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第一章 棒人間の神様とケモナー
我が家へ
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当面、ケルンと俺は独立した存在として認識しあうように、それとなくケルンに提案しておくと、よくわかっていないが、妖精さんとでも思ってもらおう。
「んー?」
よくわかってないが、まぁそんなもんか。フォローはそのつどしていく。
問題はなくなったと気を抜いていると、あっという間に目的地についてしまっていた。
解放されている門を抜けるとそこには見慣れた建物があった。
左右対称の噴水に、ふかふかの芝生。まさにお屋敷といえる場所。
どこにだしても恥ずかしくない、自慢の家。ここが我が家だ。ただ、先祖伝来の屋敷を父親たちが自分たちで建て直した話をきいている。貴族と使用人が直せる程度なんだから普通の貴族の屋敷はもっとでかいだろうな。
ケルンが産まれて増えたものもある。もし、転んでも怪我をしないようにと、ケルンが歩く道は、ふかふかの芝生が植えられている。だから、倒れても怪我どころか、痛み一つない。普通の芝生よりも羽毛布団のような、しかもかなり高級な布団のような芝生だ。
芝生のないところは、基本、エセニアの背中に乗って、移動する。もしくは、庭師の背中に乗るのも多い。
過保護すぎる。いくらなんでも、これは酷い。
俺が有する知識の結論は、バカ息子製造環境にいると出た。もしくは子豚ちゃん製造過程、いや製造家庭か。
運動と情操教育のためにも、身近な子供がいれんばいいが、貴族社会はそういうところが厳しいようだ。
救いといえば、同年代の友人は、悲しいことに、一人もいないが、太っていない。ちょっと、小柄な気もするが、四歳児だ。希望があるさ、きっと身長だって高くなる。フラグなんかではないぞ。
とにかく、俺がしっかりしなくては、ならないだろう。棒神様にいわれたことを成すためにも、この環境に甘えきってはいけない。
魔物や魔族と、なるべく仲良くして、モフろう。確か、そんな方向だったはず。たぶん。
「坊ちゃま、すぐにザクス先生をお連れしますからね!」
「大丈夫なのに、ねー?」
青ざめたエセニアには悪いが健康そのものだ。
「念の為にもです!」
エセニアはそういって、樫でできた、玄関の重厚な大扉を片手で開けた。
玄関を開けると、中央には、階段、右手には食堂や、少し離れて使用人たちの個室や休憩場がある。左手には、来客用の部屋と、旧館に繋がる廊下も確か存在していた。
旧館の方は、大人たちの仕事場として、危険であるからと、ケルンは行っていない。そのため、俺も概要はよく知らない。
ひと際めにつく、中央階段には、父様と母様、そして、ケルンの三人が仲良く並んだ肖像画がかけられている。
ちなみに、作者は俺だ。正確には俺という知識の解放がされる前、二カ月ほど前に、ケルンが描いた肖像画だ。
幼児が描いた絵と侮ってはいけない。
スキルの有無が影響しているのがわかるほどの出来栄えなのだ。
スキルがあれば年齢を問わない。それほど、この世界ではスキルに重さを置くようになっているのだ。
絵も少々特殊だ。普通の油彩画、油絵などは、テレピンなどの光沢で、光が反射する。だが、この絵は、光の当たっていないところも、ぼんやりと光っている。髪や、椅子、カーテンなど。絵の中で明暗や、光ることで、まるで絵の中に風がふいているようだ。
きらりと所々光る絵の秘密は、絵の具にある。鉱石の粉を絵具に使うというのは、どこの世界でも変わらない。だが、魔力のある世界には、魔石という魔力がこもった石が多くある。用途によって、様々なものに使える。
こすれば、火がつくマッチ代わりなものから、砕けば雷が出る攻撃的なものまで。比較的、どのような世界にもあり、俺の知識にも勿論、含まれている。
しかし、魔石というのは、どこの世界でも、ぴんきりで高い。その上、この世界では、絵の具に使うような使用方法はまずしない。ただ、普通の鉱石よりも綺麗な仕上がりになるのは知られていないわけではない。
重宝しているが、自給自足かつ、そこまでお金がないだろう我が家で、最低ランクの魔石でも、絵を描き続けるのは、正直、無理なはず。
