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第一章の裏話
追話 使用人の日記より執事カルドの日記 ⑥
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サンデル国は、元々は農業で糧を得ていた小国であった。
兵力も、魔法使いの質も高くなく、冒険者もあまり訪れない。長閑な国であったそうだ。
そのせいで、一日も持たずに、国は魔族に滅ぼされた。
此度の戦で、もっとも激戦区となるであろうとされた旧サンデル国の領土は、人類側の魔法障壁により、魔族は抜け出せない状態にとどめられていた。
『遠耳』スキルにより、情報を集めると、戦死者の数があがっていた。魔族と、裏切りによって、魔族を封じ込めることしかできない。この障壁も、二日も保たないだろう。
障壁を簡単に抜けることはできない。だが、旦那様の二つ名の通り、精霊による魔法であるなら、障壁を、すり抜けることは簡単であった。
「あの障壁は、魔族を通さないだけで、人は簡単に通してくれる」
何年かのちの頃に、たずねるとそう申されていましたが、そんなに簡単な障壁ではありませんでした。
旧サンデル国王城には、紫色の篝火が焚かれ、廃屋のあちらこちらから、視線を感じる。だが、攻撃をしてくる気配はない。警戒を続けていると、王城の前に、燕尾服らしき服を着た、赤黒い肌の巨体を持つ者が立っていた。
『遠見』と『鑑定』の結果、燕尾服の材料は…サンデル国の王族の生皮であることを、そして、生皮の中で、生かされていることを知りましたが、旦那様にはお伝えしませんでした。すでに手遅れであったことと、私達には無関係であったからです。
「これは、これは。もしや、クウリィエンシア国の精霊の申し子殿ではありませんかな?」
魔族の爵位持ちは、独特な話し方をする。嫌に丁寧な話し方をしているが、一音一音。不快にさせるような、いや、馬鹿にしている。そのような物言いであった。服装から、執事のような立ち振舞いをしているが、まったく、礼儀作法に欠けるそれは、とても不愉快だった。
また、他の魔族にも警戒を強めていると、目の前の魔族は、顔をこちらにむけたままの下手な人間をまねたお辞儀をしてみせる。
「これは、これは。ご安心を。配下の者には、手を出させません。私がお相手をするのが、礼儀でしょう。私は、この地を任された領主。偉大なる氷蛇の魔王様より、伯爵の地位をいただく、デーヌーンと申します」
伯爵!一国の兵士、全てを持ってして、ようやく倒せるかどうかの相手である。
だが、そんなことは、関係なかった。旦那様も私も、無言でそやつの戯れ言を聞いていました。
「モール男爵からの贈り物は、喜んでいただけましたか?」
モール男爵というのが、誰かわからなかった。いや、話しぶりからして、奥様を傷つけた下種のことであろうかとは思ったのだ。
「魔王様も、お気が早いお方でありまして、赤子が産まれてから、晩餐にしましょうと申したのですが…」
デーヌーンは、そこで、せせら笑った。
「魂だけでも食したいと申されまして。いやはや、魔王様も、お喜びになられますでしょう。ああそうでした」
あの魔法は、魂を奪う魔法であったのかと、判明した。それと共に、殺意が高まっていく。
「ついでに、母親の方の肉をいただきましたが、食するのが楽しみであります。英雄の肉とは、家畜でも珍味ですからね」
奥様を!私達の宝であったお二人のお子を!家畜だと!
