白蛇様の花嫁はじっくりと執着淫愛される。

猫とろ

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向き合う

そして……

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タイミングを測ったかのように、鳴るスマホに驚きつつ。とりあえずスマホが置いてある布団の横まで戻る。

画面を見ると会社からだった。
これもひょっとして、何かの罠?
白透君の不思議な力なのだろうか。
それとも……と考えているのに、一向にコール音は止むことはなく。鳴り続けるコール音に負けるように、通話ボタンを押すと。

『もしもし!? やっと出たっ。連絡しているのにちっとも繋がらなくて、って、じゃなくてっ。分かっている。有給なのは分かっているんだが、すまない。いつこっちに戻って来れるかなっ!? 明日? 出来たら今日の夕方でも大丈夫なんだけれどもっ』

なんと通話の相手は、切羽詰まった部長だった。
電話に出るなり巻くし立てる部長の声に唖然としてしまうが、今はこの村と何も関係ない人の声にどこか安心してしまった。

そのまま、部長の話を聞けば。
新人ちゃんがクライアントにキャバ嬢ばりのメールを送り、大問題に。
私が不在だと知ると、取引先が新規依頼を渋ったり。その他にも私ご指名の案件が浮上したと。すぐに戻って来て欲しいと泣きついて来たのだ。

慌てふためく部長には悪いが、話を聞いて。あぁ、自分がやって来たことはちゃんと正しかった。評価してくれている人はいたと。少し涙が出そうになった。

微睡の中で『会社が嫌いだとか』言ってしまったのも今更否定はしない。それも私の本当。
そして、こうして頼りにされると嬉しいと思うのも本当。

心の中の本当が一つだけしか許されない。なんて、そんなことはない。別にたくさんあってもいいはず。
部長の話を聞いて単純だが、私が会社に必要だとされていることが分かり。

私はやっと吹っ切れた。

夢の中の出来事を嘘か真か勘繰っても仕方ない。それをどう判断するか自分で調べたらいい。

そして、堂々と白透君に事実を確認して──お見合いを断るべきだろう。
このまま何もかも逃げ出すより、迷ってウジウジしているよりかはよっぽどいい。

改めてスマホを強く握り締めた。

「部長、話はわかりました。ですが、今すぐに戻ることは出来ません」

キッパリ言うと部長は『そんなぁ』と情けない声を出すが、喋り続ける。

「だけど、まず。優先事項が高い案件をまとめて私のこのスマホに送って下さい。えぇ、ちょっとパソコンがない場所に居て。でも、スマホからでも指示は飛ばせます。クライアントにメールは打てます」

そう言うと部長は歓喜の声を上げた。
よし。これなら交渉出来る。

『その代わりにです。白寺夜村と言う村のこと。その村にある白蛇神社のこと。その他、村の伝承、風習、成り立ちり。そして五年前に少年が溺れたとか。五年前に何か事件が何かなかったかを調べて下さい。ほら、部長。雑誌の編集部とか記者にコネがあったって自慢してきたじゃないですか。理由はすみません。言えないです。でもいいから急いで下さい。お願いします」

五年前。本当に池で溺れたのは白透君だったのか確認したいのだ。

真剣な私の声に部長は戸惑っていた。その気持ちも理解できる。でも今は外部の協力者が欲しいと思い。もう一押しする。

「じゃないと、私──二度と。帰って来れないかも知れないんです」

すると電話越しにゴクリという。生唾を飲む音が聞こえて『わかった』と言う短い了承の言葉を聞けた。

そこからざっと仕事の状況を聞き、新人ちゃんへの対応。私が最優先でやるべきことなどを話して。

最後に部長が。
色々とおざなりになってしまって悪かった。君はいつも一人で仕事をしていて、私達の手を煩わしく思っていると思っていた。済まない。
と、言ってくれて。私も頑なになってましたと、素直な気持ちを伝えれた。
そして戻って来たら今後のことも含めて一度面談をしようと、言う話に落ち着いた。

そうして、調べ物を部長に託して電話を切った。
スマホ見ると、三十分ほど長電話をしていた。

しかし、やるべきことが出来て頭がクリアになっていた。今後の仕事の見通しもクリアになって、凄く気持ちが楽になった。

「白透君も、ちゃんと話し合えば分かってくれるよね」

それは淡い期待かもしれない。
それでも、何もかも投げ出して逃げるよりは良いだろうと。
まずは浴衣から服に着替えようと、浴衣部屋のクローゼットに向かう。

「部長のメッセージが来る前に、色々とスマホで調べてみよう」

そうだ。お母さんにも連絡してみよう。
本当だったらカフェとかで作業をしたいけど、外は村の人達の視線が怖かった。
少しお腹が減ったが、キャリーケースにお菓子があったはず。それを食べて空腹を凌ごう。

スマホからでも、過去の地方新聞の記事を国立国会図書館のデータにアクセスしたら閲覧出来るはず。
片田舎の出来事なんて、全国紙ならば記事になる可能性は低いが。地方新聞なら、注意喚起も含めて記事になっているかもしれない。

「その他にも、私もこの村のことも調べて。あとは蛇。蛇の神話とか伝説とかも調べてみるか……」

そう思い、しゅっと浴衣の帯を解いて。黒のニットワンピースに着替えた。
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