選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第二章 事件だらけのケモナー

色んな衝撃の事実

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 今日はもしかしたら来られないかと思っていた人が来てくれた。

「ケルン、おめでとう」
「司祭様!」

 ここのところ遊びにきてもすぐに帰ってしまわれていたから、なんだか嬉しいな。司祭様は、雰囲気が優しいから、本当に教会の司祭様って感じで落ち着くんだよな。

「まさか」
「リンメギン王だけでなく?」
「遠縁の分家からの養子では?」

 はーい、ケルンに聞こえないようにカットだ。せっかくの誕生日に外野のどうでもいい噂話は必要ないからな。
 じろっと父様たち、あ、リンメギン王様たちドワーフ族のお客さんも睨んで…噂していた人たちは帰るみたいだな。もう、来なくていい。

 司祭様はいつもの優しそうな微笑みで、ケルンの目線に合うように腰をかがんでくれた。こういう気づかいが司祭様のいいところだ。
 まぁ、司祭様の身長が飛びぬけてでかいからってのもあるけどな。

「今日は、神託があったから、お祝いを兼ねて伝えにきたよ」

 司祭様はそういうなり、いつもは持っていない、金かな?いや、銀?光の加減でどちらの色にも見える錫杖しゃくじょうを強く地面に打ち付けると、しゃりんっと綺麗な音がして、みんなの視線が、司祭様に向かう。

「この場にいる者達よ、聞きたまえ。神託を伝える」

 神託?棒神様からってことかな?

「ケルン・フェスマルクは、魔法が使える。考えを改めよ」

 司祭様はそういって黙った。
 え?それだけ?確かに使えるようになったけど。わざわざ広めるようなことなのかな?お客様も…いや、うちの家族全員驚いているんだけど…そういや、いってなかったな。

「精霊様、お願い!『フラワーパレット』」

 無属性の『フラワーパレット』の魔法は、すぐに消えてしまうが、様々な花びらをまき散らす、子供でも使える魔法だ。
 今日の朝まで、ケルンは使えなかった魔法だ。

 きっと我が家のことだ。家族全員が喜んで驚い…あれ?みんな固まってる?

「これで、もう、ケルンに嫌なこという人もいなくなるし、ちゃんと学園に入れるよ!」

 嫌なこと…気にはしてなかったけど、それより…学園に入れるって、どういうことだ?誰でも入れるんじゃないのか?

「司祭様。誰でも入れるんじゃなかったの?」
「あれ?知らなかったのかい?魔法が使えないと学園に入れないから、分校か自宅で…って、おい、ティス逃げるな」

 リンメギン王様と話していたはずの父様が、こっそり、逃げようとしていた。魔法を使わないところをみると、見つかるの前提で逃げていたようだな。

「ケルンは、分校に行くんだからな!関係ないだろ!」

 そうだな。分校に通えば、誕生日の時は、帰れないけど、週末とかなら、帰れるかもしれないし。
 父様たちとはそう決めていたんだ。寮生活も少しづつ慣らしていくって話もしていたんだけど。

「お前…フェスマルク家は、ずっと、本校に行くようになってると聞いたが…おい、目をそらすな」
「家訓は、変えた!今は私が旦那様だからな!」
「変えるな!馬鹿か!だいたい、フェスマルク家は建国貴族の一員だろうが!」
「先祖は先祖だ!お前だって、建国貴族の癖に、跡継ぐのは嫌だからって、弟に家督かとくを譲ったんだろうが!」

 初耳いっぱいコレクション。

 建国貴族って…あれか、クウリィエンシア国で最も古い、十の貴族達だよな…現宰相に、元帥、銀行の頭取、あと、魔法使いの頂点とかも建国貴族とかうっすら習ったけど…うちってばそんな大きなとこと関係あるのか!

 ってか、本校に通うの!?遠いよな…なにせ隣国だもんな。
「馬車ですぐ帰れる?」
 んー…何日かかかる距離だな。
「えー…とおいのやー。友達ミルデイしかいないのもやー」
 まだ決定かはわからないし、友達はまだ作れるって。

 しかし、建国貴族かあ…まぁ、分家なんだろうな。領地が少ないし、うちの父様、ロイヤルメイジって部署の部長クラスだと思うから。主席ってそういう意味じゃないかと俺は思っている。

「お前ら、落ち着けよ…ったく。若い頃みてぇになりやがって」
「ヴェルム!なに、自分は関係ないみたいにしてるんだ!お前だって、家が嫌で家出して、うちにいただろうが!」
「二十代の前半までな!流石に、六〇越えたら、落ち着けよ!」
「そうだぞ、ティス。ヴェルムは落ち着いたんだ。まぁ…今度は見合いが嫌で教会に助けを求めているがな」
「おい!ルワント!やっぱりお前の差し金か!すぐ親父にばれるから、俺の逃げ場がないんだぞ!」

 あれぇ?司祭様がなんか黒い微笑みになっているんだけど、立ち上がって、影ができたからかな?あと、三人とも声が大きいな。

「お三方、祝いの場ですよ?」
「カルド!俺は関係ねぇだろ!ティスとルワントが悪いだろうが!」

 ヴェルムおじさんが、父様と司祭様を指さすが、カルドはため息をついて、真顔でこういった。

「同罪です」

 そうして、たくさんのお客様がいるっていうのに三人に説教を始めた。

 まるで、仲のいい友人たちが酒場でじゃれついているみたいだ。
 本当の、友達なんだろうな。

「坊ちゃま、お飲物をお持ち…坊ちゃま?」

 執事服をきたミルデイが、冷たく冷やした果汁百パーセントのジュースを持ってきた。似合ってるじゃん。
 でも、メイド服の方が似合う気もするな。
 さすがにいえないけどさ。

「ふふ・・・あははは」
 楽しいな。ケルン。
「楽しいね!」

 何だろう、凄く楽しい。

「坊ちゃま?」

 ミルデイが、心配そうに近くにくるので、飛びついて、ぐるっと、屋敷の家族たちをみてまわる。飲み物をこぼさないなんて、ミルデイは、立派に執事の仕事がやれるよ。

 口論のし過ぎでフィオナに怒られるティルカと、キャス。

 カルドに怒られる、父様達。

 母様とエセニアは、離れて一緒に食事をしながら、父様達をみて笑っている。

 ハンクは料理を作っっては出しているけど、時々、こっそり窓におく。窓からは熊の手がちらちらとみえる。ぴょんとはねて受け取っているピンク色の塊もみえた。

 いつも通りの我が家だ。

「ミルデイ。これが、僕の家族」
「はい」
「そして、君の家族だよ」
「…はい!」

 楽しい誕生会は、長く続いた。

 誕生日おめでとう、ケルン。
 誕生日おめでとう、俺。

 おめでとう、ミルデイ。新しい俺達の友達で、俺達の家族。

 我が家へようこそ!








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


第二章はこれにて終わりです。
第二章の裏話をはさんで第三章をあげていきたいと思います。
リメイク前よりも、登場人物や、話の展開には厚みを持たせようと思って色々と書いてまいりました。
幸せな幼少期の影にもちらほら敵の行動があります。

三章ではもふもふが増えます。

あと大事なことですがBL的表現をしてますがBLではないです。この作品では、そうはなりません。

ブックマークがもう少しで二百に届きます!
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それではこの物語を少しでも気に入ってもらえると嬉しいです。
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