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こんにちは、両親

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いつからだろう。
気づいたら僕は、暗くて暖かい世界に浮いていた。

閉じ込められている?
けど、別に不快感は無かった。

ずっとここにいたいような………。。。。

…………………
……………
……
…。

あれ?

突如として、「あっち」側が明るくなった。
と同時に、それまで感じていた居心地の良さは、徐々に「ここにいちゃいけない」という焦燥感に変わっていく。

いや正確には、「思った」わけではない。
ほら、我慢できない痒みに突然襲われたとき、「かこう」なんて思う暇もなく、患部をかきむしるでしょ?
そんな感じで、「ここにいちゃいけない」という焦燥感があるだけだった。

だからこそ、ここに留まるなどという我慢はできないし、するつもりもない。
導かれるままに光が導く方向に進んでいった瞬間、

世界が開けた。。。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」

産婆から、お祝いの言葉が告げられる。
手慣れた感じで素早く体を清め、布でくるまれたのは、生まれたばかりの赤ん坊だ。
壊れやすいガラス細工を扱うよりも、さらに丁寧に扱われながら、赤ん坊は恭しく母親の胸に渡される。

「そう、男の子…。ああ、なんて可愛いの。」
「男の子か!サラ、よくやった!」

顔中に刃物で出来た傷がくっつき、精悍な顔立ちをした父親が、心の底からの嬉しさを、顔いっぱいに表現している。
一方、出産によって命を失う危険をかいくぐり、文字通り「命がけ」の大仕事をやり遂げたばかりの妻は、慈愛に満ちた表情で小さな「戦利品」を見つめている。

「この子は強くて勇敢な戦士になるぞ。この目つき、君に似てまったく物怖じしていない。」
「ふふ。それに、この長い手足はあなたに似ているわ。槍にしても剣にしても、よい使い手になるでしょう。」

そんな取り留めもない(?)やりとりをしている夫婦の会話を、
これが音ではなく会話であることを理解しているかのように、赤ん坊はじっと見つめていた。

「それで、あなた。男の子だからこの子の名前は」
「ああ、そうだな。」
父親と母親に見つめられながら優しく頭を撫でられつつ、じっと互いを見つめ合う親子。

「ケーヴァリン。ケーヴァリン=シャッド=プラジュだ。」
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