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花火
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ひまわりは花火を見ながら、ついさっき海人から聞いた話を頭の中で整理した。
海人の言葉を一つ一つを思い出し、心の中で復唱してみる。
でも、もう、そんな事はどうでもいいと思った。
これからの未来は誰にも分からない。
海人の不安な気持ちは痛いほど分かるけど、今、この瞬間を楽しまなきゃ…
ひまわりは海人の腕に抱かれながら、夜空に映える色鮮やかな花火を堪能することに決めた。
今日は、夏の終わりのような冷たい夜風が吹いている。
ひまわりは海人の様子が気になり、海人の顔を覗き込んだ。
すると、海人は、顔色がすぐれず額には玉の汗をかいている。
「海人さん、大丈夫? 顔色が悪いみたい…」
「うん、ちょっと頭痛が…」
海人は、苦しそうにそう答えた。
ひまわりは海人のおでこに手をのせてみて、熱が高い事に驚いた。
「海人さん、ここで待ってて。
私、冷たいお茶と氷をもらってくるから」
そう言ってひまわりが立ち上がると、海人はひまわりの手を握った。
「大丈夫だから…
ひまわり、僕の側にいて…」
海人の声は、花火の音でひまわりには届かなかった。
「すぐ、戻ってくるから」
ひまわりはそう言い残し、出店のある方へ走って行った。
出店で冷たいお茶を買い氷をビニールに分けてもらっていると、背後で凄まじい轟音が響く。
ひまわりが驚いて振り返ると、空を覆い尽くすほどの満開の花火が上がっていた。
「今日のラストだね。
さすがにでかい花火だったね~」
店主が、店に残っている客にそう言っているのが聞こえた。
ひまわりは海人が急に心配になり、お茶とビニールに詰め込んだ氷を持って海人の待っている場所へ走った。
今まで花火のせいで明るかった神社の境内は、薄っすらと暗闇が漂い始めている。
海人が待っている場所へ急いで帰ると、二人が座っていたはずの場所にはかき氷の紙コップが置いているだけだった。
海人はきっとトイレに行ったに違いないと思い、しばらくそこで待っていたが海人が帰ってくる気配はない。
花火の終わりを告げるアナウンスが流れ人の波が出口へと向かう中、ひまわりは必死に海人を捜し回った。
具合が悪くてどこかに座り込んでいるかもしれないと、境内を隈なく見て回った。
男子トイレの中まで入って確認した。
だけど、海人は、どこにもいない。
ひまわりは、誰もいなくなった神社の階段に腰掛けて、大きな声で海人を呼んだ。
呼んでも、呼んでも、木々がこすれあう音か、虫の鳴き声しかしない。
ひまわりは元来た道をとぼとぼと引き返しながら、この現実をまだ把握できずにいた。
きっと、海人は、はぐれて先に帰ったのかもしれない。
ひまわりは、必死に自分にそう言い聞かせた。
民宿の前に着いた時、サチが入口に立っているのが見えた。
「海人さん、帰ってますか…?」
ひまわりはサチにそう尋ねると、堪えていた涙が滝のように溢れ出す。
サチも同じように涙を浮かべて、顔をしかめて首を横に振るだけだった。
海人の言葉を一つ一つを思い出し、心の中で復唱してみる。
でも、もう、そんな事はどうでもいいと思った。
これからの未来は誰にも分からない。
海人の不安な気持ちは痛いほど分かるけど、今、この瞬間を楽しまなきゃ…
ひまわりは海人の腕に抱かれながら、夜空に映える色鮮やかな花火を堪能することに決めた。
今日は、夏の終わりのような冷たい夜風が吹いている。
ひまわりは海人の様子が気になり、海人の顔を覗き込んだ。
すると、海人は、顔色がすぐれず額には玉の汗をかいている。
「海人さん、大丈夫? 顔色が悪いみたい…」
「うん、ちょっと頭痛が…」
海人は、苦しそうにそう答えた。
ひまわりは海人のおでこに手をのせてみて、熱が高い事に驚いた。
「海人さん、ここで待ってて。
私、冷たいお茶と氷をもらってくるから」
そう言ってひまわりが立ち上がると、海人はひまわりの手を握った。
「大丈夫だから…
ひまわり、僕の側にいて…」
海人の声は、花火の音でひまわりには届かなかった。
「すぐ、戻ってくるから」
ひまわりはそう言い残し、出店のある方へ走って行った。
出店で冷たいお茶を買い氷をビニールに分けてもらっていると、背後で凄まじい轟音が響く。
ひまわりが驚いて振り返ると、空を覆い尽くすほどの満開の花火が上がっていた。
「今日のラストだね。
さすがにでかい花火だったね~」
店主が、店に残っている客にそう言っているのが聞こえた。
ひまわりは海人が急に心配になり、お茶とビニールに詰め込んだ氷を持って海人の待っている場所へ走った。
今まで花火のせいで明るかった神社の境内は、薄っすらと暗闇が漂い始めている。
海人が待っている場所へ急いで帰ると、二人が座っていたはずの場所にはかき氷の紙コップが置いているだけだった。
海人はきっとトイレに行ったに違いないと思い、しばらくそこで待っていたが海人が帰ってくる気配はない。
花火の終わりを告げるアナウンスが流れ人の波が出口へと向かう中、ひまわりは必死に海人を捜し回った。
具合が悪くてどこかに座り込んでいるかもしれないと、境内を隈なく見て回った。
男子トイレの中まで入って確認した。
だけど、海人は、どこにもいない。
ひまわりは、誰もいなくなった神社の階段に腰掛けて、大きな声で海人を呼んだ。
呼んでも、呼んでも、木々がこすれあう音か、虫の鳴き声しかしない。
ひまわりは元来た道をとぼとぼと引き返しながら、この現実をまだ把握できずにいた。
きっと、海人は、はぐれて先に帰ったのかもしれない。
ひまわりは、必死に自分にそう言い聞かせた。
民宿の前に着いた時、サチが入口に立っているのが見えた。
「海人さん、帰ってますか…?」
ひまわりはサチにそう尋ねると、堪えていた涙が滝のように溢れ出す。
サチも同じように涙を浮かべて、顔をしかめて首を横に振るだけだった。
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