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第二章 事件だらけのケモナー
大騒ぎ
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いつもひょうひょうとしていて、お気楽で、ケルンに対して一度として怒ったことがない男。それがこのティルカだ。
どんなことがあってもケルンを優先するが、ただ一つ。ケルンを少しでもティルカから奪おうとすると豹変する。
正直なところ、ナザドよりもティルカの方が色んな意味でやばいのだ。
「坊っちゃま…頬を斬ったのは、どんな野郎ですか?俺に助けを求めましたよね?」
まさに獣。獣人の両親から生まれた人間種だというのに、その瞳には肉食獣が人の皮を被ったかのような強い力を秘めている。
だって、助けを求めたけど、何で伝わってるんだよー!エスパー?『コール』してないよー!魔法その時には使えなかったからね!
「ってか、おい、坊主。お前…誰だ…?」
あ?って、不良みたいだから、それはやめて欲しい。ミルデイも、ケルンを庇うようにして、睨み付けないで!その人、屋敷の使用人だから!今は外に出稼ぎにでてるけど、その内、うちの守衛さんになるらしいから!
うちじゃないと面倒みえないくらいやべぇ三兄弟の筆頭だから!
さっとミルデイを紹介して、仲良くしてもらおう。
「この子はミルデイ!えーと…変な人たちに売られていたから、買って…それでね、僕と友達になったの!僕の執事だから、仲良くしてね!」
ミルデイはぺこりと頭をさげたが、ティルカはまだ納得していないのか不満気だが、それでも認めてくれたようだ。
「坊っちゃまがそういうなら…執事か…まぁ、いいか。執事ならな」
あー…確かに、いつも「俺は坊ちゃまの剣だからな」とかいってるからな…でも、ミルデイは執事だから、納得してくれたのかな?
ティルカいわく、ずっと昔からの約束だからといわれたが…ケルンの産まれてからの記憶を全部見直した俺が覚えていないということは、母様のお腹にいるときに約束でもしたのかもな。遊びに行くとかなら約束していたと思うけど。
しかし、一方的なのも約束といっていいいのだろうか。
「まったく、嫌な予感がして、早めに屋敷に来てみれば…坊ちゃまが行方不明になったと聞いて、親父はあの通りだし。責任を感じたお袋は…気を失うし…ランディのオジキなんざ、坊ちゃまを探して森中走り回ってるぜ?」
ティルカが屋敷をちらりと見ながら今の状況を教えてくれる。
うっ…申し訳ない…まさか、フィオナが気を失うとは…この前に引き続いて、トラウマになってなければいいけど…いなくなる前に話をした唯一の人だから余計に責任を感じたのかもな。
それに、計算外だったんだ…街まで運ばれるとは…というか、樽が運ばれるとは思いもしなかったんだ。
「まぁ、坊ちゃまのせいではないのは、俺の勘で、わかってるからな。だけど、あの奥様まで、気を失われてしまったんだから…坊ちゃま、あとでちゃんと謝っておけよ?」
なに?母様まで!
ケルン…きちんと謝るぞ。
「うん…わかってる…」
「それと、坊っちゃま。覚悟しといた方がいいぜ?あと何秒かで、流石に、親父も気づくだろうからな」
ですよねー。知ってる。
ミルデイから、おりて、自分の足で歩こうとしたら、玄関の扉がバターンと、音を立てた。あの扉、凄く重たいはずなのだけど。
蹴って開けていいのか。執事長よ。
「坊っちゃま!」
「ほらな」
そうだね、なんていえないな。あんなに、目を見開いているカルドは初めてみた。
なんて、思ったらもう目の前にいる。
は、早いな。
「ご無事で!」
「あ、カルド!ただいまー!僕は元気だよー?」
唸れ!俺の演技指導!
少し上目遣いで、かわいらしくだ!
だけど、カルドには通じないようだ。目が血走ってるんだけど、し、静まりたまえ!
「これは!…お怪我を!おのれ…どのような下種が…」
やっべ。あのハサミ男め!カルドとティルカの怒りが全然下がんないじゃねぇか!
