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第二章 事件だらけのケモナー

おかしなケモ耳組

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 証拠集めに奔走ほんそうだ!と、気分的に盛り上がっていたが、そろそろキャスが勉強をみにくる時間だ。

「キャスにね、きいてみよー」
 勉強のついでに、キャスに相談しようかな。何かわかるかもしれないし。

 部屋から教材がてらに辞書や図鑑とかも持ってきて、勉強部屋に入ろうと扉に手をかけた時だった。

「坊ちゃま」

 後ろをふりむくとカルドが立っていた。
 え、顔色悪すぎじゃないか?真っ白だぞ?

「カルド?どうしたの?」
 貧血?ハンクにレバーでも頼むか?あ、カルドは内臓系が苦手だっけか。ほうれん草とかのグラタンにするか?美味しいから。

「今日は…お勉強はお休みです」
「え?お休み?」

 何かあったのだろうか。キャスが予定を変えるなんて珍しい。
 昨日は何にもいってなかったっていうのに、どうしたんだろう?

「キャスの職場で…少々風邪が流行はやっておりまして…移ってはいけませんので…今日からしばらく…お休みするようにと…旦那様が」
「父様が?…カルドどうしたの?頭が痛いの?」

 風邪?お役所だから人の出入りも多いし、一度流行ると長引きそうだよな。
 それにしても、ルドが頭をふったり、こめかみを押さえたりしている方が気になる。

「いえ、御心配にはおよびません…少々匂いがきついので、頭痛がしているのでしょ…お部屋に戻りましょう。私は、少々、外に出て空気を」
「ごめんください!カルド殿!」
「…また…あいつか…」
 
 匂いで頭痛か。カルドは屋敷で一番、鼻がきくからこの匂いとかきついだろうな。
 キャスに相談できず残念だったが、部屋に荷物を置いて何か別なことをしよう。
 カルドが教材を持ってくれて、部屋に戻ろうとすると、またガマ商人の声が屋敷中に響き渡った。こんな時にも来るなんて、さすがガマ商人。油のようにしつこいぜ。

 カルドはこめかみを押さえながらも、ガマ商人の相手をするようだ。頑張れ。応援だけはしっかりするぜ。

 さて、翌日。朝からケルンと俺は、しょんぼり半分、不機嫌半分になっている。
 なんと、朝の散歩がなくなった。マルメリーがいるから、外に出てはいけないというのだ。
 
 なんというか、屋敷のあちこちで変なことが起こっている。というよりケモ耳組が変なのだ。
 昨日はあの完璧メイド長のフィオナもおかしかったのだ。

 キャスの勉強が中止になったから、少し早めに母様とお茶を楽しもうと母様に声をかけて。おやつがてらのお茶会を二人だけですることにした。
 フィオナが入れてくれた紅茶をいつもと同じように、おしゃべりしながら一口飲んだ。

 それと同時にむせた。

「にっがいぃぃ!」
「んっ!ちょっと!フィオナ?茶葉の量と抽出に時間をかけすぎよ?どうしたの?」

 凄まじく渋くて苦い。ケルン用に温度を低めにしてミルクまでいれて飲みやすくしてあるが、フィオナの紅茶は最高に美味しかったので、こんな物を飲むとはまったく思わなかった。
 母様のいうとおり、茶葉の量が多く、抽出に時間をかけすぎたのだろう。紅茶を入れ慣れていない人が失敗する一番の原因を、なんで入れ慣れているフィオナがするんだ。

「も、申し訳ありません!少々、ぼぅとしておりました」

 慌てて、ケルンたちからコップを回収して、新しく紅茶を入れ直している。

「珍しいわね…貴女がこんな失敗するなんて、ずいぶん昔…私付きになった日に一度あったぐらいじゃない?」
「エセニアも変だったよー」
「エセニアも?」

 母様とフィオナの手元を見ながら話している。今度は失敗することなく美味しい紅茶になりそうだ。
 フィオナの顔をみると、少し赤い?

「季節の変わり目だから、…そういえば、王都の方じゃ、獣人の人に風邪みたいな症状が流行っているって、ティスがいってたわね…」

 あ、キャスの職場で流行っているって、カルドから聞いたな。じゃあ、本当に病気予防のためか。

「もしかして、みんな風邪をひき始めたのかしらね?ケルン、手洗いうがいはきちんとするのよ?」
「はーい!」
「フィオナも無理はダメよ?」
「はい、奥様…申し訳ありませんでした」

 外に出たら予防に努めよう。
 
 そんなことがあったわけで、いつもより、手洗いとうがいをするぞ!と散歩の用意をケルンがして、何をするか俺が計画をしていたときに、エセニアが部屋に入るなりいったのだ。

「坊ちゃま…今日はお屋敷にいましょう…ランディ…おじさまには、先ほどお話…しました」

 今朝も、ランディたちのところに行く気満々だったので、オオハリモグラのもぐた用や虎の虎蔵とらぞう用におやつをハンクに頼もうと思っていた。
 ストレス発散には、森の動物さんたちに団子様態で囲まれて、全身モフモフコースをするに限る!って楽しみにしていたんだけどなー。