頭の中で、ピンと張っていた糸が切れる音がしました。
「黙れ!」
私は、怒鳴り声と一緒に、懐刀に入れていたナイフを『投擲』スキルと『剛力』スキル、そして『暗器』の三つで底上げして、投げた。
デーヌーンは、その場で飛び上がり、ナイフを避けた。地面はえぐれ、着地はずれる。
「精霊よ、力を貸してくれ!『エレメントアロー』!」
旦那様の魔法は、デーヌーンが着地した瞬間に当たった。旦那様は『射撃』のスキルをお持ちでありました。スキルと魔法を絡めた攻撃、そして『エレメントアロー』は、契約している精霊の放つ弓矢を、具現化した魔法です。旦那様が契約しているのは、精霊の王。契約できる最上位の精霊が放つ弓矢は、デーヌーンを滅ぼす。
そう思えた。
「これは、これは。いやはや、たかだか家畜がよくやりますね。私の左半分を吹き飛ばすとは…八百年ぶりに、生やしましたよ」
魔族であれ、片側がなくなれば死ぬ。それなのに、デーヌーンは、新たな左側面を、生やしてみせたのだ。
「これは、これは。驚いて動くこともできませんかな?」
そういって『シャドウポイント』の魔法を放ってきた。小さな点の闇魔法は、触れたところが、壊死をする。
私は、双剣を持って、打ち返した。ただのミスリルの剣ではなく、鉄塊のヴェルムが、鍛え上げ『付与』スキルで、魔法反射をつけた剣である。
ただの魔法であれば、私でも戦える。
「これは、これは。我らの愛を理解していただけないとは」
「愛だと?」
打ち返し、初めて疑問を口に出した。魔族に愛などはない。あるはずがないのだ。魔族には家族がいない。家族という概念がないのだ。なのに、愛だと?
私の疑問をデーヌーンは答える。それはやはり、私達の考える愛ではなかった。
「これは、これは。…我らは家畜でも、美味なものを求めております。食することが我らの愛!氷蛇の魔王様は、中でも美食家でしてね…」
そういって、私の目の前に突如現れた。
「まぁ、私は、ほどよくしまった獣人が好物なのですがね」
私は、腹部に熱を感じた。デーヌーンの右手は肉片を握っていた。脇腹の一部を持っていかれたのだ。
「カルド!」
旦那様の魔法を放たれる前に、私は、奥歯に隠してあった薬を噛んだ。酷く不味く、倦怠感をともなう。劇薬ではあるが、緊急の治癒薬を仕込んでいた。
代償として、私は、視力が低下したのだが、その時も今でも、視力でよかったと思う。もしも、他の例えば、筋力に出ていれば、私は今ここにいないだろう。
「ふむ…これは、これは!ほどよい闇に染まった肉の味…人殺しの肉は、何ともいえないですね…」
くちゃくちゃと、食事の作法も知らないのか、デーヌーンは、私の肉を食っていた。私の血肉を食らうことで、私の人生を知ったような口振りであったが、全てではないことに、すぐに気づいた。
「ふっ…人殺しの肉が美味いか…ならば、もっと食わせてやろう」
回復をして、双剣に、自身の血をまとわせ、斬りかかると、デーヌーンは驚いていた。
「いつのまに!」
旦那様の魔力の高まりを、私の回復の為と誤認していたのか、一太刀目で、奴の生えたての左腕を切り離せた。
「旦那様!私が時間を稼ぎます!お早く!」
旦那様のこれから放たれるであろう魔法は、事前に聞かせられていた。
魔族がなぶり殺しを狙ってくることも、獣人を狙うことも計算に入っていた。
だから、旦那様は劇薬である治癒薬を服用することを止めず、私も旦那様の行動をお止めすることは、できなかったのだ。
「これは、これは…食前の運動とは」
デーヌーンは、そういって、また身体を生やそうと思ったのだろう。奴の燕尾服の生皮が減っていることから、奴の肉体再生は、王族の血肉と無理矢理縛りつけられた魂を対価としていることは、最初の再生で気づいていた。
奴らと対峙するときに、私達の常識は、非常識になる。
だが、生やそうとしても、生えず、代わりに吐血した。
「ぐふっ…何だ!…身体が…!」
体内の変化に気づいていないようだ。
「ようやく効いてきたか。頑丈だな」
私は、魔族の注目を集めるように『挑発』のスキルと『剣舞』のスキルを二つ使った。『剣舞』のスキルは、掛け合わせることで、効果がかわる。『挑発』と掛け合わせることで『催眠』と似たような効果が得られるのだ。
