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He is コイビト??

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 ジャスティンは木の実をエスコートして、シュウの待つカウンターの席に座らせた。自分自身もいつもの席に腰を下ろす。 
ジャスティンは挙動不審になっている木の実が可笑しくてたまらなかった。 シュウの意味深な挨拶で、あの夜の木の実の記憶の鍵が外れたのかもしれない。

「木の実ちゃんは何を飲む?」

 シュウは木の実が店に入ってきた時、無意識に口笛を吹いてしまった。 それくらいにあのベランダで寝ていた木の実とは別人だったから。 
 すごく魅力的でスタイルは抜群にいいのに、何かがちょっとアンバランスだ。 雰囲気だけは大人びたいい女に見える。だけど、顔が究極に可愛すぎる。 
 くるっとした目に笑うと前歯が見えるその顔は、ジャスが言うように小動物を彷彿させた。

「お、お任せでお願いします…」

驚くほどの小さな声に、シュウはあのカレシ様のくだりを思い出して、笑いそうになるのを堪えた。

「じゃあ、シャンパンに苺を入れてあげる」

「え…??」

 シュウはジャスティンと顔を見合わせた。 ジャスティンの様子から、別にあの夜の話を隠している感じではなさそうだ。

「僕は、実は、木の実ちゃんと初めましてじゃないんだ」

 木の実は隣に座るジャスティンの顔を覗きこんだ。ジャスティンは涼しい顔で鼻歌を歌っている。

「え? 
 でも、私は、きっと、初めましてだと思うんですけど… 
 どこかでお会いしましたっけ…?」

 ジャスティンは我慢できずに笑ってしまった。
 本当に本当に覚えていないなんて、もうマジで可愛すぎる。

「何が可笑しいの? 
 え? 
 あ、分かりました。 
 もしかして、モナンジュのお客様ですか? 
 私、あまり人の顔を覚えるのが得意じゃなくて、ごめんなさい、忘れてしまってるかも…」

 ジャスティンは、木の実が喋れば喋るだけ笑いのツボに入ってしまう。 もう笑い過ぎて息ができない。

「あの… 
 私、何か変な事言ってます? 
 ジャスティンがこんなに笑うなんて… 
 私達、何か関係を持ちましたでしょうか?」

 さすがのシュウも吹き出してしまった。
ジャスがかなりの天然と言っていた理由がよく分かる。シュウは笑いながら、木の実の前にピンク色のカクテルを置く。 
 そして、カクテルの横に、苺がたくさん入ったフルーツの盛り合わせもさりげなく置いた。

「実は、あの晩に。
木の実ちゃんが酔っ払って寝てたあの晩、ジャスの家にちょっとだけお邪魔したんだ」

 木の実は顔面が蒼白になるのが分かった。どうりで、このイケメンの記憶が全くないはずだ。 
 木の実はジャスティンに小さな声で耳打ちをした。

「私、何も変な事してないよね…?
 恥ずかしい事とか、絶対、してないよね…?」

 ジャスティンが返答に困っていると、何も気付かずにシュウが木の実に話しかける。

「あの後、大丈夫だった? 
 風邪とか引かなかったかなって、ちょっと心配してたんだ」

「風邪??」

「そうだよ、だって、僕がジャスの家に行った時、木の実ちゃん、ベランダで寝てたからめちゃくちゃ驚いたんだ」

 木の実は一回静かに目を閉じた。 
 ベランダで寝てた?? 
 何故? どうして??

 ごめんなさい…
 自分の事ながら、今さらながら、めちゃくちゃ驚いてます…

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