とりあえず、無事だってアピールをしよう。怪我もたいしたことないし、なにより…お尻も無事だ。
「だ、大丈夫だよー!ハサミで斬られて泣いちゃったけど、もう痛くないもん!売られてないし、お尻も平気だからね!」
それはいわなくていいな!
カルドが身体を触って、確認しているけど、かなり慌ててるな。いつものカルドなら、身体に触れる前に、断りの言葉をかけてくるんだけど、今は非常時とでもいうように、何もいわなかった。
軽くケルンが何があったかをいったら、ぶわっと、二人の髪の毛が…あれ?目の錯覚かな…?
二人の姿が、陽炎みたくぼやけたんだけど…ま、まさか!これは、闘気というやつか!
「売られる…?…お尻?」
「泣いた?…坊っちゃまが…?」
あ、現実逃避できない。
「愚息」
「わかってる親父」
ティルカが、どこかに『コール』してるんだけど…まさか、犯人特定したとか…?いやいや、そんなエスパーなこと。
気のせいだよな、きっと「俺が行くまで…わかってるな?」とか「地下あけとけ」とか聞こえてくるけど、もう犯人特定とか、そんなわけないよな。きっと、これから自衛部の人達と捜査とかするんだろ。
部下の人がどんな人かは、知らないけど、ティルカがいっていた。
「頭は固いが、いったことをしてくれる。俺より弱いから、もっと強くしてやらないとな」
と、笑っていたのだが、部下の人…大丈夫かな…胃に穴があいてないといいな。お菓子とか送るべきかな?
ティルカが、笑い声をあげて、屋敷にむかっていくんだけど…いい返答だったんだね、うん。
そう思っていると会いたいけど今は会いたくなかった人たちの顔が見えてきた。
「ケルン!」
「父様!母様!」
あ!父様と母様!
って、父様は汗だくだし、母様は泣きはらしたあとのように、目が赤いし、髪がぼさぼさになってるけど、何があったの!いつもはお淑やかでまさに貴婦人という母様が!いつも落ち着いている頼れる大黒柱みたいな父様が!
転びそうな足取りでかけてくる。母様が父様より遅いなんて、気持ちと足が合っていないからだろうか。ほら、つまづいてこけかけている。
そんな両親をみたことはいままでなかった。どうしてこうなったのか。
そうです、俺が悪いんです!
この場合は、ケルンと俺が悪いのか。心配かけたんだよな…本当に申し訳ない。
どんなことがあってもケルンを優先するが、ただ一つ。ケルンを少しでもティルカから奪おうとすると豹変する。
正直なところ、ナザドよりもティルカの方が色んな意味でやばいのだ。
「坊っちゃま…頬を斬ったのは、どんな野郎ですか?俺に助けを求めましたよね?」
まさに獣。獣人の両親から生まれた人間種だというのに、その瞳には肉食獣が人の皮を被ったかのような強い力を秘めている。
だって、助けを求めたけど、何で伝わってるんだよー!エスパー?『コール』してないよー!魔法その時には使えなかったからね!
「ってか、おい、坊主。お前…誰だ…?」
あ?って、不良みたいだから、それはやめて欲しい。ミルデイも、ケルンを庇うようにして、睨み付けないで!その人、屋敷の使用人だから!今は外に出稼ぎにでてるけど、その内、うちの守衛さんになるらしいから!
うちじゃないと面倒みえないくらいやべぇ三兄弟の筆頭だから!
さっとミルデイを紹介して、仲良くしてもらおう。
「この子はミルデイ!えーと…変な人たちに売られていたから、買って…それでね、僕と友達になったの!僕の執事だから、仲良くしてね!」
ミルデイはぺこりと頭をさげたが、ティルカはまだ納得していないのか不満気だが、それでも認めてくれたようだ。
「坊っちゃまがそういうなら…執事か…まぁ、いいか。執事ならな」
あー…確かに、いつも「俺は坊ちゃまの剣だからな」とかいってるからな…でも、ミルデイは執事だから、納得してくれたのかな?