「何を…した…」
左腕が消失した部分が、おぞましく蠢く。血肉をまとったミミズのように、形を作ろうとして失敗を繰り返す。
「お前が口にした、私の血肉は、毒だ。効くかは賭けでもあったが、どうやら私の勝ちだな」
子供達の誰にも受け継がれずに済んだスキルが『毒化』だ。毒草を食むヤギがチューネシュには、多く棲息する。
私の母であったヤギも、毒草を好んで食べ、私には『毒耐性』と体液の『毒化』のスキルが身に付いていた。この事は、旦那様のみに、お伝えしていた。
私の時間稼ぎは、終わった。
旦那様の魔力の高まりは、視認できるほどとなった。
旦那様は歴代のフェスマルク家の方々の貴石をはめ込んである杖と、初代のご当主ゆかりの品を持ってこられておりました。
魔力の高い旦那様でさえその魔法を使うのに魔力が足りない。そのため家宝の品を持ってこられていた。
「来たれ、精霊よ」
左手に杖をかかげ、右手で剣を大地へと突き刺す。
旦那様の周囲を、穏やかな色とりどりの光が集まる。魔力の高い者がみれば、どの精霊が来ていたのかはわかっただろうが、その光の美しさと強さに、魔族ですら、身動きを止めたのだ。
「四元の覇者にして、四元の具現者よ」
四つの一際大きな光が、旦那様の頭上の四方に集まる。
「火の精霊の長よ、燃えつつ消え、消えつつ燃やす、火の王よ」
一つの光から、猛々しく、手足は炎でできた男女の区別がつかない美丈夫が、矛を持って現れた。
「水の精霊の長よ、流れつつ留まり、留まりつつ流す、水の王よ」
続いて、水の身体ながらも、思わず見惚れるほど美女が、ローブをはためかせ、現れる。
「風の精霊の長よ、吹きつつ微睡み、微睡みつつ吹かす、風の王よ」
小さな竜巻を伴って、両腕のない少年と思わしき精霊が姿をみせる。私の中にある僅かな魔力が高まるところをみると、風の精霊王であることは、疑いがなかった。
「地の精霊の長よ、根差しつつ揺るがせ、揺るぎつつ根差す、地の王よ」
最後の光から、ドワーフほどの背丈ながらも、金色に輝き、麦の穂を思い起こされる青年が姿を表した。
四人の精霊が現れたことで、魔族は四人にようやく襲いかかるが、見えない障壁に阻められたのか、触れることすらできずに、その身を滅ぼされた。
ある者は焼かれ。ある者は溺れ。ある者は切り刻まれ。ある者は地に引きずりこまれた。
「四元の覇者達よ!なれど、主を持つ王達よ!汝らの主を、この地、この場所へと招来せん!」
ある程度力の強い魔族が、魔法を放つが、私は、それら全てを『神速』と『剛力』そして、先程とは、効果が異なり、『神速』と『剛力』の潤滑油として、効果を何倍にも高める為に『剣舞』のスキルを組合わせることによって打ち返していった。
「我らは拝し乞う!我らの敵を排せと願い乞う!光よ。光の王よ!精霊の王の力を借りし、矮小たる我が前に、ただ一度の慈悲を、乞い願わん!」
精霊の王達が、膝をつき、旦那様の図上に光が差し込む。旦那様は右手の剣から手を離し、精霊の王たちのように目をつぶり、杖を握り、祈っているようでした。
真夜中に一筋の光が貫く姿。それは、光輝く一本の大剣のようでした。
「させるかぁぁぁぁぁ!魔霊よ!呪え!『カースデッド』!」
解毒をして、動けるようになったのか、デーヌーンは、周囲の魔族達を圧縮させ、その命を使い、黒い球体を、旦那様へと放った。
一人の命を使っただけでも、魔法の威力はあがる。禁術すらも生温い外法は、いかな旦那様とはいえ、無事とは言い切れない。
「行かせはせぬぞ!」
ここで私は死ぬ。
そのつもりで『身体強化』『不動』『不屈』『加重』『金剛』を同時に発動させた。
『身体強化』は全ての基礎にして土台だ。『不動』はその場に止まり『不屈』は決して折れない肉体。『加重』で、自分の身体に重さを加えて衝撃に備えた。『金剛』は、命を落としても、どのような攻撃でも、貫かれることなく盾となる。
血を吐き、身体の中から、ミシミシという嫌な音を聞いても、私がこれからやろうとすることには、まだ足りない。
私は、最後に『龍気法』のスキルを発動した。
『龍気法』のスキルは、大地の魔力をすいとる魔法補助のスキルだった。魔力が少ない私には、強い魔力を身体に通すだけで、身体が弾け飛ぶ可能性が強い。それ故に、同時に身体へのスキルを使った。
