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He is コイビト??

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「絶対、遊びに行くよ。
 せっかく木の実と仲良くなれたのに、これで終わりじゃ嫌だし」

 ジャスティンは、何だか心が軽くなった。
 恋をするとか人を愛するとか、今までの俺にはやっぱり縁がなかったんだ。
 だって、今、体感しているこの気持ちは、全てが初めてのものばかりだから。

 ジャスティンがそう思いながら木の実を見ると、笑顔なのに木の実の瞳は潤んで見えた。

「どうしたの?」

 ジャスティンの問いに木の実は笑いながら涙を拭う。

「ジャスティンがやっと元気になったって思って…」

 ジャスティンは、たまらずに木の実の肩を抱き寄せた。

「ごめん…
 今の俺って、多分、情緒不安定なんだ…
 でも、その解決策を見つけた。今から、俺の友達がいるショットバーに行こう。
 美味しい食事も頼めば出してくれるし、あ、それと、木の実にプレゼントがあるんだった」

「え?  プレゼント??」

 ジャスティンは木の実をまた車に乗せると、エンジンをかけて車を走らせる。

「後部座席にある箱を開けてみてごらん」

 木の実は顔をほころばせて後ろを見ると、そこには見た事のないブランド名が入った高級そうな箱が置いてあった。

「本当に開けていいの…?」

 ジャスティンは目だけを動かし木の実を見た。

「本当に開けていいよ。木の実のために買ったんだから」

 木の実はドキドキする胸を鎮めながら、その箱の蓋を開けてみる。そこには、木の実の大好きなブルーのワンピースが入っていた。
 もう、何も言葉が出てこない…
 そのワンピースにお揃いの濃紺のカーディガンと、それに似合うちょっとだけヒールの高いシルバーのパンプスも、ワンピースと一緒に木の実の喜んだ顔を待っている。

「でも、なんで…?
 なんで、ジャスティンは、私の大好きな色を知ってるの…?」

 ジャスティンはフッと鼻で笑った。

「ジャスティンの青い目が好きって言ってたじゃん。
 それに、自分も青い瞳になりたくてカラコンをつけたりするって。
 だから、木の実は絶対ブルーが好きだって思った。
 俺も、実は一番ブルーが好きだから、だから、俺の願望もあってその色のワンピースにした。
 気に入ってくれた?」

 木の実はジャスティンの横で嬉しそうに何度も頷いている。

「気に入ったけど、似合うかは分からないよ。
 それに、こんな素敵な服を着て行くような所もないし…」

 ちょうど信号待ちで車が止まった。
 ジャスティンは目を細めながら、わざとため息をついて木の実の顔を覗きこむ。

「それが、今から行くんだ。
 そのお店にそのワンピースを着て行く。
 今から、着替える場所を探すから、そのつもりでいてね」

 木の実は、ワクワク感でまた心臓が高鳴り出す。ジャスティンは木の実の知らない世界をたくさん見せてくれる。
好奇心旺盛で、何でも経験しなくちゃ気が済まなくて、失敗してもいつも楽しかったって思える木の実にとって、ジャスティンの思いつくアイディアはまるで宝箱だった。
 世の中にいる大勢の男性の中で、きっと一握りしかいないイケメンエリートに私は恋をしてしまった。
 私みたいな一般人が、こんな素敵な立派な人に本気で恋をしていいのか分からないけれど、でも、ジャスティンは私の心の扉を簡単に開けてしまったみたい…


 ジャスティンはショッピングモールの駐車場で、木の実がワンピースに着替えて戻って来るのを待っている。
 あのワンピースは一目見て気に入った。
 淡いブルーと濃い色のブルーのコントラストが、目鼻立ちがはっきりしている木の実の顔に絶対映えると思ったから。
 そして、ジャスティンは一年前の会社での出来事を思い出していた。
 その時の同僚の凪が、事務職で入って来た女の子に超高級スーツをプレゼントした。凪がそんな事をすること自体が信じられなくて、恋は盲目とかあの子に首ったけとか、そんな言葉って本当に存在するんだと知った。
 でも、今の俺は、あの頃の凪を超えているかもしれない。
 恋は盲目とは、まさに今の俺の事だ…

「ジャスティン」

 背後から名前を呼ばれたジャスティンは、そこに木の実が立っている事に気付いた。もう心臓が飛び出しそうだ。
 ジャスティンは動揺を悟られないように、後ろを振り返る。
 恋のキューピットというものが本当に存在するのなら、今、俺はきっとその天使とやらに囲まれているだろう。

「サイズもピッタリで、もう、凄く気に入った。ジャスティン、本当に頂いていいの?」

 ジャスティンは頷く事しかできなかった。
 髪を下ろし、ブルーのワンピースを着た木の実から目が離れない。
 小さな顔に真っ直ぐに伸びた白い足、少し濃い目のルージュを引いた木の実は本当に綺麗だった。

「私の人生の中で、今、夢みたいな事が起こってる。
 神様は、私に最高のドキドキ感と恋する幸せを与えてくれたみたい」

 木の実が肩をすくめてはにかんで笑った時、きっと、俺の周りを囲んでいた天使たちが一斉に矢を放った。
 俺のハートは、一本どころか何十本もの矢を受けて喜んで破裂する。
 マジでヤバイ…
 今の俺は、凪どころの騒ぎじゃない……


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