そこで、父親におねだりをした。魔法使いの父親なら、鉱石に魔力を注ぎ、疑似魔石を作れるのではないのかと。
その狙いは大当たりした。
知識の俺が目を覚ます前に、ケルンは、漏れ出ていた知識から、その着想にいたったようだ。
さすが俺。賢い。思わずケルンもニコニコだ。
その疑似魔石によって描くことで、奥行きと、まるで、そこに立っているかのような精巧な絵が描ける。
明暗をつけて輪郭をだすのではなく、動いている時のように、見え方が変わるよう、同じ色でも発色を変えるようにしたのだ。
呼吸で、肩がゆれる表現を視界に錯覚させるために、明度の違う魔石を作ってもらった。
『ライト』という基礎魔法をこめてもらった疑似魔石をいくつか用意した。
弱い魔力で、発光する青い魔石と、強い魔力で発光する青い魔石。元が同じ鉱石であるから、色は同じでも、重ねて使えば、立体視できる絵画の完成である。
写真より、立体的な3Dに近いだろうか。風の表現もできるので、個人的には、お気に入りの絵の具に、渾身の力をこめて描いた。
造物スキルの影響と、俺の知識によってなのか、つくづくなかなかのできだと、自分でも思う。
これが本当の自画自賛。
おい、ケルン、首をかしげるな。つらくなる。
さて、俺たちの両親の姿はこの絵をみればすぐにわかるだろう。
若い頃は、モテただろうと思えるほど、整った顔をした、白髪まじりの金髪に、自然と目が吸い込まれる深い青い目に、優しそうに微笑む、六十代とみえる男性。
今でも、振り返って、思わず立ち止まるような美女。黒い黒曜石のような髪と陶磁器のような真っ白い肌、夕日を思い出させる赤い瞳は、ややつり目がちな印象をあたえるが、口元の微笑みで、優しそうにしかみえない三十代くらいの女性。
その間で、にっこり笑う、二人の子供であると、一目でわかるほど、よく似ている黒い髪に、青い瞳の子供。
題名『とうさまとかあさまとぼく』
右下に、この国の公用文字である、スメイン文字でサインしてある。ローマ字を上下をさかさまにしたような文字で、『FD』というサイン。名前をそのままに描くのはよくないからと、ケルンの母親が名付けた。
「執事長様!メイド長様!」
いつもなら手洗いとうがいをしてから、おやつなのだが、今日はそうもいかない。
屋敷に入るなり、エセニアは大きな声を張り上げた。執事長もメイド長も、エセニアの身内であるが、仕事中は、役職で呼び合うようにしている。
ただ、残念ながら、執事は執事長だけだ。見習いの執事は何人かくるのだが、長くは続かない。メイドも同じだ。まぁ、次の主が、落ちこぼれという俺であるから、早々に見切りをつけるのだろう。
「エセニア!大きな声をだして…坊ちゃまに何があったのですか!?」
メイド長で、エセニアの母親であるフィオナが、足音を立てて走ってくる。いつもは、完璧なメイドとして、足音一つたてないが、よほど慌てているのか、途中から足音をたててこちらに向かってくる。
四十代ほどの熟練メイドが、犬耳をぴんっと立て、臨戦態勢だ。
呼んでも来ないところをみると、一人しかいない執事長のカルドは、同じく一人しかいない料理番、料理長のハンクと町へ買い出しに行ってていないのだろう。ハンクは、無口、不愛想で、普通の人でありながら、野良猫のような人で、買い物は、苦手だ。
しかし、俺は知っている。ああみえて、ハンクは、優しくてテレ屋な、気のいい兄ちゃんであると。まだ、二十歳そこそこで、料理の腕もかなりいい。できれば、料理勝負がしたいものだ。
俺が知っている料理も実際に作らないと宝の持ち腐れ、いや技術が身につかない。
包丁を握らしてくれたならな。さすがに、四歳では無理なのか。五歳なら、大丈夫ではないだろうか。今度、頼んでみよう。
でも、ハンクは料理だけであとは苦手らしい。
我が家の家事や来客の対応は、獣人の親子三人で行っている。
冷静沈着な、狼系ダンディ執事と、柴犬熟女。二人の娘がエセニアで、彼女の他に、獣人ではない、息子が三人いる。
現在、二人は王都、一人は少し離れた都市にいる。この三人ともかなり濃い性格をしていて、カルドの遺伝子はスキルぐらいにしか、出てないんではないかと疑問しかわかない。性格は遺伝しなかったようだ。
棒神様が詳しく教えてくれなかったのだが、獣人の子供が、必ずしも獣人として産まれる、というわけではないのだ。逆に普通の人同士でも獣人が、産まれる。詳しくは、今度の勉強で教わるので、俺も理解していない。
