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裸族の蝶々に未だ慣れません
⑥
しおりを挟む普通の蝶々が普通に俺に抱きついてくる。
「…蝶々、俺に、抱かれたくなかったら… 何か一枚着てくれ…」
……童貞の中学生のように俺は鼻血なんか垂らしてないよな?
「もう、藤堂さん、早く慣れてくださいね」
蝶々は小さくため息をついてそう言うと、奥へ行ってシャツを一枚はおってきた。藤堂はやっと玄関から動く事ができた。
蝶々は藤堂の買ってきたお好み焼きを、もうテーブルに広げている。
「藤堂さん、早く食べますよ~~」
藤堂は蝶々の笑顔を見ながら、心の中で決心をした。蝶々を絶対に手離したくないのなら、蝶々の全裸に何が何でも慣れないといけない。
「蝶々、俺、決めたよ。
蝶々が漫画を描き終えるまで、俺も、毎日蝶々のこの部屋に来て蝶々の近くで過ごす」
蝶々はお好み焼きを頬張りながらキョトンとした顔をした。
「俺が蝶々の全裸に慣れるには、蝶々の全裸を見飽きるほど見て、何も感じなくなることが一番なんだ。
そうじゃないと、俺達は前へは進めない。だから、俺は明日も蝶々の全裸を堪能する」
蝶々はそう宣言している藤堂の事を、肩をすくめて見た。
「そう言ってる藤堂さんは、まだ十分いやらしいんですけど…」
藤堂はうなだれた。自分の性欲と闘うなんて思ってもみなかった。
……は~、俺の修行はいつまで続くのだろう。
蝶々は、毎日、原稿を持って会社に出勤している。自分の編集者としての仕事は絶対におろそかにしたくないし、かといって、藤堂と小泉の雄同士の訳の分からない騒動にも巻き込まれたくない。
蝶々は仕事に支障をきたさないように、小泉とは昼休みに会う事にした。
「小泉さん、この間はごめんなさいね」
蝶々はとりあえず藤堂の事も含めて謝った。でも、小泉の機嫌は悪い。蝶々はそんな事おかまいなしに漫画の原稿の話を始めると、小泉が口惜しそうにため息をついて蝶々の話を遮った。
「蝶々さん、悔しいけど、確かに、藤堂さんの言う通りだと思います。
俺達は同じビルの中で同じ会社の人間として働いてるわけだから、こうやって会社で打ち合わせをするのが自然なのかもしれない…」
はっきり言って、そんな事、蝶々にはどうでもよかった。
「俺も結婚したばかりだし、奥さんを大事にしないといけないわけで」
「小泉さん!」
蝶々はあまりにもくだらな過ぎて、小泉の話を今度はこちらから遮った。
「ミジンコ相手にカッカするあなたは、ミジンコ以下の埃と一緒です。
もっと、血や肉や脳みそくらい崇高になって、私をワクワクさせてくれませんか?
なんなら、あなたの頭をかち割って、脳みそをグルグルかき混ぜてあげてもいいんですが…」
蝶々はギョッとしている小泉を見てほくそ笑んだ。
「さっさと仕事を始めましょ」
小泉はあまりの衝撃に手が震えた。でも、藤堂が蝶々に嵌まってしまう気持ちも分かる。
……いや、俺は手を引こう。この編集者としての付き合いだけで終わらせなきゃ、そうじゃなきゃ、俺の身の破滅はそこまで来ている。
今夜もまた、藤堂は夜食を持って蝶々の家へ向かっている。実は、心に決めた事がある。今夜、蝶々にそれを宣言する。それは、蝶々が夢に向かって頑張っている状況に、藤堂も便乗すること。
蝶々が何と言おうと、藤堂の決心は絶対に揺るがない…はず。
今からこの先の藤堂にとって、蝶々以上の女は絶対に現れない。蝶々の顔も、体も、変な性格も、大きな胸も、蝶々の全てが好きで好きでたまらない。蝶々を他の男に見られたくもないし、ましてや触られるなんて何があってもあり得ない。
という事は、藤堂は蝶々と結婚しなければ半狂乱になり死んでしまうと、そう思っている。でも、結婚にあたり、自分自身に条件を課した。
蝶々の漫画が特別号に晴れて掲載されるその日まで、蝶々の体を求めない。裸族の蝶々がどれだけ濃艶な舞いをしようが、耐え抜いてみせる。藤堂はそのミッションを乗り越えて初めて、蝶々にプロポーズをする資格を得ると考えている。
……裸族の女と結婚するって、なんてたいへんなんだ。でも、絶世の美女でそれでいて裸族だなんて、世間の男どもからはきっと羨望の的だろう。とにかく蝶々が頑張っている時は、俺も頑張る。それだけだ。
藤堂は蝶々からもらった合鍵を使って恐る恐る部屋へ入ると、リビングに電気がついていない。
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