全身を流れる血液が、溶けた鉄に変わったような苦痛の中で、魔法を使った。
「風の精霊よ!吹き上げて来い!『ウィンドブロック』」
私が唯一使える精霊魔法は風の系統。それも、二種類のものだけだった。
自分に対する加速の補助と敵への妨害魔法。魔力が少なく、行使できるのは、一日に三回ほどだが、私は全てのなけなしの魔力を『龍気法』で底上げして使い、旦那様ほどの魔法使い程度の風の壁を作った。いかなる攻撃を持ってしても、数十秒間は決して通らない。
敵の魔法が、風の障壁にぶつかる。障壁が徐々に削られるのがわかった。
スキル使用にも、少量とはいえ、魔力を使うこともあり、私は身動きがとれなくなった。それ以上に、経験したことのない量の魔力を身体が通っている。
指先は割れて、溢れた魔力が、さらに自分を傷つける。
それでも、確信していた。旦那様は、必ず成し遂げると。
薄れゆく意識の中で、旦那様の詠唱が完成した。
「面前の敵を光の全てで、消し去れ『ジャッチエレメントレイ』」
杖が、薄く青色に輝いた後に、旦那様は杖を大地に差したままの剣へと振り下ろされた。
魔族たちの悲鳴ごと、巨大な虹色の光が、天より落ちてきた。
私も、旦那様も、光の中に包まれた。
光は旧サンデル国の全てを飲み込んだ。
どれほど、気を失っていたのかはわからない。あたりには、何も残っていなかった。廃城も。廃屋も。数千はいた魔族全てが、なくなっていた。
サンデル国は、ただの更地になっていた。
「旦那…様…!旦那様!」
お探しするとすぐに見つける音ができました。旦那様は、うつ伏せに倒れられていた。
「旦那様…!そのお姿は!」
私は、何とか動ける範囲の全速力で、旦那様の元へと駆け寄り、旦那様を起こした。
旦那様の姿は、気を失うまでの青年の姿ではなく、壮年の姿へ変貌していた。
「ああ…魔力が足りなかったからな。仕方ない。父も母も同じだったからな…」
魔力が足りない場合、発動しない。だが、生命力を消費すれば、発動できる。旦那様の父上と母上も、魔力が足りなくて生命力を魔力に返還して、亡くなっていたことを、私はその時、初めて教えられたのだ。
家宝の品々は生命力を魔力に変換を補助する道具だったのでした。
魔法の効果は絶大でした。小国とはいえ一国を魔族ごと消し去ったのです。
その代償も大きかった。旦那様は、ただ一度の魔法の行使で、およそ四十年分の寿命を削った。人生の四分の一を、一瞬で失われたのだ。
「なぁ…カルド。俺は、いい父親になれたと思うか?」
「勿論です。旦那様以上の父親など、いません」
旦那様は出会った頃のような口調でした。
「ああ…沢山甘やかして、さびしい思いをさせない。尊敬できる父親に、俺は、なれたかな?」
「はい。もちろんです。旦那様のお父上と同様、尊敬されたことでしょう。」
「そうか…今だけは…今だけは、願いたいことがあるんだ」
私達は、未来の話をしているのではない。もう戻らない失われてしまった…仮定の話をしていたのだ。
「ディアに、子供を抱かせて、時々俺もだっこしてやりたかった。頭を撫でてやりたかった」
旦那様と、私は、しばらく、そのまま泣いていました。
涙を流したのは、あの場所が最後となりました。
小国規模とはいえ、国を一つ滅ぼし、更地にした魔法使いは、どの国の、どの歴史の魔法使いにもできないことでした。
光の精霊を呼び出しただけでも、歴史に残る偉業となり、王を呼び出した旦那様は、スメイン大陸の全ての国と、他の大陸の何ヵ国の国、そして、神殿からの神託により、一つの称号を授けられました。
『法王』
魔法使いの王と呼称されるようになったのです。
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カルドの話はもう一話だけあります。もう少しだけお付き合いください。
その次はドワーフの予定で追話は終了予定です。
第二章はもふもふ…というよりひんやり?です。
ブックマークが百をこえました。いままで小説を書いてきて初めてこんなにも登録していただけて、凄く嬉しいです。スクショしました。
これからもよろしくお願いします!