「メイド長様!坊ちゃまが、急に倒れられたのです!すぐに、ゼクス先生をお呼びしてください!」
慌てん坊だな。急に倒れてないだろう。確か、綺麗な蝶をみて、どうやら、それが、棒神様のいってた封印をといた影響で、俺はケルンと統合…するはずが、独立している現状になってしまっている。
「まぁ!貴女がついていて、なんということ!坊ちゃま?私がおわかりになられますか?」
エセニアの背中をおりるなり、フィオナに、全身をチェックされる。今日は、泥団子作ってないから、洋服汚れてないよー。なんて、ケルンの感情というか、思いが浮かぶが、まずは、質問に答えるのが先だろう。
「フィオナだよ?あのね、エセニアが、心配しすぎなんだよー、僕、元気だよ!」
わたわたと慌てる母娘を、どうにか落ち着かせようと、元気いっぱいに振舞っていると、軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「何の騒ぎかと思えば、私の可愛い坊や。痛いとこはないかしら?」
中央階段から、真紅のドレスを着た、年齢不詳の美女。母様が、ゆったりとおりてきた。
ケルンが産まれる前に、大きな事故にあったそうで、詳しくは知らないが、その事が原因なのか、母様は、体調を崩すことも多く、よくこの時間は休んでいた。
しかし、これはすでに過去のことで、今は健康そのものだ。ケルンが産まれてから、体調を崩すことはなくなったのだが、染みついた生活習慣なのか、この時間帯は、ケルンの散歩に時々ついてくるか、散歩から戻るまで、部屋で休んでいる。今日は、ゆっくりする日だった。
「母様!うん!大丈夫だよ!」
大好きな母様に、会えて、ケルンのテンションが上がって、母様にかけよっていく。それに、心配そうにしゃがんで、おでこを合わせる母様の瞳の中に、わずかばかりの焦りを感じたから、余計に元気よく返事をした。
心配性なんだよな。
「でもね、王都で怖い病気が流行っているから、お父様にみてもらいしょうね」
「父様?やったー!」
ん?病気なら、ゼクス先生で、いいんじゃないか?という疑問を持つが、ケルンの父様に会える!っていう喜びが優先される。
母様は、右手の銀のブレスレットについている、青い色の石へと、唇を寄せた。
『コール』
その瞬間に、ふわっと風を感じた。魔法だ。
「んー?」
よくわかってないが、まぁそんなもんか。フォローはそのつどしていく。
問題はなくなったと気を抜いていると、あっという間に目的地についてしまっていた。
解放されている門を抜けるとそこには見慣れた建物があった。
左右対称の噴水に、ふかふかの芝生。まさにお屋敷といえる場所。
どこにだしても恥ずかしくない、自慢の家。ここが我が家だ。ただ、先祖伝来の屋敷を父親たちが自分たちで建て直した話をきいている。貴族と使用人が直せる程度なんだから普通の貴族の屋敷はもっとでかいだろうな。
ケルンが産まれて増えたものもある。もし、転んでも怪我をしないようにと、ケルンが歩く道は、ふかふかの芝生が植えられている。だから、倒れても怪我どころか、痛み一つない。普通の芝生よりも羽毛布団のような、しかもかなり高級な布団のような芝生だ。
芝生のないところは、基本、エセニアの背中に乗って、移動する。もしくは、庭師の背中に乗るのも多い。
過保護すぎる。いくらなんでも、これは酷い。
俺が有する知識の結論は、バカ息子製造環境にいると出た。もしくは子豚ちゃん製造過程、いや製造家庭か。
運動と情操教育のためにも、身近な子供がいれんばいいが、貴族社会はそういうところが厳しいようだ。
救いといえば、同年代の友人は、悲しいことに、一人もいないが、太っていない。ちょっと、小柄な気もするが、四歳児だ。希望があるさ、きっと身長だって高くなる。フラグなんかではないぞ。
とにかく、俺がしっかりしなくては、ならないだろう。棒神様にいわれたことを成すためにも、この環境に甘えきってはいけない。
魔物や魔族と、なるべく仲良くして、モフろう。確か、そんな方向だったはず。たぶん。
「坊ちゃま、すぐにザクス先生をお連れしますからね!」
「大丈夫なのに、ねー?」
青ざめたエセニアには悪いが健康そのものだ。
「念の為にもです!」
エセニアはそういって、樫でできた、玄関の重厚な大扉を片手で開けた。
