イケメンエリート軍団の籠の中

便葉

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ここは天国でしょうか?

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 ソフィアは、中へ入ってきたジャスティンに口頭で何かを伝えていた。
 ジャスティンはうんうんと頷きながら、応接セットのソファにちょこんと座っている舞衣を見てウィンクをする。


「じゃ、舞衣、頑張ってね。
 一か月後、あなたの成長した姿を見るのを楽しみにしてるわ」


 ソフィアはそう言い残し、慌ただしく会社を後にする。
 舞衣も慌てて立ち上がりソフィアに向かって大きくお辞儀をしたけれど、顔を上げた時にはもうすでにソフィアはいなかった。それよりも、舞衣は目の前に立っているジャスティンに驚いてしまう。


「ソフィアはいつもあんな感じだから、気にしないで。

 ハロー、舞衣。
 僕はジャスティン・レスター、よろしくね」


 舞衣は改めて目の前に立っている青い瞳のイケメンに目が釘付けだ。

 混じりけのない美しい金髪は短くすっきり切り揃えられ、トップは無造作にワックスで立たせている。外国人特有の彫の深い顔はとにかく小さくてスタイルが抜群過ぎる。それに鼻筋は通っているし、笑うと見える白い歯は歯並びすら完璧だった。


「舞衣は身長何センチ?」


「え? 身長ですか? 158センチです」


 ジャスティンは舞衣の横に立ち、舞衣の顔を覗きこむ。


「どおりで小さいと思った」


「あ、そんな小さくはないと思うんですけど…
 ジャスティンさんが大きいから、そう見えるだけで…」


 舞衣は顔をジッと見られて恥ずかしそうにそう答えた。


「舞衣、可愛いね。
 僕達の周りにはあんまりいないタイプだな。

 この社長室を出て男だらけのフロアに行く前に、一通り、主要メンバーの説明をしとくから。

 でも、ソフィアの人選は正解かもしれないな。

 あ、まずは、社長のソフィア高市は、見ての通り、生粋の日本人。
 ハーバード大学時代にアメリカ人のジョージと知り合って結婚して、この会社を立ち上げたんだ。
 ジョージはまた他の会社を作ったから、この会社はソフィアが切り盛りしてる。
 彼女は凄いよ。
 ソフィアの頭の中は、どのコンピューターを持ってきても敵わない。強烈に頭がいいんだ。
 本当に尊敬してる」


 舞衣はバッグから小さなメモ帳を取り出し、ジャスティンが話す貴重な情報を必死にメモした。いつもうっかりミスが多くて、バイトでは大事な仕事はいつも沙紀に任せられた。

 そんな私が、ここでの仕事に対応できるのか?

 また、気がつくとひとり言を呟いている。舞衣はハッとしてジャスティンを見た。


「舞衣、いいね。そのキャラ、僕は好きだよ」


 いくらブサ専の舞衣でも、さすがにジャスティンの笑顔には心がときめいた。


「次は、一応、僕の自己紹介をしておく。
 なんで、ソフィアが僕を舞衣のお世話係に任命したか分かる?」


「はい、分かります。
 それは、ジャスティンさんが英語が堪能だから」


 ジャスティンは思いっきり口を横に開いて、笑うのを我慢している。


「舞衣、ここにいる社員は全員英語は堪能だよ。僕なんかよりはるかに喋れる」


「あ、そっか… そうですね…」


 舞衣がそう言いながら頭をひねっていると、ジャスティンは舞衣の隣に腰かけた。


「僕はゲイなんだ。
 女の子には興味がないし、逆に女の子の気持ちの方がわかったりする」


 舞衣は固まってしまった。
 別に嫌悪感とかそういうのではなくて、ゲイと名乗る人とこんな風に面と向かって話すのは初めてだったから。
 でも、この動揺をジャスティンに悟られたくなくて、舞衣はまた余計な事を言ってしまう。


「ゲイ、はい、承知しました…
 素敵なことだと思います、あの、その、なんというか…」


 ジャスティンは大声でゲラゲラ笑った。何度も舞衣にグッドサインを見せながら。


「舞衣、だから、僕には何でも相談して。言いにくい事でも何でもいいから、OK?」


 舞衣は小さく頷いた。


「この東京支社には約20人の社員がいるんだけど、半分はこの場所には来ないんだ。
 リモートで仕事をしてる人もいるし、海外にいる人もいる。

 ま、IT事業ってパソコンさえあればどこでも仕事ができるからね。
 ある意味、自由ではあるけど、自己責任の大きさも計り知れない。

 この会社のネームバリューは、世界でもトップクラスに入る信用と信頼を得ている。
 その一員として働くわけだから、皆、レベルが高いし、頭がいいし、完璧な人間しかいない。

 あ、もちろん、仕事に関しては、だけどね」


 舞衣は必死にメモを取った。


「今、実際、会社にいるのは10人ちょっとかな。
 舞衣は、一か月はまだちゃんとした仕事はしなくていいみたいだから、人間観察をした方がいいかもしれない。
 かなり変わった人達が多いから。

 で、今、企業の買収のサポートでプロジェクトチームを作ってやってるんだけど、そのチーム関連で来客や取り次ぎがかなり多いんだ。
 だから、まずはそのチームのメンバーの顔は先に覚えておいた方がいいと思う」


「は、はい、分かりました」


 ジャスティンはそのチームのメンバーの名前が載っているリストを舞衣に渡した。


「まずは、中山トオル32歳、チームの年長者で一応リーダー。
 妻持ちで、自分に甘いから他人にも優しいおっとり系。
 でも、たまに豹変する事があるから要注意」


 要注意??
 何に豹変するの?…


「次は前田謙人31歳、究極のナルシストでモテ男、seフレは星の数」


「seフレ??」


「セックスフレンドね。
 あと、隠れバイセクシャル」


「あ、はい……
 え? バイ何ですか…?」


 略してseフレ?
 ヤバい、知らなかった、覚えなきゃ…
 あと、バイ何とかは?


「次は、堀江映司30歳、イタリアと日本のハーフで、多分このビルの中で一番のイケメンなんじゃないかな。
 今つき合ってるのは有名な人気女優、でも、もう飽きたとか言ってる。
 でも、実は、彼もバイセクシャルだから、男も好き。
 バイはそういうこと。

 あ~、でも、案外、舞衣みたいなタイプ、映司、嵌まりそうだな」


 え?何??  私が嵌まるの?
 それとも、そのバイのかたが??


「最後に、伊東凪」


「なぎ?」


「そう、凪ぐという漢字一文字で凪28歳、違った意味でいい男過ぎる。
 奥二重で釣った目だから睨まれたらめちゃ怖い。
 自分にも厳しいから他人にも容赦なく厳しい。

 舞衣にとっては、一番要注意人物だな」


「え? どうして?」


「ある意味、俺様で威張ってるけど、一番優しい奴。
 惚れないように気をつけて」


「惚れる?
 あ、それなら心配ないです。
 私、自称B専なんです。社長が採用したのもそれが決めてだったみたいで」


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