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兵力も、魔法使いの質も高くなく、冒険者もあまり訪れない。長閑な国であったそうだ。
そのせいで、一日も持たずに、国は魔族に滅ぼされた。
此度の戦で、もっとも激戦区となるであろうとされた旧サンデル国の領土は、人類側の魔法障壁により、魔族は抜け出せない状態にとどめられていた。
『遠耳』スキルにより、情報を集めると、戦死者の数があがっていた。魔族と、裏切りによって、魔族を封じ込めることしかできない。この障壁も、二日も保たないだろう。
障壁を簡単に抜けることはできない。だが、旦那様の二つ名の通り、精霊による魔法であるなら、障壁を、すり抜けることは簡単であった。
「あの障壁は、魔族を通さないだけで、人は簡単に通してくれる」
何年かのちの頃に、たずねるとそう申されていましたが、そんなに簡単な障壁ではありませんでした。
旧サンデル国王城には、紫色の篝火が焚かれ、廃屋のあちらこちらから、視線を感じる。だが、攻撃をしてくる気配はない。警戒を続けていると、王城の前に、燕尾服らしき服を着た、赤黒い肌の巨体を持つ者が立っていた。
『遠見』と『鑑定』の結果、燕尾服の材料は…サンデル国の王族の生皮であることを、そして、生皮の中で、生かされていることを知りましたが、旦那様にはお伝えしませんでした。すでに手遅れであったことと、私達には無関係であったからです。
「これは、これは。もしや、クウリィエンシア国の精霊の申し子殿ではありませんかな?」
魔族の爵位持ちは、独特な話し方をする。嫌に丁寧な話し方をしているが、一音一音。不快にさせるような、いや、馬鹿にしている。そのような物言いであった。服装から、執事のような立ち振舞いをしているが、まったく、礼儀作法に欠けるそれは、とても不愉快だった。
また、他の魔族にも警戒を強めていると、目の前の魔族は、顔をこちらにむけたままの下手な人間をまねたお辞儀をしてみせる。
「これは、これは。ご安心を。配下の者には、手を出させません。私がお相手をするのが、礼儀でしょう。私は、この地を任された領主。偉大なる氷蛇の魔王様より、伯爵の地位をいただく、デーヌーンと申します」
伯爵!一国の兵士、全てを持ってして、ようやく倒せるかどうかの相手である。
だが、そんなことは、関係なかった。旦那様も私も、無言でそやつの戯れ言を聞いていました。
「モール男爵からの贈り物は、喜んでいただけましたか?」
モール男爵というのが、誰かわからなかった。いや、話しぶりからして、奥様を傷つけた下種のことであろうかとは思ったのだ。
「魔王様も、お気が早いお方でありまして、赤子が産まれてから、晩餐にしましょうと申したのですが…」
デーヌーンは、そこで、せせら笑った。
「魂だけでも食したいと申されまして。いやはや、魔王様も、お喜びになられますでしょう。ああそうでした」
あの魔法は、魂を奪う魔法であったのかと、判明した。それと共に、殺意が高まっていく。
「ついでに、母親の方の肉をいただきましたが、食するのが楽しみであります。英雄の肉とは、家畜でも珍味ですからね」
奥様を!私達の宝であったお二人のお子を!家畜だと!
頭の中で、ピンと張っていた糸が切れる音がしました。
「黙れ!」
私は、怒鳴り声と一緒に、懐刀に入れていたナイフを『投擲』スキルと『剛力』スキル、そして『暗器』の三つで底上げして、投げた。
デーヌーンは、その場で飛び上がり、ナイフを避けた。地面はえぐれ、着地はずれる。
「精霊よ、力を貸してくれ!『エレメントアロー』!」
旦那様の魔法は、デーヌーンが着地した瞬間に当たった。旦那様は『射撃』のスキルをお持ちでありました。スキルと魔法を絡めた攻撃、そして『エレメントアロー』は、契約している精霊の放つ弓矢を、具現化した魔法です。旦那様が契約しているのは、精霊の王。契約できる最上位の精霊が放つ弓矢は、デーヌーンを滅ぼす。
そう思えた。
「これは、これは。いやはや、たかだか家畜がよくやりますね。私の左半分を吹き飛ばすとは…八百年ぶりに、生やしましたよ」
魔族であれ、片側がなくなれば死ぬ。それなのに、デーヌーンは、新たな左側面を、生やしてみせたのだ。
「これは、これは。驚いて動くこともできませんかな?」
そういって『シャドウポイント』の魔法を放ってきた。小さな点の闇魔法は、触れたところが、壊死をする。
私は、双剣を持って、打ち返した。ただのミスリルの剣ではなく、鉄塊のヴェルムが、鍛え上げ『付与』スキルで、魔法反射をつけた剣である。
ただの魔法であれば、私でも戦える。
「これは、これは。我らの愛を理解していただけないとは」
「愛だと?」
打ち返し、初めて疑問を口に出した。魔族に愛などはない。あるはずがないのだ。魔族には家族がいない。家族という概念がないのだ。なのに、愛だと?