 ベッドの上でじたばたしてみてもまったく心が晴れない。

「つまんないー!つまんないー!お外ー!」
 退屈だよなー。ランディたちに会えないのは本当に退屈だ。しかも、キャスの勉強もなし。いつも楽しい屋敷が、なんだか息苦しいな。

 昨日よりも屋敷に匂いがこもっているようだ。
 父様も母様もまったく気にならないようだ。父様は精霊様と友達で、母様はスキルで気にならないといっていた。羨ましい。ケルンもだんだん、この匂いにいらいらしだしている。

「ずっと匂いがぷんぷんなのも、やー」
 そうだな。ずっとマルメリーの匂いが残っているんだ。しかも、ケルンが遊び場にしていた、空き部屋の辺りとかが酷い。
 たぶん、掃除とかで出入りしているんだろうけど、残り香がきついのだ。ケルンは子供だから、元々、香水の匂いに敏感なのだけど、それにしたってきつすぎる。
 今日もちらりとみたんだけど、昨日に比べてだいぶ化粧が多くなっていた。
 あれで花嫁修業なのか…いや、伯爵の娘だから普通なのか?

 退屈すぎるな…マルメリーでも尾行するか。
「びこー?やっほぉ?」
 山彦やまびこじゃないぞ?マルメリーの後ろを気づかれないようについて、何をするか監視するんだ。
「んー…でも…やー」
 いや、探偵をするんだろ?証拠を集めないと。
「たんてーはするぅ!…でも…ぷんぷんするの…」
 あー…匂いはかなり直接する可能性が高いか…どうしたものか。

 ベッドの上でうなっていると、凄い大きい叫び声が響いた。

「んなぁぁぁぁぁ!」

 本能的に、腰が浮いてしまうほど重低音の吠え声。その持ち主に心当たりがあった。

「この声!」
 ランディだ! 

 今日は会えないと思っていたランディがお屋敷にまできてくれた!もしかしたら、ちょっとは遊べるかもしれないと、機嫌がよくなるケルンだが、俺は一番にあの叫びが気になった。
 あんな雄たけびを聞いたことがないからだ。

「んだべぇぇぇ!こんにおいぃぃぃ!鼻がまがるだぁぁぁ!」

 部屋から出て、玄関にむかうと、玄関でのたうちまわっているランディがいた。
 どうしたんだ!

「おぉぉぉぉぉぉ!うえぇっ」
「ランディ!大丈夫?」

 急いでかけよると、あのつぶらな目が半泣きどころか、ぽろぽろ涙が!匂いがきつすぎてつらかったんだな。
 ケルンに気づいて、すぐにランディの腕の中にはいった。あー、一日ぶりのベア毛だぁー。癒されるわー。

「おお!坊ちゃま!坊ちゃまの匂いだぁ…」

 ランディもケルンをいつもより強めに抱きしめて、匂いを嗅いでいる。くすぐったいなぁ。くさくない?大丈夫?
 そのまま抱えられ、一度屋敷の外、噴水の側にまで避難した。

 ここなら匂いもあまり感じない。

「ランディ!どうしたの?」

 ランディが屋敷に来てくれるのはとても嬉しいが、あんまりランディは屋敷にこない。もし来客がいたらと遠慮しているのだ。それに今は業者や商人が多く出入りしているのもある。
 だというのに、わざわざくるなんて、何かあったのか?まさか、スラ吉や森の動物になにか!?

「今朝、坊ちゃまがいらしてくださらねぇから、病気したんかと心配になって…きてみたら、なんだべ、この匂い…」
「え?エセニアが伝えているんじゃないの?」

 ランディの口から信じれない言葉が出てきた。
 今朝、外に出てはいけないから、ランディにも伝えたとエセニアがいったのだ。

「エセニアちゃん?おら、昨日から会ってないだよ?」

 不思議そうなランディをみれば、エセニアが嘘をついたとすぐにわかった。
 エセニアがケルンに嘘をつくなんて、初めてじゃないだろうか。いや…もしかしたら、伝えたと勘違いしたのかも…昨日から体調が悪いみたいだし。

「なんで、あんな匂いだらけになってるだ?カルドさんとか平気なんだべか?…んー…まだ鼻がおかしいだ…」

 あれ?ランディってそんなに鼻がきかないんだったよな?それでもきついのか。

「ねぇ、ランディ!ランディでもお屋敷に入れないくらい匂いがするの?」
「んだ。あれだったら、カルドさんの鼻も壊れてもおかしくねぇべ」

 ランディが屋敷に入れないのに、ケモ耳組は平気…調子が悪いのも、三人だけだ。ってことは…つまり。

「匂いが原因かなぁ?」
 そうだろうな。でも困った…なんの匂いが原因かわかんないぞ…誰かこういうのが得意な人が…。
「あっ!」
 そうだ!

 浮かんだ人物の元へとダッシュだ!

「坊ちゃま、どこいくだ?」
「カルドのねー次に鼻がきく人のとこー!」
 
 どたどたと足をばたつかせて、ランディが走り出しケルンについて走り出した。ちょうどいい、あそこへ避難しよう!

 あの人だったら、何かわかるかも!
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