玄関を開けると、中央には、階段、右手には食堂や、少し離れて使用人たちの個室や休憩場がある。左手には、来客用の部屋と、旧館に繋がる廊下も確か存在していた。
旧館の方は、大人たちの仕事場として、危険であるからと、ケルンは行っていない。そのため、俺も概要はよく知らない。
ひと際めにつく、中央階段には、父様と母様、そして、ケルンの三人が仲良く並んだ肖像画がかけられている。
ちなみに、作者は俺だ。正確には俺という知識の解放がされる前、二カ月ほど前に、ケルンが描いた肖像画だ。
幼児が描いた絵と侮ってはいけない。
スキルの有無が影響しているのがわかるほどの出来栄えなのだ。
スキルがあれば年齢を問わない。それほど、この世界ではスキルに重さを置くようになっているのだ。
絵も少々特殊だ。普通の油彩画、油絵などは、テレピンなどの光沢で、光が反射する。だが、この絵は、光の当たっていないところも、ぼんやりと光っている。髪や、椅子、カーテンなど。絵の中で明暗や、光ることで、まるで絵の中に風がふいているようだ。
きらりと所々光る絵の秘密は、絵の具にある。鉱石の粉を絵具に使うというのは、どこの世界でも変わらない。だが、魔力のある世界には、魔石という魔力がこもった石が多くある。用途によって、様々なものに使える。
こすれば、火がつくマッチ代わりなものから、砕けば雷が出る攻撃的なものまで。比較的、どのような世界にもあり、俺の知識にも勿論、含まれている。
しかし、魔石というのは、どこの世界でも、ぴんきりで高い。その上、この世界では、絵の具に使うような使用方法はまずしない。ただ、普通の鉱石よりも綺麗な仕上がりになるのは知られていないわけではない。
重宝しているが、自給自足かつ、そこまでお金がないだろう我が家で、最低ランクの魔石でも、絵を描き続けるのは、正直、無理なはず。
そこで、父親におねだりをした。魔法使いの父親なら、鉱石に魔力を注ぎ、疑似魔石を作れるのではないのかと。
その狙いは大当たりした。
知識の俺が目を覚ます前に、ケルンは、漏れ出ていた知識から、その着想にいたったようだ。
さすが俺。賢い。思わずケルンもニコニコだ。
その疑似魔石によって描くことで、奥行きと、まるで、そこに立っているかのような精巧な絵が描ける。
明暗をつけて輪郭をだすのではなく、動いている時のように、見え方が変わるよう、同じ色でも発色を変えるようにしたのだ。
呼吸で、肩がゆれる表現を視界に錯覚させるために、明度の違う魔石を作ってもらった。
『ライト』という基礎魔法をこめてもらった疑似魔石をいくつか用意した。
弱い魔力で、発光する青い魔石と、強い魔力で発光する青い魔石。元が同じ鉱石であるから、色は同じでも、重ねて使えば、立体視できる絵画の完成である。
写真より、立体的な3Dに近いだろうか。風の表現もできるので、個人的には、お気に入りの絵の具に、渾身の力をこめて描いた。
造物スキルの影響と、俺の知識によってなのか、つくづくなかなかのできだと、自分でも思う。
これが本当の自画自賛。
おい、ケルン、首をかしげるな。つらくなる。
さて、俺たちの両親の姿はこの絵をみればすぐにわかるだろう。
若い頃は、モテただろうと思えるほど、整った顔をした、白髪まじりの金髪に、自然と目が吸い込まれる深い青い目に、優しそうに微笑む、六十代とみえる男性。
今でも、振り返って、思わず立ち止まるような美女。黒い黒曜石のような髪と陶磁器のような真っ白い肌、夕日を思い出させる赤い瞳は、ややつり目がちな印象をあたえるが、口元の微笑みで、優しそうにしかみえない三十代くらいの女性。
その間で、にっこり笑う、二人の子供であると、一目でわかるほど、よく似ている黒い髪に、青い瞳の子供。
題名『とうさまとかあさまとぼく』
右下に、この国の公用文字である、スメイン文字でサインしてある。ローマ字を上下をさかさまにしたような文字で、『FD』というサイン。名前をそのままに描くのはよくないからと、ケルンの母親が名付けた。
「執事長様!メイド長様!」
いつもなら手洗いとうがいをしてから、おやつなのだが、今日はそうもいかない。
屋敷に入るなり、エセニアは大きな声を張り上げた。執事長もメイド長も、エセニアの身内であるが、仕事中は、役職で呼び合うようにしている。