私の疑問をデーヌーンは答える。それはやはり、私達の考える愛ではなかった。
「これは、これは。…我らは家畜でも、美味なものを求めております。食することが我らの愛!氷蛇の魔王様は、中でも美食家でしてね…」
そういって、私の目の前に突如現れた。
「まぁ、私は、ほどよくしまった獣人が好物なのですがね」
私は、腹部に熱を感じた。デーヌーンの右手は肉片を握っていた。脇腹の一部を持っていかれたのだ。
「カルド!」
旦那様の魔法を放たれる前に、私は、奥歯に隠してあった薬を噛んだ。酷く不味く、倦怠感をともなう。劇薬ではあるが、緊急の治癒薬を仕込んでいた。
代償として、私は、視力が低下したのだが、その時も今でも、視力でよかったと思う。もしも、他の例えば、筋力に出ていれば、私は今ここにいないだろう。
「ふむ…これは、これは!ほどよい闇に染まった肉の味…人殺しの肉は、何ともいえないですね…」
くちゃくちゃと、食事の作法も知らないのか、デーヌーンは、私の肉を食っていた。私の血肉を食らうことで、私の人生を知ったような口振りであったが、全てではないことに、すぐに気づいた。
「ふっ…人殺しの肉が美味いか…ならば、もっと食わせてやろう」
回復をして、双剣に、自身の血をまとわせ、斬りかかると、デーヌーンは驚いていた。
「いつのまに!」
旦那様の魔力の高まりを、私の回復の為と誤認していたのか、一太刀目で、奴の生えたての左腕を切り離せた。
「旦那様!私が時間を稼ぎます!お早く!」
旦那様のこれから放たれるであろう魔法は、事前に聞かせられていた。
魔族がなぶり殺しを狙ってくることも、獣人を狙うことも計算に入っていた。
だから、旦那様は劇薬である治癒薬を服用することを止めず、私も旦那様の行動をお止めすることは、できなかったのだ。
「これは、これは…食前の運動とは」
デーヌーンは、そういって、また身体を生やそうと思ったのだろう。奴の燕尾服の生皮が減っていることから、奴の肉体再生は、王族の血肉と無理矢理縛りつけられた魂を対価としていることは、最初の再生で気づいていた。
奴らと対峙するときに、私達の常識は、非常識になる。
だが、生やそうとしても、生えず、代わりに吐血した。
「ぐふっ…何だ!…身体が…!」
体内の変化に気づいていないようだ。
「ようやく効いてきたか。頑丈だな」
私は、魔族の注目を集めるように『挑発』のスキルと『剣舞』のスキルを二つ使った。『剣舞』のスキルは、掛け合わせることで、効果がかわる。『挑発』と掛け合わせることで『催眠』と似たような効果が得られるのだ。
「何を…した…」
左腕が消失した部分が、おぞましく蠢く。血肉をまとったミミズのように、形を作ろうとして失敗を繰り返す。
「お前が口にした、私の血肉は、毒だ。効くかは賭けでもあったが、どうやら私の勝ちだな」
子供達の誰にも受け継がれずに済んだスキルが『毒化』だ。毒草を食むヤギがチューネシュには、多く棲息する。
私の母であったヤギも、毒草を好んで食べ、私には『毒耐性』と体液の『毒化』のスキルが身に付いていた。この事は、旦那様のみに、お伝えしていた。
私の時間稼ぎは、終わった。
旦那様の魔力の高まりは、視認できるほどとなった。
旦那様は歴代のフェスマルク家の方々の貴石をはめ込んである杖と、初代のご当主ゆかりの品を持ってこられておりました。
魔力の高い旦那様でさえその魔法を使うのに魔力が足りない。そのため家宝の品を持ってこられていた。
「来たれ、精霊よ」
左手に杖をかかげ、右手で剣を大地へと突き刺す。
旦那様の周囲を、穏やかな色とりどりの光が集まる。魔力の高い者がみれば、どの精霊が来ていたのかはわかっただろうが、その光の美しさと強さに、魔族ですら、身動きを止めたのだ。
