34 / 48
He is 完全無欠??
②
しおりを挟む「いいよ……
俺は、友達として心配してる…
それで、いいだろ…?」
ジャスティンは黙っている。
シュウは、電話越しに小さくため息をついた。
「シュウ、ごめんな…
今は、何も考えられないんだ…
でもさ……
そう考えると、凪は凄い奴だと思うよ。
あんなに舞衣に惚れてさ、あんな短期間で自分の物にしたんだから。ほんと凄いわ… あいつ…」
ジャスティンはそう言うと、電話を切った。 この谷底のような日々は死ぬまで続くのかもしれない。 木の実が戻ってこなければ、きっとそういうことだろう…
ジャスティンはいつの間にか眠っていた。眠っている夢の中でも、木の実の姿を求めている。
青いワンピースを着た後ろ姿の木の実をずっと目で追う自分は、決して、木の実を捕まえたりはしない。 木の実が自分の意思でこちらを振り返る事を、ただひたすら待っている。
ジャスティンは、携帯の音で目を覚ました。 また、誰かからの着信だ。
本当に面倒くさい…
しばらく無視していたが、何度も何度もかかってくる。ジャスティンが携帯を覗くと、非通知番号の表示が出ていた。
木の実か…?
「もしもし、今、どこにいる?」
ジャスティンは木の実からの電話だと信じ切っていた。
「バ~~カ、ニューヨークだよ」
ジャスティンは、まだ夢の続きだと思った。 こんな突拍子もない現実があるはずない。
でも? ニューヨーク??
「は? 凪か??」
ジャスティンは、また違った意味で夢かと思った。 凪から電話がくるなんて、地球がひっくり返ってもあり得ないことだから。
「どうした? 舞衣に何かあったのか?」
電話の先で鼻を鳴らして笑っているのが分かる。
「どうした?はこっちの話だよ。
朝っぱらから、シュウから電話がきて、シュウからだぞ?
東京にいる時だってきたことなにのに、マジでビックリしたよ」
ジャスティンは、ガックリと頭を垂れた。 頼むから余計な事すんなよ…
「大体、話は聞いたよ。
あ~、マジで面白かった~
シュウからの電話で目覚め最悪だったけど、お前のラブロマンスの話でパチッて目が覚めた」
「冷やかしの電話だったら、もう切るぞ」
ジャスティンは凪の性格をよく知っている。 凪は自分に正直すぎて、何もかもオブラートに包まずにはっきりと言い過ぎる。 それで、たくさんの人を傷つけてきた事も誰よりも知っていた。
「俺だって、シュウにジャスの相談に乗ってくれって言われても、そんなの知らねえよって感じなんですけど」
「いいよ、だったら、もう切るから…」
すると、電話の向こうで凪が咳払いをするのが聞こえた。
「じゃ、俺に聞きたい事があれば答えるよ。 役に立つかは知らないけど」
ジャスティンは凪には見えないが、少しだけ微笑んだ。
「凪……
お前はどうやって舞衣の気持ちを自分のものにしたんだ…?」
「それは…
ごめん、全然分からない」
ジャスティンは目を細めて笑った。
「舞衣がどこで俺に惚れたのかは全然分からないけど、なんか、物やお金でめちゃくちゃ迫ったのは確か。
俺はそうしたくてした事なんだけど、世間一般から見たら相当ずれてるかもな」
「全然参考にならない…」
「だろ…?
シュウも考えりゃ分かる事なのに。
俺に聞くより、舞衣に聞いた方が参考になるかもよ。 呼んでこようか?」
ジャスティンはゾッとした。
こんな無様な姿を舞衣には知られたくない。
「いいよ、止めてくれ」
凪は何も言わない。 きっと真っ黒いジョークだったに違いない。
「じゃ、最後に一つだけ教えて。
舞衣が、もし、凪の前からいなくなったら?」
凪はしばらく何も言わなかった。縁起でもない事を聞いて、きっと怒ってるのかもしれない。
「ジャス……
舞衣がいなくなったら…?
そのお前が惚れてる子が、俺が舞衣を想ってるのと同じ位なのなら…
死ぬぞ……
俺は、多分死ぬ…
死にたくなかったら、その子を手離さないことだな」
そんなの言われなくても分かってるよ…
「ジャス……
次に会うのが、葬式じゃない事を祈るよ」
凪はそんな不吉な言葉を残して切りやがった。 でも、なんだか凪と話して、重たい鎖のような何かが外れた気がした。
木の実、三日間だけしか俺は待たない。
三日待っても何もなかったら、俺は会いに行くから。
モナンジュに迎えに行く…
もう、そう決めたから…
1
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
モテ男とデキ女の奥手な恋
松丹子
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~
泉南佳那
恋愛
来栖エリカ26歳✖️芹澤宗太27歳
売れないタレントのエリカのもとに
破格のギャラの依頼が……
ちょっと怪しげな黒の高級国産車に乗せられて
ついた先は、巷で話題のニュースポット
サニーヒルズビレッジ!
そこでエリカを待ちうけていたのは
極上イケメン御曹司の副社長。
彼からの依頼はなんと『偽装恋人』!
そして、これから2カ月あまり
サニーヒルズレジデンスの彼の家で
ルームシェアをしてほしいというものだった!
一緒に暮らすうちに、エリカは本気で彼に恋をしてしまい
とうとう苦しい胸の内を告げることに……
***
ラグジュアリーな再開発都市を舞台に繰り広げられる
御曹司と売れないタレントの恋
はたして、その結末は⁉︎
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。
ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。
要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」
そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる