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この蝶々は勇敢に空をも飛ぶ
⑧
しおりを挟む「蝶々… 俺はいつになったら漫画に勝てる?
俺は蝶々の事が大好きなのに…」
藤堂はそう言いながら、蝶々の胸の膨らみを堪能していた。
……あ~、セックスしたい。
「藤堂さんって、本当に可愛いですよね。でも、漫画と比べること自体が変な話です。私だって藤堂さんの事は大好きなんですから」
蝶々は体をずらし藤堂の隣に座った。そして、蝶々の方から藤堂を抱きしめた。
「藤堂さん、もし、私が会社を辞めることになっても悲しまないでくださいね。
そうなったらの話ですけど…
藤堂さんは辞めないでいいように、私、何も相談しないで自分勝手に動きますから」
藤堂は蝶々に抱きしめられて夢心地の気分だった。蝶々の香りに包まれて恍惚の中にいる藤堂に、蝶々の言葉は届いていない。藤堂はうつらうつらと心地よい眠気にあらがえなくなっていた。
「藤堂さん、おやすみなさい。今晩は、私がずっと隣にいますから……」
蝶々はそう言って眠っている藤堂の瞼にキスをした。
……もう、朝か? 一体、今何時だ?
藤堂は久しぶりにゆっくりと目が覚めた。昨夜、飲み過ぎたのは覚えている。蝶々と一緒に居酒屋でビールを飲んで…
「蝶々?」
藤堂は蝶々がここに泊まったことは覚えていた。
「蝶々? 起きてる?」
藤堂はまだ痛む頭を起こしながら、自分がちゃんとベッドで寝ていたことに驚いた。時計を見るともう朝の九時を回っている。
藤堂はベッドルームから出てリビングへ向かった。ふんわりとコーヒーの香りがする。
「蝶々?」
でも、リビングに蝶々の姿はない。藤堂は胸がざわついた。コーヒーの残り香が不穏な空気を漂わせている。
藤堂はキッチンのシンクで顔を洗った。まずは頭をスッキリさせなければ何を考えても時間の無駄だ。藤堂はタオルで顔を拭きながらカウンターの椅子に腰かけ、もう一度部屋中を見回した。
「あ…」
ソファの横にあるサイドテーブルに見慣れないマグカップを見つけた。そこには程よく冷まされたコーヒーと小さなメモ用紙が置いてあった。
“藤堂さん、おはようございます
朝に大切な用事が入っているので今日は帰ります
今までいろいろとありがとうございました”
藤堂はメモ紙をまたテーブルに戻した。蝶々が淹れてくれたコーヒーを飲みながら心を落ち着かせる。
……嫌な予感がする。
そして、その予感は確実に現実になると、藤堂の直感が告げていた。
藤堂はバッグからノートパソコンを取り出した。後藤の連絡先を調べるためだ。勇み足にならないよう慎重に事を運ばなければならない。蝶々は西園寺順也をきっと尋ねている。昨日までの蝶々の焦りようはきっとそのためだったのか。
藤堂は後藤の携帯番号を自分のスマホに登録した。そして、蝶々のスマホに電話をかけてみたが、何度鳴らしても出る気配はない。藤堂はシャワーを浴びながらずっと作戦を練り、最後の手段に出ることにした。
今度は後藤に電話をした。でも、後藤も何度鳴らしても電話に出ない。
……バイトか。
藤堂は車で後藤のバイト先まで走った。一番の解決策は、後藤心いや西園寺英世と西園寺順也で話をさせる事だ。藤堂は時期が来たら、この方法で二人の関係を改善するしかないと思っていた。それは、確実に最高のタイミングを見計らっての事だ。決してそれは今日ではない。
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