ただ、残念ながら、執事は執事長だけだ。見習いの執事は何人かくるのだが、長くは続かない。メイドも同じだ。まぁ、次の主が、落ちこぼれという俺であるから、早々に見切りをつけるのだろう。
「エセニア!大きな声をだして…坊ちゃまに何があったのですか!?」
メイド長で、エセニアの母親であるフィオナが、足音を立てて走ってくる。いつもは、完璧なメイドとして、足音一つたてないが、よほど慌てているのか、途中から足音をたててこちらに向かってくる。
四十代ほどの熟練メイドが、犬耳をぴんっと立て、臨戦態勢だ。
呼んでも来ないところをみると、一人しかいない執事長のカルドは、同じく一人しかいない料理番、料理長のハンクと町へ買い出しに行ってていないのだろう。ハンクは、無口、不愛想で、普通の人でありながら、野良猫のような人で、買い物は、苦手だ。
しかし、俺は知っている。ああみえて、ハンクは、優しくてテレ屋な、気のいい兄ちゃんであると。まだ、二十歳そこそこで、料理の腕もかなりいい。できれば、料理勝負がしたいものだ。
俺が知っている料理も実際に作らないと宝の持ち腐れ、いや技術が身につかない。
包丁を握らしてくれたならな。さすがに、四歳では無理なのか。五歳なら、大丈夫ではないだろうか。今度、頼んでみよう。
でも、ハンクは料理だけであとは苦手らしい。
我が家の家事や来客の対応は、獣人の親子三人で行っている。
冷静沈着な、狼系ダンディ執事と、柴犬熟女。二人の娘がエセニアで、彼女の他に、獣人ではない、息子が三人いる。
現在、二人は王都、一人は少し離れた都市にいる。この三人ともかなり濃い性格をしていて、カルドの遺伝子はスキルぐらいにしか、出てないんではないかと疑問しかわかない。性格は遺伝しなかったようだ。
棒神様が詳しく教えてくれなかったのだが、獣人の子供が、必ずしも獣人として産まれる、というわけではないのだ。逆に普通の人同士でも獣人が、産まれる。詳しくは、今度の勉強で教わるので、俺も理解していない。
「メイド長様!坊ちゃまが、急に倒れられたのです!すぐに、ゼクス先生をお呼びしてください!」
慌てん坊だな。急に倒れてないだろう。確か、綺麗な蝶をみて、どうやら、それが、棒神様のいってた封印をといた影響で、俺はケルンと統合…するはずが、独立している現状になってしまっている。
「まぁ!貴女がついていて、なんということ!坊ちゃま?私がおわかりになられますか?」
エセニアの背中をおりるなり、フィオナに、全身をチェックされる。今日は、泥団子作ってないから、洋服汚れてないよー。なんて、ケルンの感情というか、思いが浮かぶが、まずは、質問に答えるのが先だろう。
「フィオナだよ?あのね、エセニアが、心配しすぎなんだよー、僕、元気だよ!」
わたわたと慌てる母娘を、どうにか落ち着かせようと、元気いっぱいに振舞っていると、軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「何の騒ぎかと思えば、私の可愛い坊や。痛いとこはないかしら?」
中央階段から、真紅のドレスを着た、年齢不詳の美女。母様が、ゆったりとおりてきた。
ケルンが産まれる前に、大きな事故にあったそうで、詳しくは知らないが、その事が原因なのか、母様は、体調を崩すことも多く、よくこの時間は休んでいた。
しかし、これはすでに過去のことで、今は健康そのものだ。ケルンが産まれてから、体調を崩すことはなくなったのだが、染みついた生活習慣なのか、この時間帯は、ケルンの散歩に時々ついてくるか、散歩から戻るまで、部屋で休んでいる。今日は、ゆっくりする日だった。
「母様!うん!大丈夫だよ!」
大好きな母様に、会えて、ケルンのテンションが上がって、母様にかけよっていく。それに、心配そうにしゃがんで、おでこを合わせる母様の瞳の中に、わずかばかりの焦りを感じたから、余計に元気よく返事をした。
心配性なんだよな。
「でもね、王都で怖い病気が流行っているから、お父様にみてもらいしょうね」
「父様?やったー!」
ん?病気なら、ゼクス先生で、いいんじゃないか?という疑問を持つが、ケルンの父様に会える!っていう喜びが優先される。
母様は、右手の銀のブレスレットについている、青い色の石へと、唇を寄せた。
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