもかなり大きい方だ。そのエセニアよりも、頭一つ分でかいといえば、どれほどでかいかわかるだろう。たまに絵画の注文を受けるのだが、姿を隠して、スケッチした下絵を元に、等身大の肖像画を描くことがある。

 確か、どこかの国のお客様が是非にと頼んだので、仕方なく描くことになった。肖像画は、親しい人や、描いてもいいかなって人のみ描くようにしているが、この絵のモデルは、四十代の男性で、ケルンが描くとは知らずに、話をしてみれば、面白い人だった。
 ノリツッコミと、関西弁は、世界を越える。これは、知識に刻まなくてもいいだろうけど。

 他にも、日常品や、ミルデイと遊ぼうと思って、ボールを買った。
 皮のボールなので、固いのだが、ゴム製品は、まだそんなに出回っていないようだ。いまいち文明の開化スピードが一定ではないような気がする。
 
 もしかして、俺みたいな知識を持つ人間がいたりするのか? 
 まさか…でも可能性はあるのか。

「今日は帰って、なにしょうかなぁ?」
 ボール遊びか。絵だろ。
「ミルデイ、このあと遊べる?」
「申し訳ありません。勉強があります」
「そっかぁ…エセニアと待ってるねー」

 ミルデイは、文字といった一般教養、礼儀作法や執事のたしなみをカルドやエセニアから受けている。それもかなりハイスピードでだ。もうすでに、キャスの授業も一通りやってのけたというのだ。
 すごい頭がいいんだろうな。祝福の儀を受けていなかったので、教会で受けたが、結果は俺たちは知らない。父様たちは色々首をかしげていた。

「入学前にはきちんとお見せします。今のままでは恥ずかしいので」

 なんて、ミルデイにいわれたら、素直にわかったとしかいえなくなる。

 街道沿いに停めてある馬車がみえた。その時だった。
 森の中から、人影が二つ転がってきた。

 ケルンの視界に入ってきた瞬間、いつもならエセニアがケルンを抱えているはずの時間を超えていることに、不信感がわいた。
 コンマの世界の話だが、思考加速状態が常のの俺にとっては時間の感覚はあってないようなものだ。

 また洗脳か?しかし香水の匂いはない。

 エセニアが、何も感じなかったことに、俺は疑問を持つが、その思考すら止まらざる終えなくなった。
 突然のケルンの感情の高まりに、俺ごと思考は飲まれた。

「坊ちゃま!!」

 エセニアとミルデイが、ケルンの前に立ち、身を守ろうとする。
 しかし、ケルンいや、俺もだが…警戒する二人を押し退けて、飛び出た影に近づく。

「だ、大丈夫?」

 声が震える。
 体も若干震える。
 
 落ち着け、ケルン。
 落ち着け、俺。

 怖がらせてはいけない。母親譲りの慈愛の微笑みを浮かべて、彼らに手を差しのべる。

「すまない…追われている。人を呼んでもらえまいか?」

 少しの躊躇ためらいがあったあと、転んだ人物は差し出した手を掴んで立ち上がる。その口からは、子供特有の高さを持ちつつ、落ち着いたような知性を感じさせる声音をしていた。

 そして、何よりも大事なことだ。
 
 ケルンの右手にモフモフの毛と、小さめな肉球が触れている。

 思考加速が最大まであがり、俺はとりあえず、情報をまとめようと思う。
 だが、その前に一言。

 猫さんキタァァァ。

 全ケモですね、わかりますよ!フードで隠そうとも、もこもこで、わかるから!
 初めての全ケモですね!

 棒神様に感謝!
 俺、次に棒神様に会ったら、五体投地する!崇拝しちゃう!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 登場人物(二章時点)を上げ忘れてましたのでよけらばちらみしてください。

 ようやくモフモフの登場。長かった。
 投稿をはじめて一か月。ようやくです。

 面白い、続きが気になった方はぜひお気に入りをお願いします。励みになります。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

処理中です...