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He is 私のもの??
④
しおりを挟む木の実はご馳走を全部平らげた後に、何とも言えない切ない気持ちに浸っていた。
お腹が空き過ぎてジャスティンの前で倒れてしまった事で、また二人の距離が急接近した。
あの時、私が言い出した会わないで考えたいという約束は、今となってはシャボン玉のようにプカプカと行き場をなくして浮いている。
ジャスティンに惹かれている自分の気持ちに蓋をして、ジャスティンの過去の事ばかりに囚われていた。
実際、私の知らないジャスティンの過去はジャスティンのものであって、私のものではない。 ここに一緒にいる今が何よりも大切であって、きっと、その中に答えが隠れている。
「今日、謙人と会ったろ…?」
ジャスティンは木の実が食事を終えるのを待って、その事を切り出した。
木の実が気を失って倒れた時は、もう謙人の事なんかどうでもいいと思った。だけど、今、こうやって満足な顔で元気になった木の実を前にすると、沸々とあの疑問が頭の中に沸いてくる。
自分の小ささにげんなりするけれど、でも、頭の中の嫉妬の炎は消す事ができなかった。
「謙人さん?
え? 謙人さんにそう聞いたの…?」
「いや、モナンジュのかすみ草の花束が俺の机の上に置いてあった。
他の奴に聞いたら、謙人が置いたって」
木の実は驚きながら、でも、笑ってしまった。
「あの花束、ジャスティンへのプレゼントだったの…?」
「知らないよ、全く嬉しくないんだけど」
ジャスティンはワインを持って木の実の隣に移動した。木の実の座る場所から最高に綺麗な夜景が一望できる、それだけの理由で。
「ねえ、ジャスティン、そのかすみ草の花束事件を教えてほしい。
モナンジュの人に聞いても、あの時は大変だったのよ~とか、そんな事しか教えてくれないの。
今日だって、謙人さんがかすみ草って言っただけで、オーナー夫妻も水田さんも顔が真っ青になったんだから」
ジャスティンは木の実のその話を聞いてモナンジュのスタッフが気の毒なのと、その反応がコントのようで笑ってしまった。
「じゃ、俺がその話を教えるから、木の実は謙人と何を話したか教えてね」
木の実は謙人と話した内容を、詳しくジャスティンに伝えるつもりはなかった。今は、謙人の思いをジャスティンは知らない方がいい。
あ、でも、謝っててほしいって言ってたっけ。その事をちゃんと伝えればいいよね、うん。
「分かった…」
木の実のその返事を確認すると、ジャスティンは凪と舞衣のロマンスの話をざっとしてから、本題のかすみ草の巨大花束事件の話をした。
モナンジュの人達が今でも顔が真っ青になるのは、あの時、金額分のかすみ草を調達するのに相当走り回ったからだと話したら、木の実は顔を真っ赤にして笑っている。
「なんで、その凪さんっていう人は、脇役のかすみ草を主役にそれも花束の全部にしたんだろう…?」
ジャスティンは木の実を連れて、ベランダに置いているソファに腰を下ろした。
「舞衣にぞっこん過ぎて、頭がおかしくなってたのさ。
本人もあの巨大ボールになった花束を見て、腰を抜かしてたよ。
ま、一番迷惑を被ったのは、世間知らずの凪のために花束を請け負った俺と、それを頼まれたモナンジュの人達ってわけ」
ジャスティンは記念に撮っておいたその巨大花束の写真をスマホの中から探し出し、木の実に見せた。
木の実はクッションに顔を当てて大笑いをする。お腹がいたいと、涙を流しながら…
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