ティルカいわく、ずっと昔からの約束だからといわれたが…ケルンの産まれてからの記憶を全部見直した俺が覚えていないということは、母様のお腹にいるときに約束でもしたのかもな。遊びに行くとかなら約束していたと思うけど。
しかし、一方的なのも約束といっていいいのだろうか。
「まったく、嫌な予感がして、早めに屋敷に来てみれば…坊ちゃまが行方不明になったと聞いて、親父はあの通りだし。責任を感じたお袋は…気を失うし…ランディのオジキなんざ、坊ちゃまを探して森中走り回ってるぜ?」
ティルカが屋敷をちらりと見ながら今の状況を教えてくれる。
うっ…申し訳ない…まさか、フィオナが気を失うとは…この前に引き続いて、トラウマになってなければいいけど…いなくなる前に話をした唯一の人だから余計に責任を感じたのかもな。
それに、計算外だったんだ…街まで運ばれるとは…というか、樽が運ばれるとは思いもしなかったんだ。
「まぁ、坊ちゃまのせいではないのは、俺の勘で、わかってるからな。だけど、あの奥様まで、気を失われてしまったんだから…坊ちゃま、あとでちゃんと謝っておけよ?」
なに?母様まで!
ケルン…きちんと謝るぞ。
「うん…わかってる…」
「それと、坊っちゃま。覚悟しといた方がいいぜ?あと何秒かで、流石に、親父も気づくだろうからな」
ですよねー。知ってる。
ミルデイから、おりて、自分の足で歩こうとしたら、玄関の扉がバターンと、音を立てた。あの扉、凄く重たいはずなのだけど。
蹴って開けていいのか。執事長よ。
「坊っちゃま!」
「ほらな」
そうだね、なんていえないな。あんなに、目を見開いているカルドは初めてみた。
なんて、思ったらもう目の前にいる。
は、早いな。
「ご無事で!」
「あ、カルド!ただいまー!僕は元気だよー?」
唸れ!俺の演技指導!
少し上目遣いで、かわいらしくだ!
だけど、カルドには通じないようだ。目が血走ってるんだけど、し、静まりたまえ!
「これは!…お怪我を!おのれ…どのような下種が…」
やっべ。あのハサミ男め!カルドとティルカの怒りが全然下がんないじゃねぇか!
とりあえず、無事だってアピールをしよう。怪我もたいしたことないし、なにより…お尻も無事だ。
「だ、大丈夫だよー!ハサミで斬られて泣いちゃったけど、もう痛くないもん!売られてないし、お尻も平気だからね!」
それはいわなくていいな!
カルドが身体を触って、確認しているけど、かなり慌ててるな。いつものカルドなら、身体に触れる前に、断りの言葉をかけてくるんだけど、今は非常時とでもいうように、何もいわなかった。
軽くケルンが何があったかをいったら、ぶわっと、二人の髪の毛が…あれ?目の錯覚かな…?
二人の姿が、陽炎みたくぼやけたんだけど…ま、まさか!これは、闘気というやつか!
「売られる…?…お尻?」
「泣いた?…坊っちゃまが…?」
あ、現実逃避できない。
「愚息」
「わかってる親父」
ティルカが、どこかに『コール』してるんだけど…まさか、犯人特定したとか…?いやいや、そんなエスパーなこと。
気のせいだよな、きっと「俺が行くまで…わかってるな?」とか「地下あけとけ」とか聞こえてくるけど、もう犯人特定とか、そんなわけないよな。きっと、これから自衛部の人達と捜査とかするんだろ。
部下の人がどんな人かは、知らないけど、ティルカがいっていた。
「頭は固いが、いったことをしてくれる。俺より弱いから、もっと強くしてやらないとな」
と、笑っていたのだが、部下の人…大丈夫かな…胃に穴があいてないといいな。お菓子とか送るべきかな?
ティルカが、笑い声をあげて、屋敷にむかっていくんだけど…いい返答だったんだね、うん。
そう思っていると会いたいけど今は会いたくなかった人たちの顔が見えてきた。
「ケルン!」
「父様!母様!」
あ!父様と母様!
って、父様は汗だくだし、母様は泣きはらしたあとのように、目が赤いし、髪がぼさぼさになってるけど、何があったの!いつもはお淑やかでまさに貴婦人という母様が!いつも落ち着いている頼れる大黒柱みたいな父様が!
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そんな両親をみたことはいままでなかった。どうしてこうなったのか。
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