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He is 完全無欠??

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 日曜日の朝、この日は朝から雨だった。
 昨夜、木の実がこの家を出て行ってから、ジャスティンはずっとベッドの中にいる。 リビングのソファから、夜中にやっとの思いでベッドへ移動した。昨日の格好のままで、電気もつけっぱなしで… 

 今までの人生は、どんなに大変な事があっても仕事が上手くいかなくても、自分の生活のペースが乱れる事は一度もなかった。 
そのメンタルのおかげで、今の地位まで上りつめる事ができたのだと自負している。
 なのに、今の俺はどうなってしまったんだろう…? 
 頭が重くて、胸が苦しくて、目の前に見える全ての空間は埋めようのない空白でしかなくて、寂しさや孤独や虚無感や、そんな今まで縁遠かった感情しか今の俺の中には残っていない。
 木の実を知ったのは五日前で、時間に換算しても大した時間一緒にいたわけでもなくて、ましてやキスしかしてない二人の関係性なのに、なんで俺はこんなにも喪失感に苦しんでいるのだろう。

 ジャスティンは、重たい体を引きずりながらバスルームへ向かった。 頭から水をかぶれば少しはまともになるかもしれない。 でも、ジャスティンの足は、バスルームを通り越し木の実が居たゲストルームに向かっている。
 居ないと分かっていながらも、ジャスティンはそのドアを開けた。

 あ……

 ジャスティンは、ドアの前でそのまま座り込んでしまった。 
 ジャスティンの灰色になった世界で、唯一色があるとすれば木の実の着ていたワンピースのブルーだった。そして、そのワンピースはこの空白の部屋にポツンと吊るしてある。
 木の実は全部を置いて行ってしまった。
 きっと、もうここへは帰って来ない……

 時間が過ぎるのがこんなに遅いとは思わなかった。 強い酒をどんなに飲んでも、酔いも睡魔も何も襲ってこない。
 さっきから携帯がずっと鳴っている。木の実からじゃないのは分かってる。
 でも、もしかして…?

「もしもし…」

「ジャス、お前、大丈夫か…?」

 ジャスティンはもう電話を切りたくなった。 木の実以外の人間に何も用事はない。

「シュウか…?」

「木の実ちゃんとどうなったのかと思ってさ。 謙人があんな事言った後の木の実ちゃんの顔が真っ青だったから、ちょっと心配して…」

 シュウは、自分達が持つ性への問題はそんな簡単じゃない事は分かっていた。 普通の人間にとったら、理解する事すら難しい。 
 ジャスティンを含めた自分達のいる世界にはそういう問題を抱えた特殊な人間が多いため、半ばその問題すら何も感じなくなっている。
 でも、木の実ちゃんは違う。 あの子は、純粋で素朴でそういう問題自体何も知らずに育ってきたはずだから。

「あ~、木の実は出て行ったよ……」

「え…? マジか?」

「そうなるだろ…… 
あんな事聞いたら…」

 ジャスティンの声は聞き取れないほどに小さい。 話したくなくてムカついているのが、電話越しでも分かった。

「シュウ…… 
 本当、悪いんだけど、もう、お前じゃないんだ。 立ち直るとか、そういう事なのかとかも何も分からない。 
 喪失感と虚無感が半端なくて、叫びたいくらいに木の実に会いたい…
 可笑しいだろ…? 
 笑っちゃうよな…」



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