「四元の覇者にして、四元の具現者よ」
四つの一際大きな光が、旦那様の頭上の四方に集まる。
「火の精霊の長よ、燃えつつ消え、消えつつ燃やす、火の王よ」
一つの光から、猛々しく、手足は炎でできた男女の区別がつかない美丈夫が、矛を持って現れた。
「水の精霊の長よ、流れつつ留まり、留まりつつ流す、水の王よ」
続いて、水の身体ながらも、思わず見惚れるほど美女が、ローブをはためかせ、現れる。
「風の精霊の長よ、吹きつつ微睡み、微睡みつつ吹かす、風の王よ」
小さな竜巻を伴って、両腕のない少年と思わしき精霊が姿をみせる。私の中にある僅かな魔力が高まるところをみると、風の精霊王であることは、疑いがなかった。
「地の精霊の長よ、根差しつつ揺るがせ、揺るぎつつ根差す、地の王よ」
最後の光から、ドワーフほどの背丈ながらも、金色に輝き、麦の穂を思い起こされる青年が姿を表した。
四人の精霊が現れたことで、魔族は四人にようやく襲いかかるが、見えない障壁に阻められたのか、触れることすらできずに、その身を滅ぼされた。
ある者は焼かれ。ある者は溺れ。ある者は切り刻まれ。ある者は地に引きずりこまれた。
「四元の覇者達よ!なれど、主を持つ王達よ!汝らの主を、この地、この場所へと招来せん!」
ある程度力の強い魔族が、魔法を放つが、私は、それら全てを『神速』と『剛力』そして、先程とは、効果が異なり、『神速』と『剛力』の潤滑油として、効果を何倍にも高める為に『剣舞』のスキルを組合わせることによって打ち返していった。
「我らは拝し乞う!我らの敵を排せと願い乞う!光よ。光の王よ!精霊の王の力を借りし、矮小たる我が前に、ただ一度の慈悲を、乞い願わん!」
精霊の王達が、膝をつき、旦那様の図上に光が差し込む。旦那様は右手の剣から手を離し、精霊の王たちのように目をつぶり、杖を握り、祈っているようでした。
真夜中に一筋の光が貫く姿。それは、光輝く一本の大剣のようでした。
「させるかぁぁぁぁぁ!魔霊よ!呪え!『カースデッド』!」
解毒をして、動けるようになったのか、デーヌーンは、周囲の魔族達を圧縮させ、その命を使い、黒い球体を、旦那様へと放った。
一人の命を使っただけでも、魔法の威力はあがる。禁術すらも生温い外法は、いかな旦那様とはいえ、無事とは言い切れない。
「行かせはせぬぞ!」
ここで私は死ぬ。
そのつもりで『身体強化』『不動』『不屈』『加重』『金剛』を同時に発動させた。
『身体強化』は全ての基礎にして土台だ。『不動』はその場に止まり『不屈』は決して折れない肉体。『加重』で、自分の身体に重さを加えて衝撃に備えた。『金剛』は、命を落としても、どのような攻撃でも、貫かれることなく盾となる。
血を吐き、身体の中から、ミシミシという嫌な音を聞いても、私がこれからやろうとすることには、まだ足りない。
私は、最後に『龍気法』のスキルを発動した。
『龍気法』のスキルは、大地の魔力をすいとる魔法補助のスキルだった。魔力が少ない私には、強い魔力を身体に通すだけで、身体が弾け飛ぶ可能性が強い。それ故に、同時に身体へのスキルを使った。
全身を流れる血液が、溶けた鉄に変わったような苦痛の中で、魔法を使った。
「風の精霊よ!吹き上げて来い!『ウィンドブロック』」
私が唯一使える精霊魔法は風の系統。それも、二種類のものだけだった。
自分に対する加速の補助と敵への妨害魔法。魔力が少なく、行使できるのは、一日に三回ほどだが、私は全てのなけなしの魔力を『龍気法』で底上げして使い、旦那様ほどの魔法使い程度の風の壁を作った。いかなる攻撃を持ってしても、数十秒間は決して通らない。
