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第二章 事件だらけのケモナー
発明はトラブルのもと
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ドワーフ事件から、約九ヶ月。
今年の夏は暑かった。暑すぎて、ランディの毛を刈ったり、カルドやフィオナ、エセニアの犬耳トリオの耳がへたっていたぐらいだ。
お屋敷の中は、冷気の魔石を使った冷風機が活躍したのだが、魔道具は高い。一台でも買ったら、我が家の財政が大変なことになる…そう思ったから、少し考えてみた。
まず、冷風機を作るとして、ただの風では意味がないので、冷やした風を送る。機械文明が、そこまで開花していないので、その水準を求めるのは、酷である。
では、何が使えるか。
魔石だ。
魔道具の動力である魔石は、消耗品だが、数年ぐらい使える。風と冷気の魔石を二種類用意して、上手く配置すれば、魔道具が作れるだろう。
基礎となる魔道具がないから、想像に任せて考えてみるが、魔石の勉強をしたから、だいたいわかる。
天然物と人工物の二つをどう使うかだ。
天然物の魔石は、火であるとか、水であるとかの元素が固まった魔力のある石だ。人工物は、絵の具の材料にもしているあの魔石や、コールや隷属の魔法が込められた魔石である。
人工物の魔石でも、ランクが低い元素の魔石を使うので、無からは魔石は作れない。たぶん、棒神様が、無から作る許可をだしていないんだろうな。
しかも初級魔法のみしかかけられない。
隷属の魔石に関しては、魔物から出てくるときがあるほど希少価値が高いらしいが、ケルンの質問になんでも答えてくれるキャスですら、詳しくは教えてくれなかったのが、魔物からは特殊な魔石が出る可能性がある。
かなり特殊な物かもしれない…なんて俺も思っていた。
ただ、実はそこら辺の石にも僅かばかりの魔力がこもっている。魔力が強い人が魔力を込めれば最低ランクより、さらに下ぐらいの魔石ができる。
そこで、俺は知識の検索に必死になった。何せ、財政難なんてことになったら、みんなとお別れになってしまうからな。父様も仕事辞めるかも…なんて聞いてしまったから、我が家のピンチなのだ!
ティルカとかが出稼ぎに出ていても、ちょくちょく帰ってくるぐらいだ。キャスだって役人といってたし、ナザドも教師。
まして、家族とはいえ使用人に資金を頼むわけにはいかないだろう。
ケルンも一応少しは稼いでいる。絵や絵本の収入は、一部の人達がファンでいてくれているけど、正直、あてにならない。
まだ、街に本が流れてこないから、出版を絞っているんだろうな…ペンギンさん物語は、三冊目を出したけど、見本が家に届いたが、売られているのを見ていない。
ふと、キッチンの冷蔵庫はどうなっているかを確認すると…冷気の魔石を使っていた。上部に冷気の魔石を置いていて、上に行けば凍り、下にいけば冷蔵庫になっていた。
かなり大型だったので、ハンクに持ち上げてもらって、上部の箱をあけて、そっと閉めた。
我が家の財政が…!
どうしようか…本当…冷気の魔石を使うなんて…冷気の魔石…ん?
羽根の所を冷気の魔法を込めた魔石で作り、さらに、羽根の後ろに移動とかの加速で使うような風の魔法を、込めた魔石を張り付けたら、勝手に回転するのではないか?
冷気の魔石があるだけで物が凍るほど、冷たいのだ。だったら、それがぐるぐると回転すると…冷たい風が送られるのではないか?
風の魔石は高いし、動力というか、魔石を回路のようにどう繋げばいいかわからないし、わかってもコストがかかると思うのだ。だけど、冷やした空気を風で送るのではなく、冷気の羽根の風ならば!
早速、作ってみることにした。父様に頼んだのは、冷たい凍るほどの冷気の魔石。そして、止まらず周り続けるような風の魔法だ。
「冷たい魔法?初級魔法でか…凍らすとなると『アイスソーン』かな。周り続ける魔法…んー…『ウィンドブロック』…『トルネードブロック』…ああ、回転となると『ウィンドターン』なんかがいいかな。ブーメランはわかるか?あんな風に放った風が戻ってくるようになってるからな」
「父様!作れる?」
「何か作るのかい?よし!父様が魔石を作ってあげよう!任せなさい!」
と、自信を持っていうので、作ってもらった。
『アイスソーン』の魔石を彫刻刀で削り、羽根の形にしたら、次に『ウィンドターン』を削って、羽根にくっ付ける。
ここで、少し問題があった。想像だと、直接つけていたのだが、魔石同士が反発しているのか、くっつかない。型枠を使うと、片方しか魔力が通らないのか、動かない。
やはり、魔石を繋ぐ回線がわからないといけないのか…絵の具だと、上手くいくのだけどな…んー。
「上手くいかないねー…」
だなぁ。
「絵の具みたいに、ぐにぐにしたらいいのかなぁ?」
ぐにぐにってのは調合か?いやいや、それだったら、魔石を絵の具みたく、粉にしないといけなくなるだろ。
ん?絵の具は…粉にして…テレピン油で、溶かして…あっ!
「絵にぺたぺた!くっつけて!」
そうだ!その手だ!
『アイスソーン』の魔石の裏に、粉にした『ウィンドターン』の魔石を接着剤に溶かして塗りつけた。一回ではなく、何度も塗った。
油絵のように、何層も塗っていった。徐々に魔石の配合を変えてだ。
そうしたら、完成したのだ。スイッチはないけど、魔石に魔力を通すと、動き出す冷風機が!
止め方は反発させれば、止まるということがわかったので、『アイスソーン』と反対になる『ヒートソーン』の魔石を近づけると、止まる。
少しして、スイッチで止まるようにつっかえ棒に『ヒートソーン』の魔石を使った物に改良した。普通の木の棒だと、凍ってしまったからだ。
我が家の夏は乗り切った。財政難にも、ならなかったし、元手は知れているから、ついでにエフデの名前で、孤児院の子供達にどうぞと配り、農家の人達に、牛や豚にどうぞと、寄付しておいた。
感謝の手紙と、商人から商品化の話がきていたけど、商人からの話は断った。素人作品だから、もっと改良したらなと、説明してもらった。
と、ここまでだったら平和だったのだけれど。
トラブルは呼んでいないのに飛び込んでくる。
今年の夏は暑かった。暑すぎて、ランディの毛を刈ったり、カルドやフィオナ、エセニアの犬耳トリオの耳がへたっていたぐらいだ。
お屋敷の中は、冷気の魔石を使った冷風機が活躍したのだが、魔道具は高い。一台でも買ったら、我が家の財政が大変なことになる…そう思ったから、少し考えてみた。
まず、冷風機を作るとして、ただの風では意味がないので、冷やした風を送る。機械文明が、そこまで開花していないので、その水準を求めるのは、酷である。
では、何が使えるか。
魔石だ。
魔道具の動力である魔石は、消耗品だが、数年ぐらい使える。風と冷気の魔石を二種類用意して、上手く配置すれば、魔道具が作れるだろう。
基礎となる魔道具がないから、想像に任せて考えてみるが、魔石の勉強をしたから、だいたいわかる。
天然物と人工物の二つをどう使うかだ。
天然物の魔石は、火であるとか、水であるとかの元素が固まった魔力のある石だ。人工物は、絵の具の材料にもしているあの魔石や、コールや隷属の魔法が込められた魔石である。
人工物の魔石でも、ランクが低い元素の魔石を使うので、無からは魔石は作れない。たぶん、棒神様が、無から作る許可をだしていないんだろうな。
しかも初級魔法のみしかかけられない。
隷属の魔石に関しては、魔物から出てくるときがあるほど希少価値が高いらしいが、ケルンの質問になんでも答えてくれるキャスですら、詳しくは教えてくれなかったのが、魔物からは特殊な魔石が出る可能性がある。
かなり特殊な物かもしれない…なんて俺も思っていた。
ただ、実はそこら辺の石にも僅かばかりの魔力がこもっている。魔力が強い人が魔力を込めれば最低ランクより、さらに下ぐらいの魔石ができる。
そこで、俺は知識の検索に必死になった。何せ、財政難なんてことになったら、みんなとお別れになってしまうからな。父様も仕事辞めるかも…なんて聞いてしまったから、我が家のピンチなのだ!