敵の魔法が、風の障壁にぶつかる。障壁が徐々に削られるのがわかった。
スキル使用にも、少量とはいえ、魔力を使うこともあり、私は身動きがとれなくなった。それ以上に、経験したことのない量の魔力を身体が通っている。
指先は割れて、溢れた魔力が、さらに自分を傷つける。
それでも、確信していた。旦那様は、必ず成し遂げると。
薄れゆく意識の中で、旦那様の詠唱が完成した。
「面前の敵を光の全てで、消し去れ『ジャッチエレメントレイ』」
杖が、薄く青色に輝いた後に、旦那様は杖を大地に差したままの剣へと振り下ろされた。
魔族たちの悲鳴ごと、巨大な虹色の光が、天より落ちてきた。
私も、旦那様も、光の中に包まれた。
光は旧サンデル国の全てを飲み込んだ。
どれほど、気を失っていたのかはわからない。あたりには、何も残っていなかった。廃城も。廃屋も。数千はいた魔族全てが、なくなっていた。
サンデル国は、ただの更地になっていた。
「旦那…様…!旦那様!」
お探しするとすぐに見つける音ができました。旦那様は、うつ伏せに倒れられていた。
「旦那様…!そのお姿は!」
私は、何とか動ける範囲の全速力で、旦那様の元へと駆け寄り、旦那様を起こした。
旦那様の姿は、気を失うまでの青年の姿ではなく、壮年の姿へ変貌していた。
「ああ…魔力が足りなかったからな。仕方ない。父も母も同じだったからな…」
魔力が足りない場合、発動しない。だが、生命力を消費すれば、発動できる。旦那様の父上と母上も、魔力が足りなくて生命力を魔力に返還して、亡くなっていたことを、私はその時、初めて教えられたのだ。
家宝の品々は生命力を魔力に変換を補助する道具だったのでした。
魔法の効果は絶大でした。小国とはいえ一国を魔族ごと消し去ったのです。
その代償も大きかった。旦那様は、ただ一度の魔法の行使で、およそ四十年分の寿命を削った。人生の四分の一を、一瞬で失われたのだ。
「なぁ…カルド。俺は、いい父親になれたと思うか?」
「勿論です。旦那様以上の父親など、いません」
旦那様は出会った頃のような口調でした。
「ああ…沢山甘やかして、さびしい思いをさせない。尊敬できる父親に、俺は、なれたかな?」
「はい。もちろんです。旦那様のお父上と同様、尊敬されたことでしょう。」
「そうか…今だけは…今だけは、願いたいことがあるんだ」
私達は、未来の話をしているのではない。もう戻らない失われてしまった…仮定の話をしていたのだ。
「ディアに、子供を抱かせて、時々俺もだっこしてやりたかった。頭を撫でてやりたかった」
旦那様と、私は、しばらく、そのまま泣いていました。
涙を流したのは、あの場所が最後となりました。
小国規模とはいえ、国を一つ滅ぼし、更地にした魔法使いは、どの国の、どの歴史の魔法使いにもできないことでした。
光の精霊を呼び出しただけでも、歴史に残る偉業となり、王を呼び出した旦那様は、スメイン大陸の全ての国と、他の大陸の何ヵ国の国、そして、神殿からの神託により、一つの称号を授けられました。
『法王』
魔法使いの王と呼称されるようになったのです。
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カルドの話はもう一話だけあります。もう少しだけお付き合いください。
その次はドワーフの予定で追話は終了予定です。
第二章はもふもふ…というよりひんやり?です。
ブックマークが百をこえました。いままで小説を書いてきて初めてこんなにも登録していただけて、凄く嬉しいです。スクショしました。
これからもよろしくお願いします!
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