ティルカとかが出稼ぎに出ていても、ちょくちょく帰ってくるぐらいだ。キャスだって役人といってたし、ナザドも教師。
まして、家族とはいえ使用人に資金を頼むわけにはいかないだろう。
ケルンも一応少しは稼いでいる。絵や絵本の収入は、一部の人達がファンでいてくれているけど、正直、あてにならない。
まだ、街に本が流れてこないから、出版を絞っているんだろうな…ペンギンさん物語は、三冊目を出したけど、見本が家に届いたが、売られているのを見ていない。
ふと、キッチンの冷蔵庫はどうなっているかを確認すると…冷気の魔石を使っていた。上部に冷気の魔石を置いていて、上に行けば凍り、下にいけば冷蔵庫になっていた。
かなり大型だったので、ハンクに持ち上げてもらって、上部の箱をあけて、そっと閉めた。
我が家の財政が…!
どうしようか…本当…冷気の魔石を使うなんて…冷気の魔石…ん?
羽根の所を冷気の魔法を込めた魔石で作り、さらに、羽根の後ろに移動とかの加速で使うような風の魔法を、込めた魔石を張り付けたら、勝手に回転するのではないか?
冷気の魔石があるだけで物が凍るほど、冷たいのだ。だったら、それがぐるぐると回転すると…冷たい風が送られるのではないか?
風の魔石は高いし、動力というか、魔石を回路のようにどう繋げばいいかわからないし、わかってもコストがかかると思うのだ。だけど、冷やした空気を風で送るのではなく、冷気の羽根の風ならば!
早速、作ってみることにした。父様に頼んだのは、冷たい凍るほどの冷気の魔石。そして、止まらず周り続けるような風の魔法だ。
「冷たい魔法?初級魔法でか…凍らすとなると『アイスソーン』かな。周り続ける魔法…んー…『ウィンドブロック』…『トルネードブロック』…ああ、回転となると『ウィンドターン』なんかがいいかな。ブーメランはわかるか?あんな風に放った風が戻ってくるようになってるからな」
「父様!作れる?」
「何か作るのかい?よし!父様が魔石を作ってあげよう!任せなさい!」
と、自信を持っていうので、作ってもらった。
『アイスソーン』の魔石を彫刻刀で削り、羽根の形にしたら、次に『ウィンドターン』を削って、羽根にくっ付ける。
ここで、少し問題があった。想像だと、直接つけていたのだが、魔石同士が反発しているのか、くっつかない。型枠を使うと、片方しか魔力が通らないのか、動かない。
やはり、魔石を繋ぐ回線がわからないといけないのか…絵の具だと、上手くいくのだけどな…んー。
「上手くいかないねー…」
だなぁ。
「絵の具みたいに、ぐにぐにしたらいいのかなぁ?」
ぐにぐにってのは調合か?いやいや、それだったら、魔石を絵の具みたく、粉にしないといけなくなるだろ。
ん?絵の具は…粉にして…テレピン油で、溶かして…あっ!
「絵にぺたぺた!くっつけて!」
そうだ!その手だ!
『アイスソーン』の魔石の裏に、粉にした『ウィンドターン』の魔石を接着剤に溶かして塗りつけた。一回ではなく、何度も塗った。
油絵のように、何層も塗っていった。徐々に魔石の配合を変えてだ。
そうしたら、完成したのだ。スイッチはないけど、魔石に魔力を通すと、動き出す冷風機が!
止め方は反発させれば、止まるということがわかったので、『アイスソーン』と反対になる『ヒートソーン』の魔石を近づけると、止まる。
少しして、スイッチで止まるようにつっかえ棒に『ヒートソーン』の魔石を使った物に改良した。普通の木の棒だと、凍ってしまったからだ。
我が家の夏は乗り切った。財政難にも、ならなかったし、元手は知れているから、ついでにエフデの名前で、孤児院の子供達にどうぞと配り、農家の人達に、牛や豚にどうぞと、寄付しておいた。
感謝の手紙と、商人から商品化の話がきていたけど、商人からの話は断った。素人作品だから、もっと改良したらなと、説明してもらった。
と、ここまでだったら平和だったのだけれど。
トラブルは呼んでいないのに飛び込んでくる。
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